よーし、これから女の子といっぱいエッチなことしちゃうぞー。
なんてことができるのなら苦労はしない。それができているならもうすでにやっているし、女の子に近づかれて戸惑ったりもしない。もっと積極的に女の子と交流をもっているだろう。結局、思うだけで僕はなにもできないのだ。人は死んでも変わらない。それを自分の身で確かめてしまった。
寮の食堂で調理師さんが作ってくれた夕食を食べ、風呂に入って体を奇麗にして、寮の自室でくつろぐ。
「それにしても、普通に死んだなぁ」
なんてぼやくことができるのも、今日が清掃当番ではないからだ。廊下や一階フロアの清掃は新入寮生が担当、普通ではありえないような汚れが往々にしてあるのでとても作業が大変になる。体液、吐しゃ物、排泄物などが当たり前のようにぶちまけられており、近づきたくもないものばかり。この寮に入ってから何度か当番になったけど、普段でさえ嫌なのだ。ましてやファーストダイブを終えた今ならなおさら嫌である。肉体的には疲れていないが精神的にはとても疲労している。記憶にないとはいえ、死んだことによるストレスが残っている。なんだか調子が悪い。こんな日は特に掃除なんてしたくない。だから、今日が掃除当番ではないことに非常に感謝している。
明日の準備を済ませてしまい、空いた時間に教科書をぱらぱらとめくる。迷宮概論の教科書、今まで全く触ったことのない分野の書物である。適当に読んでみたのだが、ダンジョンやジョブ、モンスター、レベルにスキルなどが当たり前に真面目に書いてある。まるでゲームの攻略情報冊子のようだ。
「マジでゲームっぽいよな」
なんて、同じく教科書を眺めている銀二が言う。
「確かにな。こんな学園があるなんてついこの間までまったく知らんかった」
「ああ、そうだな。最初に聞いた時はドッキリかと思ったぜ」
「ほんとそれ」
「で、どうするよ、これから?」
銀二は手に持った迷宮概論の教科書をぶらぶらと振っていた。言いたいことはわかる。
「ダンジョン? まあ、適当に潜ればいいんでしょ。ノルマだけクリアすればいいらしいし」
「おいおい、昨日までと言ってること違うじゃねえか」
「いや、今日のダイブで心変わった。これやばいわ。記憶ないけど、まだちょっと体震えてる。よっぽど怖い目にあったんだと思う。わからんけど……。本当かどうか知らんけど、死にまくったらダンジョンから帰ってこれないって噂もある。だから、死なないように適度に頑張ればいいかなって」
「まあ、そうだよな。お前が本気で挑むってなこと言ってたから、俺もそれに乗っただけだしな。正直、可愛い女の子とセックスしたい。なんなら先生でもいいし。いや、先生でもいいって高望みだよなぁ、本来ならな」
「それはそう。あー、でもセックスばっかりするのはある程度レベル上げてからの方がいいらしいよ、さすがに。クラスチェンジするまでの経験がジョブに結構影響あるのは確からしい」
「ん? いや、攻略する気なかったら別になんでもいいんじゃね?」
「あー、遊び人になったらノルマクリアも難しくなるだろ? さすがにエンジョイ勢にはなる気はないよ」
「あぁ、それは確かに嫌かもなぁ」
「まあでも、まったくしないってのは無理そうだ」
「そりゃあ、この環境じゃあ仕方ないだろ」
「ああ、それでさぁ、やっぱり最初は先生が良いんじゃないかって思うんだ」
「ん? 平太は前にクラスメートがどうとか、初めて同士がどうとか言ってなかったか?」
「うん、確かに言ってたけど……。改めて考えたらさぁ、もうすでにほとんどの女子がセックスしてると思うんだよ。で、今積極的なやつってセックスが上手いやつだろ? そんなのと比べられたくない。童貞の僕じゃあ、上手くやれる気もしない……。そこで、先生ってわけ!」
「あー、なるほどね。先輩も言ってたけど、先生って俺らみたいな男の救済措置で練習用らしいな。何日も犯されなかったら死ぬみたいだし、先生の為だって思えば抵抗も少ない。その上、美人」
「うん、美人。それに尽きる。たぶんあの後、男子は直接部屋に行ってヤッてるんじゃない? 僕らみたいに性欲溜まってるだろうからね」
「まあな、俺もお前にジョブの事聞いてなかったら行ってたと思う」
「あぁ、それについては悪いな。あとちょっとだけ我慢してくれ。話しをまとめると、適当に潜ってレベル上げていく。我慢ができなくなったら先生とセックスして性欲解消するって感じかな」
「そうだな、それで行くか」
「まあ、それもこれも、仲間と相談してからの話になるけど……」
「ああ、燈子ちゃんと理奈ちゃんか。まだ俺らとパーティ組みたいって言ってたけど、あれってもしかして……」
なんて期待したような顔をする銀二に、
「いや、ないない。僕らだよ? ありえないでしょ。キープどころか単なる防波堤代わりが関の山、決まった男がいる女の子には声かけにくいって言うし、自己防衛に過ぎないんじゃない? ほら、僕らって無理やり襲わなさそうな男だしね」
「あんなエロい格好しておいて? もう何度も犯してやったね! 脳内で……」
「あはは。もしかしたらいつかはできるかもしれないよ?」
「ああ、そうだなぁ。まあでも、無理やりやって嫌われたくないし」
「うん、それは本当にそう。どんな理由かはわからんけど、せっかく仲間になってくれたんだし、嫌われたくないな。いざセックスすることができたときに下手だって思われたくないし、だから練習もかねて先生にお願いしようってことで」
「ああそうだなぁ、そうするか」
「まあ、それはそれとして、どっちがタイプ? ほら、万が一いい雰囲気になった時さ、もめたくないじゃん? だから、あらかじめ決めとこうぜ」
「そうだなぁ。うん、万が一そういう雰囲気になるかもしれないしな。いやぁ、甲乙つけがたい。どっちも可愛いしなぁ。燈子ちゃんは純粋に可愛いし、里奈ちゃんはちょっとむっちりしてるところとかいいよなぁ。あ、でも里奈ちゃんの方が従順そうだし……」
その後は、ダンジョンの話はそこそこに猥談が大半を占めた。あの子可愛い、あの女の子はエロい、これまでのセックス現場についてや、痴女にまつわる都市伝説。どういう女の子が好みなのか、とか、自分の性癖、好きなシチュエーションなど、今まで以上に深く語りあった。つい先日までの主人公らしく行動しなければならないなんてありもしない使命にとらわれていたころに比べて、上を目指すことを諦めて友人と馬鹿話ができるような今の方がよっぽど楽しい。