※この作品はR-18です。

濁った宝石   作:湖畔R

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第15話 正の字の果て

 一睡もできなかった朝、遠坂邸の門前で、黒いバンの扉が開いた。

 

 カララ、と無機質な音を立てて滑った扉の奥は、外から覗けないほど暗い。窓には黒い膜が貼られ、後部座席の向こうには荷室との仕切りまで立っている。

 

「さ、凛ちゃん。お迎えだぜ」

 

 背後から金髪の男に肩を押され、凛は門柱へ手をついた。

 

 膝が震えた。昨夜から男二人に休みなく弄ばれ、下腹には何度も注ぎ込まれた精液が残っている。喉はひりつき、制服の襟が擦れるだけでも痛い。男たちに命じられるまま着直したワイシャツとスカートは、洗うことすら許されなかった肌へまとわりついていた。

 

「……どこへ連れていく気?」

 

「乗れば分かる」

 

「分からないから聞いてるのよ。誰の命令?」

 

「質問できる立場だと思ってんのか?」

 

 もう一人の男が凛の鞄を奪い、片手で門扉を閉めた。ガチャン、と錠の噛み合う音がする。

 

 自分の家が、閉じた鉄格子の向こうへ離れていく。

 

 凛は通りの端へ視線を走らせた。朝の住宅街には新聞配達の自転車が見える。助けを求めて声を上げれば、誰かは振り向くかもしれない。

 

 だが、金髪の男がスマートフォンを胸元で揺らした。

 

「大人しく言うこと聞け。美綴ちゃんにも、また遊びに来てもらいたくねえだろ?」

 

 凛は門柱から指を離した。

 

 今ここで宝石を使い、二人を倒すことはできる。だが映像の保存先も、黒いバンの運転席にいる人間も、その背後にいる魔術師も分からない。誰か一人でも見逃せば、士郎か美綴が巻き込まれる。

 

「……最低」

 

「褒め言葉として受け取っとくよ」

 

 男に肘を掴まれ、凛はバンへ足を掛けた。脚へ力が入らず、身体が傾く。腰を抱えられて後部座席へ押し上げられた瞬間、腹の奥に残った精液が、たぷん、と重く揺れた。

 

「触らないで……!」

 

 尻を撫でてきた手を払いのける。だが左右から男たちに挟まれた直後、目元へ厚い布を巻かれた。

 

「ちょっと、何を――」

 

「見られちゃ困るもんがあるんでね」

 

 目隠しの結び目が後頭部できつく締まる。

 

 扉が閉まり、黒いバンが動き出した。

 

 凛はシートの縫い目を指先で探りながら、身体に伝わる揺れを数えた。最初の右折。長い直進。小さな段差が三つ。左折して、舗装の荒い道へ入る。

 

 けれど、睡眠不足で思考が何度も途切れた。男の膝が太ももへ触れるたび、進路の記憶が飛ぶ。エンジン音に紛れて低い笑い声がする。

 

「道、覚えようとしてるぜ」

 

「無駄だって。ほら」

 

 顎を掴まれ、顔を上へ向けられた。唇へ指が押しつけられる。

 

「離しなさい」

 

「目的地まで寝てりゃいいのにな」

 

「眠れるわけ、ないでしょう……!」

 

 指へ噛みつこうとすると手は離れた。その代わり、スカート越しに下腹を押される。

 

「うっ……!」

 

「いい具合に重そうだ」

 

 凛は両膝を閉じ、男の手を睨む代わりに暗闇へ顔を向けた。

 

 止まる。曲がる。加速する。

 

 数え直すたびに、どこから数えていたか分からなくなる。

 

 やがて黒いバンは速度を落とし、砂を踏むような音を立てて停まった。

 

「着いたぞ」

 

 扉が開く。朝の冷たい空気と、湿った土の匂いが入り込んできた。

 

 目隠しを外された凛の前にあったのは、木々に囲まれた公衆トイレだった。

 

 白い壁。色褪せた案内板。人気のない朝の公園。

 

「……ここ?」

 

「そう、ここ」

 

 男たちは凛の両腕を取り、足元の定まらない身体を公衆トイレへ引きずっていった。

 

   ◇

 

 個室へ押し込まれた途端、背後でガチャリと鍵が回った。

 

「まずは俺たちの分、追加しとくか」

 

「朝飯をやらねえとな」

 

「ふざけないで。私は――んむっ!」

 

 金髪の男に後頭部を掴まれ、もう一人がスラックスを下ろした。鼻先へ熱いペニスを押しつけられる。汗と体液の臭いが、狭い個室に広がった。

 

「口、開けろ」

 

「んんっ……んっ!」

 

 顔を背けると頬を叩かれた。ぱしん、と乾いた音が壁へ返る。

 

「昨夜は上手にできてたじゃねえか」

 

 凛の顎から力が抜けた瞬間、ペニスが唇を割って押し込まれた。

 

「んぐっ……!」

 

 じゅぽっ、じゅるるっ、じゅぽっ。

 

 髪を掴まれ、顔を前後に動かされる。腫れた喉へ亀頭が触れるたび、鋭い痛みが走った。

 

「ん゛っ、ぐ……ぅっ……!」

 

「そう、それ。奥まで咥えろ」

 

 息ができない。唾液が唇の端から垂れ、ワイシャツの胸元へ落ちる。舌を引けば喉を突かれ、押し返そうとすれば後頭部を強く引き寄せられる。

 

「出すぞ。飲めよ」

 

「んんーっ!」

 

 びゅるっ、びゅるるっ。

 

 苦く熱い精液が舌の上へ広がり、喉へ直接流れ込んだ。むせることすら許されない。ごくっ、ごく、と飲み下す音が、他人の音のように耳へ響く。

 

 ようやく口から抜かれた時には、息を吸うだけで喉が焼けた。

 

「げほっ……けほ……っ」

 

「休憩には早いぜ」

 

 肩を掴まれて便座の蓋へうつ伏せに押しつけられる。スカートが腰まで捲り上げられ、下着が膝へ引き下ろされた。

 

「や……待ちなさい、もう……入らない……」

 

「まだまだだろ。ちゃんと受け取れ。空にするなよ」

 

 後ろから熱い亀頭が膣口へ押し当てられた。昨夜から濡れと精液が残る入口へ、太いペニスが容赦なく割り入ってくる。

 

 ぬぷっ……ぐちゅっ。

 

「あっ、ああっ……!」

 

 腰が便座へぶつかる。ぱんっ、ぱんっ、ぬちゅっ。狭い壁に肉の音と凛の悲鳴が何度も跳ね返った。

 

「やめ……奥、突かないで……っ、そこ、あっ!」

 

「締めてんじゃねえか」

 

「違う……! 身体が、勝手に……っ」

 

 子宮口を突かれるたび、下腹の奥で熱が弾ける。拒絶しているのに、疲弊した身体は刺激を逃がせず、膣がペニスへ痙攣を返してしまう。

 

「ほら、またイくぞ」

 

「や……いやっ、あああっ!」

 

 絶頂に腰が跳ねた瞬間、男の動きも止まった。

 

 びゅるっ……びゅるるるっ……!

 

 精液が子宮へ注ぎ込まれる。ドクン、ドクン、と脈打つたび、昨夜から溜まっていた熱へ新しい熱が重なった。

 

「あ……ぁ……」

 

 ペニスが抜ける。白い精液が、とろりと太ももを伝い、便座へ滴った。

 

 床へ崩れそうになった凛を、金髪の男が脇から抱き起こした。

 

「よし。俺らはこんなもんでいいだろ」

 

「もう行くんすか? まだ使えそうですけど」

 

「あとはここに置いておけって言われてる」

 

 凛は荒い息の間から顔を上げた。

 

「……誰に?」

 

「上からのお達しだからな。俺たちも時間厳守なんだよ」

 

「上って……誰よ。資産家? それとも――」

 

「詮索すんな」

 

 男の声から、さっきまでの軽さが消えた。

 

 凛の背筋を冷たいものが走る。

 

 この男たちは、自分たちの欲望だけで動いているのではない。だが、誰に従っているのかは口にしない。

 

「何をするつもり……?」

 

「俺たちは、置いていくだけさ」

 

 便座へ座らされる。凛は男たちの靴と扉までの距離を測り、立ち上がろうとした。だが膝が震え、腰が浮く前に肩を押さえ込まれた。

 

「離しなさい……お願い。せめて、服は――」

 

 返事の代わりにワイシャツのボタンが引き千切られた。

 

 ぷつっ、ぷつっ、と白いボタンが床へ散る。ワイシャツ、スカート、下着の順に剥ぎ取られ、鞄も男の腕へ渡った。最後に靴と靴下まで脱がされる。

 

 床には、靴一足さえ残らない。

 

「やめて……裸で、どうしろっていうのよ……!」

 

「どうもしなくていい。座ってろ」

 

 黒いベルトが床へ落ち、金属の金具が硬い音を立てた。

 

 凛の両足を便器の左右へ大きく開き、足首と膝上へ一本ずつベルトが巻かれる。

 

 カチ、カチ。

 

「いやっ……脚、閉じさせて……!」

 

「駄目だ。見えやすくしとかねえとな」

 

 両手首も、それぞれ太ももの外側へ固定された。

 

 カチッ、カチッ。

 

 手を腿の外へ引かれた姿勢では、腰を引くことも脚を閉じることもできない。冷たい便座の縁へ熱を持った尻が触れ、剥き出しの膣から精液が一筋、ぬるりと落ちた。

 

「んっ……見ないで……」

 

「見えなくなるから安心しろよ」

 

 目隠しが巻かれた。朝の白い光が消える。

 

「誰が来るの……? 答えなさい!」

 

 続いてギャグボールを口へ押し込まれた。大きな球が舌を押さえ、顎を強制的に開く。

 

「んんーっ! ん゛っ、んんーっ!」

 

 声が出ない。

 

 ベルトが後頭部で締められると、すぐに涎が口の端から垂れた。たらっ、たらっ。顎を伝い、胸の先へ落ちる。

 

「これでよし」

 

「いい客に恵まれるといいな、凛ちゃん」

 

「んんんーっ!」

 

 男たちが笑いながら離れていく。ガチャリ。個室の扉が閉まる。

 

 足音が遠ざかる。

 

 裸で便器へ固定され、目隠しとギャグボールで視界も声も奪われた凛だけが残された。

 

   ◇

 

 最初に聞こえた足音は、凛の前を通り過ぎた。

 

 隣の個室で扉が閉まり、衣擦れと排尿、水洗の音が続く。やがて靴音は離れていった。

 

 凛は鼻から長く息を吐いた。

 

(普通の人が来る場所なのよ。誰かに気づいてもらえれば――)

 

 だが、次の足音が近づくたび、期待と恐怖が同時に胸を締めつけた。

 

 気づいてほしい。

 

 見られたくない。

 

 士郎にだけは、知られたくない。

 

 ガチャリ。

 

「ん……?」

 

 扉が開き、濡れた床を踏む靴音が入ってくる。ガチャ、と内側からまた施錠された。

 

 足音は便器の正面で止まった。

 

「んんっ……んーっ!」

 

 助けて、と叫んだつもりだった。ギャグボールに潰され、鼻へ抜ける呻きにしかならない。

 

 ざらついた手が太ももを撫でた。たばこと汗の匂いが近づく。

 

「本当にいる……」

 

 知らない声だった。

 

「ん゛っ、んんーっ!」

 

「静かにしろよ。すぐ終わるから」

 

 ベルトを引く音がする。次いで、熱く硬いものが膣口へ触れた。

 

(待って。お願い、やめて――)

 

 ぬぷっ……。

 

「んぐぅっ!」

 

 ペニスが押し入ってくる。精液でぬめった膣壁を擦り、逃げ場のない奥へ進んだ。

 

 ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぐちゅっ。

 

 男の腰が動くたび、固定具がカチッ、カチッと鳴る。凛は両手を握り、手首を捻った。だがベルトは太ももの外側へ食い込むばかりで、脚は開いたまま動かない。

 

「んんっ……ふぅっ、ん゛っ!」

 

 声を殺そうとしても、突き上げられるたびにギャグボールの脇から喘ぎが漏れる。

 

「感じてんのか」

 

(違う。違うのに……!)

 

 拒絶と身体反応は別だと、何度も自分へ言い聞かせる。けれど、子宮口を亀頭で叩かれるたび、下腹へ熱い痺れが広がった。

 

「出るぞ」

 

「んんーっ!」

 

 びゅるっ……びゅるるっ……!

 

 中出しされた精液が子宮へ放たれた。ドクン、ドクン。誰なのかも分からない男の熱が、すでに溜まっているものへ混じっていく。

 

 身体がびくんと跳ね、固定具が一斉に鳴った。

 

 カチッ、カチッ。

 

「本当にイくんだな」

 

「ん゛……ぅ……」

 

 ペニスが抜かれた直後、太ももへ冷たいものが触れた。

 

 すうっ。

 

 ペン先の感触だった。肌を短く、真っ直ぐに撫でる。

 

「ありがとよ」

 

 男はそれだけ言って出ていった。

 

 扉が閉じる。

 

 息を整える間もなく、また扉が開いた。

 

 ガチャリ。

 

 別の靴音が入り、胸を掴んだ。指が乳首を摘み、潰すように転がす。

 

「まじか、こんなに可愛いのに」

 

「んっ、んん……!」

 

 次のペニスが、精液の溢れる膣へ入ってくる。

 

 ぬぷっ、ぐちゅっ。

 

「すげえ。中、ぐちゃぐちゃだ」

 

 ぱんっ、ぱんっ、ぬちゅっ。

 

 一人目より速い。固定された身体が便座の上で揺さぶられ、胸が上下に跳ねる。凛は目隠しの下で強く目を閉じた。

 

「ああ、締まる……!」

 

 びゅるっ、びゅるるっ。

 

「んあ゛っ……!」

 

 中出しと同時に子宮が痙攣し、また絶頂が身体を貫いた。

 

 ペニスが抜け、冷たいペン先が太ももへ戻る。

 

 すうっ。

 

 前の線の近くへ、もう一画。

 

(……書いてる。何を……?)

 

 二人目が去り、三人目が来た。

 

 今度の男はほとんど喋らなかった。太いペニスを膣口へ押しつけ、凛の反応も待たず体重を掛ける。

 

 ぬぷっ……ぐちゅっ!

 

「んぐうぅっ!」

 

 無理やり拡げられた痛みに、背が反る。男は凛の腰を掴み、短く激しく突き込んだ。

 

 ぱんっ、ぱんっ、ぐちゅっ、ぬちゅっ。

 

 ギャグボールを噛む歯が軋む。喉の奥から、ひゅう、ひゅう、と細い呼吸が漏れた。

 

「ん゛っ、ふぅっ、うぅっ……!」

 

 びゅるるっ……!

 

 熱が奥へ散り、精液が溢れる。男が抜いた後、三人目の冷たい線が太ももを走った。

 

 すうっ。

 

 その線が、前の線を横切った。

 

 凛は理解した。

 

(正の字……)

 

 一人が果てるたび、一画。

 

 見えない来訪者を、凛自身の身体で数えている。

 

 正。

 

 正。

 

 正。

 

 次の足音が聞こえた。

 

   ◇

 

 一画が増えるたび、次の足音が来た。

 

 革靴の硬い音。底を擦る歩き方。急いで駆け込む足音。周囲を窺いながら忍ばせる足音。

 

 顔も、名前も分からない。

 

 分かるのは、手の硬さ、息の臭い、ペニスの太さ、腰を振る速さだけだった。

 

「んぐっ……んんっ、ふぅっ……!」

 

 ぬぷっ、ぬちゅっ、ぐちゅっ。

 

「そんな締めるなよ。すぐ出ちまうだろ」

 

「んんーっ!」

 

 びゅるっ……ドクン、ドクン。

 

 中出しの熱が子宮へ重なり、冷たいペンが肌を走る。

 

 すうっ。

 

 扉が閉じ、また開く。

 

「こんな格好で待ってたのか」

 

「ん゛っ……!」

 

 胸を揉まれ、乳首を引かれ、太いペニスで奥を抉られる。

 

 ぱんっ、ぱんっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ。

 

「あ、イったな」

 

「んあ゛っ、あぁっ……!」

 

 絶頂に膣が収縮したところへ、精液を注ぎ込まれる。

 

 びゅるるるっ……!

 

 すうっ。

 

 次。

 

 また次。

 

 犬の鳴き声と子どもの笑い声が、目隠しの向こうを通り過ぎた。

 

 朝の公園は、凛のいる個室だけを置き去りにして普通に動いている。

 

「んんーっ! んんんーっ!」

 

 助けを求めて身体を揺らす。カチッ、カチッ、とベルトの金具が鳴る。その音に気づく者はいない。

 

 代わりに次の男が入り、ギャグボールの上から凛の頬を撫でた。

 

「外まで声、聞こえてたぞ」

 

「んっ……んん……」

 

「もっと聞かせろよ」

 

 膣口へペニスが押し込まれる。

 

 ぬぷっ……ぐちゅっ。

 

「んあ゛っ! ふぅっ、んっ、んんっ!」

 

 太ももの線が増えていく。

 

 すうっ。すうっ。

 

 目隠し越しの光が、いつの間にか白から赤みを帯びていた。

 

 何人に犯されたのか、もう分からなかった。

 

 太ももだけでは足りなくなったらしい。ペン先が下腹へ移り、お腹や胸にも正の字が書かれていく。

 

 すうっ、すうっ。

 

 線が重なるたび、肌がひりひりした。

 

 途中、誰かが極太のバイブを持ち込んだ。

 

「これで奥へ押し込めってさ」

 

 膣口へ冷たい先端が触れる。

 

「んんーっ!」

 

 ぬぷっ……ぐちゅっ、ゴポっ。

 

 膣に溜まっていた精液が、極太のバイブに押されて子宮の奥へ動く。白濁した熱が内部を遡るような感触に、凛は便座の上で大きく身を震わせた。

 

「んあ゛ああっ!」

 

「またイったぞ」

 

 器具が抜かれると、今度はペニスが入る。

 

 ぬちゅっ、ぐちゅっ、ぱんっ、ぱんっ。

 

 中出しされる。

 

 びゅるっ、びゅるるっ。ドクン、ドクン。

 

 また極太のバイブで押し込まれる。

 

 ぬぷっ……ぐちゅっ、ゴポっ。

 

 誰かの精液と次の誰かの精液が、子宮の中で区別を失っていく。

 

 身体は刺激のたび絶頂した。意思とは無関係に膣が締まり、腰が跳ね、掠れた喘ぎがギャグボールの隙間から漏れる。

 

「ん゛っ、ふぅっ……あっ、あぁっ……!」

 

 凛はそのたび、心の中で否定した。

 

(私が望んだんじゃない)

 

 次の一画。

 

(私が選んだんじゃない)

 

 次の足音。

 

(士郎……見ないで。お願いだから、知らないで……)

 

 日が落ちたことは、目隠しの向こうの光が消え、公園から人の声が減ったことで分かった。

 

 けれど、まだ足音は途絶えなかった。

 

   ◇

 

「おい、見てみろよこの腹」

 

 聞き覚えのある声が戻った時、凛は反応する力も失いかけていた。

 

「まじかよ。こんなに溜まってんのか」

 

 目隠しだけが外された。

 

 朝から閉ざされていた視界へ、個室の白い照明が突き刺さる。

 

 涙で滲む目を瞬く。

 

 最初に見えたのは、妊婦のように白く膨らんだ自分の腹だった。

 

 次に、太ももを埋め尽くす黒い正の字。下腹から胸へ、数え切れない線が重なっている。ペンの跡で汚された肌の上を、涎と汗と精液が鈍く光っていた。

 

(……これが、私の身体……?)

 

 冷たい一画としてしか感じられなかった数が、すべて目の前の現実へ変わる。

 

「どうだ、凛ちゃん。自分の体、よく見ろよ」

 

「ん゛ーっ……」

 

 ギャグボールはまだ口を塞いでいる。凛は首を振った。見たくないのに、目を逸らす先がどこにもない。

 

 金髪の男が、床に置かれた極太のバイブを持ち上げた。

 

「仕上げだ」

 

 太い先端が、精液の溢れる膣口へ押し当てられる。

 

「んんーっ! ん゛っ!」

 

 腰を引こうとしても、両手首と脚のベルトが身体を便座へ縫い止めている。

 

 ぬぷっ……ぐちゅっ……ゴポっ。

 

「んあ゛あああっ!」

 

 極太のバイブが膣壁を限界まで拡げ、子宮の奥へ精液を押し込んだ。腹の中で白濁した熱が動く。苦しさと刺激が一つになり、凛の腰が大きく跳ねた。

 

 カチッ、カチッ。

 

「苦しいか? でもこれで蓋だ。精液、逃げられねえぞ」

 

「ん゛っ……ふぅっ、あぁっ……!」

 

 ぐいんっ……ぐいんっ……。

 

 極太のバイブが低く振動する。深く押し込まれた先端が子宮口へ当たり続け、凛の膣が器具へ痙攣を返した。

 

「んあっ、あっ、い……いぎぁっ!」

 

 絶頂が突き抜ける。視界が白く弾け、全身が便座の上で震えた。

 

「イったな。感じてるじゃねえか」

 

 振動は止まらない。

 

 ぐいんっ、ぐいんっ……。

 

「んがっ、んぐぁがが……」

 

 まだギャグボールに塞がれた言葉は、呻きにしかならなかった。

 

 男たちはベルトを解いた。足首、膝上、手首の順に拘束が外れる。自由になったはずの脚は力を失い、凛は便座から落ちかけた。

 

「支えろ。次はこっちだ」

 

 両脇を抱えられたまま、金属の貞操帯を腰へ回される。

 

 極太のバイブを膣へ深く差し込んだまま、股間を覆う金属板が押し当てられた。

 

 カチ、カチ。

 

 貞操帯の鍵が回る音。

 

 カチャリ。

 

 熱を持った肌へ冷たい金属が食い込み、器具も精液も体内へ閉じ込められた。

 

 ギャグボールが外される。涎でべっとり濡れた顎を、布で乱暴に拭われた。

 

「げほっ……一週間、外すって……そう言ったでしょう……」

 

 掠れた声を絞り出す。

 

「俺はそう言った。けど、上が変えたんだ。文句ならそっちへ言え」

 

「その上が……誰なのよ……」

 

「もうすぐ会えるさ」

 

 凛は顔を上げた。

 

 答えを問い返す前に、極太のバイブが強く震えた。

 

 ぐいんっ……ぐいんっ……ぐいんっ。

 

「あっ、うぅっ……!」

 

 膝が折れる。器具の脇から、押し留められた精液がわずかにとろりと漏れ、貞操帯の内側へ広がった。

 

「立てるか?」

 

「見りゃ分かるだろ。肩貸せ」

 

 男たちに左右から肩を支えられ、凛は夜になった公園を歩かされた。

 

 一歩目。右足を出すと、極太のバイブが子宮口へ当たる。

 

「んっ……!」

 

 二歩目。左足を出すと、膨れた腹の重みがたぷんと揺れる。

 

 ぐいんっ……ぐいんっ……。

 

「あっ、あぁ……待って、歩けな……」

 

「車までだ。頑張れよ」

 

 黒い正の字に埋められた裸身へ、夜気が刺さった。衣服は返されない。男たちの上着を肩へ掛けられただけで、金属の貞操帯も、胸や太ももの線も隠し切れなかった。

 

 公園の端に停められた車へ辿り着き、後部座席へ横向きに押し込まれる。

 

 シートへ腰が沈んだ瞬間、バイブの角度が変わった。

 

「ああっ!」

 

 ぐいんっ、ぐいんっ。

 

 車体が動く。小さな振動まで貞操帯の内側へ伝わり、器具が子宮を押す。凛は膨れた腹を両腕で庇い、歯を食いしばった。

 

「んっ、ふぅっ……あっ……!」

 

「またイってんのか。始末が悪いな」

 

「黙り……なさい……」

 

 どれほど走ったのか分からない。

 

 やがて車が停まり、ドアが開いた。冷たい夜気が吹き込む。

 

 また目隠しをされ、左右から肩を抱えられて降ろされた。

 

 裸足の裏へ、ざらついたコンクリートの硬さが触れる。

 

「段差だ。上がれ」

 

「……ここ、どこ?」

 

「前向いて歩け」

 

「何をする場所なのよ」

 

 答えはない。

 

 靴音が長く反響する。外気が消え、閉じた廊下の匂いへ変わった。右へ曲がり、金属扉の開く重い音をくぐる。

 

 ガチャリ。

 

 扉が背後で閉じた。

 

 凛の首へ、冷たい金属が触れる。

 

「何……?」

 

 カチャリ。

 

 首輪が取り付けられた。

 

「外しなさい!」

 

 手を伸ばす前に両腕を押さえられる。首輪へ鎖が繋がれ、じゃらりと床を這った。軽く引かれた瞬間、喉へ金属の圧迫が掛かる。

 

「ぐっ……」

 

「暴れるな。首、締まるぞ」

 

 鎖の端が別の金具へ留められた。カチャン、と重い音がする。

 

 背後の膝を押され、ベッドのような柔らかいものへ座らされた。その拍子に極太のバイブが傾く。

 

 ぐいんっ……ぐいんっ……。

 

「あっ……いく……っ、ああっ!」

 

 絶頂に身体が震え、貞操帯の隙間から精液がわずかに溢れた。

 

「まだイくのか。感度、上がりすぎだろ」

 

 男たちの笑い声が遠ざかる。

 

 目隠しが外された。

 

 薄い照明。

 

 継ぎ目の少ない壁。

 

 窓のない天井。

 

 首輪から伸びる鎖は、ベッド脇の金具へ繋がれている。

 

 逃げ道を探した視線が、正面のソファで止まった。

 

 ガウン姿の資産家が、葉巻をくわえて深く腰掛けていた。白い煙の向こうで、穏やかな目だけが凛を見ている。

 

「よく来たね、遠坂凛」

 

 声は静かで、優しかった。

 

 凛は鎖を握った。立ち上がろうとすると、首輪が喉へ食い込む。膨れた腹が重く、極太のバイブは今も低く震えている。

 

 ぐいんっ……ぐいんっ……。

 

「長い一日だったでしょう。少し、休むといい」

 

 休めるような身体ではない。

 

 休ませるための首輪でも、鎖でもない。

 

 それでも男は、明日の予定を決めるような穏やかさでそう告げた。

 

 その優しい声を聞いた瞬間、凛は悟った。

 

 この部屋は、一晩のためではない。

 

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