※この作品はR-18です。

平々凡々無味単調   作:蹉跌

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第四話 入寮生歓迎会

 

 豊芦原学園第十一男子寮、通称『丹頂荘(たんちょうそう)』、そこが僕が暮らすことになっている学生寮である。学園からは徒歩25分程度で、近いとはお世辞でも言えない距離だ。通えない距離でもないので、毎日の通学が億劫になるが、まあ仕方がないだろう。もっと遠い学生寮もあるというので、そこよりマシだと自分を納得させておく。

 

 入学式、そしてクラスでのオリエンテーションが終わり、寮へと帰って来た。玄関をくぐると先輩方が今日行われる新入寮生の歓迎会の準備をしてくれているようだ。

 

「やあ、おかえり。18時から始まるからそれまでに食堂に来てくれ」

 

 こちらに気づいた先輩が声をかけてくれる。

 

「あ、はい。わかりました。今日はよろしくおねがいします」

 

 こうして気軽に話しかけてくれるのはありがたい。とてもやさしそうな先輩である。だけど、そんな先輩もやることはやっているのだと思うと、この学園がより異様に感じる。

 

 三階の自室に戻り荷物を置く。そして改めて今日受け取った各種資料に目を通す。翠先生の話は真剣に聞いていたつもりではあったが、あの環境ではまともに頭に入らない。勘違いしていたり、抜けていたり、わかったつもりになっていることも多いだろう。

 

 今日聞いたことを一通り確認した後、一番気になっていたもの、電子学生手帳を手に取る。いろんな機能のついたハイテク機械、ポケットに入る薄いカード状で表面はモニターになっている。裏面に校章、学園名が刻まれている。かなり高額らしい。一時貸与であるとのことなので、大事に扱わなければならない。弁償はしたくないから。

 

 最初から目を通していく。身分証を兼ねた個人情報が載ってある。名前の他に、『レベル』、『EXP』、『クラス』などが表示されている。まだ、ダンジョンに潜っていないのでどれもが初期状態だが、まさにゲームのステータスのようで、ちょっとテンションが上がった。

 

 フリックで捲ると校歌、学園沿革、校則規約、生徒会組織、施設の利用規約などの項目が並んでいる。パラパラとめくっただけでも何ページにもわたっており、こんなの覚えるどころか読み切ることさえ難しい。覚えておけば有利に進められるのかもしれないので、いずれ時間を取って読み込もう。未来の自分に期待して、今日は読み飛ばすことにした。

 

 そうこうしていると、寄り道をしてくると言っていた銀二が帰って来た。ガチャリと扉が開き、

 

「うっす、ただいま」

 

「おう、おかえり」

 

 もう何日もこの部屋で過ごしていると、そんな挨拶も自然にこなせるようになっている。

 

「いや、やっぱりすげぇな、この学園。普通に外でやってる。考えられねぇ」

 

「本当すごいところだよなぁ」

 

「俺らもしばらくしたらああなってると思うか?」

 

「うーん、想像できないなぁ。まあ、でもそうなってるんじゃない?」

 

「やっぱり? 今のところできる気は全くしないけど」

 

「それはそう。クラスの子も可愛い子ばっかりで、こっちから声かけられる気もしないよなぁ」

 

「マジマジ、この学園レベル高くない?」

 

「いや、本当それ。かわいい子多すぎ。いや、かわいい子しかいない。それに先生も美人。見てるだけで幸せだよなぁ。それだけでこの学園に来た甲斐ある。って言いたいんだけど……」

 

「「はぁ」」

 

 同時にあの存在のことを思い出しため息をつく。

 

「あー、マジなんだよあれ。ありえんだろ」

 

「怖すぎだよなぁ。化け物だよ、化け物。何人か殺しててもおかしくないでしょ」

 

「いや、さすがにそれはないだろ。ない、って思いたいなぁ。うん、そうじゃないと困る」

 

「あーあ、あれさえなかったら最高のクラスだったのになぁ。先生美人だし、可愛い女の子多いし……」

 

「まあなぁ、あれさえなかったら、もっと楽しかったのかなぁ」

 

「あー、やめやめ。もっと楽しいこと考えようぜ。せっかくこんな学園来たんだ。そうじゃないとやってられん」

 

「そうだな。あ、そうだ、あの噂知ってる?」

 

 なんて感じでそのあとは、先生の噂の事や、クラスの可愛い女の子のこと、ダンジョンの話など、とりとめもないことを話して時間をつぶした。

 

 丹頂荘(たんちょうそう)一階の食堂。

 

「かんぱーい!」

 

 先輩のその音頭とともに手に持ったグラスを口につける。新入寮生歓迎のパーティーが開催されていた。普段よりも豪勢な料理が並べられ、アルコール厳禁なはずなのに並々とグラスには麦色の液体が注がれている。

 

 懐かしい。久しぶりに飲んだこの味に懐かしさを覚えるとともに、苦いこの味が今の自分の口に合わないことに笑いがこぼれる。ああ、確か昔は嫌いだったか、なんて前世の若かりし頃を思い出した。

 

 ワイワイガヤガヤとにぎやかな時間が過ぎていく。となりに座った先輩に近況を訪ねられたり、いろいろアドバイスをもらったりした。これからの学園生活に有用なものも多く非常に参考になる。やっぱり現場の声というのは大事だ。

 

 一発芸をする先輩を見て笑い、無理やり引っ張りだされてダダ滑りする同級生の姿に共感性羞恥で恥ずかしくなったりもした。

 

 優しい先輩が多い印象を受けるが、この会を開いてくれている先輩が優しいだけ。素行不良な先輩たちは自室で女を抱いているか、外でやりまくっているかのどちらかで、そもそも危ない先輩はここには来ていない。

 

 途中ちらほらと食堂から出ていく先輩らや、同じ一年の同輩たちの姿を見かけた。一度出ていくと帰ってくるのが遅い。帰ってきたら帰ってきたでなにやら恍惚な表情をしている。ああなるほど、そうか。彼らは先輩にイケナイ遊びを教えてもらっているのだ。寮に連れ込まれて肉便器扱いされている女子を使わせてもらっているのだろう。

 

 それが少しうらやましくはある。もちろんセックスはしたい。しばらくまともに射精もできていない。ただ生活しているだけで、エロシーンが当たり前に行われていれば、ムラムラしてしまうのも必至である。だがしかし、せっかくこんな学園にまで来たのだから、可愛い子がたくさんいるのだから、初めてくらいこだわりたい。初めては精液で汚れまくった女の子ではなく、綺麗な女の子とラブラブセックスがしてみたい。ファーストダイブを生き残り、パーティーメンバーになってくれた女の子と仲良くなって、もっとたくさんの女の子に囲まれるハーレムを作って、そして、欲望のままに酒池肉林の日々を送るのだ。そんな夢があった。そして、それが叶えられると思っていた。

 

 こだわりがなければ今すぐにでも簡単に童貞を捨てることができるだろう。だが、だからこそ妥協したくなかった。初めての相手、初めてのシチュエーションぐらいは大事にしたい。転生者である主人公な自分はそれを叶えられるのだ。

 

 ほんの少し、いやかなり後ろ髪をひかれている。もっと強く引き止められていたら誘惑に負けていたかもしれない。それほどまでに、興味はひかれている。年ごろの体は、誰でもいいからセックスさせろと言っている。だが、それでも輝かしい未来のために、素晴らしい毎日を送るために、泣く泣くあきらめて自分の部屋へと戻ったのだった。

 

 先輩らには明日ダンジョンダイブがあるからと断りを入れて、銀二とともに適度なタイミングで自室に戻る。重い足を無理やり動かして三階の部屋へと戻る。銀二とはそうしようとあらかじめ相談して決めていた。これまで何度誘惑に負けそうになったことか。なぜ我慢しなければいけないのかとイライラもしている。アルコールによってふわふわした頭で、これからの輝かしい未来を考えながらベッドに倒れこむ。風呂やら準備やらは明日の朝でいいや。なんて、すぐ先の未来の自分に後のことを託して眠りについた。

 

 

 

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