※この作品はR-18です。

濁った宝石   作:湖畔R

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第29話 矛盾を孕んだ生命力

「では、はじめましょうか」

 

 ジェイクが告げると、姉妹の間に横たわる粘体が一度だけ大きく脈打った。

 

 桜の腰から凛の腰へ渡された半透明の肉。その内側には、凛の股間から掬い取った大量の精液が、白く濁った帯となって留められている。

 

 それが、桜へ近づいた。

 

「……何を、するんですか」

 

 答えの代わりに、膣口を覆っていた粘体の一部が細く盛り上がる。

 

 臀部を包む部分は動かない。代わりに、盛り上がった先端が完全に閉じた処女膜の一点へ押し当てられた。

 

 桜は反射的に腰を捩った。

 

 両手首と両足首は台へ固定されたままだ。尻を逃がそうとしても、二台の端で凛の臀部と触れ合い、粘体が生じた隙間を埋めてしまう。

 

 押し当てられた一点だけが、次第に硬くなった。

 

 ぬち、ぬち、と湿った音がする。

 

 膜を一度に破るのではなく、同じ場所を丹念に押している。細い先端が触れるたび、針で突かれるような痛みが下腹の奥まで走った。

 

「や……そこは……」

 

「ジェイク、止めなさい!」

 

 凛が腕を引く。革帯と首輪の鎖が同時に鳴った。

 

「桜の身体に何をするつもり?」

 

「必要な通り道を作るだけです」

 

「それを止めろって言ってるのよ!」

 

 桜が息を止めた瞬間、圧力が深く沈んだ。

 

 ぷつり。

 

 熱い痛みが一点を貫く。

 

「あっ……!」

 

「桜っ!」

 

 膜全体が裂けた感覚はない。

 

 針よりは太く、指よりはるかに細い何かが、小さな穴へぴたりと嵌まっている。穴を開けた粘体自身が栓となり、胎内に閉じ込められていた精液は一滴も漏れなかった。

 

 ジェイクは桜の反応を見届けてから、静かに言う。

 

「大丈夫です。少しだけ処女膜に穴を開けましたが、ほんの小さな穴です。あなたはまだ処女ですよ」

 

「それの……どこが、大丈夫なんですか……」

 

 桜の声は痛みに震えた。

 

 隣で鎖がかすかに鳴る。

 

 凛はジェイクではなく、桜を見ていた。

 

 驚きより先に、理解できないものを測るような目だった。桜が「まだ処女」という言葉を否定しないことまで確かめ、ようやく唇が動く。

 

「処女……? 桜、いったい……」

 

 桜は答えられなかった。

 

 身体を作り直されたことも、閉じた処女膜を自分で確かめたことも、凛を助けるために受け入れた取引の結果だ。けれど、それを今、どこから話せばよいのか分からない。

 

 凛は返事を迫らなかった。

 

 視線だけが桜の下腹へ落ち、すぐにジェイクへ戻る。

 

「再構成の結果です」

 

 ジェイクが必要な部分だけを答えた。

 

「失われていた身体を、生命力で以前の形へ戻しました」

 

 凛の眉が寄る。

 

 声は出さない。ただ、革帯に沿わせていた指先が止まり、桜の顔と下腹の間を一度だけ往復した。

 

 処女膜の小穴に嵌まった粘体が、さらに内側へ伸びる。

 

 ずる、と狭い膣壁を擦り、先端が子宮口へ触れた。

 

「ん……っ!」

 

 穴の周囲は粘体で塞がれたままなのに、内部だけが太さを変えていく。柔らかい異物が膣を押し広げ、子宮の入口へ吸いついた。

 

 その動きに合わせ、クリトリスを包む粘体までじっとりと吸いつく。

 

「何を……?」

 

 桜の問いへ、ジェイクは指を曲げることで答えた。

 

 じゅるっ。

 

 腹の奥を、内側から引かれた。

 

「あ、ぁ……っ!」

 

 じゅっ、じゅるる……。

 

 粘体が収縮するたび、胎内に残っていた白濁が吸い上げられていく。

 

 金曜から消えなかった重みが、少しずつ薄くなる。

 

 抜かれてしまうことを惜しいとは思わない。身体の中からなくなるのなら、そのまますべて取り去ってほしい。

 

 けれど、楽にはならなかった。

 

 中身を失う子宮が、じゅるっ、じゅるるっ、という吸引のたびに強く縮む。その収縮が粘体の先端へ絡みつき、膣の奥を引き攣らせ、小穴の縁を擦った。

 

「ひっ……ん、ぅ……! そこ、引かないで……っ」

 

 重みが減る安堵と、身体の芯を吸われる刺激が同時に押し寄せる。

 

 桜は声を堪えようと唇を噛んだ。だが腹の内側は、自分の意思と関係なく、続く吸引へ痙攣を返す。

 

「桜、息をして」

 

 凛の声が届いた。

 

「姉さん……」

 

「吸って、吐きなさい。こいつの動きじゃなく、私の声に合わせて」

 

 桜は短く鼻から息を吸った。

 

 じゅるるっ。

 

「あっ……!」

 

「吐いて」

 

「は、ぁ……っ」

 

 呼吸は吸引のたびに崩された。それでも、姉の声を追うことで意識を手放さずにいられる。

 

 桜が横目を向けると、凛は台へ拘束されたまま粘体の中を見ていた。

 

 桜から吸い出された乳白色の精液が、姉妹を繋ぐ太い流れへは混ざらず、桜側の小さな膨らみへ溜まっていく。その動きを追い、次にどこへ運ばれるのか見極めようとしている。

 

「何を……してるの」

 

 凛の問いは短かった。

 

「桜さんの再構成に使った精液です。混ざる前に分けておきます」

 

 じゅるるっ、と最後の一塊が抜かれた。

 

 桜の腹から、慣れきっていた重さが消える。

 

 空になった子宮が、きゅっと縮んだ。粘体はまだ奥へ差し込まれたまま、その収縮を受け止めて小さく脈打っている。

 

「はぁ……っ、は……」

 

「桜、大丈夫?」

 

「……はい。軽く、なりました」

 

 答えた声は、自分でも信じていないほど弱かった。

 

 呼吸を整える暇はない。

 

 姉妹を繋ぐ粘体の中央で、別の白濁が動き始める。

 

 桜の側へ。

 

 凛から流れ出たものを保持していた濁った帯が、太い塊へまとまり、半透明の肉の中をゆっくり進んでくる。

 

 一度に通りきらず、粘体の橋を膨らませながら近づいた。混ざりきらない白と黄ばんだ濁り。その中に、姉が耐えた時間まで詰め込まれているようだった。

 

「やめて……それを、桜へ入れないで!」

 

 凛が腰を引こうとする。

 

 粘体が臀部の隙間を埋め、逃げる方向を塞いだ。

 

 凛の腹部が粘体の収縮に合わせて沈む。大きく膨らんだ下腹が内側から絞られ、凛の呼吸が途切れた。唇を噛み、漏れかけた声を飲み込む。革帯を探っていた指だけが強く曲がった。

 

 白濁の先頭が、桜の子宮口へ届く。

 

 粘体の先端が奥へ密着した。

 

 びゅるっ。

 

「んぎ……っ!」

 

「桜っ!」

 

 熱い塊が子宮へ叩き込まれた。

 

 空になったばかりの胎内が、一度で押し広げられる。粘りの強い精液が奥へ貼りつき、次の一射がその上へ重なった。

 

 びゅるるっ、びゅっ。

 

「あっ……ぁ、や……! お腹、いっぱいに……っ!」

 

 膣口は粘体で塞がれている。

 

 逃げる場所のない白濁が、すべて桜の子宮へ入ってくる。

 

 温度も重さも、匂いの錯覚さえ、さっきまで自分の胎内にあった精液とは違った。姉の身体から運ばれてきたという事実が、腹の内側へ直接刻まれる。

 

 びゅるるるっ――。

 

 流れが太くなった。

 

「ひぁあっ……!」

 

 桜の腰が台の上で跳ねる。拘束された脚は開いたまま、腹だけが注入の圧に押し上げられた。子宮へ溜まるたび、下腹が少しずつ丸みを帯びる。

 

 苦しい。

 

 吐き気がするほど嫌なのに、膣壁は流れ込む粘りに擦られ、クリトリスを覆う粘体は奔流と同じ周期で震えた。

 

「んっ……ああっ……! いや、身体まで……っ」

 

 勝手に反応する。

 

 それを、すぐ隣の凛に聞かれている。

 

 桜は顔を背けた。けれど目を閉じれば、粘体の中を移動してきた濁りがもっと鮮明に浮かぶ。

 

「桜、謝らなくていい」

 

 凛の息も乱れていた。

 

「声が出ても、何も変わらない。こいつらの言う意味にはならないから」

 

「……姉さん」

 

 びゅっ、びゅる……。

 

 勢いが弱まり、最後の粘つく精液が奥へ押し込まれた。

 

 桜の腹には、以前と違う重みが残った。凛ほど大きくはない。それでも平らだった下腹は、はっきり内側から張っている。

 

 姉の腹部はわずかに低くなっていた。

 

 凛は息を吐き、桜の腹を見たまま動かない。

 

 その沈黙を破るように、桜側へ分けてあった乳白色の塊が揺れた。

 

 今度は、凛の方向へ進む。

 

「姉さん……」

 

 桜が名を呼ぶと、凛は一度だけ目を上げた。

 

「……平気よ」

 

 粘体の動きを見つめたまま、凛は顎を引く。開いた脚を固定する革帯が軋んだが、体勢は変わらない。

 

「平気なわけ、ないです」

 

「知ってる。だから見てなさい。何をされるか、二人とも覚えておくの」

 

 桜は目を逸らしかけ、堪えた。

 

 凛の膣口へ粘体が沈んだ。

 

 ぬぷ、と濡れた音がする。

 

 次いで、桜から抜かれた精液が押し込まれた。

 

 ずびゅっ。

 

 凛の背が弓なりに反る。

 

「――っ、ぁ……!」

 

 首輪の鎖が短く鳴った。

 

 ずびゅるるっ、ずるっ。

 

 凛は叫びを飲み込み、目を閉じ、奥歯を噛んで腹部へ走る波を耐えている。

 

 桜にとって、自分の中にあったものが、今は姉の子宮へ注ぎ込まれている光景は、目を逸らしても消えなかった。

 

 凛の腹が小さく震える。

 

 粘体は注入と同時に膣壁を擦り、流れを一滴も戻さない。凛の喉から押し殺した声が細く漏れた。

 

「ん……ぅ、く……っ」

 

「姉さん、息を……」

 

「分かって、る……!」

 

 強い返事の直後、凛の声が震えた。

 

 桜は何も言えなくなる。

 

 励ます言葉も謝罪も、いま姉の中へ入っていくものを変えはしない。

 

 ずるる……ずびゅっ。

 

 最後の塊が運び終えられた。

 

 姉妹を繋ぐ粘体から、目立っていた二つの白濁が消える。

 

 残ったのは、互いの子宮へ移された重みと、荒い呼吸だけだった。

 

「交換は完了です」

 

 ジェイクの声は静かだった。

 

 大きさの違う腹を膨らませたまま、姉妹は拘束台の上で息を整えようとする。

 

 ジェイクは最後の仕上げとでもいうように、指先へ桃色の光を灯した。

 

「古来、精液は薬や呪術の材料として扱われてきました。土地も時代も違いますが、人は長く、精液を生命と豊穣へ結びつけてきた」

 

「歴史の講義なら、場所を選びなさい」

 

 凛が掠れた声で切り捨てる。

 

「要点だけ話して」

 

「では、簡潔に。先ほども言いましたが、精液は生命力の塊です」

 

 桃色の光が、ジェイクの指先でゆっくり明滅した。

 

「男性から放出されたものか、非処女の女性の内に留められたものか。普通なら、そこには必ず由来があります」

 

 ジェイクは姉妹の下腹を順に見る。

 

「では、そのどちらにも属さない生命力を作ることができれば? それを優秀な魔術回路へ定着させることができれば?」

 

 声に、わずかな熱が混じる。

 

「遠坂さんの中にあった、多数の男性に由来する生命力は、処女である桜さんの中へ。そして、桜さんを再構成する過程で性質を変え、由来を失った生命力は、遠坂さんの中へ」

 

 桜の腹の中で、押し込まれた精液が重く沈んでいる。

 

 凛の子宮にも、自分から抜かれたものが残っている。

 

 混ざり合ったのではない。矛盾したまま、互いの身体へ置かれたのだ。

 

 ジェイクが両手を軽く広げる。

 

「さあ、世界よ、見せてください。この矛盾を孕んだ生命力を――どう抑止する」

 

 言い終わるのと同時に、姉妹の魔術回路へ直接介入した。

 

 強制起動。

 

 桜は反射的に回路を閉じた。

 

 間に合わない。

 

 下腹から背骨、胸、肩、腕、指先へ。普段は意思に従うはずの回路が、一斉に内側から叩き起こされた。

 

「ああっ……!」

 

 隣で凛の身体も跳ねる。首輪の鎖と革帯が、ほとんど同時に鳴った。

 

「桜、回路を閉じなさい!」

 

「閉じています……でも、勝手に……っ!」

 

「くっ……私も、閉じられない……!」

 

 胎内の精液が熱を持つ。

 

 そこに含まれる生命力が細い糸となり、子宮から引き上げられていった。腹の奥を擦りながら回路へ流れ込み、桜自身の魔力と触れる。

 

 異なるものが、混ざらないまま重なる。

 

 生命力が回路の奔流へ巻き込まれ、強引に魔力へ変換されていく。

 

「んっ……う、ぁ……!」

 

 桃色の光が、姉妹の下半身を橋渡しする粘体へ一気に流れ込んだ。

 

 粘体が眩しく輝く。

 

 内部の光は桜の子宮から凛の子宮へ、凛の子宮から桜の子宮へ、何度も激しく往復した。

 

 流れが折り返すたび、処女膜の小穴へ嵌まる先端と、クリトリスを覆う粘体が同時に脈打つ。

 

「あっ、ぁあ……っ!」

 

 腹の中が熱い。

 

 重い。

 

 押し込まれた精液が、子宮の内側で暴れているように疼く。

 

 凛も歯を食いしばっていた。桃色に浮かび上がった回路を閉じようと、拘束された腕に力を込めている。

 

「こんな……ものに……!」

 

 変換された二つの魔力が、粘体を媒体に循環する。

 

 往復するたびに光は強まり、結界の中を桃色に染め上げた。

 

 姉妹の呼吸が重なる。

 

 光が、頂点に達した。

 

 ――何も起きなかった。

 

 輝きは、あっけなく消えた。

 

 粘体はただの生温かい膜へ戻り、強制的に開かれていた回路も、急速に静まり返った。

 

 世界は、応えなかった。

 

 そんなものは問いですらないと、そう裁定が下ったかのように。

 

 静寂だけが結界の中に残る。

 

 桜の身体が台へ沈んだ。

 

 腹はもうほとんど膨らんでいない。子宮の異物感も、二人を繋いでいた粘体も消えている。

 

 しかし、両手足の革帯も、凛の首輪もそのままだ。

 

「桜……聞こえる?」

 

「はい……姉さんも?」

 

「……平気よ。少なくとも、あいつの狙いどおりじゃない」

 

 凛の返事を聞いた直後、ジェイクが静寂を破った。

 

「生命力から魔力への変換は、成功しています」

 

 その声に、落胆はなかった。

 

「ですが、ただ変換しただけです。世界に穴を穿つには足りない」

 

 凛が目を細める。

 

「失敗でしょう。拘束を解きなさい」

 

「ええ。今回の試みは失敗です。ですから、不足しているものが分かりました」

 

 ジェイクの視線が、姉妹の濡れた下腹を順に辿る。

 

「欠けているのは二つ」

 

 桜は続きを聞きたくなかった。

 

「矛盾した魔力へ刻み込まれる淫らな欲情と興奮、そして肉体がそれに屈した証――絶頂です」

 

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