※この作品はR-18です。

濁った宝石   作:湖畔R

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第9話 外すとは言った

 重い扉が閉まった音で、遠坂凛は逃げ道を一つ数えた。

 

 正面の客用扉。廊下の先に裏口。黒服は正面に一人、廊下に二人、裏口の近くに一人――店へ入る前に張った簡易結界は、壁越しの人影まで凛の意識へ映している。

 

 腰には、鍵穴しかない貞操帯。膣の奥では太いバイブが、ぐいん……ぐいん……と低く唸り、一晩以上残された精液を掻き回していた。

 

 店へ入る直前まで漏れを受けていた紙おむつは外し、鞄の底へ密封してある。香水は強めにつけた。それでも自分が動くたびに立つ生臭さを、上書きできている自信はなかった。

 

 名前も聞かずに案内した黒服が、VIPルームの扉を開ける。

 

 革張りのソファ。氷の溶けかけた酒。奥のハンガーには、胸元を深く抉った店のドレス。

 

 そして、資産家と金髪の男、その仲間たちが、同じ部屋で凛を待っていた。

 

 別々だった点が、一息で線になる。

 

 ホテルで契約を破った資産家。凛を複数人で犯し、録画した金髪たち。器具を着けたまま呼びつけた店。

 

 少なくとも、この三つは最初から繋がっている。

 

「よく来ましたね、遠坂凛さん」

 

 資産家は、四度の奉仕を持ちかけたときと同じ穏やかな声で言った。

 

「鍵を渡しなさい。映像も消して。今すぐに」

 

「その前に、今夜の条件をご説明します」

 

「昨日の強姦も撮影も、契約の外だと言うつもり?」

 

「四回の取引は完了しています。今夜は別のお願いです」

 

 区切る言葉を変えるだけで、加害を契約の外へ押し出す。声を荒らげないぶん、最初から用意していた理屈だと分かった。

 

 金髪の男はソファの背に肘を置き、にやにやと笑っている。仲間も、凛の怒りではなく、貞操帯の下でどれほど漏れているかを眺める目をしていた。

 

 お願いという名の脅迫。

 

 取引を続ける気などない。条件を餌に、凌辱だけを積み重ねるつもりだ。

 

 なら、こちらも交渉相手として扱う必要はない。

 

 凛は結界が拾った配置を呼び戻した。まず肉体を強化して資産家を拳で昏倒させる。踏み込みの勢いで金髪の手を折り、鍵を奪う。他の男たちを制圧したら、金髪の記憶から映像の保管場所と上位の指示者を読む。裏口まで七歩。廊下の黒服が反応する前に、扉を宝石で塞げる。

 

 コートの内側へ隠した宝石へ、指先で触れる。

 

 一拍。

 

 宝石へ魔力を流しかけた、その瞬間だった。

 

 壁越しに浮かんでいた四つの人影が、すべて消えた。

 

「なっ……!?」

 

 凛は反射的に周囲を見た。黒服が移動したのではない。人の気配は耳にも届いている。消えたのは感知だけ――店を包んでいた簡易結界そのものが、術式の継ぎ目すら触れさせず、一息に砕かれていた。

 

「……どうかしたかね?」

 

 資産家の表情は変わらない。金髪も、凛が何に驚いたのか分からない顔をしている。

 

 この中に魔術師がいる。あるいは、店の外から見ている。

 

 どちらにせよ、凛へ気配を悟らせず、狙った術式だけを破壊できる相手だ。店内の人数も動線も見失った状態で殴りかかれば、金髪の記憶へ触れる前に宝石を潰される。

 

 誰が術を使ったのか。どこから監視しているのか。映像はどこにあるのか。

 

 三つとも分からないまま、戦端は開けない。

 

 凛は歯を噛みしめ、宝石へ流しかけた魔力をゆっくり散らした。

 

「香水じゃ消えてねえぞ」

 

 金髪が鼻を鳴らす。

 

「精子くっせぇ女」

 

 仲間たちがどっと笑った。凛は握った拳をコートの陰へ隠し、資産家だけを見る。

 

「条件を言いなさい」

 

「今夜、この店で二組のお客様を接待してください。貞操帯を着けたまま、愛想よく。苦情がなければ外しましょう」

 

「映像は?」

 

「今夜の条件には含まれていません」

 

 逃げ道を残した答えだった。装置を外すことと、映像を消すことを切り離している。

 

 それでも、ここで拒めば貞操帯は外れない。住所まで知られた以上、家へ戻るだけでは逃げたことにならない。まず器具を外させ、未知の魔術師について観察を増やす。その後に映像と指示系統を追う。

 

 順番を一つずつ取り戻すしかない。

 

「二組」

 

 凛は条件を指で数えるように言った。

 

「苦情なし。それで貞操帯も、中の装置も外すのね」

 

「ええ。約束します」

 

「言質は取ったわ」

 

「まだ強がる余裕あんじゃん。着替えてこい、凛ちゃん」

 

 金髪が顎で奥のドレスを示した。

 

   ◇

 

 用意されたドレスは胸元が深く開き、腰回りだけ不自然に余裕があった。貞操帯の金属板を隠すための形だ。下着は着けられない。バイブの根元も、貞操帯の内側に挟まった精液も、そのままだった。

 

 フロアは紫と青の照明に沈み、香水とアルコールと煙草が混ざっている。グラスの触れ合う音。客の笑い声。ヒールで歩く女たち。

 

 誰も、凛がなぜここにいるのか知らない。

 

 最初の客は、若い会社経営者だった。高価な時計を見せるように腕をテーブルへ置き、空いた手で凛の隣を叩く。

 

「凛ちゃん? 新人?」

 

「今夜だけです。お酒は何になさいますか」

 

「今夜だけか。じゃあ当たりだな」

 

 凛は相手の右隣へ浅く腰掛けた。膝は揃え、ボトルは手の届く正面。逃げれば苦情になる。拒絶に見せず、触れる手だけ別の目的へ動かす。

 

「その時計、限定品でしょう。会社を始めたときに買ったの?」

 

「分かる? いや、これは三年目。最初の大口が決まったとき」

 

 男は嬉しそうに文字盤を凛へ寄せた。胸元へ向かいかけた視線が時計へ戻る。

 

 好意はいらない。必要なのは、苦情を出させない結果だけだ。

 

 話を切らさず、酒を注ぐ。成功談の節目で一度だけ笑う。褒めるのではなく、次の数字を尋ねる。男が答えようと身を乗り出したとき、その手がドレス越しに凛の胸を掴んだ。

 

「んっ……」

 

「緊張してる?」

 

「少し。新人なので、お手柔らかにお願いします」

 

 笑顔の形を崩さず、胸にある手へ自分の指を重ねる。そのまま外して、空になったグラスを持たせた。

 

「続きは? 大口の相手、最初から乗り気だったの?」

 

「いや、それがさ――」

 

 会話へ戻した瞬間、膣内のバイブが強く作動した。

 

 ぐいんっ、ぐいんっ……!

 

「――っ」

 

 腰が浮きかける。凛はボトルを置く動きに紛らせ、左手をテーブルへついた。膣の奥でバイブが太く身を振り、溜まった精液をぐちゅ、ぐちゅっと掻き回す。貞操帯の縁から温いものが滲み、腿の内側へ一筋落ちた。

 

「顔、赤いよ」

 

「照明のせいです」

 

「可愛いこと言うな」

 

 男が笑って乳房を揉み、ドレス越しの乳首を指で摘む。外からの鈍い圧迫と、内側の振動が重なる。

 

「ん……っ、社長、それで……相手は?」

 

「そうそう、向こうの担当が頑固でな」

 

 息が途切れるたびに質問へ変える。胸を掴む手が強まれば、酒を勧める。肩へ回れば、時計をもう一度見せてと手首を取る。凛は接触をゼロにはできなくても、次にどこへ動くかだけは選ばせなかった。

 

 一時間後、男は満足そうにチップを置いた。

 

「楽しかった。また会える?」

 

「機会があれば」

 

 嘘を約束にしないぎりぎりの返答を選び、見送る。

 

 苦情はなかった。

 

 二人目は、酒臭い中年の会社員だった。ネクタイを緩めたままソファへ沈み、凛が隣へ座るより先に太腿へ手を伸ばす。

 

 指がドレスの裾から入り、肌をなぞり、貞操帯の冷たい金属へ触れた。

 

「なんだ、これ」

 

 凛の背筋が固まる。

 

「衣装の一部です。お酒を――」

 

「貞操帯か? 面白いもん着けてるな。誰かに管理されてんのか」

 

 男の掌が金属板を押した。

 

 ぐちゅっ。

 

 内側のバイブが膣奥へ食い込み、溜まった精液が奥から押し返される。

 

「あっ……!」

 

 凛はグラスを倒す寸前で、右手をテーブルへついた。

 

「へえ。これ押すと感じるのか。中に何か入れてんのか」

 

「お客様、強く押すのは……」

 

「気持ちいいならいいだろ」

 

 ぐっ、ともう一度押される。

 

 ぐいんっ、ぐいんっ……!

 

「んっ……や、ぁっ……!」

 

 膣内で押し上げられたバイブが、奥の一点を何度も抉った。拒む前に快感が腰を貫き、腿が震える。望まない絶頂に膣が器具を締めつけ、白濁した精液が貞操帯の内側から溢れた。

 

「イったな。声、抑えろよ。周りに聞こえるぞ」

 

「……っ、手を、離して」

 

「客に命令すんの?」

 

 男は笑い、ドレスの肩をずらした。露わになった乳首を口へ含む。

 

 ちゅぱっ、ちゅぱっ……。

 

 舌で転がし、歯を軽く立てる。もう一方の手は金属板へ残り、ときおり思い出したようにバイブを押した。

 

「んっ……お客様、少し……控えて……」

 

「最近よ、妻に逃げられたんだ。慰めてくれよ」

 

「それは大変でしたね」と空疎な同情を返しかけ、凛は飲み込んだ。代わりに男のグラスへ酒を注ぐ。

 

「今夜ここへ来たのは、忘れたいから?」

 

 男の手が止まる。

 

「それとも、戻ってきてほしいから?」

 

「……話したって、戻ってこねえよ」

 

「戻すためじゃないわ。貴方が今夜どんな顔で家へ帰るか、決めるために聞いてるの。話して」

 

 説教にならないよう、声だけを柔らかくする。客の意識が自分の過去へ向けば、触れる手は鈍る。

 

 男は酒を煽り、妻への愚痴を始めた。

 

 その間も、ときおり乳首を摘み、貞操帯を押す。ぐいんっ、とバイブの振動が強まるたび、凛の返事は「それで」「貴方は」と短く途切れた。男が自分の言葉を待つようになってからは、触れる回数が少しずつ減った。

 

 二時間近くして、男はふらつきながら立ち上がった。

 

「変な女だけど、悪くなかった。また来る」

 

「足元に気をつけて」

 

 苦情はなかった。

 

 客が見えなくなるまで頭を下げる。足音が遠ざかると、凛は壁へ手をついた。脚が震え、視界の端が暗い。乳首には歯の感触が残り、貞操帯の中ではバイブが精液を揺らし続けている。

 

 それでも、条件は満たした。

 

 VIPルームへ戻り、扉を閉める。

 

「二組。苦情なしよ」

 

 凛は資産家と金髪を順に睨んだ。

 

「外して」

 

 金髪が銀色の鍵を取り出す。

 

「よく頑張ったな、凛ちゃん。約束は約束だ」

 

 資産家も穏やかに頷いた。

 

 凛は立ったまま、鍵から目を離さない。男が腰へ屈み、貞操帯の鍵穴へ差し込む。

 

 かちり。

 

 腹と腰を締めていた金属帯が外れた。長く塞がれていた肌へ、冷たい空気が触れる。続いて太いバイブが膣から、ぬるっ、ぐちゅっ、と引き抜かれた。

 

「……っ、は……」

 

 凛の膝が揺れる。

 

 堰を失った精液が、どろっ、と膣口から溢れた。白濁した筋が左右の内腿を伝い、絨毯へ落ちる。腹の奥を塞いでいた圧迫が抜け、ようやく息が下まで入った。

 

 床へ置かれた貞操帯とバイブが、硬い音を立てる。

 

 その音が止むより先に、複数の手が伸びた。

 

 右腕。左肩。腰。

 

「何を――」

 

 背後から膝裏を蹴られた。凛は体勢を崩し、両腕を引かれ、背中から床へ押し倒された。ドレスの裾が腰までまくれ上がる。

 

「離しなさい!」

 

 膝を閉じようとすると、男の靴が割り込んだ。両側から腿を押され、精液の流れ続ける股間が照明の下へ晒される。

 

「外したら終わりだって、そういう約束だったでしょう!」

 

「外すとは言った」

 

 金髪が床の貞操帯を爪先で転がした。

 

「終わりとは言ってねえよ」

 

「そんな屁理屈――っ」

 

 抗議の続きは、口へ押し込まれた肉棒に潰された。

 

「んぐっ……ん゛、ぅっ……!」

 

 後頭部を床から持ち上げられ、喉の奥まで突き入れられる。じゅぽっ、じゅぽっ、と唾液の絡む音が耳のすぐ内側で鳴った。咳き込もうと首を引けば、髪を掴む手が口を根元まで押し戻す。

 

 同時に別の男が、精液で濡れた膣口へ肉棒の先端を当てた。

 

「また中に戻してやるよ」

 

「――んんっ!」

 

 ぬぷっ、と一息に押し広げられる。流れ出ていた精液が肉棒に巻き込まれ、膣奥へ押し戻された。くちゅっ、ぬちゅっ。前後するたびに残留が掻き回され、腹の奥へ鈍い衝撃が届く。

 

 床へ押さえつける手。喉を塞ぐ肉棒。開いた脚の間で打ちつける腰。

 

 どこか一つへ意識を逃がすこともできない。

 

 ぱんっ、ぱんっ、と腿の触れ合う音が速くなる。

 

「こんだけやられても締めやがる」

 

「やめ……んぐっ……!」

 

 喉奥の男が凛の頭を抱え込み、肉棒を深く押しつけたまま震えた。

 

 びゅるっ、びゅるるっ。

 

 熱い精液が舌の奥へ落ちる。吐き出す隙はない。鼻から細く息を吸い、三度喉を動かして飲み下した直後、膣を犯していた男も根元まで押し込んだ。

 

「――っ、ぁあっ……!」

 

 びゅるっ、びゅるるっ――。

 

 膣奥へ新しい熱が重なる。射精の脈動が止まる前に肉棒だけが抜け、白濁が溢れかけた。だが次の男がすぐに先端を押し込み、こぼれかけた精液ごと奥へ戻してくる。

 

「次、俺な」

 

「口も空いたぞ」

 

「待ちなさい、まだ――んぐっ!」

 

 男たちは順番を相談するだけで、凛の返事を待たなかった。

 

 口と膣を同時に塞がれ、射精され、抜かれた場所へ別の肉棒が入る。速く浅く擦る男。奥へ押しつけたまま、凛の腹が跳ねるたび笑う男。喉を長く擦り、涙と涎を顎から垂らさせる男。

 

 じゅぽっ、じゅるっ。ぬちゅっ、ぐぽっ。

 

 速度と深さが変わるたび、音も、痛む場所も、息の奪われ方も変わった。

 

「んぐ……もう、飲めな……っ」

 

「飲めるさ。吐いたら、その分また入れてやる」

 

 頬の内側まで精液で満たされる。苦味と生臭さに胃が縮む。それでも口を塞いでいる肉棒が抜ける前に飲み下すしかない。下腹も熱と圧迫で張り、挿入のたび、膣奥に溜まった精液がぐちゅりと押し戻された。

 

 何人目かを数える。鍵は金髪の右ポケット。客用扉まで九歩。カメラは棚の上に一台。資産家はソファから動かない。

 

 凛は目を閉じなかった。

 

 右手の指一本でも自由になれば、床のバイブを掴んで金髪の目へ突き立てられる。だが肩を押す手が増え、両手首は床へ縫いつけられたままだった。

 

「遠坂凛」

 

 穏やかな声だけが、荒い息と湿った音から浮いて聞こえた。

 

 資産家はソファに深く座り、組んだ指を膝へ置いている。自分は触れず、男たちの肩越しに凛の身体を眺めていた。

 

「君は強く、よく磨かれた宝石だった」

 

 凛は口を塞ぐ肉棒を押し返そうと首を振った。髪を掴まれ、さらに深く喉へ押し込まれる。

 

「ん゛っ……!」

 

「だからこそ、曇りが増すたび違いがよく分かる。誇りも、恋人への顔も、そのまま保つといい」

 

 膣内の男が腰を引く。精液が隙間へ流れかける。次の一突きが、それを奥へ跳ね上げた。

 

 ぐぽっ。ぐちゅんっ。

 

「澄んだふりをする君の内側に、我々が残したものが揺れている。その対比が、実に美しい」

 

 声を荒らげない。それがかえって、凛を人ではなく鑑賞物として扱っていた。

 

(私は、物じゃない)

 

 口と膣の肉棒が、ほとんど同時に根元まで押し込まれる。

 

 びゅるっ、びゅるるっ――。

 

「んんんっ……!」

 

 喉を動かす。下腹が痙攣し、膣が勝手に肉棒を締めつける。

 

 身体が反応しても、拒絶まで明け渡したわけではない。

 

 男たちのものになったわけでも、資産家の鑑賞物になったわけでもない。

 

 凛はその区別だけを、意識の奥へ爪を立てるように抱えた。

 

 それでも交代は終わらなかった。

 

 一人が口から抜ければ、咳き込む前に次の肉棒が唇をこじ開ける。膣でも、射精を終えた男が抜けるたび、溢れかけた白濁ごと次の男が奥へ押し戻した。

 

 三人目までは数えていた。

 

 四人目からは、口と膣のどちらへ誰が入ったのかも分からない。

 

 じゅぽっ、じゅるるっ。ぬちゅっ、ぐぽっ。

 

 びゅるっ、びゅるるるっ!

 

「んぐっ……ん゛っ、お……っ!」

 

 飲み下す間もなく次を注がれ、精液が喉から鼻へ逆流する。口端から涎と白濁が零れても、順番は止まらない。下腹では新しい肉棒が根元まで沈み、すでに満ちた奥へさらに射精を重ねた。

 

 どぷっ、どぷるっ、びゅるるっ……!

 

「もう……やめて……っ」

 

 一度ごとの衝撃より、溜まり続ける熱と重さの方が大きい。腹は内側から張り、挿入されるたび、歩けば揺れそうな量がぐちゃりと掻き回される。

 

 抗議は次の肉棒に潰された。

 

 最後の二人が抜けたあとも、たぷ、たぷ、と膣の奥で精液が揺れていた。

 

 凛が横向きになろうと肩へ力を入れる。男の靴が脇腹を床へ戻した。

 

「新しいのに替えてやるよ」

 

 金髪が貞操帯を持ち上げる。

 

 その金属板には、先ほどまでなかった小さなローターが取り付けられていた。隣には、抜かれたものよりさらに太いバイブ。根元の透明な薬液槽は薄桃色の液体で満ち、表面の細い穴から一滴が滲んでいる。

 

「何、それ」

 

 掠れた声で問うと、金髪は薬液槽を指で弾いた。小さな気泡が浮かぶ。

 

「特製の媚薬。中で少しずつ漏れるようになってる。空になるまで、たっぷり効くぜ」

 

 太いバイブと、クリトリスへ密着するローター。どちらも貞操帯へ固定され、鍵なしでは外せない。

 

 構造を理解するほど、背筋が冷えた。

 

「待ちなさい。もう十分でしょう。外したままにしなさい……!」

 

「学校で退屈しないよう、改良してやったんだよ」

 

「ふざけないで!」

 

 凛は腰を捩った。左右から両腕を頭上へまとめられ、手首を床へ押しつけられる。別の男が膝裏へ腕を差し込み、脚を胸の方へ抱えて大きく開いた。

 

「いや……やめ――」

 

 精液に濡れた膣口へ、薄桃色の液を纏った太いバイブの先端が当たる。

 

「あっ!」

 

 ぬぷっ、ぐちゅっ、と押し込まれた。溢れかけた精液を奥へ押し戻しながら、太いバイブが根元まで沈む。表面から滲む媚薬が擦れた粘膜へ塗り広げられ、遅れて焼けるような熱が走った。

 

「ぁ、あ……っ、熱……!」

 

 張った下腹のさらに内側へ硬い圧迫が加わる。逃げようと腰を浮かせても、膝裏を抱える男の腕へ戻されるだけだった。

 

 金属板が股間を覆う。小さなローターの突起が、腫れたクリトリスへ押しつけられた。

 

 カチ、カチ。

 

 左右の留め具が閉じる。最後に鍵が回り、金髪の右ポケットへ消えた。

 

 次の瞬間、二つの器具が作動した。

 

 ぐいんっ――ぶるるるっ!

 

「あっ、ぁああっ……!」

 

 膣奥を抉る太いバイブの低い振動。クリトリスへ食い込むローターの細かな震え。そこへ媚薬の熱が重なり、疲れ切って鈍るはずの身体が鋭く跳ねた。

 

 ぐいんっ、ぐちゅっ――ぶるるるっ!

 

「い、く……っ、や……こんなの、やぁっ……!」

 

 腰を逃がせばローターが擦れ、脚を閉じようとすれば突起が強く押し込まれる。短い絶頂が引かないうちにバイブの周期が変わり、次の波が下腹を突き上げた。膣内に溜まった精液が器具の周囲からとろりと溢れ、貞操帯の内側を濡らす。

 

 男たちが手を離す。凛は床へ手をついたが、震える腕では身体を起こせなかった。

 

 資産家がソファから立ち、乱れたドレスの裾を靴先で避けた。

 

「明日から、学校を休まないことだ」

 

「……何、を……」

 

「士郎君とも、これまでどおり会いなさい。桜さんにもね」

 

 凛の指が絨毯へ食い込む。

 

「普通に過ごせと言っている。匂いも、漏れも、快感も隠して」

 

「誰が……あなたの、言うことなんか……」

 

「彼や妹君に気づかれれば、困るのは君だろう?」

 

 士郎。桜。学校。

 

 守りたかった日常の名を、資産家は鎖として一つずつ読み上げた。

 

 扉が閉まり、笑い声が遠ざかる。

 

 床に崩れた凛の腹では、精液の重さを太いバイブが揺らし、クリトリスではローターが勝手に強弱を変え続けていた。

 

 資産家が命じ、金髪たちが動き、この店が場所と客を用意した。相手は最初から一つの組織だった。その輪郭だけは、もう見誤らない。

 

 けれど、簡易結界を壊した魔術師だけが見えない。

 

 資産家を紹介したのはジェイクだ。繋がりは近すぎる。だが、それだけで彼を裏切り者だと断定することもできない。

 

 疑うには材料が足りない。

 

 信じ切るには、何もかもが近すぎる。

 

 ぐいんっ――ぶるるっ。

 

「あっ……ぅ……!」

 

 媚薬の熱に思考を断ち切られ、凛は床へ指を立てた。

 

 窓のない部屋でも、朝が近いことは分かる。

 

 制服を着る。学校へ行く。士郎と桜に、いつもの顔を見せる。

 

 その日常の下へ、貞操帯も、太いバイブも、ローターも、膣奥の精液も隠せと命じられた。

 

 組織の輪郭は見えた。

 

 分からないのは、その中に潜む魔術師の顔だけだった。

 

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