翌日―――。
翌朝の空気は澄み切り、山陰の豊かな自然を感じさせる爽やかな風が吹き抜けていた。
待ち合わせ場所である駅前のバス停に、澄也は約束の十分前に到着した。
バックパックを軽く背負い直し、スマートフォンの画面を覗き込む。
昨日交わしたグループメッセージには、美咲からの「楽しみすぎて早く起きちゃいました!」というメッセージと、が送ってきたお揃いのモーニングの画像が残っている。
「澄也さん、おはようございます!」
声をかけてきたのは美咲だった。
白いブラウスに爽やかなブルーのスカートをなびかせ、カメラのストラップを手に提げている。
その後ろから、大人っぽい落ちついた装いの結衣が「おはようございます」と柔らかく微笑みながら歩み寄ってきた。
「おはよう二人とも。いい天気になってよかったね」
「本当に! 今日の『角島大橋(つのしまおおはし)』、絶対に絶景ですよ! 予報もバッチリ快晴ですし」
美咲が興奮気味にスマートフォンの天気予報画面を見せる。
今日の目的地は、コバルトブルーの海を貫くようにまっすぐ伸びる一本の橋。
山陰・山口エリアでも屈指の美しさを誇る絶景スポットだ。
「昨日は公園でゆっくり過ごしたけど、今日は少し足を延ばすから、旅らしくなってきたね」
澄也が言うと、結衣が美咲のカメラをちらりと見ながら頷いた。
「美咲ちゃん、昨日の夜ずっとカメラの設定をいじっていたんですよ。『最高の写真を撮るんだ』って」
「結衣さん、そこは秘密って言ったじゃないですか~!」
少し照れたように抗議する美咲の姿に、澄也と結衣は思わず顔を見合わせて笑った。
昨日まではどこか互いに遠慮のあった三人の距離が、連絡先を交換したことで、一気に縮まったような気がした。
まもなくやってきたバスに乗り込み、一行は海沿いの路線へと揺られていく。
窓の外には、朝日に照らされてきらきらと輝く日本海が広がり始めていた。
「ねえ、澄也さん。橋に着いたら、最初にどこから写真撮りましょうか?」
「まずは高台の展望台から全体を見下ろそう。それから橋を渡って・・・・・・」
まだ始まったばかりの旅。
青い海へと続く一本の道を目指して、三人の新しい一日が今、動き出そうとしていた。
澄也たちを乗せたバスは海岸線に沿うように走り続ける。
海辺の景色が、流れるように車窓を横切っていく。
遠くまで広がる水平線に、小さな漁船が点々と浮かんでいるのが見え、潮風に揺れる松林が風情ある情景を作り出していた。
「澄也さんは、こういう長距離移動は慣れているんですか?」
結衣が静かに問いかけた。
澄也の左右に密着するように腰を下ろしている結衣と美咲。
車内には、他に客はいない。
「そうだね。一人旅が多かったから、電車やバスでの移動時間も結構長いことが多いかな」
澄也が答えると、美咲がすぐに話に乗ってくる。
「私も旅行が好きなので、時間があれば地方に行ったりするんですけど、こんなにのんびり景色を眺めながら移動するのは新鮮です」
美咲の目はキラキラと輝き、これから訪れる場所への期待が感じられた。
なぜか美咲はうふふと微笑を浮かべている。
美咲の手が澄也のズボンの前を撫でる。
そしてそのまま股間のものをさすり始めた。
――あ、あれ? 僕は夢でも見ているのか?
白い指が中の肉棒を取り出す。
「素敵、澄也さんの・・・こんなに大きい・・・」
「だめ、だ・・・」
消え入るような声には構わず、それを軽く握ると、前後に擦り始める。
「ふふ、どう? 気持ちいい?」
「あ、ああ・・・・・・」
美咲の手が上下に動くたびに、快感が押し寄せてくる。
もう完全に勃起していた。
――なんなんだ、この状況は? 俺は一体何をしてるんだ?
頭の中ではそう思いながらも、身体は正直に反応してしまう。そんな自分の体に嫌悪感を覚えたが、それ以上に気持ちよさが勝っていた。
美咲の手つきは巧みで、指先で亀頭を優しく包み込むように揉むようにして刺激を与えてくる。その度にピクッ、ビクッと反応してしまう自分が情けなかった。
「ねぇ、もっと声出してよ。我慢しないでさぁ?」
耳元で囁かれただけでゾクッとする感覚があった。それは決して不快なものではなくむしろ心地よいものだった。
「あっ・・・・・・はぁ・・・・・・」
「んっ、可愛い♪ もっと感じてる顔見せて?」
美咲はさらに激しく手を動かし始め、ついには先端から透明な液体が流れ始めた。
――すごいな、こんなにも濡れるなんて思わなかった・・・・・・
自分でも驚くほどの量だと思った。
しかしそれでもなお、彼女の手の動きは止まらない。
むしろより一層激しさを増していく一方だ。
――これ以上されたらまずい・・・・・・! 早く終わらせないとマズイことになるぞ・・・・・・!
理性とは裏腹に欲望に身を任せてしまう自分がいることに気づき愕然としたものの、それでもなお快楽に溺れ続けてしまう自分がいることを自覚せざるを得なかったのだ。
――だめだっ、もう出てしまう!
もう限界が近いことを悟ると同時に最後の力を振り絞って抵抗しようとしたのだが、それよりも先に射精が始まってしまったのだ。
ドピュッドピューっと勢いよく飛び出した精液を見て嬉しそうに微笑む少女に対して申し訳ない気持ちになりつつも満足感を得てしまっている自分がいたことには驚きを隠せなかったけれど・・・・・・
それでもやっぱり罪悪感の方が大きくて辛くなってしまうのは当然のことなのだろうと思いつつ・・・・・・。
澄也は左右の結衣と美咲のスカートをめくり、パンティの中に手を滑らせる。
「あっ、澄也さんっ・・・やぁっ」
「だめぇ・・・・・・」
そう言いながらもそれを待っていたような響きだった。
それに応えるように、それぞれの茂みの中の割れ目に指先を滑らせる。
「二人とも、もう湿ってきてるよ」
「いやぁ・・・恥ずかしい」
「言わないでくださいっ」
指を少し奥に入れると、ぬるっとした感触が返ってくる。
二人は頬を染め、潤んだ瞳でこちらを見上げてくる。
「んっ、そこぉ・・・・・・」
「だめぇ、気持ちよくておかしくなっちゃうよぉ・・・」
二人は甘い吐息を漏らしながら、体を震わせている。
指先が触れるたびに、柔らかい粘膜がキュッと締まるのが分かった。
「あっ、ああっ・・・・・・」
「いやぁ、だめぇ・・・・・・」
澄也の指の動きに合わせて、二人は小さく体を震わせる。
「も、もう・・・イキそうです」
「わたしもです。澄也さん、一緒に・・・お願いします」
懇願するような眼差しに応えるように、指の動きを速めた。
「あっ、あああっ! イクっ!!」
「わたしも、もうダメぇぇっ!」
二人は体を痙攣させながら達した。
肩で息をしながら、こちらを見上げてくる。
「はぁ、はぁ・・・・・・澄也さん、上手すぎますよ」
「本当ですね。でも、すごく気持ちよかったです」
二人は熱っぽい視線を向けてくる。
そうこうしているうちに、バスは角島大橋に差し掛かろうとしていた。
バスの揺れが小さくなり、車窓の向こうに突き抜けるような青が広がった。
「うわぁ・・・・・・! 見てください、澄也さん、結衣さん!」
美咲が思わず身を乗り出し、窓ガラスにペタリと手を当てる。
その視線の先――透き通るエメラルドグリーンとコバルトブルーが混ざり合う海の上を、一本の白い筋のように『角島大橋』がどこまでも真っ直ぐ伸びていた。
結衣も息をのむように呟き、その瞳に眩しい海の青を映し出している。
「本当に快晴になってよかったね。さあ、降りようか」
バスを降りると、潮の香りを孕んだ心地よい風が三人の頬を撫でた。
澄也たちはまず、高台にある展望台へと向かう。
坂道を少し登り、振り返った瞬間に広がるパノラマは、まさに絶景そのものだった。
「よしっ、最高の一枚を撮りますよ!」
美咲は昨夜熱心に調整していたカメラを構え、ファインダーを覗き込む。
「澄也さん、結衣さん! そこ、もう少し寄ってください! 背景に橋がぴったり入る感じで!」
「こうかしら?」
結衣がふふっと微笑みながら、澄也の隣へ一歩寄り添う。
ふんわりと漂う結衣の優しい香りと、少し触れ合う肩の体温に澄也の胸がわずかに高鳴った。
「はい、いきますよー! ハイ、チーズ!」
カシャリ、と軽快なシャッター音が響く。
画面を確認した美咲は、「完璧です!」と満面の笑みを浮かべて二人に見せてくれた。
青い海と空、真っ直ぐ伸びる橋、そして照れくさそうに笑う三人の姿が鮮やかに切り取られている。
「すごく上手。さすが美咲ちゃんね」
「へへ、気合入れましたから! ・・・・・・あ、次は三名でセルフタイマーで撮りましょうよ!」
美咲は三脚代わりにカメラを近くの台座にセットし、走って二人の元へ戻ってくる。
「はいっ、真ん中は澄也さんで!」
右側に結衣、左側に美咲。二人の距離がぐっと縮まり、澄也の腕にそれぞれの柔らかいぬくもりが伝わってくる。
「・・・・・・ちょっと近くない?」
澄也が少し困惑気味に呟くと、二人は顔を見合わせて楽しそうに悪戯っぽく笑った。
「いいじゃないですか、旅の思い出ですから」
「ふふ、澄也さん、緊張しないでくださいね」
『3、2、1――』
カシャリ。
澄み渡る秋空の下、青い海を背にした三人の笑顔が、かけがえのない今日のページを新しく刻んだ。
「さあ、次は橋を渡って島の中に行ってみましょうか!」
「ええ、美味しい海の幸も楽しみですね」
風を切って走り出す美咲と、それを優しく見守る結衣。二人の間に立ち、澄也は深く息を吸い込んだ。
始まったばかりの特別な旅は、青い海の向こうへとさらに続いていく。
高台の展望台を後にした三人は、坂道を下って角島大橋の袂へと向かった。
頭上に広がる空は雲ひとつない快晴で、風が吹き抜けるたびに海面の波が太陽の光を反射し、まるで細かく砕いたダイヤモンドを散りばめたようにキラキラと輝いている。
橋の歩道に足を踏み入れると、左右から迫るエメラルドグリーンの大海原が彼らを包み込んだ。
「うわぁ・・・・・・! 上から見るのもすごかったですけど、こうして橋の上を歩くと、まるで海の上を散歩しているみたいですね!」
美咲はカメラを首から下げたまま、はしゃいだ様子で両腕を広げた。
海風にショートヘアをなびかせながら、何度もファインダーを覗いてはシャッターを切っている。
「本当に・・・・・・吸い込まれそうな青ね」
結衣は愛用の日傘を少し傾け、遠くに見える角島の島影と水平線を眩しそうに見つめた。
風になびく長い髪をそっと手で押さえるその佇まいは、どこか絵画のワンシーンのように洗練されている。
「足元に気をつけろよ、美咲。夢中になりすぎて車道に出るなよ」
「大丈夫ですよ、澄也さん! ほら、澄也さんももっと海見てくださいよ。日頃の仕事の疲れなんて、一気に吹き飛んじゃいますから!」
美咲に言われ、澄也は橋の手すりに寄りかかり、遠くの水平線に視線を投げた。
都会の喧騒や日々の慌ただしさが、潮騒の音と澄んだ青の中に溶けていくような感覚を覚える。
「・・・・・・確かに、来てよかったな」
本音を漏らすと、隣に並んだ結衣が優しく微笑んだ。
「澄也さん、最近ずっと忙しそうでしたものね。美咲ちゃんがこの旅行を提案してくれて本当に良かったわ」
「ですよですよ! 私に感謝してくださいね、澄也さん!」
「はいはい、感謝してますよ。帰ったら何か美味いものでも奢る」
「やったー! 言いましたね! 記録しておきます!」
無邪気に喜ぶ美咲の姿に、澄也と結衣は顔を見合わせて笑い合った。
全長約1,780メートルにおよぶ美しい一本の道を渡りきると、角島独特の穏やかな時間が二人と一人を迎えた。
白い砂浜にはところどころ流木が打ち上げられ、周囲には防風林として植えられた松の木が静かに並んでいる。
美咲は持参した小さなサンドイッチと紙パックのオレンジジュースを取り出し、即席のピクニックを始めた。
砂浜にシートを敷き、靴を脱いで裸足で波打ち際へ走っていくその姿は、年齢よりも幼く見える。
結衣はシートの端に座り、静かにスマホでこの風景を切り取っていた。
彼女は決して多くは語らないが、こうして形に残すことの大切さを誰よりも理解しているようだった。
「美咲、あんまり水際に近づきすぎるなよ。日差しも強いし、熱中症になったら大変だぞ」
「はーい! でも見てください、澄也さん! 水、冷たくて気持ちいいですよ!」
澄也は結衣の隣に腰を下ろし、ぼんやりと美咲の背中を眺めていた。
この何気ない時間に、自分だけが感じている違和感──それも確かな記憶となって積み重なっていく。
「結衣」
澄也は結衣の肩に手を置く。
すると、彼女の肩が小さく震えた。
「・・・・・・なあに、澄也さん」
「ちょっと君に見せたいものがあるんだ」
澄也は立ち上がり、結衣を連れて歩き出した。
美咲には見えないように、視界の死角に入る。
そこには一本の大きな松の木が立っていた。
「ここが僕たちの──いや、君と僕の秘密の場所だ」
結衣の手を引き、松の根元に導く。
澄也は結衣の腰を抱きながら松の木に身体を押し付けた。
「あっ・・・・・・」
結衣は小さな声を漏らす。
そしてスカートの中に手を入れる。
「んっ・・・・・・」
結衣の身体が反応する。
澄也は構わず彼女の下着越しに指を滑らせ、大事な部分を刺激した。
「んっ・・・・・・っ・・・・・・!」
声が出そうになる結衣。
「だめ、美咲に気づかれたら・・・」
「大丈夫、見つからないから・・・」
澄也はさらに激しく結衣を愛撫する。
結衣は両手で木の幹にしがみつき、身体をL字に曲げ、尻を澄也に突き出す格好になる。
澄也は尻の狭間の、白い布地に覆われた敏感な部分に舌を這わせる。
「あっ・・・あんっ」
結衣は声を殺しながら、膝をガクガクとさせた。
澄也はそのまま口で愛撫を続け、器用に結衣の下着の左右の紐を解く。
「だめっ・・・澄也さん、人に見られちゃう」
しかし澄也は執拗に結衣を責め立てた。
結衣は全身を小刻みに震わせて、絶頂の波に飲み込まれそうになった。
澄也はズボンを脱ぎ、己自身を露出させる。
そして結衣の腰を抱え、それを押し入れていく。
「あっああん、す、澄也さんのが・・・入ってくるぅ~~~っ」
澄也はゆっくりと時間をかけて腰を押し進め、自身の全てを結衣の中に収めた。
「動くよ」
結衣は黙って頷く。
澄也は背後から優しく抽送を始めた。
「ああっ・・・っ・・・・・・」
澄也は徐々に激しく前後に動き始める。
「あ、ああっ! ああんっ! ああんっ!」
「気持ちいいかい?」
「っ・・・・・・! き、気持ちいいっ! 凄く気持ちいいっ!!」
「ここはすごく気持ちよさそうだね」
澄也は淫靡に濡れ光る結衣の秘部を激しく攻め立てる。
「ああんっ! ああんっ! だ、だって、澄也さんが・・・! ああんっ!」
「あんまり声を出すと美咲に気づかれるよ」
「あ、あんっ! だって・・・っ!! こ、こんなっ、ああっ・・・すごいぃ・・・っ」
「すごいよ、結衣の中・・・こんなにも締め付けて」
「あんっ・・・! ああっ、い、言わないでぇ・・・!! ああっ・・・あんっ!」
「これを噛み締めなよ。声を押さえられる」
澄也はポケットからハンカチを取り出し、結衣に差し出す。
結衣はそれを受け取る、それを口に咥える。
それを噛み締めて快楽の波を逃がそうとする。
だが、それでも結衣の口からは甘い吐息が漏れ続ける。
「んっ・・・んっ、んんんっ!!」
澄也は激しく腰を前後に振る。
二人の結合部から、ぬちゅっ、ぬちゅっと淫靡な音が響き渡る。
「んっ! んっ! んっ! んっ! んんっ!!」
「好きだよ、結衣・・・結衣っ」
「んっ! んっ、んんんっ!!」
「ほらっ、もっと腰を動かしなよ」
「んっ! んっ! んんっ!」
「もうすぐイクよ、どこに出してほしい?」
「んっ! んっ! んんっ!」
結衣は激しく首を振る。
しかし、それは拒絶ではない。
むしろ逆で、早く果ててしまいたいという意思表示だった。
「お望み通り、中にたくさん出してあげるよ」
「んっ! んっ! んんっ!!」
「ああっ、出る・・・っ」
その瞬間、澄也は激しく突き上げた。
「ああっ・・・っ!!」
結衣の身体が弓なりにしなる。彼女の中で何かが弾ける音が聞こえたような気がした。
同時に彼女は全身を大きく痙攣させて果てた。
「くっ・・・・・・!」
澄也は最後の一滴まで結衣の奥深くに注ぎ込むと、ゆっくりと自身を引き抜いた。
栓を失った結衣の秘部からは、大量の白濁液が流れ出てくる。
「はあ・・・・・・はあ・・・・・・」
肩で荒い呼吸を繰り返す結衣。
そんな彼女の頭を優しく撫でる澄也。
「結衣、大丈夫か?」
「はあ・・・はあ・・・だ、大丈夫よ。澄也さんこそ、平気なの? 疲れているのに・・・」
「もちろん平気さ。こうして結衣といると、なんだか力が湧いてくるよ」
そう言うと澄也は、結衣の唇を奪う。
「んっ・・・んんっ」
柔らかな舌先が絡み合う。
しばらくしてから唇を離すと、二人の間に銀色の橋が架かった。
結衣は乱れた服装を直すと、恥ずかしそうに俯いた。
「すみません、お待たせしました」
澄也は平静を装って美咲のもとに戻る。
「遅いですよー! 何やってたんですか?」
「ちょっと散歩してただけだよ。いい景色だったな、結衣」
「ええ・・・・・・とっても。澄也さんに教えてもらって、私は幸せ者ね」
そう言いながら顔を見合わせる二人を、美咲は一瞬だけ不思議そうに見つめたが、すぐに鼻をくすぐる美味しそうな匂いに気を取られたようだった。
潮の香りに混ざって、香ばしい醤油の焦げる匂いが漂ってくる。
「あ! 澄也さん、結衣さん! 見てください、あそこのお食事処、サザエのつぼ焼きとかイカ焼きって書いてありますよ!」
美咲が目ざとく見つけたのは、港の近くにある雰囲気のある小さな海鮮茶屋だった。暖簾をくぐると、気さくな店主が「いらっしゃい!」と威勢のいい声で迎えてくれる。
注文したのは、獲れたての鮮魚がこれでもかと盛られた海鮮丼と、香ばしく焼き上げられた角島名物の特牛(こっとい)イカの姿焼き、そしてサザエのつぼ焼きだ。
「ん〜〜っ! イカがすごく甘くて、柔らかいです!」
「お刺身も身が締まっていて美味しいわね。ウニも甘くて濃厚・・・・・・」
「やっぱり現地で食べる獲れたては段違いだな」
テーブルを囲み、新鮮な海の幸を堪能する。
美味しい料理と美味しいお酒、そして心地よい疲労感が三人の雰囲気をより一層柔らかく解きほぐしていく。
「ごちそうさまでした! ああ、お腹いっぱいです・・・・・・!」
満足げにお腹をさする美咲に、結衣も穏やかな笑みを向けた。
腹ごしらえを終え、店を出ると、外の空気は少しずつ柔らかい色を帯び始めていた。
食事を終えた後、澄也たちは島内をのんびりと散策することにした。
腹ごなしも兼ねて、角島のシンボルでもある御影石造りの「角島灯台」へと向かう。
入り口でチケットを買い、歴史を感じさせる105段のらせん階段を登っていく。
足を動かすたびに高くなる目線に胸を躍らせながら、最上階の風が吹き抜ける踊り場へと出た。
「すごい・・・・・・島全体が見渡せますね」
美咲が静かな声を漏らした。
先ほどまでの賑やかな雰囲気が少し落ち着き、目の前に広がる360度の大パノラマに息をのんでいる。
隣に立つ結衣も、目を細めて遠くの水平線を見つめていた。その横顔があまりにも美しく、澄也は一瞬言葉を失う。
「・・・・・・澄也さん?」
視線に気づいた結衣が、少し首をかしげて澄也を見つめ返した。その瞳には、夕暮れに向けて少しずつ色を変え始めた空のグラデーションが映り込んでいる。
「いや・・・・・・本当にきれいだなと思って」
「ええ、本当に・・・・・・素敵な旅ね」
結衣はふふっと微笑むと、澄也の手元へそっと自分の手を重ねた。
かすかな温もりが伝わり、澄也の胸が熱くなる。
先程の性宴の名残からか。
「あ! 二人ズルいです! 私も混ぜてください!」
振り返った美咲が二人の手を見つけ、すかさず割り込むように澄也の反対側の腕にぎゅっと抱きついた。
「こら、美咲、危ないだろ」
「いいじゃないですか! ほら、夕日が沈んじゃいますよ!」
美咲が指さした先では、昼間の鮮やかなブルーから一転し、空と海が黄金色と茜色が混ざり合う幻想的なグラデーションへと染まり始めていた。
角島大橋のシルエットが、夕暮れの海に美しく浮かび上がっている。
波の音が静かに響く中、三人は肩を寄せ合いながら、黄金色に染まる海をいつまでも眺めていた。
潮風が心地よく三人の頬を撫でていく。
始まったばかりの特別な旅の第一章は、最高の夕暮れと共に静かに幕を閉じ、そしてまた新しい思い出のページへと続いていくのだった。
三人はしばらく言葉を失ったまま、海と空が溶け合う黄金色の余韻っていた。
やがて太陽が水平線の彼方へと完全に姿を消し、群青色の夜の帳がしんしんと降りてくると、急に心地よい潮風が肌寒く感じられ始める。
「・・・・・・そろそろ、本日の宿に向かいましょうか」
澄也がそう声をかけると、名残惜しそうに海を見つめていた美咲が「はーい!」と元気よく返事をした。
腕に重なっていた結衣の手もゆっくりと離れ、少し名残惜しそうに指先がかすめる。
車へと戻る道中、すっかり暗くなった角島大橋を渡る。
昼間のエメラルドグリーンとも、夕暮れの黄金色とも違う、夜の海に灯る街灯の光が水面に揺れる幻想的な景色がバックミラーに映り込んでいた。
今夜の宿は、角島を臨む沿岸部に佇む一軒の温泉旅館だった。
数寄屋造りの趣ある門構えをくぐると、打ち水がされた石畳の先で、女将が丁寧なお辞儀で出迎えてくれる。
館内に足を踏み入れると、ほのかに香る畳と白檀のお香の香りが、旅の緊張を優しく解きほぐしていった。
「うわぁ・・・・・・! すごい、お部屋から波の音が聞こえますよ!」
通された離れの客室は、静かな海の気配を感じさせる上質な空間だった。
美咲は広々とした畳の上を弾む足取りで進み、広縁の椅子に座って闇に包まれた海を眺めている。
仲居が運んできた温かいお茶と和菓子をいただきながら一息ついた後、三人はそれぞれ敷地内にある源泉掛け流しの温泉へと向かうことになった。
男湯の広々とした檜風呂に身を沈めると、澄也は深く息を吐き出した。
一日のドライブの疲れと、昼間の賑やかな時間が遠い出来事のようにじわじわと解けていく。
湯煙の向こう、露天風呂からはかすかな波の音と、星空が広がっていた。
しばらくして湯上がりの処へ向かうと、既に湯浴みを終えた結衣と美咲が待っていた。
ほんのりと頬を桜色に染め、しっとりと濡れた髪をまとめた二人の浴衣姿は、昼間のカジュアルな装いとは全く異なる艶やかさを纏っている。
「澄也さん、お風呂気持ちよかったですね!」
「本当に・・・・・・いいお湯だったわ。お肌がすべすべになるみたい」
湯上りの火照りを覚ますために用意された冷えた麦茶を酌み交わしながら、三人は部屋へと戻った。
室内の照明を少し落とし、行燈の柔らかい光が畳を照らす中、澄也が売店で買っておいた地酒と地ビールを取り出す。
「それじゃあ、無事に初日を終えられたことに・・・・・・乾杯しようか」
「「乾杯!」」
グラスが小さく澄んだ音を立てる。
冷えたお酒が喉を潤すと、美咲が満足そうに息をつき、膝を抱えて澄也と結衣の顔を交互に見つめた。
「ねえ、澄也さん、結衣さん。今日の旅行、本当に楽しかったです。灯台からの夕日、一生忘れないかも」
「ふふ、美咲ちゃんたら大げさね。でも・・・・・・本当に素敵な時間だったわね」
結衣の視線がそっと澄也へ向けられる。
灯台の上で重ねた手の温もりが、今も胸の奥に残っているかのように、二人の間に甘く静かな空気が流れる。
美咲もそれに気づいているのか、少し悪戯っぽい笑みを浮かべながら、澄也の肩にちょんと頭を預けてきた。
「明日はどこに行きますか? わたし、もっとたくさんの思い出作りたいです」
昼間の賑やかな余韻と、温泉と酒の酔いがもたらす心地よい微睡み。
「ねえ澄也さん、私・・・もう酔いが回ってきたみたい・・・」
そう言いながら澄也の胸元を撫でる美咲。
澄也も少し赤らんだ頬で微笑み返す。
その唇に美咲の唇が重なる。
「・・・・・・!?」
畳の上に倒れる澄也と美咲。
そんな様子を、結衣は湯上がりの髪を整えながら、柔らかい笑みを浮かべて見守っていた。
美咲の唇が澄也の胸を伝う。
澄也の寝巻きの帯を解いた時。
「あっ、こら!」
澄也が両手で隠すより早く、美咲の細い指先がそこへ伸び、熱くなった男根の先端に触れた。
「わぁ、すごい・・・・・・もうこんなに硬くなってる」
結衣の白い指が、まるで宝物でも扱うように優しく動く。
最初はゆっくりとした動きだったが、次第にリズミカルに上下に滑らかに動く。
「あっ、あっ」
澄也の声が小さく漏れ、それを聞いて美咲が嬉しそうに目を輝かせる。
「もっと気持ちよくなってくださいね」
そう囁きながら、先端を口に含む。
「んっ、んっ・・・」
結衣の指、唇、舌が与える快感が、澄也のものを否が応でも昂らせていく。
やがて、美咲の上品な指先が、根元から先端までをゆっくりと、しかし確実に刺激する。
澄也は歯を食いしばりながら、美咲のその仕草と手の感触に身を委ねていた。
「どうですか、気持ちいいですか?」
美咲の囁きに、澄也は曖昧に頷くことしかできない。
やがて、込み上げる衝動に逆らえず、彼女の手の中で果ててしまう。
「んっ、熱いです・・・・・・」
放出されたものを受け止めた美咲は、悪戯っぽく微笑む。
「いっぱい出ましたね、澄也さん」
少し息を切らした澄也が、照れくさそうに笑う。
そんな二人のやり取りを、結衣は静かに見つめていた。
その瞳には、嫉妬や寂しさよりも、慈愛に満ちた温かさが宿っている。
美咲の奔放な愛情表現と、それを受け入れる澄也。
その全てを包み込むような結衣の存在が、この歪ながらも穏やかな三角関係を保っていた。
「ん・・・・・・くふぅ、ん」
「んぅ・・・くぅん・・・っ」
畳の上に倒れ、互いの女体を絡み合わせる結衣と美咲。
今再び始まる友人同士のレズプレイ。
「結衣さんの身体・・・すごくきれい・・・」
「美咲ちゃんも、可愛いわ・・・」
浴衣を脱いだ澄也は、結衣の後ろに回ると、ゆっくりと彼女の浴衣を脱がしていく。
そして後から結衣の胸を揉んでいく。
「結衣のおっぱい、大きくて・・・柔らかいな」
「あ・・・ん・・・・・・」
結衣の唇から悩ましい吐息が漏れると、美咲がそこに吸い付くようにキスをする。
「んっ・・・はぁ、ん・・・」
唇を吸われながら、乳房を愛撫されるという行為は、結衣の心を強く乱していく。
「あ・・・はぁ・・・っ・・・あん・・・っ・・・」
やがて二人の唇が離れた時、唾液が糸を引いた。
その淫靡な光景に興奮したのか、澄也はさらに激しく結衣の胸を揉みしだく。
「んっ、あぁ・・・・・・」
美咲は結衣の両足を左右に開き、彼女の聖地に顔を埋める。
「えへへ。結衣の愛液、いただきまーす」
そう言うと美咲は結衣の割れ目に舌を這わせる。
「あぁっ!?」
突然訪れた刺激に驚き、思わず大きな声をあげてしまった結衣だったが、すぐに恥ずかしくなり、両手で口元を押さえてしまう。
そんな姿を見て楽しげに笑うと、再び股間に顔を近づける。
「ふふ、結衣さんのココ・・・すごく濡れてますよ」
「あ、あまり見ないで・・・・・・」
羞恥心からそう懇願する結衣であったが、それは逆効果であると言えるだろう。
美咲の嗜虐性を煽るだけであり、さらなる辱めを受けることになるのだ。
「やぁん・・・・・・!」
敏感な突起を弄ばれる快感に身悶えながらも、必死に声を抑えようとする姿に、美咲はますます興奮していく。
澄也は今度は美咲の後ろに回ると、白い尻の狭間に顔を埋める。
そして美咲の女の部分に口づけ、舌を這わせる。
「澄也さんっ、ああんっ!・・・そんなところ舐めちゃ駄目・・・ですぅ」
「美咲のここも・・・エッチなぬるぬるが溢れてるぞ」
「あんっ!やだ・・・・・・」
顔を真っ赤にして悶える美咲。その様子を見て楽しむように、澄也はさらに執拗に責め続ける。
「ほら、もっと感じてくれ」
「だ、ダメぇ・・・これ以上されたらおかしくなるぅ」
涙目になりながら訴える美咲に対し、結衣も加勢するようにその胸に手を伸ばす。
「美咲ちゃん、我慢しないで・・・」
「ひゃうっ!?」
不意打ち気味に与えられた快感によって、美咲の身体が大きく跳ね上がる。
美咲は前後に揺れながら喘ぐ。
「だめぇ・・・・・・だめだめぇ」
「さあ、美咲のお待ちかねのものだよ」
澄也はそう言うと美咲の腰を抱え、自身の武器を押し入れる。
「ああん! 澄也さんのが・・・いっぱい、いっぱい入ってくるよぅ・・・!」
すかさず澄也のピストン運動が美咲の下半身を襲う。
美咲の女性器に澄也のペニスが出入りする。
「はぁん・・・っ! すっごい気持ちいいですぅ!!」
美咲は蕩けた表情を浮かべつつも、懸命に腰を動かす。
その度に結合部からは愛液が流れ出し、二人の腿を伝っていく。
そんな姿を見つめている結衣の瞳も潤んでいる。
「美咲、よがってばかりいないで、結衣の方も愛してあげてよ」
「は・・・はいぃ」
美咲は力なく返事をすると、結衣に向き直り、再びその女陰に口付けた。
「はぁんっ、いいっ、いいわぁ・・・。もっとぉ、もっと私を可愛がって・・・!」
「ほら、どうだい美咲」
「は・・・はい・・・。すごく・・・大きいですぅ・・・・・・」
その言葉を聞き、澄也は満足げに微笑む。
そして、さらに激しく抽送を繰り返す。
「あぁっ、ああっ、すごっ、すごいぃ!」
美咲の口から発せられる嬌声のボリュームが上がっていく。
その瞬間、彼女の身体が弓なりに反った。
「はぁっ!もう・・・だめぇ!」
「美咲。写真の腕も一級だけど、セックスの方も一級だね」
「あ・・・あ・・・嬉しいです・・・」
澄也はそう言いながらも、まだ抽送の速度を緩めない。
そのせいで美咲は絶頂から降りてくることができず、ただひたすらに快楽に翻弄され続ける。
「あぁぁっ!やあぁんっ!」
「どうだい、気持ちいいかい?」
「は、はいぃ・・・・・・でも、もう・・・・・・」
「イキたい? じゃあ、『私の中にいっぱい出して下さい』って言ってごらん。そうしたらイカせてあげる」
「は、はいぃ。わたしの中にたくさん下さいっ!」
「よく言えたね。じゃあご褒美だ」
そう言って、美咲の膣内へ射精する。
「あぁぁぁっ!!出てるぅぅ!」
熱いものが注ぎ込まれる感覚に、美咲は再び達してしまう。
「はぁ・・・はぁ・・・」
澄也はぐったりしている美咲を傍に寝かせると、畳の上に仰向けになる。
「結衣。今度は君が僕の上に跨ってごらん」
「はい、分かりました」
そう答えると結衣はゆっくりと立ち上がり、浴衣を脱いでいく。
そして全裸になると、澄也の腰に跨る。
反り返った先端が、結衣の秘唇に触れる。
結衣が体重をかけると、肉柱は一気に奥まで呑み込まれていった。
「あふぅ・・・・・・んあっ!」
結衣は澄也の腹に手を添え、ゆっくりと腰を上下させる。
「あっ、あっ・・・す、澄也さん・・・素敵・・・」
結衣は目を閉じ、一心不乱に身体を動かす。
やがてその動きは徐々に速まっていき、それに伴い二人の呼吸も荒くなる。
「はっ、はっ、はっ、あっ、いいっ!」
「結衣さん・・・すごいです・・・やっぱり、この体位が感じるんだね」
「あうっあうっ、だ、だって・・・!」
澄也も下から突き上げるように、結衣の奥を叩く。
「あっあっ、そんなに・・・コンコンしないでぇ・・・」
澄也はそんな結衣を愛おしげに見つめると、唇を重ねてきた。
「んんっ!?」
突然の出来事に戸惑う暇もなく、そのまま舌を差し込まれる。
「ぷはぁっ、す、澄也さん・・・・・・」
「もう我慢できないよ」
「私も・・・もうだめです・・・。い、一緒にぃ・・・・・・!」
その言葉と共に、再び結衣の子宮口がノックされ始める。
「ああぁぁ! もう駄目ぇ・・・・・・!!」
限界を迎えた瞬間、結衣は身体を痙攣させながら果てた。
「うう、結衣さん・・・出すよっ!」
「あああっ!」
再び熱い奔流が膣内に流れ込み、結衣は再び背筋を仰け反らせる。
「あ・・・あ・・・」
全身から力が抜け落ち、そのまま前に倒れ込む。
澄也は彼女を優しく抱き留めると、その頭を撫でてやった。
「気持ち良かったよ。ありがとう」
「い、いえ・・・・・・こちらこそありがとうございました・・・」
そう言うと、結衣は恥ずかしそうに俯いてしまった。
その様子を見て、澄也は微笑みを浮かべる。
「ああ、楽しかった。二人とも、可愛かったよ」
「ありがとうございます。なんだか・・・・・・不思議な感じです」
「私も・・・・・・なんだか変な感じです。でも嫌じゃありませんでした」
窓の外で繰り返される波の音に包まれながら、三人の特別な夜は、ゆっくりと、そして濃密に更けていった。
山陰の眩しい太陽と潮風に包まれた数日間の旅は、瞬く間に過ぎ去っていった。
最終日の夕暮れ。都心へと戻る特急列車の窓からは、茜色から群青色へと移ろいゆく空と、遠ざかっていく山陰の静かな街並みが映し出されていた。
車内には、ガタゴトと規則正しく響く線路の音だけが穏やかに流れている。
隣の席では、連日の観光で動き回った美咲が、カメラを膝に乗せたまま心地よさそうに小さな寝息を立てていた。
その隣で、結衣は静かに文庫本を開いていたが、ふとページをめくる手を止め、窓の外を眺める澄也に視線を向ける。
「・・・・・・もうすぐ、日常に戻ってしまいますね」
結衣の小さな声に、澄也は振り向いて優しく微笑んだ。
「そうだね。でも、なんだか来る前とは少し気分が違うよ。あんなに慌ただしかった毎日が、すごく愛おしく思えるというか」
「ふふ、澄也さんらしいわ。私も・・・・・・大学に戻ったらまた忙しい日々が始まるけれど、この旅の思い出があれば、頑張れそうな気がします」
結衣はそう言うと、美咲を起こさないようにそっと身を乗り出し、澄也の手に自分の手を重ねた。
温泉街の夜や角島灯台の夕暮れと同じ、柔らかく温かい感触。澄也もその手をそっと握り返す。
「楽しかったね、本当に」
「ええ。偶然カフェで席を探していたあの日から・・・・・・こんなに特別な時間になるなんて、思いもしませんでした」
そのとき、膝の上のカメラがかすかに揺れ、美咲が「ん・・・・・・」と目をこすりながら起き上がった。
すばやく手を離した澄也と結衣の様子に、美咲は眠そうな目をしばたかせながら、悪戯っぽく口元を緩める。
「~っ、二人とも! 私が寝てる間にズルいです!」
「美咲ちゃん、声が大きいわよ」
「だって~! ・・・・・・あ、もうすぐ着いちゃうんですね」
美咲は少し寂しそうに窓の外を見つめたあと、すぐに気を取り直したようにカメラを起動し、液晶画面を二人に見せた。
「見てください。この数日間で撮った写真、こんなにたくさんありますよ!」
そこには、あの満席のカフェでのぎこちない笑顔、角島大橋の絶景をバックにした眩しい笑顔、海鮮料理店での満足げな表情、そして夕暮れの灯台で肩を寄せ合った三人の姿が鮮明に映し出されていた。
一枚一枚捲るたびに、旅の匂いや波の音、肌に触れた温もりまでが蘇ってくるようだった。
「あとでグループメッセージに全部送りますね。・・・・・・あ、それと!」
美咲は身を乗り出し、澄也と結衣の顔を交互に見つめた。
「『楽しかったね』で終わらせませんからね? 都内に戻っても、大学の課題が落ち着いたら絶対また集まりましょう! 澄也さん、奢ってくれるって言ったイカ焼きの代わりの美味しいご飯、楽しみにしてますから!」
「ああ、約束するよ。また三人で美味しいものでも食べに行こう」
「ふふ、楽しみにしていますね」
結衣も柔らかく微笑み、三人は自然と顔を見合わせて笑い合った。
列車がホームへ滑り込み、ドアが開く。
立ち込める都会の空気と賑やかな雑踏が、彼らをいつもの日常へと引き戻していく。
しかし、胸の奥に残る潮風の香りと、連絡先に刻まれた新しい繋がりは、確かな現実としてそこにあった。
偶然の出会いから始まった山陰の旅。
それは単なる思い出として終わるのではなく、三人の新しい関係性の、始まりのページに過ぎなかったのだ。
完