重い扉が閉まった音で、遠坂凛は逃げ道を一つ数えた。
正面の客用扉。廊下の先に裏口。黒服は正面に一人、廊下に二人、裏口の近くに一人――店へ入る前に張った簡易結界は、壁越しの人影まで凛の意識へ映している。
腰には、鍵穴しかない貞操帯。膣の奥では太いバイブが、ぐいん……ぐいん……と低く唸り、一晩以上残された精液を掻き回していた。
店へ入る直前まで漏れを受けていた紙おむつは外し、鞄の底へ密封してある。香水は強めにつけた。それでも自分が動くたびに立つ生臭さを、上書きできている自信はなかった。
名前も聞かずに案内した黒服が、VIPルームの扉を開ける。
革張りのソファ。氷の溶けかけた酒。奥のハンガーには、胸元を深く抉った店のドレス。
そして、資産家と金髪の男、その仲間たちが、同じ部屋で凛を待っていた。
別々だった点が、一息で線になる。
ホテルで契約を破った資産家。凛を複数人で犯し、録画した金髪たち。器具を着けたまま呼びつけた店。
少なくとも、この三つは最初から繋がっている。
「よく来ましたね、遠坂凛さん」
資産家は、四度の奉仕を持ちかけたときと同じ穏やかな声で言った。
「鍵を渡しなさい。映像も消して。今すぐに」
「その前に、今夜の条件をご説明します」
「昨日の強姦も撮影も、契約の外だと言うつもり?」
「四回の取引は完了しています。今夜は別のお願いです」
区切る言葉を変えるだけで、加害を契約の外へ押し出す。声を荒らげないぶん、最初から用意していた理屈だと分かった。
金髪の男はソファの背に肘を置き、にやにやと笑っている。仲間も、凛の怒りではなく、貞操帯の下でどれほど漏れているかを眺める目をしていた。
お願いという名の脅迫。
取引を続ける気などない。条件を餌に、凌辱だけを積み重ねるつもりだ。
なら、こちらも交渉相手として扱う必要はない。
凛は結界が拾った配置を呼び戻した。まず肉体を強化して資産家を拳で昏倒させる。踏み込みの勢いで金髪の手を折り、鍵を奪う。他の男たちを制圧したら、金髪の記憶から映像の保管場所と上位の指示者を読む。裏口まで七歩。廊下の黒服が反応する前に、扉を宝石で塞げる。
コートの内側へ隠した宝石へ、指先で触れる。
一拍。
宝石へ魔力を流しかけた、その瞬間だった。
壁越しに浮かんでいた四つの人影が、すべて消えた。
「なっ……!?」
凛は反射的に周囲を見た。黒服が移動したのではない。人の気配は耳にも届いている。消えたのは感知だけ――店を包んでいた簡易結界そのものが、術式の継ぎ目すら触れさせず、一息に砕かれていた。
「……どうかしたかね?」
資産家の表情は変わらない。金髪も、凛が何に驚いたのか分からない顔をしている。
この中に魔術師がいる。あるいは、店の外から見ている。
どちらにせよ、凛へ気配を悟らせず、狙った術式だけを破壊できる相手だ。店内の人数も動線も見失った状態で殴りかかれば、金髪の記憶へ触れる前に宝石を潰される。
誰が術を使ったのか。どこから監視しているのか。映像はどこにあるのか。
三つとも分からないまま、戦端は開けない。
凛は歯を噛みしめ、宝石へ流しかけた魔力をゆっくり散らした。
「香水じゃ消えてねえぞ」
金髪が鼻を鳴らす。
「精子くっせぇ女」
仲間たちがどっと笑った。凛は握った拳をコートの陰へ隠し、資産家だけを見る。
「条件を言いなさい」
「今夜、この店で二組のお客様を接待してください。貞操帯を着けたまま、愛想よく。苦情がなければ外しましょう」
「映像は?」
「今夜の条件には含まれていません」
逃げ道を残した答えだった。装置を外すことと、映像を消すことを切り離している。
それでも、ここで拒めば貞操帯は外れない。住所まで知られた以上、家へ戻るだけでは逃げたことにならない。まず器具を外させ、未知の魔術師について観察を増やす。その後に映像と指示系統を追う。
順番を一つずつ取り戻すしかない。
「二組」
凛は条件を指で数えるように言った。
「苦情なし。それで貞操帯も、中の装置も外すのね」
「ええ。約束します」
「言質は取ったわ」
「まだ強がる余裕あんじゃん。着替えてこい、凛ちゃん」
金髪が顎で奥のドレスを示した。
◇
用意されたドレスは胸元が深く開き、腰回りだけ不自然に余裕があった。貞操帯の金属板を隠すための形だ。下着は着けられない。バイブの根元も、貞操帯の内側に挟まった精液も、そのままだった。
フロアは紫と青の照明に沈み、香水とアルコールと煙草が混ざっている。グラスの触れ合う音。客の笑い声。ヒールで歩く女たち。
誰も、凛がなぜここにいるのか知らない。
最初の客は、若い会社経営者だった。高価な時計を見せるように腕をテーブルへ置き、空いた手で凛の隣を叩く。
「凛ちゃん? 新人?」
「今夜だけです。お酒は何になさいますか」
「今夜だけか。じゃあ当たりだな」
凛は相手の右隣へ浅く腰掛けた。膝は揃え、ボトルは手の届く正面。逃げれば苦情になる。拒絶に見せず、触れる手だけ別の目的へ動かす。
「その時計、限定品でしょう。会社を始めたときに買ったの?」
「分かる? いや、これは三年目。最初の大口が決まったとき」
男は嬉しそうに文字盤を凛へ寄せた。胸元へ向かいかけた視線が時計へ戻る。
好意はいらない。必要なのは、苦情を出させない結果だけだ。
話を切らさず、酒を注ぐ。成功談の節目で一度だけ笑う。褒めるのではなく、次の数字を尋ねる。男が答えようと身を乗り出したとき、その手がドレス越しに凛の胸を掴んだ。
「んっ……」
「緊張してる?」
「少し。新人なので、お手柔らかにお願いします」
笑顔の形を崩さず、胸にある手へ自分の指を重ねる。そのまま外して、空になったグラスを持たせた。
「続きは? 大口の相手、最初から乗り気だったの?」
「いや、それがさ――」
会話へ戻した瞬間、膣内のバイブが強く作動した。
ぐいんっ、ぐいんっ……!
「――っ」
腰が浮きかける。凛はボトルを置く動きに紛らせ、左手をテーブルへついた。膣の奥でバイブが太く身を振り、溜まった精液をぐちゅ、ぐちゅっと掻き回す。貞操帯の縁から温いものが滲み、腿の内側へ一筋落ちた。
「顔、赤いよ」
「照明のせいです」
「可愛いこと言うな」
男が笑って乳房を揉み、ドレス越しの乳首を指で摘む。外からの鈍い圧迫と、内側の振動が重なる。
「ん……っ、社長、それで……相手は?」
「そうそう、向こうの担当が頑固でな」
息が途切れるたびに質問へ変える。胸を掴む手が強まれば、酒を勧める。肩へ回れば、時計をもう一度見せてと手首を取る。凛は接触をゼロにはできなくても、次にどこへ動くかだけは選ばせなかった。
一時間後、男は満足そうにチップを置いた。
「楽しかった。また会える?」
「機会があれば」
嘘を約束にしないぎりぎりの返答を選び、見送る。
苦情はなかった。
二人目は、酒臭い中年の会社員だった。ネクタイを緩めたままソファへ沈み、凛が隣へ座るより先に太腿へ手を伸ばす。
指がドレスの裾から入り、肌をなぞり、貞操帯の冷たい金属へ触れた。
「なんだ、これ」
凛の背筋が固まる。
「衣装の一部です。お酒を――」
「貞操帯か? 面白いもん着けてるな。誰かに管理されてんのか」
男の掌が金属板を押した。
ぐちゅっ。
内側のバイブが膣奥へ食い込み、溜まった精液が奥から押し返される。
「あっ……!」
凛はグラスを倒す寸前で、右手をテーブルへついた。
「へえ。これ押すと感じるのか。中に何か入れてんのか」
「お客様、強く押すのは……」
「気持ちいいならいいだろ」
ぐっ、ともう一度押される。
ぐいんっ、ぐいんっ……!
「んっ……や、ぁっ……!」
膣内で押し上げられたバイブが、奥の一点を何度も抉った。拒む前に快感が腰を貫き、腿が震える。望まない絶頂に膣が器具を締めつけ、白濁した精液が貞操帯の内側から溢れた。
「イったな。声、抑えろよ。周りに聞こえるぞ」
「……っ、手を、離して」
「客に命令すんの?」
男は笑い、ドレスの肩をずらした。露わになった乳首を口へ含む。
ちゅぱっ、ちゅぱっ……。
舌で転がし、歯を軽く立てる。もう一方の手は金属板へ残り、ときおり思い出したようにバイブを押した。
「んっ……お客様、少し……控えて……」
「最近よ、妻に逃げられたんだ。慰めてくれよ」
「それは大変でしたね」と空疎な同情を返しかけ、凛は飲み込んだ。代わりに男のグラスへ酒を注ぐ。
「今夜ここへ来たのは、忘れたいから?」
男の手が止まる。
「それとも、戻ってきてほしいから?」
「……話したって、戻ってこねえよ」
「戻すためじゃないわ。貴方が今夜どんな顔で家へ帰るか、決めるために聞いてるの。話して」
説教にならないよう、声だけを柔らかくする。客の意識が自分の過去へ向けば、触れる手は鈍る。
男は酒を煽り、妻への愚痴を始めた。
その間も、ときおり乳首を摘み、貞操帯を押す。ぐいんっ、とバイブの振動が強まるたび、凛の返事は「それで」「貴方は」と短く途切れた。男が自分の言葉を待つようになってからは、触れる回数が少しずつ減った。
二時間近くして、男はふらつきながら立ち上がった。
「変な女だけど、悪くなかった。また来る」
「足元に気をつけて」
苦情はなかった。
客が見えなくなるまで頭を下げる。足音が遠ざかると、凛は壁へ手をついた。脚が震え、視界の端が暗い。乳首には歯の感触が残り、貞操帯の中ではバイブが精液を揺らし続けている。
それでも、条件は満たした。
VIPルームへ戻り、扉を閉める。
「二組。苦情なしよ」
凛は資産家と金髪を順に睨んだ。
「外して」
金髪が銀色の鍵を取り出す。
「よく頑張ったな、凛ちゃん。約束は約束だ」
資産家も穏やかに頷いた。
凛は立ったまま、鍵から目を離さない。男が腰へ屈み、貞操帯の鍵穴へ差し込む。
かちり。
腹と腰を締めていた金属帯が外れた。長く塞がれていた肌へ、冷たい空気が触れる。続いて太いバイブが膣から、ぬるっ、ぐちゅっ、と引き抜かれた。
「……っ、は……」
凛の膝が揺れる。
堰を失った精液が、どろっ、と膣口から溢れた。白濁した筋が左右の内腿を伝い、絨毯へ落ちる。腹の奥を塞いでいた圧迫が抜け、ようやく息が下まで入った。
床へ置かれた貞操帯とバイブが、硬い音を立てる。
その音が止むより先に、複数の手が伸びた。
右腕。左肩。腰。
「何を――」
背後から膝裏を蹴られた。凛は体勢を崩し、両腕を引かれ、背中から床へ押し倒された。ドレスの裾が腰までまくれ上がる。
「離しなさい!」
膝を閉じようとすると、男の靴が割り込んだ。両側から腿を押され、精液の流れ続ける股間が照明の下へ晒される。
「外したら終わりだって、そういう約束だったでしょう!」
「外すとは言った」
金髪が床の貞操帯を爪先で転がした。
「終わりとは言ってねえよ」
「そんな屁理屈――っ」
抗議の続きは、口へ押し込まれた肉棒に潰された。
「んぐっ……ん゛、ぅっ……!」
後頭部を床から持ち上げられ、喉の奥まで突き入れられる。じゅぽっ、じゅぽっ、と唾液の絡む音が耳のすぐ内側で鳴った。咳き込もうと首を引けば、髪を掴む手が口を根元まで押し戻す。
同時に別の男が、精液で濡れた膣口へ肉棒の先端を当てた。
「また中に戻してやるよ」
「――んんっ!」
ぬぷっ、と一息に押し広げられる。流れ出ていた精液が肉棒に巻き込まれ、膣奥へ押し戻された。くちゅっ、ぬちゅっ。前後するたびに残留が掻き回され、腹の奥へ鈍い衝撃が届く。
床へ押さえつける手。喉を塞ぐ肉棒。開いた脚の間で打ちつける腰。
どこか一つへ意識を逃がすこともできない。
ぱんっ、ぱんっ、と腿の触れ合う音が速くなる。
「こんだけやられても締めやがる」
「やめ……んぐっ……!」
喉奥の男が凛の頭を抱え込み、肉棒を深く押しつけたまま震えた。
びゅるっ、びゅるるっ。
熱い精液が舌の奥へ落ちる。吐き出す隙はない。鼻から細く息を吸い、三度喉を動かして飲み下した直後、膣を犯していた男も根元まで押し込んだ。
「――っ、ぁあっ……!」
びゅるっ、びゅるるっ――。
膣奥へ新しい熱が重なる。射精の脈動が止まる前に肉棒だけが抜け、白濁が溢れかけた。だが次の男がすぐに先端を押し込み、こぼれかけた精液ごと奥へ戻してくる。
「次、俺な」
「口も空いたぞ」
「待ちなさい、まだ――んぐっ!」
男たちは順番を相談するだけで、凛の返事を待たなかった。
口と膣を同時に塞がれ、射精され、抜かれた場所へ別の肉棒が入る。速く浅く擦る男。奥へ押しつけたまま、凛の腹が跳ねるたび笑う男。喉を長く擦り、涙と涎を顎から垂らさせる男。
じゅぽっ、じゅるっ。ぬちゅっ、ぐぽっ。
速度と深さが変わるたび、音も、痛む場所も、息の奪われ方も変わった。
「んぐ……もう、飲めな……っ」
「飲めるさ。吐いたら、その分また入れてやる」
頬の内側まで精液で満たされる。苦味と生臭さに胃が縮む。それでも口を塞いでいる肉棒が抜ける前に飲み下すしかない。下腹も熱と圧迫で張り、挿入のたび、膣奥に溜まった精液がぐちゅりと押し戻された。
何人目かを数える。鍵は金髪の右ポケット。客用扉まで九歩。カメラは棚の上に一台。資産家はソファから動かない。
凛は目を閉じなかった。
右手の指一本でも自由になれば、床のバイブを掴んで金髪の目へ突き立てられる。だが肩を押す手が増え、両手首は床へ縫いつけられたままだった。
「遠坂凛」
穏やかな声だけが、荒い息と湿った音から浮いて聞こえた。
資産家はソファに深く座り、組んだ指を膝へ置いている。自分は触れず、男たちの肩越しに凛の身体を眺めていた。
「君は強く、よく磨かれた宝石だった」
凛は口を塞ぐ肉棒を押し返そうと首を振った。髪を掴まれ、さらに深く喉へ押し込まれる。
「ん゛っ……!」
「だからこそ、曇りが増すたび違いがよく分かる。誇りも、恋人への顔も、そのまま保つといい」
膣内の男が腰を引く。精液が隙間へ流れかける。次の一突きが、それを奥へ跳ね上げた。
ぐぽっ。ぐちゅんっ。
「澄んだふりをする君の内側に、我々が残したものが揺れている。その対比が、実に美しい」
声を荒らげない。それがかえって、凛を人ではなく鑑賞物として扱っていた。
(私は、物じゃない)
口と膣の肉棒が、ほとんど同時に根元まで押し込まれる。
びゅるっ、びゅるるっ――。
「んんんっ……!」
喉を動かす。下腹が痙攣し、膣が勝手に肉棒を締めつける。
身体が反応しても、拒絶まで明け渡したわけではない。
男たちのものになったわけでも、資産家の鑑賞物になったわけでもない。
凛はその区別だけを、意識の奥へ爪を立てるように抱えた。
それでも交代は終わらなかった。
一人が口から抜ければ、咳き込む前に次の肉棒が唇をこじ開ける。膣でも、射精を終えた男が抜けるたび、溢れかけた白濁ごと次の男が奥へ押し戻した。
三人目までは数えていた。
四人目からは、口と膣のどちらへ誰が入ったのかも分からない。
じゅぽっ、じゅるるっ。ぬちゅっ、ぐぽっ。
びゅるっ、びゅるるるっ!
「んぐっ……ん゛っ、お……っ!」
飲み下す間もなく次を注がれ、精液が喉から鼻へ逆流する。口端から涎と白濁が零れても、順番は止まらない。下腹では新しい肉棒が根元まで沈み、すでに満ちた奥へさらに射精を重ねた。
どぷっ、どぷるっ、びゅるるっ……!
「もう……やめて……っ」
一度ごとの衝撃より、溜まり続ける熱と重さの方が大きい。腹は内側から張り、挿入されるたび、歩けば揺れそうな量がぐちゃりと掻き回される。
抗議は次の肉棒に潰された。
最後の二人が抜けたあとも、たぷ、たぷ、と膣の奥で精液が揺れていた。
凛が横向きになろうと肩へ力を入れる。男の靴が脇腹を床へ戻した。
「新しいのに替えてやるよ」
金髪が貞操帯を持ち上げる。
その金属板には、先ほどまでなかった小さなローターが取り付けられていた。隣には、抜かれたものよりさらに太いバイブ。根元の透明な薬液槽は薄桃色の液体で満ち、表面の細い穴から一滴が滲んでいる。
「何、それ」
掠れた声で問うと、金髪は薬液槽を指で弾いた。小さな気泡が浮かぶ。
「特製の媚薬。中で少しずつ漏れるようになってる。空になるまで、たっぷり効くぜ」
太いバイブと、クリトリスへ密着するローター。どちらも貞操帯へ固定され、鍵なしでは外せない。
構造を理解するほど、背筋が冷えた。
「待ちなさい。もう十分でしょう。外したままにしなさい……!」
「学校で退屈しないよう、改良してやったんだよ」
「ふざけないで!」
凛は腰を捩った。左右から両腕を頭上へまとめられ、手首を床へ押しつけられる。別の男が膝裏へ腕を差し込み、脚を胸の方へ抱えて大きく開いた。
「いや……やめ――」
精液に濡れた膣口へ、薄桃色の液を纏った太いバイブの先端が当たる。
「あっ!」
ぬぷっ、ぐちゅっ、と押し込まれた。溢れかけた精液を奥へ押し戻しながら、太いバイブが根元まで沈む。表面から滲む媚薬が擦れた粘膜へ塗り広げられ、遅れて焼けるような熱が走った。
「ぁ、あ……っ、熱……!」
張った下腹のさらに内側へ硬い圧迫が加わる。逃げようと腰を浮かせても、膝裏を抱える男の腕へ戻されるだけだった。
金属板が股間を覆う。小さなローターの突起が、腫れたクリトリスへ押しつけられた。
カチ、カチ。
左右の留め具が閉じる。最後に鍵が回り、金髪の右ポケットへ消えた。
次の瞬間、二つの器具が作動した。
ぐいんっ――ぶるるるっ!
「あっ、ぁああっ……!」
膣奥を抉る太いバイブの低い振動。クリトリスへ食い込むローターの細かな震え。そこへ媚薬の熱が重なり、疲れ切って鈍るはずの身体が鋭く跳ねた。
ぐいんっ、ぐちゅっ――ぶるるるっ!
「い、く……っ、や……こんなの、やぁっ……!」
腰を逃がせばローターが擦れ、脚を閉じようとすれば突起が強く押し込まれる。短い絶頂が引かないうちにバイブの周期が変わり、次の波が下腹を突き上げた。膣内に溜まった精液が器具の周囲からとろりと溢れ、貞操帯の内側を濡らす。
男たちが手を離す。凛は床へ手をついたが、震える腕では身体を起こせなかった。
資産家がソファから立ち、乱れたドレスの裾を靴先で避けた。
「明日から、学校を休まないことだ」
「……何、を……」
「士郎君とも、これまでどおり会いなさい。桜さんにもね」
凛の指が絨毯へ食い込む。
「普通に過ごせと言っている。匂いも、漏れも、快感も隠して」
「誰が……あなたの、言うことなんか……」
「彼や妹君に気づかれれば、困るのは君だろう?」
士郎。桜。学校。
守りたかった日常の名を、資産家は鎖として一つずつ読み上げた。
扉が閉まり、笑い声が遠ざかる。
床に崩れた凛の腹では、精液の重さを太いバイブが揺らし、クリトリスではローターが勝手に強弱を変え続けていた。
資産家が命じ、金髪たちが動き、この店が場所と客を用意した。相手は最初から一つの組織だった。その輪郭だけは、もう見誤らない。
けれど、簡易結界を壊した魔術師だけが見えない。
資産家を紹介したのはジェイクだ。繋がりは近すぎる。だが、それだけで彼を裏切り者だと断定することもできない。
疑うには材料が足りない。
信じ切るには、何もかもが近すぎる。
ぐいんっ――ぶるるっ。
「あっ……ぅ……!」
媚薬の熱に思考を断ち切られ、凛は床へ指を立てた。
窓のない部屋でも、朝が近いことは分かる。
制服を着る。学校へ行く。士郎と桜に、いつもの顔を見せる。
その日常の下へ、貞操帯も、太いバイブも、ローターも、膣奥の精液も隠せと命じられた。
組織の輪郭は見えた。
分からないのは、その中に潜む魔術師の顔だけだった。