三つの経路が満ちたまま、変化は止まらなかった。
胃の底。
子宮の奥。
直腸の壁。
男たちの精液で熱く、重くなった三か所を、もっと鋭い何かが一斉に走り抜ける。
びしゃっ、ぐちゅっ——。
「ん……あっ……なに、これ……っ」
桜の腹の内側で、液体が跳ねた。
膣内では極太バイブが唸り続けている。アナルには大男のペニスが根元まで埋まり、射精を終えた後も直腸の出口を塞いだままだった。
手首も足首も、拘束台から動かせない。
逃げられない身体の中だけで、異変が加速していく。
胃がきつく縮む。
「うっ……!」
飲み込まされた精液が持ち上がり、喉元へ熱いものがせり上がった。吐き出すより早く、子宮が引き攣る。
びしゃびしゃっ……たぷんっ。
「ひぁっ!?」
子宮の奥で白濁が跳ね、その収縮が薄い肉壁を越えて直腸へ伝わった。
大男の太いペニスを腸壁が締めつける。そのたび、奥に溜め込まれた精液が逃げ場を探すように押し返され、腹のさらに深いところへ圧力が戻ってきた。
重い。
熱い。
苦しい。
それなのに、三か所を巡る収縮の波が膣内のバイブを巻き込んだ瞬間、痛みとは違う刺激が背骨を駆け上がった。
「や……だめ……っ、それは……!」
桜は腰を押さえようとした。
手首の金具が鳴るだけだった。
次の収縮が子宮口を絞り、極太バイブへ内側から吸いつく。振動が狭い一点へ集められ、腹から胸、首筋へ一気に突き抜けた。
「ひぁっ……! や、だめ……いっちゃ……っ」
腰が拘束台の上で跳ねる。
自分から動いたのではない。腹の奥で起きた痙攣に、骨盤ごと持ち上げられたのだ。
一度目の絶頂が、息を奪った。
「あ……ぁ……っ」
膣がバイブを締める。直腸も大男のペニスへ吸いつく。身体が勝手に反応するほど、前後を塞いだ異物から別々の刺激が返ってきた。
身体が応えたのではない。
逃げ場を失った反射が、桜の意思を置き去りにしているだけだった。
絶頂が引くより先に、子宮の奥で白濁が渦を巻く。
ぐちゅっ、びしゃっ。
精液が消えていくのか、身体へ染み込んでいるのか、桜には分からない。分からないまま、熱の塊だけが少しずつ小さくなり、そのぶん別の熱が筋肉と骨の隙間へ広がっていった。
「あっ……あぁっ……また……っ」
二度目。
今度は直腸から始まった。
狭い腸が根元まで埋まったペニスを締め上げ、その痙攣が子宮を揺らし、最後に胃をきつく縮める。
ぐちゅっ、びしゃっ、ぬるっ。
「んぁっ、あっ、あぁっ……!」
手首を引けば金具が擦れた。開かれた両脚の足指が丸まり、踵が台を叩く。
呼吸を取り戻す前に、胃、子宮、直腸がまた違う順番で収縮する。三か所に残った液体が腹の中心でぶつかり合い、押し戻された圧力が膣のバイブへ集まった。
桜の視界が白く霞む。
(もう……どこが……)
三度目の波が来たときには、どこが震えているのかも分からなかった。
腹なのか。
膣なのか。
アナルなのか。
それとも、身体の奥へ広がる正体不明の熱なのか。
脳の裏側へ白い泥を流し込まれたように、視界が濁る。膣のバイブも、アナルを塞ぐ巨大な熱も、自分の身体も、境目がほどけていった。
「んぁあっ……!」
声が途切れた。
白く染まった視界が、そのまま暗闇へ沈んだ。
◇
最初に気づいたのは、音がないことだった。
桜は暗闇の底で、しばらく耳を澄ませた。
あれほど膣の奥で唸っていた振動が止んでいる。
大男の荒い呼吸も、湿った液体の音も聞こえない。
静かだった。
静かすぎて、かえって胸が騒いだ。
桜はゆっくり目を開く。
VIPルームの天井が見えた。背中には拘束台の硬さがある。手首と足首の金具もまだ残っていた。
「……っ」
下腹部へ意識を向ける。
身体を締めつけていた金属の重さがない。膣内を押し広げていた極太バイブも、アナルの輪を開いたままにしていた大男のペニスも消えていた。
首を動かし、台の左右を見る。
大男の姿は、部屋のどこにも見当たらない。
いつ貞操帯を外されたのか。いつ後ろから抜かれたのか。いつ大男が出ていったのか。
意識を失っているあいだの感覚だけが、丸ごと欠けていた。
代わりに、外国人風の男が拘束台の傍らに立っている。
変わらないスーツ姿で、目を開けた桜を穏やかに見下ろしていた。
「目が覚めましたか」
「……何を、したんですか」
「まずは、ご自分で確かめてみてはいかがです?」
男が片方の錠へ鍵を入れる。
かちり。
右手首だけが自由になった。
左手首と両足首は、まだ拘束されたままだ。
「どうですか。処女に戻った、今の気持ちは?」
桜はすぐに答えられなかった。
身体が、軽い。
まず、それが信じられなかった。
膨れ上がっていた腹は元の形へ戻り、皮膚のつっぱりもない。昨夜から朝まで何度も膨らまされた場所とは思えないほど、下腹部は滑らかだった。
桜は自由になった右手で、喉をそっと撫でる。
ひりつきがない。
次に腹へ触れる。
押しても、裂けるような痛みも、重い疲労も返ってこない。膣の奥へ刻み込まれていた鈍い熱も、アナルを押し広げられた痛みも消えていた。
顔や髪にこびりついていたはずの汚れまでない。腕にも脚にも傷はなく、肌は誰にも触れられていないように滑らかだった。
(本当に……?)
目に見える身体だけではない。
身体の内側を流れる魔力も、以前とは違っていた。
これまでは細いところで何度も詰まり、淀み、無理に押し流さなければならなかった。今は意識を向けただけで、胸の中心から手足の先まで一息に巡る。
強い。
鮮やかで、深い。
姉である遠坂凛の気配を、どこか思わせるほどに。
男の言葉を信じる必要はない。
この軽さも、魔力の流れも、桜自身がいま確かめたことだった。
桜は自由になった右手を股間へ伸ばした。
恐る恐る、膣口へ指先を触れさせる。
「……っ」
入口のすぐ内側で、指が薄い抵抗に止められた。
もう一度、力を弱めて触れる。
傷ではない。
閉じている。
昨夜まで何度も男を呑み込み、朝には極太バイブまで埋められていた場所が、指一本も入らない身体へ戻っている。
「ほ、本当に……戻った……んですか……?」
声が震えた。
胸の奥から、熱いものが込み上げる。
失ったと思っていた身体が戻っている。先輩に顔向けできる身体へ戻れた。
男の説明も、目的も、まだ何ひとつ信用できない。
それでも、その安堵だけは疑いたくなかった。
外国人風の男が、残る手首と両足の拘束を順に外す。
かちり。
左手。
かちり、かちり。
両足。
桜は拘束台の縁へ両手をつき、上体を起こした。
眩暈はない。
床へ足を下ろし、ゆっくり立ち上がった。
足に力が入る。ふらつかない。傷も疲労も、あれほど身体へ染みついたはずの感覚さえ消えていた。
一歩、踏み出す。
たぷん。
下腹部の奥で、何かが揺れた。
「……っ?」
桜は立ち止まる。
表面は平らに近い。痛みもない。それなのに、身体の内側だけで、歩みから一拍遅れて重みが移動した。
もう一歩。
たぷっ。
「なに……?」
桜は反射的に下腹部を押さえた。
掌の下に、わずかな膨らみがある。
(お腹の中の精液……残ってる……!? 消えたんじゃ……なかったの……?)
膣へ力を入れてみる。
普通なら、中に残っているものが入口へ下りてくるはずだった。
けれど、膜に閉ざされた膣口からは、一滴も流れない。
代わりに、子宮の奥で粘つく重みがゆっくり傾いた。
たぷん。
歩いた時と同じ、遅れて返る揺れ。
何が残っているのか、理解したくなくても分かった。
「入っ……まだ、お腹の中に……あれが……」
「ええ。よく分かりましたね」
男の声は穏やかなままだった。
「膣と子宮が精液まみれでも、処女は処女です。あなたは清らかですよ」
込み上げていた安堵が、一息で気持ち悪さへ裏返る。
「ふ、ふざけないでください……!」
桜は腹を押さえたまま男を睨んだ。
「戻したなら、全部消してください。今すぐ……!」
「大半は、あなたの身体を戻すために消費されました」
「まだ、残って」
「ええ、十分な量を用意する必要がありましたから」
男は桜の抗議を、予定どおりの反応でも見るように受け流す。
たしかに傷は消えた。
膜も戻った。
魔力も強くなっている。
けれど、それは桜が確認した結果だ。男が語る原因まで正しい証拠にはならない。
「残った分は、そう簡単には消せません」
「いつなら、消せるんですか」
「二日後、きちんと処理してさしあげます」
二日。
桜は唇を噛んだ。
男が次の言葉を続ける前に、問いを重ねる。
「どうして、二日後なの」
「必要な期間です」
理解はできない。納得もできない。しかし、これ以上問い詰めても欲しい答えが得られそうも無かった。
「……姉さんには、いつ会えるんですか」
「それも同じ日です」
「二日後に、姉さんに会わせてくれるんですね」
「ええ」
「……約束してください」
外国人風の男は、穏やかな微笑みを崩さない。
「約束します」
信用できる男ではない。
その言葉が守られる保証もない。
それでも今は、その約束を捨てられなかった。凛へ続く道を握っているのは、目の前の男だけだった。
「それまでは、こちらを使っていただきます」
外国人風の男が差し出したのは、別の貞操帯だった。
桜の肩が強張る。
先ほどまで身体へ固定されていた極太バイブはない。
代わりに、股間を覆う部分で半透明の粘体がゆっくり蠢いていた。
淡く濁った塊の中から、形を持たない指が何本も伸びる。互いへ絡み、ほどけ、また一つへ戻っていく。金属の内側を這うたび、ぬるりと湿った跡を残した。
「……それ、何ですか」
「私の魔術を応用した粘体生物です」
「生きているんですか……?」
「そのようなものです。戻ったばかりの身体を定着させます。排泄の始末も任せられますよ」
短い説明のたび、選べることのように言う。
けれど桜には、男の言葉が本当か確かめる術がない。
断れば、ようやく戻った身体がまた壊れるのか。
子宮に残った精液を、二日後まで抱えたままでいられるのか。
ここで逆らえば、姉へ会う約束まで失うのか。
何も分からない。
分からないことそのものが、男の握る鎖になっていた。
「……最低ですね」
桜は唇を噛む。
嫌だと言うだけでは、凛へ続く機会を守れない。
「……分かりました。つけて、ください」
自分で口にした言葉が、ひどく遠く聞こえた。
外国人風の男が桜の腰へ帯を回す。
金属の内側から、冷たい粘体が肌へ触れた。
ぬるっ……。
「んっ……!」
桜の腰が引ける。
「動くと、ずれますよ」
「勝手に……動いてるのは、そっちでしょう……っ」
粘体の細い一部が陰毛のあいだを分け、クリトリスへ絡みついた。
ぬる、ぬちゅっ。
「ひっ……!」
冷たい柔らかさが、戻ったばかりの小さな突起を包む。締めつけるのではない。輪郭を確かめるように撫で、離れ、また先端を掠めた。
別の部分は外陰部のひだへ沿って広がっていく。
再生した膜を越えずに、閉じた膣口の縁だけを円く撫で始めた。
ぬちゅっ、くちゅっ。
「っん……あ……やめ……」
強くはない。
それが、かえって逃げにくかった。
触れられることへ慣らされていた感覚まで失われ、処女同然に戻った身体には、湿った柔らかさが触れるだけで刺激が鮮明すぎる。
膣口を閉ざす薄い膜は傷つけられていない。
その事実と、身体が自由であることは別だった。
桜が声を噛み殺したところへ、もう一筋が尻の割れ目を伝う。
ぬるり。
「え……待って、後ろは……!」
粘体の先が、閉じたアナルの輪へ触れた。
一度、円を描く。
桜が尻へ力を入れると、柔らかな先端は押し潰され、潰れたまま細く形を変えた。
ぬちゅっ。
「ひゃっ……!」
細い粘体がアナルの輪を押し分け、中へ滑り込む。
昨夜までの裂けるような痛みはない。傷も残っていない。
代わりに、初めて触れられたような敏感さだけが戻っていた。柔らかな先端がアナルの内側を浅く撫でるたび、桜の腰が小さく震える。
「いやっ……後ろまで……入れないで……っ」
「尿も便も、この子が食べてくれます。外す必要はありません」
「そんなこと、頼んでません……!」
かちり、と帯が閉じた。
貞操帯の金属が腰へ密着する。
粘体は止まらない。
クリトリスをゆっくり撫で、閉じた膣口の縁へまとわりつき、アナルの内側を浅く往復する。
前後から異なる湿った刺激が届くたび、桜の呼吸が短くなった。
「これで、二日……ですか」
「ええ。外さずに過ごしてください」
桜は返事をしなかった。
できるのは、男を睨みながら、崩れそうな呼吸を押し殺すことだけだった。
用意されていた、この店を訪れた時に着ていた服へ着替える。
袖へ腕を通し、スカートを腰まで上げる。
見た目だけなら、昨夜ここへ入る前と変わらない。
けれど、布の下には貞操帯がある。
一歩動けば、粘体がクリトリスとアナルを撫でる。胎内では男たちの精液が遅れて揺れる。
たぷん。
「っ……」
桜は声を喉の奥で止めた。
外から見える桜だけが、何事もなかったように戻っていた。
◇
店の扉を開ける。
昼の光が、目に刺さった。
暗い店内に慣れた目を細める。冷たい外気が頬へ触れ、人の声と車の音が一度に戻ってきた。
「桜……!」
聞き慣れた声に、心臓が跳ねる。
桜は反射的に足を止めた。
胎内の精液が、たぷっ、と遅れて揺れる。貞操帯の粘体が動きを追うようにクリトリスを撫でた。
「んっ……」
小さな声を飲み込み、振り返る。
士郎がいた。
頬と口元に傷を残し、息を切らして立っている。服にも汚れがあり、片方の肩を庇うように姿勢がわずかに傾いていた。
桜を見つけた安堵と、信じられないものを見た驚きが、同時に顔へ浮かんでいる。
「先輩……」
もう帰っていると思っていた。
自分を探して、ここへ戻ってきたのだろうか。
それ以上は分からない。頬の傷も、苦しそうな立ち方も、桜がいま目で確かめられることしかなかった。
士郎が一歩近づく。
脇腹が痛むのか、わずかに顔を歪めた。
「桜。まだ、いたのか」
「……はい」
「怪我は?」
士郎の視線が桜の顔から手首、足元へ走る。
「店の中で何をされた」
真っ先に自分の傷ではなく、桜の安全を確かめようとする。
その優しさが、苦しかった。
胎内で、たぷん、と重みが揺れる。
服の下では粘体が濡れたまま、戻ったばかりのクリトリスを撫でていた。アナルの内側の細い先端も、立ち止まった後までゆっくり動き続ける。
こんな身体で先輩の前に立っていることを、知られたくない。
桜は腹へ触れそうになった手を、スカートの脇で握った。
「わたしは……大丈夫です」
嘘ではないように聞こえる声を選ぶ。
傷はない。
疲労も消えている。
だからこそ、見えない場所に残ったものを隠せてしまう。
士郎は納得していなかった。
「大丈夫な顔じゃない。誰に——」
「それより、姉さんが監禁されています」
士郎の表情が変わる。
自分の疑問を後回しにして、一歩、店の方へ踏み出した。
「どこだ。今から行く」
「待ってください」
「待てない。凛が捕まってるんだろ」
「場所は、まだ分かりません」
桜は士郎から目を逸らさなかった。
「でも、二日後に会わせるって言われました」
「そいつの言葉を信じるのか?」
「信じてません」
すぐに答えた。
男の微笑みも、説明も、約束も、信じてはいない。
それでも、その男だけが今、凛へ続く道を握っている。
「だったら、なおさら——」
「だからこそです」
桜は士郎の言葉を遮った。
「今ここで動いて、会える機会をなくしたくないんです」
子宮の奥で重みが傾く。
粘体がクリトリスを掠め、声が震えそうになる。桜は奥歯を噛み、息を整えてから続けた。
「二日だけ、待ってください。お願いです、先輩」
士郎は答えなかった。
桜の顔を見る。
店の扉を見る。
もう一度、桜を見る。
今すぐ中へ踏み込むべきか、桜の得た機会を守るべきか。迷っているのが分かった。
「……分かった」
絞り出すような声だった。
「二日後に凛に会えるんだな」
「はい」
「その前に何かあったら、今度は一人で行くな。必ず俺に言え」
桜は頷いた。
言えないことを、もう身体の中に抱えている。
二人は並んで歩き始めた。
桜の足取りは確かだった。
傷も疲労もない。
見た目には、誰にも汚されていない清らかな身体。
その処女膜の奥で、男たちの精液が揺れている。
たぷん。
貞操帯の内側では、粘体が絶えず蠢いている。
クリトリスを撫で、閉じた膣口へまとわりつき、アナルの内側を浅く往復する。
「……桜?」
士郎の声に、桜は顔だけを向けた。
「なんでもありません、先輩」
微笑む形に唇を整える。
隣を歩く先輩にだけは、悟られないように。
桜は一歩ごとに下腹部へ返ってくる重みと粘体の動きを、普通の歩幅の中へ隠し続けた。