※この作品はR-18です。

濁った宝石   作:湖畔R

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第23話 清らかな残留

 三つの経路が満ちたまま、変化は止まらなかった。

 

 胃の底。

 

 子宮の奥。

 

 直腸の壁。

 

 男たちの精液で熱く、重くなった三か所を、もっと鋭い何かが一斉に走り抜ける。

 

 びしゃっ、ぐちゅっ——。

 

「ん……あっ……なに、これ……っ」

 

 桜の腹の内側で、液体が跳ねた。

 

 膣内では極太バイブが唸り続けている。アナルには大男のペニスが根元まで埋まり、射精を終えた後も直腸の出口を塞いだままだった。

 

 手首も足首も、拘束台から動かせない。

 

 逃げられない身体の中だけで、異変が加速していく。

 

 胃がきつく縮む。

 

「うっ……!」

 

 飲み込まされた精液が持ち上がり、喉元へ熱いものがせり上がった。吐き出すより早く、子宮が引き攣る。

 

 びしゃびしゃっ……たぷんっ。

 

「ひぁっ!?」

 

 子宮の奥で白濁が跳ね、その収縮が薄い肉壁を越えて直腸へ伝わった。

 

 大男の太いペニスを腸壁が締めつける。そのたび、奥に溜め込まれた精液が逃げ場を探すように押し返され、腹のさらに深いところへ圧力が戻ってきた。

 

 重い。

 

 熱い。

 

 苦しい。

 

 それなのに、三か所を巡る収縮の波が膣内のバイブを巻き込んだ瞬間、痛みとは違う刺激が背骨を駆け上がった。

 

「や……だめ……っ、それは……!」

 

 桜は腰を押さえようとした。

 

 手首の金具が鳴るだけだった。

 

 次の収縮が子宮口を絞り、極太バイブへ内側から吸いつく。振動が狭い一点へ集められ、腹から胸、首筋へ一気に突き抜けた。

 

「ひぁっ……! や、だめ……いっちゃ……っ」

 

 腰が拘束台の上で跳ねる。

 

 自分から動いたのではない。腹の奥で起きた痙攣に、骨盤ごと持ち上げられたのだ。

 

 一度目の絶頂が、息を奪った。

 

「あ……ぁ……っ」

 

 膣がバイブを締める。直腸も大男のペニスへ吸いつく。身体が勝手に反応するほど、前後を塞いだ異物から別々の刺激が返ってきた。

 

 身体が応えたのではない。

 

 逃げ場を失った反射が、桜の意思を置き去りにしているだけだった。

 

 絶頂が引くより先に、子宮の奥で白濁が渦を巻く。

 

 ぐちゅっ、びしゃっ。

 

 精液が消えていくのか、身体へ染み込んでいるのか、桜には分からない。分からないまま、熱の塊だけが少しずつ小さくなり、そのぶん別の熱が筋肉と骨の隙間へ広がっていった。

 

「あっ……あぁっ……また……っ」

 

 二度目。

 

 今度は直腸から始まった。

 

 狭い腸が根元まで埋まったペニスを締め上げ、その痙攣が子宮を揺らし、最後に胃をきつく縮める。

 

 ぐちゅっ、びしゃっ、ぬるっ。

 

「んぁっ、あっ、あぁっ……!」

 

 手首を引けば金具が擦れた。開かれた両脚の足指が丸まり、踵が台を叩く。

 

 呼吸を取り戻す前に、胃、子宮、直腸がまた違う順番で収縮する。三か所に残った液体が腹の中心でぶつかり合い、押し戻された圧力が膣のバイブへ集まった。

 

 桜の視界が白く霞む。

 

(もう……どこが……)

 

 三度目の波が来たときには、どこが震えているのかも分からなかった。

 

 腹なのか。

 

 膣なのか。

 

 アナルなのか。

 

 それとも、身体の奥へ広がる正体不明の熱なのか。

 

 脳の裏側へ白い泥を流し込まれたように、視界が濁る。膣のバイブも、アナルを塞ぐ巨大な熱も、自分の身体も、境目がほどけていった。

 

「んぁあっ……!」

 

 声が途切れた。

 

 白く染まった視界が、そのまま暗闇へ沈んだ。

 

   ◇

 

 最初に気づいたのは、音がないことだった。

 

 桜は暗闇の底で、しばらく耳を澄ませた。

 

 あれほど膣の奥で唸っていた振動が止んでいる。

 

 大男の荒い呼吸も、湿った液体の音も聞こえない。

 

 静かだった。

 

 静かすぎて、かえって胸が騒いだ。

 

 桜はゆっくり目を開く。

 

 VIPルームの天井が見えた。背中には拘束台の硬さがある。手首と足首の金具もまだ残っていた。

 

「……っ」

 

 下腹部へ意識を向ける。

 

 身体を締めつけていた金属の重さがない。膣内を押し広げていた極太バイブも、アナルの輪を開いたままにしていた大男のペニスも消えていた。

 

 首を動かし、台の左右を見る。

 

 大男の姿は、部屋のどこにも見当たらない。

 

 いつ貞操帯を外されたのか。いつ後ろから抜かれたのか。いつ大男が出ていったのか。

 

 意識を失っているあいだの感覚だけが、丸ごと欠けていた。

 

 代わりに、外国人風の男が拘束台の傍らに立っている。

 

 変わらないスーツ姿で、目を開けた桜を穏やかに見下ろしていた。

 

「目が覚めましたか」

 

「……何を、したんですか」

 

「まずは、ご自分で確かめてみてはいかがです?」

 

 男が片方の錠へ鍵を入れる。

 

 かちり。

 

 右手首だけが自由になった。

 

 左手首と両足首は、まだ拘束されたままだ。

 

「どうですか。処女に戻った、今の気持ちは?」

 

 桜はすぐに答えられなかった。

 

 身体が、軽い。

 

 まず、それが信じられなかった。

 

 膨れ上がっていた腹は元の形へ戻り、皮膚のつっぱりもない。昨夜から朝まで何度も膨らまされた場所とは思えないほど、下腹部は滑らかだった。

 

 桜は自由になった右手で、喉をそっと撫でる。

 

 ひりつきがない。

 

 次に腹へ触れる。

 

 押しても、裂けるような痛みも、重い疲労も返ってこない。膣の奥へ刻み込まれていた鈍い熱も、アナルを押し広げられた痛みも消えていた。

 

 顔や髪にこびりついていたはずの汚れまでない。腕にも脚にも傷はなく、肌は誰にも触れられていないように滑らかだった。

 

(本当に……?)

 

 目に見える身体だけではない。

 

 身体の内側を流れる魔力も、以前とは違っていた。

 

 これまでは細いところで何度も詰まり、淀み、無理に押し流さなければならなかった。今は意識を向けただけで、胸の中心から手足の先まで一息に巡る。

 

 強い。

 

 鮮やかで、深い。

 

 姉である遠坂凛の気配を、どこか思わせるほどに。

 

 男の言葉を信じる必要はない。

 

 この軽さも、魔力の流れも、桜自身がいま確かめたことだった。

 

 桜は自由になった右手を股間へ伸ばした。

 

 恐る恐る、膣口へ指先を触れさせる。

 

「……っ」

 

 入口のすぐ内側で、指が薄い抵抗に止められた。

 

 もう一度、力を弱めて触れる。

 

 傷ではない。

 

 閉じている。

 

 昨夜まで何度も男を呑み込み、朝には極太バイブまで埋められていた場所が、指一本も入らない身体へ戻っている。

 

「ほ、本当に……戻った……んですか……?」

 

 声が震えた。

 

 胸の奥から、熱いものが込み上げる。

 

 失ったと思っていた身体が戻っている。先輩に顔向けできる身体へ戻れた。

 

 男の説明も、目的も、まだ何ひとつ信用できない。

 

 それでも、その安堵だけは疑いたくなかった。

 

 外国人風の男が、残る手首と両足の拘束を順に外す。

 

 かちり。

 

 左手。

 

 かちり、かちり。

 

 両足。

 

 桜は拘束台の縁へ両手をつき、上体を起こした。

 

 眩暈はない。

 

 床へ足を下ろし、ゆっくり立ち上がった。

 

 足に力が入る。ふらつかない。傷も疲労も、あれほど身体へ染みついたはずの感覚さえ消えていた。

 

 一歩、踏み出す。

 

 たぷん。

 

 下腹部の奥で、何かが揺れた。

 

「……っ?」

 

 桜は立ち止まる。

 

 表面は平らに近い。痛みもない。それなのに、身体の内側だけで、歩みから一拍遅れて重みが移動した。

 

 もう一歩。

 

 たぷっ。

 

「なに……?」

 

 桜は反射的に下腹部を押さえた。

 

 掌の下に、わずかな膨らみがある。

 

(お腹の中の精液……残ってる……!? 消えたんじゃ……なかったの……?)

 

 膣へ力を入れてみる。

 

 普通なら、中に残っているものが入口へ下りてくるはずだった。

 

 けれど、膜に閉ざされた膣口からは、一滴も流れない。

 

 代わりに、子宮の奥で粘つく重みがゆっくり傾いた。

 

 たぷん。

 

 歩いた時と同じ、遅れて返る揺れ。

 

 何が残っているのか、理解したくなくても分かった。

 

「入っ……まだ、お腹の中に……あれが……」

 

「ええ。よく分かりましたね」

 

 男の声は穏やかなままだった。

 

「膣と子宮が精液まみれでも、処女は処女です。あなたは清らかですよ」

 

 込み上げていた安堵が、一息で気持ち悪さへ裏返る。

 

「ふ、ふざけないでください……!」

 

 桜は腹を押さえたまま男を睨んだ。

 

「戻したなら、全部消してください。今すぐ……!」

 

「大半は、あなたの身体を戻すために消費されました」

 

「まだ、残って」

 

「ええ、十分な量を用意する必要がありましたから」

 

 男は桜の抗議を、予定どおりの反応でも見るように受け流す。

 

 たしかに傷は消えた。

 

 膜も戻った。

 

 魔力も強くなっている。

 

 けれど、それは桜が確認した結果だ。男が語る原因まで正しい証拠にはならない。

 

「残った分は、そう簡単には消せません」

 

「いつなら、消せるんですか」

 

「二日後、きちんと処理してさしあげます」

 

 二日。

 

 桜は唇を噛んだ。

 

 男が次の言葉を続ける前に、問いを重ねる。

 

「どうして、二日後なの」

 

「必要な期間です」

 

 理解はできない。納得もできない。しかし、これ以上問い詰めても欲しい答えが得られそうも無かった。

 

「……姉さんには、いつ会えるんですか」

 

「それも同じ日です」

 

「二日後に、姉さんに会わせてくれるんですね」

 

「ええ」

 

「……約束してください」

 

 外国人風の男は、穏やかな微笑みを崩さない。

 

「約束します」

 

 信用できる男ではない。

 

 その言葉が守られる保証もない。

 

 それでも今は、その約束を捨てられなかった。凛へ続く道を握っているのは、目の前の男だけだった。

 

「それまでは、こちらを使っていただきます」

 

 外国人風の男が差し出したのは、別の貞操帯だった。

 

 桜の肩が強張る。

 

 先ほどまで身体へ固定されていた極太バイブはない。

 

 代わりに、股間を覆う部分で半透明の粘体がゆっくり蠢いていた。

 

 淡く濁った塊の中から、形を持たない指が何本も伸びる。互いへ絡み、ほどけ、また一つへ戻っていく。金属の内側を這うたび、ぬるりと湿った跡を残した。

 

「……それ、何ですか」

 

「私の魔術を応用した粘体生物です」

 

「生きているんですか……?」

 

「そのようなものです。戻ったばかりの身体を定着させます。排泄の始末も任せられますよ」

 

 短い説明のたび、選べることのように言う。

 

 けれど桜には、男の言葉が本当か確かめる術がない。

 

 断れば、ようやく戻った身体がまた壊れるのか。

 

 子宮に残った精液を、二日後まで抱えたままでいられるのか。

 

 ここで逆らえば、姉へ会う約束まで失うのか。

 

 何も分からない。

 

 分からないことそのものが、男の握る鎖になっていた。

 

「……最低ですね」

 

 桜は唇を噛む。

 

 嫌だと言うだけでは、凛へ続く機会を守れない。

 

「……分かりました。つけて、ください」

 

 自分で口にした言葉が、ひどく遠く聞こえた。

 

 外国人風の男が桜の腰へ帯を回す。

 

 金属の内側から、冷たい粘体が肌へ触れた。

 

 ぬるっ……。

 

「んっ……!」

 

 桜の腰が引ける。

 

「動くと、ずれますよ」

 

「勝手に……動いてるのは、そっちでしょう……っ」

 

 粘体の細い一部が陰毛のあいだを分け、クリトリスへ絡みついた。

 

 ぬる、ぬちゅっ。

 

「ひっ……!」

 

 冷たい柔らかさが、戻ったばかりの小さな突起を包む。締めつけるのではない。輪郭を確かめるように撫で、離れ、また先端を掠めた。

 

 別の部分は外陰部のひだへ沿って広がっていく。

 

 再生した膜を越えずに、閉じた膣口の縁だけを円く撫で始めた。

 

 ぬちゅっ、くちゅっ。

 

「っん……あ……やめ……」

 

 強くはない。

 

 それが、かえって逃げにくかった。

 

 触れられることへ慣らされていた感覚まで失われ、処女同然に戻った身体には、湿った柔らかさが触れるだけで刺激が鮮明すぎる。

 

 膣口を閉ざす薄い膜は傷つけられていない。

 

 その事実と、身体が自由であることは別だった。

 

 桜が声を噛み殺したところへ、もう一筋が尻の割れ目を伝う。

 

 ぬるり。

 

「え……待って、後ろは……!」

 

 粘体の先が、閉じたアナルの輪へ触れた。

 

 一度、円を描く。

 

 桜が尻へ力を入れると、柔らかな先端は押し潰され、潰れたまま細く形を変えた。

 

 ぬちゅっ。

 

「ひゃっ……!」

 

 細い粘体がアナルの輪を押し分け、中へ滑り込む。

 

 昨夜までの裂けるような痛みはない。傷も残っていない。

 

 代わりに、初めて触れられたような敏感さだけが戻っていた。柔らかな先端がアナルの内側を浅く撫でるたび、桜の腰が小さく震える。

 

「いやっ……後ろまで……入れないで……っ」

 

「尿も便も、この子が食べてくれます。外す必要はありません」

 

「そんなこと、頼んでません……!」

 

 かちり、と帯が閉じた。

 

 貞操帯の金属が腰へ密着する。

 

 粘体は止まらない。

 

 クリトリスをゆっくり撫で、閉じた膣口の縁へまとわりつき、アナルの内側を浅く往復する。

 

 前後から異なる湿った刺激が届くたび、桜の呼吸が短くなった。

 

「これで、二日……ですか」

 

「ええ。外さずに過ごしてください」

 

 桜は返事をしなかった。

 

 できるのは、男を睨みながら、崩れそうな呼吸を押し殺すことだけだった。

 

 用意されていた、この店を訪れた時に着ていた服へ着替える。

 

 袖へ腕を通し、スカートを腰まで上げる。

 

 見た目だけなら、昨夜ここへ入る前と変わらない。

 

 けれど、布の下には貞操帯がある。

 

 一歩動けば、粘体がクリトリスとアナルを撫でる。胎内では男たちの精液が遅れて揺れる。

 

 たぷん。

 

「っ……」

 

 桜は声を喉の奥で止めた。

 

 外から見える桜だけが、何事もなかったように戻っていた。

 

   ◇

 

 店の扉を開ける。

 

 昼の光が、目に刺さった。

 

 暗い店内に慣れた目を細める。冷たい外気が頬へ触れ、人の声と車の音が一度に戻ってきた。

 

「桜……!」

 

 聞き慣れた声に、心臓が跳ねる。

 

 桜は反射的に足を止めた。

 

 胎内の精液が、たぷっ、と遅れて揺れる。貞操帯の粘体が動きを追うようにクリトリスを撫でた。

 

「んっ……」

 

 小さな声を飲み込み、振り返る。

 

 士郎がいた。

 

 頬と口元に傷を残し、息を切らして立っている。服にも汚れがあり、片方の肩を庇うように姿勢がわずかに傾いていた。

 

 桜を見つけた安堵と、信じられないものを見た驚きが、同時に顔へ浮かんでいる。

 

「先輩……」

 

 もう帰っていると思っていた。

 

 自分を探して、ここへ戻ってきたのだろうか。

 

 それ以上は分からない。頬の傷も、苦しそうな立ち方も、桜がいま目で確かめられることしかなかった。

 

 士郎が一歩近づく。

 

 脇腹が痛むのか、わずかに顔を歪めた。

 

「桜。まだ、いたのか」

 

「……はい」

 

「怪我は?」

 

 士郎の視線が桜の顔から手首、足元へ走る。

 

「店の中で何をされた」

 

 真っ先に自分の傷ではなく、桜の安全を確かめようとする。

 

 その優しさが、苦しかった。

 

 胎内で、たぷん、と重みが揺れる。

 

 服の下では粘体が濡れたまま、戻ったばかりのクリトリスを撫でていた。アナルの内側の細い先端も、立ち止まった後までゆっくり動き続ける。

 

 こんな身体で先輩の前に立っていることを、知られたくない。

 

 桜は腹へ触れそうになった手を、スカートの脇で握った。

 

「わたしは……大丈夫です」

 

 嘘ではないように聞こえる声を選ぶ。

 

 傷はない。

 

 疲労も消えている。

 

 だからこそ、見えない場所に残ったものを隠せてしまう。

 

 士郎は納得していなかった。

 

「大丈夫な顔じゃない。誰に——」

 

「それより、姉さんが監禁されています」

 

 士郎の表情が変わる。

 

 自分の疑問を後回しにして、一歩、店の方へ踏み出した。

 

「どこだ。今から行く」

 

「待ってください」

 

「待てない。凛が捕まってるんだろ」

 

「場所は、まだ分かりません」

 

 桜は士郎から目を逸らさなかった。

 

「でも、二日後に会わせるって言われました」

 

「そいつの言葉を信じるのか?」

 

「信じてません」

 

 すぐに答えた。

 

 男の微笑みも、説明も、約束も、信じてはいない。

 

 それでも、その男だけが今、凛へ続く道を握っている。

 

「だったら、なおさら——」

 

「だからこそです」

 

 桜は士郎の言葉を遮った。

 

「今ここで動いて、会える機会をなくしたくないんです」

 

 子宮の奥で重みが傾く。

 

 粘体がクリトリスを掠め、声が震えそうになる。桜は奥歯を噛み、息を整えてから続けた。

 

「二日だけ、待ってください。お願いです、先輩」

 

 士郎は答えなかった。

 

 桜の顔を見る。

 

 店の扉を見る。

 

 もう一度、桜を見る。

 

 今すぐ中へ踏み込むべきか、桜の得た機会を守るべきか。迷っているのが分かった。

 

「……分かった」

 

 絞り出すような声だった。

 

「二日後に凛に会えるんだな」

 

「はい」

 

「その前に何かあったら、今度は一人で行くな。必ず俺に言え」

 

 桜は頷いた。

 

 言えないことを、もう身体の中に抱えている。

 

 二人は並んで歩き始めた。

 

 桜の足取りは確かだった。

 

 傷も疲労もない。

 

 見た目には、誰にも汚されていない清らかな身体。

 

 その処女膜の奥で、男たちの精液が揺れている。

 

 たぷん。

 

 貞操帯の内側では、粘体が絶えず蠢いている。

 

 クリトリスを撫で、閉じた膣口へまとわりつき、アナルの内側を浅く往復する。

 

「……桜?」

 

 士郎の声に、桜は顔だけを向けた。

 

「なんでもありません、先輩」

 

 微笑む形に唇を整える。

 

 隣を歩く先輩にだけは、悟られないように。

 

 桜は一歩ごとに下腹部へ返ってくる重みと粘体の動きを、普通の歩幅の中へ隠し続けた。

 

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