目隠しが外れたとき、遠坂凛の視界へ最初に刺さったのは、男の顔ではなかった。
カメラの赤い録画灯だった。
暗闇に慣れた目を、白いライトが焼く。凛は反射的に瞼を閉じ、すぐに細く開いた。
赤い点は消えない。
録画中だ。
ライトの向こうで、五人の男がベッドを囲んでいた。足元には鞄と機材。正面には出入口。レンズの脇に立つ金髪の男が、表示を確かめてから笑う。
「じゃ、続き撮るぞ。名前は凛ちゃん、で合ってるよな」
「そのカメラを止めなさい。今すぐ」
凛は頭上の腕を引いた。拘束具が、がちっ、と鳴り、擦れた手首へ鋭い痛みが走る。両足首も左右へ開かれたまま、薬の残る身体は命令に追いつかない。
それでも目は動く。
五人。正面扉が一つ。カメラ一台。ライト二灯。右の男が鞄を持ち、左の男が寝台へ一歩近い。金髪が全体へ指示を出している。
「何が目的? これは契約に入ってないわ。誰に頼まれたの」
「質問は後。とりあえず俺たちに付き合ってくれや」
「ふざけないで。撮影は契約にも――」
「俺ら、その契約っての知らねえんだわ」
金髪は友人へ話すような軽さで肩を竦めた。
別の男が寝台へ膝を乗せ、凛の脚を押し開く。
「触るなっ!」
腰を捩ろうとした瞬間、膣内に残っていた白い精液が、ぬるっ、と溢れた。腿を伝う筋がライトに照らされる。
「景気よく出してもらってんな」
「見るな……撮るな!」
「もう撮れてるって、凛ちゃん」
その一言が、時間を巻き戻せない事実だけを突きつける。
凛はカメラを睨んだ。顔を背ければ、男たちの位置を見失う。目を閉じれば、何を撮られ、誰が触れたか分からなくなる。
ならば、見る。
全員の顔も、声も、動きも覚える。
「口、開けろ」
右から来た男が、硬く勃った性器を凛の唇へ押し当てた。
凛は顔を横へ振る。すぐに髪を掴まれ、頭を正面へ戻された。
「離しなさい。入れたら歯を立てるわよ」
「やってみろ。困るのはお前だ」
後頭部を押さえられ、反対の手で顎を掴まれる。親指が唇のあいだへねじ込まれ、口が開いた瞬間、先端が舌の上へ滑り込んだ。
「んぐっ……!」
性器が喉の手前まで押し込まれ、息が塞がる。噛もうと顎へ力を込めれば、髪を掴む手がさらに頭を引き寄せた。
じゅぽっ、じゅぽっ……じゅるっ……。
同時に、脚の間へ別の男が割り込む。
濡れた膣口へ先端が触れた。
ぬぷっ……。
「ん゛っ……!」
前の男が残した精液を奥へ押し戻しながら、太い肉が一息に沈む。薬で力は鈍っているはずなのに、押し広げられる痛みと、膣奥を圧迫する重さだけは鮮明だった。
「中でいいんすよね?」
凛の膣へ入ったまま、男が金髪へ顔を向ける。
「ああ。好きにしろ。顔もちゃんと映せよ」
金髪がカメラの角度を直した。
「やめ――んぐっ!」
抗議は口の中で潰れた。
ぱんっ、ぱんっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ……!
下から突き上げられるたび、凛の腰が寝台の上を滑る。その動きに合わせ、口の性器が喉近くまで入り、じゅぽっ、と唾液を鳴らした。
「んぐぅっ……ん゛っ……!」
呼吸ができない。
凛は頭を振るのをやめ、鼻から短く息を吸う。次に口の男が引く瞬間を待つ。一拍だけ生まれた隙間へ空気を取り込み、また押し込まれる。
ぐちゅっ、ぱんっ、ぐちゅっ、ぱちゅっ……!
脚の間の男が凛の腰を掴み、奥へ押しつけたまま震える。
びゅるっ……びゅるるるっ……!
「――っ!」
熱い精液が膣奥へ注がれた。腹がびくびくと痙攣し、閉じられない脚が震える。性器が抜けると、前から残っていたものと新しい精液が混ざり、膣口からどろりと溢れた。
「次、俺」
待っていた男がすぐに場所を入れ替わる。
「待ちなさい……っ、せめて拘束を外して――」
「まだ二人目だろ。五人いるんだぞ」
「人数の話なんか、してない……!」
ぬぷっ、ぬちゅっ、ぐちゅっ……。
「あっ……!」
返事を待たず、二人目の性器が精液で濡れた膣へ入る。根元まで沈むと、男は凛の腰を両手で掴み、下から突き上げ始めた。
「ほら、腰振れ」
「動けるわけ……ないでしょう……!」
「じゃあ俺が動かす」
凛の尻が持ち上げられる。頭上の手首と開かれた足首を支点に、身体だけが前後へ揺さぶられた。
ぱちゅっ! ぐちゅっ! ぱちゅっ! ぬるっ!
「あっ、や……そこ、やめ……!」
ライトの熱。男の汗。シーツを濡らす精液。レンズの奥で変わらず光る赤い点。
別の男が凛の髪を掴み、開いた口へ性器を押し込んだ。
「んぐぅっ!」
口では喉の奥を突かれ、同時に膣では深い場所を抉られる。上と下の動きがずれるたび、凛の背が寝台へ擦れ、拘束具が激しく鳴った。
じゅぽっ、じゅるっ、じゅぽっ……。
ぱんっ、ぐちゅっ、ぱんっ……!
口元の男が後頭部を抱え込み、性器を深く埋めたまま腰を押しつける。
びゅっ、びゅるっ……!
「ん゛っ……!」
生温かい精液が舌と上顎へ広がる。凛は飲み込まないよう喉を閉じたが、呼吸を求めた反射で一部が流れ落ちた。受け止めきれない分は唇の端からこぼれ、顎を伝う。
じゅぽっ、と性器が抜けた。
「げほっ……げほっ……!」
身体を丸めることもできず、仰向けのまま激しく咳き込む。顎を掴まれ、濡れた顔をカメラへ向けられた。
「やめ……撮らないで……!」
その間も、膣の男は止まらない。
「おら、受け取れっ……!」
腰が奥まで押しつけられる。
びゅるっ……びゅるるっ……!
「あぁっ……!」
二度目の熱が重なり、腹の内側がさらに重くなる。抜かれた途端、白濁した精液がごぽっ、と溢れ、尻の下へ広がった。
「まだ終わりじゃねえぞ」
入れ替わった男が凛の膝裏を掴んだ。拘束された脚を、金具が許す限界までさらに押し開く。
「いや……脚、離して……!」
精液で濡れた膣口へ性器があてがわれる。
ぬぷっ、ぐちゅっ……!
「あっ……もう、やめて……!」
膝裏を持ち上げられた姿勢では、腰を捩ることさえできない。男は白濁液を掻き混ぜるように、深いところだけを短く何度も突く。
ぱんっ、ぐちゅっ、ぱんっ……!
「いやっ、それ以上……入れないで……!」
「もう入ってるって」
笑いながら、男が奥へ強く押しつける。
びゅるっ……びゅるるるっ……!
「あぁっ……!」
新しい精液が膣奥へ重なり、押し出された白濁液が腿を伝った。
「あー、出た出た。これで何発目だ?」
凛は息を吸い、朦朧としかける意識を数へつなぎ止めた。
「……四……よ……」
「まじかよ。数えてたのかよ!」
男たちの笑いが重なる。
「アンタたちの顔も、声も……忘れない」
虚勢ではない。
自分で選び、守れるものが、まだ残っている。凛は涙で滲む視界を開き、金髪の目、口元、髪の分け目まで刻み込んだ。
金髪の笑みが薄くなる。
「じゃあ、忘れられない映像にしとくか」
空いた脚の間へ、待っていた最後の男が入る。白濁した液の溢れる膣口へ先端を押し当て、そのまま奥まで沈めた。
ぬぷっ……ぐちゅっ。
「あっ……!」
金髪が顎で合図する。
カメラを持つ男が近づき、凛の顔と身体を同じ画面へ収めた。赤い録画灯が、手を伸ばせば触れられそうな距離で光る。
「や……近づけないで……!」
最後の男の動きが荒くなる。
ぬちゅっ、ぱんっ、ぬちゃっ、ぐちゅっ……!
「あっ、あぁっ……中は、もう……!」
「まだ入るだろ」
膣奥を連続して突かれるたび、溜まった精液が、ぐちゅっ、ぐちょっ、と音を立てた。凛は目を閉じかける。
閉じれば、顔を忘れる。
凛はもう一度目を開いた。恐怖から逃げるためではない。男たちの顔を最後まで覚えるためだった。
びゅるっ……びゅるるっ……!
「っ……!」
最後の熱が加わり、白濁液が腿を伝ってシーツへ落ちる。
どれほど時間が過ぎたのか。
やがて男たちの身体が離れ、部屋には荒い呼吸と機材の駆動音だけが残った。
凛は寝台へ倒れたまま胸を上下させる。口の端から唾液と精液が垂れ、喉は焼けるように痛む。腹は重く、力を込めるたび膣から白い液がこぼれた。
金髪の男がカメラへ近づく。
「それ……消しなさい……」
凛は掠れた声を絞り出した。
「条件なら聞く……だから――」
「条件?」
男は録画停止ボタンへ指を置いたまま笑う。
「勘違いすんなよ。凛ちゃんをしばらくおもちゃにしていいって聞いてる。これは、そのための保険だ」
「誰から……」
「それを教えたら、保険にならねえだろ」
赤い灯が消えた。
だが、映像は消えていない。
「保存しとけ。コピーはまだ作るな」
金髪が仲間へ命じる。
保存先は分からない。削除条件も分からない。「まだ」という一語が、すでに複製まで予定されている可能性を突きつける。
そして、彼らにも上位の指示者がいる。
凛が確定できたのは、そこまでだった。
「おい、あれ持ってこい」
男の一人が鞄を開く。
ぐいん……。
低い機械音とともに取り出されたのは、解放の鍵ではなく、太く長いバイブだった。
「いらない……近づけないで」
拘束具は外されていた。だが薬の名残で指先は満足に曲がらず、肘をついて起きようとしても腕が震え、すぐにシーツへ落ちる。
「いい画が撮れたから、プレゼントだ」
「データを消して。何が欲しいの」
「まだ交渉できるつもりか?」
男は笑い、振動する先端を凛の膣口へ押し当てた。
「やめて……そんなの入れないで……!」
「俺たちの精液、ちゃんと奥に入れとけよ。こぼすともったいねえ」
ぬぷっ……ぐちゅっ……。
「んっ……あぁっ……!」
太いバイブが精液を押し戻しながら、膣壁を押し広げていく。入り込むほど、溜まった白濁液は奥へ追いやられ、下腹の重さが増した。
ごぽっ……ぬるっ、ぐちゅっ……。
「奥……当たってる……抜いて……!」
「よし、根元まで入ったな」
冷たい金属帯が腰へ回された。
凛は反射的に手を伸ばす。左右から腕を押さえられ、寝台へ戻された。別の男が両脚を固定する。
「何をする気? それを外しなさい!」
「貞操帯ってやつだ。特別製のな。動くと挟むぞ」
かち、かち、と金属部品が噛み合う。帯が下腹部と股間へ密着し、バイブの根元を覆った。男が部品を押し込むと、金属が腰を締めつけ、器具がさらに奥へずれた。
ぐぐぐっ……。
「んはぁっ……!」
最後に錠が閉まり、鍵が回る。
かちり。
小さな音が、さっきまでの拘束具よりも重く響いた。
腕を押さえていた手が離れ、脚も解放される。
凛は震える指で金属帯の継ぎ目を探った。腹側。腰骨の脇。股間を覆う板の縁。指が入る隙間はどこにもない。
鍵穴は一つ。
刻印を追う。魔術式らしいものは見当たらない。少なくとも、いま触れられる表面は純粋な機械に見えた。
金髪の男が鍵を凛の目の前で揺らす。
「返しなさい」
「無理。鍵は俺が預かる」
「こんなものを着けたまま帰れるわけないでしょう」
「帰れるって。服着りゃ見えねえよ」
「お金なら――」
「交渉は終わり」
軽い声のまま、男は鍵をポケットへ入れた。
「いい子にしてりゃ、そのうち外してやるよ。じゃあな、凛ちゃん」
「っ……!」
このまま男たちを帰すわけにはいかない。魔力回路を起動、男たちに攻撃を――
その瞬間、バイブが強く唸った。
ぐいんっ、ぐいんっ、ぐいんっ……!
「あっ……!」
奥へ固定された器具が膣壁を激しく擦る。溜め込まれた精液が、ぐちゅっ、ぐちょっ、と掻き回され、硬い先端が同じ場所へ何度も当たった。
「止まって……っ、や……!」
操作部を探して金属帯を撫でる。
ボタンはない。配線もない。
「楽しんでくれ」
その様子を横目に、男たちが笑いながら出ていき、扉が閉まった。
継ぎ目へ爪を立てたところで、振動が一段強くなる。
ぐいんっ! ぐいんっ!
「んっ、あっ……いやぁっ!」
腰が跳ねた。逃げようと脚を閉じるほど金属帯が押され、バイブが奥へ当たる。
望まない絶頂が、腹から背へ駆け上がった。
「あっ……あぁっ……!」
膣が器具を締めつける。収縮に押された白濁液が、金属の隙間から、とろっ、と腿へ流れた。
◇
一人になった部屋は異様に静かだった。
バイブの動きが小さくなり快感の波が引くと、凛は寝台へ手をつき、まず上体を起こそうとした。
この装置の動き、遠隔で誰かが操作しているのか。最初から強弱を設定されているのか。
いまは、どちらとも断定できない。
凛は歯を食いしばり、這うように浴室へ向かった。
タオルを濡らし、顔、胸、腹、腿を拭く。外側の精液は落ちても、バイブが動くたび、内側からまた白いものが溢れた。
ぬるっ……とろっ……。
(まずはここを出る。考えるのは、家に戻ってから)
次の行動を一つに絞る。
凛は散らされた服を拾い、一枚ずつ身につけた。脚を上げるだけでバイブが膣内でずれ、ぐいん、と奥へ触れる。
「んっ……」
下着は金属帯の上からでは収まりが悪い。何度も引き上げ直し、スカートを下ろす。鏡の前で身体を横へ向け、外から輪郭が見えないことだけを確かめた。
ホテルの廊下では、壁に手をつかない。
背筋を伸ばす。歩幅を狭くする。一歩ずつ、止まらず歩く。
エレベーターが降り始めると、バイブが低く唸った。
ぐいんっ……ぐいんっ……。
「……っ」
膝を曲げれば崩れる。凛は階数表示だけを見た。
ロビーにも人がいる。精液の匂いが自分の周囲へまとわりついている気がした。誰も振り返っていない。それでも全員に知られているように感じる。
自動扉が開き、夜気が火照った肌を刺した。
凛は通りへ出て、タクシーを止めた。
後部座席へ身体を沈める。貞操帯が腹へ食い込み、バイブの先端が奥へ押しつけられた。
目的地は遠坂邸ではなく、一本離れた角を指定した。
ドアが閉まった途端、振動が跳ね上がった。
ぐいんっ、ぐいんっ、ぐいんっ……!
「……んっ」
凛は座席の縁を掴む。太腿を閉じても刺激は逃げず、押された金属帯が器具をさらに深く当てる。
「お客さん、大丈夫ですか?」
運転手がルームミラー越しにこちらを見る。
凛は呼吸を数えた。一つ吸い、二つ吐く。声を一文ずつに切る。
「ええ。少し、体調を崩しただけ。窓を少し開けてもらえる?」
「病院へ回りましょうか」
「必要ないわ。家で休めば大丈夫」
また波が来た。
ぐいんっ……ぐぐっ、ぐいんっ……!
「……っ!」
喉の奥で声を殺す。膣が収縮し、精液が貞操帯の縁から漏れた。
凛は畳んだハンカチを腿の下へ滑り込ませる。だが白濁液はすぐに布を濡らし、受け止めきれなかった雫が座席へ落ちた。
車が止まるまで、凛はバイブの動きと精液が膣内でぐちょ、ぐちょと掻き混ぜられる感覚に耐えなければならなかった。
料金を払い、扉を出て振り返ると、さっきまで自分が座っていた場所には小さな染みが残されていた。
それを知られたくなくて、ドアを急いで閉める。
タクシーが角を曲がるまで歩き続けた。
見えなくなってから、ようやく塀へ手をつきそうになる。
それでも堪えた。
遠坂邸の門をくぐる。鍵を開け、玄関へ入った瞬間、張りつめていた膝が折れた。
「……っ」
床へ手をつく。
冷たい板の感触が掌へ返る。
外から持ち帰った精液の匂いが、自分の家へ流れ込む。
安全なはずの場所へ、男たちの映像と、鍵と、身体の中の器具までついてきた。
ぐいん……ぐいん……。
振動が一度弱まり、凛が息をついた直後、予告もなく細かなリズムへ切り替わる。
ぐいんっ、ぐぐっ、ぐいんっ……!
「……あっ……!」
凛は声を噛み殺した。
浴室へ向かうため、もう一度、床へ手をついた。