※この作品はR-18です。

平々凡々無味単調   作:蹉跌

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第八話 お買い物

 

 そんなこんなで、どうにかこうにか一週間をやり過ごした。何度も誘惑に負けそうになりつつ、明らかにセックスしているだろう同級生を見て嫉妬に狂い、時々こちらを見る叶馬に恐怖し、しれっと脱童貞していた銀二と本気で喧嘩になり、それでも何とかここまでたどり着いた。ああ、長かった。正直途中であきらめてしまいそうだった。我ながらよく耐えたものである。こんなつらい日々もあと少しの辛抱、ダンジョンでの探索が待ち遠しい。

 

 セックスせずに一週間を過ごすことができたのは、ただ、女の子を誘う勇気、無理やり襲う気概がないだけなのは秘密。

 

 翠先生による迷宮概論『安全なダンジョン施設の利用方法について』という謎講義が終わり昼休みの時間。僕、銀二、燈子、里奈のいつもの四人組で集まる。今日までの間に何回か意見をすり合わせたことで、それなりに仲良くなれたと思う。その四人で連れ立って学生食堂へと向かう。途中、「舐めろというなら足を舐める」なんていう静香の声にひそひそと悪趣味だとか、かわいそうとかおしゃべりできるくらいには、クラスの皆も叶馬の扱いには慣れてきていた。

 

 学生食堂で食事をとる。常時日替わりランチが三種類あるのは成長盛りの男子にとってはうれしいことである。大盛りも無料で大変ありがたい。どんどん食べて体力をつけなければ。今日は和食のAランチを選ぶ。洋風ランチや中華風のランチも捨てがたい。どのランチもおいしいので毎日迷いどころである。

 

 女の子と一緒に雑談をしながら食べる。それだけのことで緊張する。何をしゃべればいいのかいまだにわからない。いつかはこれも普通になるのだろうか? うまく会話をしている自分を想像することもできない。基本聞き役に徹する。問われたことには答える。銀二はそれなりに頑張っているが、あたふたしていて共感性羞恥もすごい。

 

 全員が食べ終わったところを見計らった燈子が、

 

「それで、今日これからのことなんだけど。購買部行って、しばらく時間つぶしてからダンジョンってことでいいよね?」

 

 と、意思確認をしてくる。

 

「あ、うん」

 

「そう約束してたし、問題ない」

 

 少し緊張した様子を見せていた燈子は、それを聞いて安心した表情を見せた。急に意見を変えられるなんてことを考えでもしていたのかもしれない。何せこの学園では男の気まぐれに女が振り回されるのが常なのだから。 

 

「それにしても、ようやくダンジョン開放か」

 

「ああそうだな。思ったより長かった」

 

「怖いっちゃ怖いけど、楽しみではあるよな」

 

「楽しみ」

 

「楽しむだけじゃだめだよ。補習は嫌!」

 

 本気で嫌がる様子を見せる燈子に慌てて、

 

「わかってるって!」

 

 と返答するも、

 

「本当かなぁ……」

 

 疑わしい目つきで見られてしまう。

 

「なんて、冗談だよ、冗談。あはは」

 

 そんなとりとめもないような会話でもなれない僕にとっては心臓に悪いものである。

 

 燈子は冗談だと言ってはいるが、あながち本気で疑っているのも間違いないだろう。心配していると言い換えてもいい。この学園は生徒の自主性を尊重する気風で、午後からの時間は自由。だからこそ、補習を受け続ける生徒が後を絶たないのだ。一度補習送りにされると、女子であれば元の生活に戻るのは難しそうだ。そうならないためにも彼女らは必死なのだろう。できる限りダンジョン探索に出て、自力をつけたい。そのためにも僕らをダンジョンに潜るように仕向けたいのだろう。それ自体別に悪い事でもない。僕たちにデメリットがあるわけでもないし、むしろありがたいことでもある。僕らだって強くなりたいのは確かだ。それに、あわよくば、なんて下心がないわけでもないし……。

 

「それじゃあ、購買部に行こっか」

 

 食事も終わり、予定通りに購買部へと向かう。装備を整えるためのお金である『銭』はすでに支給されている。買い物をするのが楽しみであった。購買部にたどり着く。そこはすでに一年生で混雑していた。しばらくまともにお金がなかったこともあって、皆、買い物に飢えていたのかもしれない。

 

 二階建ての建物全体が購買部になっており、学園に必要な道具が一通り揃えてある。文房具や生活必需品、衣服や下着などの服飾、お菓子などの食料品まである。普段使いの雑貨等は二階にあり、武器防具などの装備関連、ダンジョン探索用の道具なども一階に並べてある。ゆっくりと見て回るのはまた今度、時間のあるときにでもまたくればいい。とりあえず今は装備を優先。

 

「やーっと、買えるなー」

 

「無駄遣いするなよ」

 

「わかってるよ!」

 

 なんて銀二とじゃれあいをしていると、

 

「あはは、仲いいね」

 

 燈子に笑われてしまう。日本刀コーナーや西洋剣、槍などが並ぶ場所はスルーして目的の場所に向かう。物珍しそうに刀を持って、その値段に恐れおののいて戻す新入生の横を通り過ぎる。僕らは目的に向かって一直線に歩く。ウン十万もするような武器を気軽に扱えるようになる日も来るのだろうか? いや、そうなるためにも頑張るしかない。

 

 新入生おすすめ装備セットはカウンターの傍らにある特売コーナーに置いてある。それはダンジョン探索に最低限必要な武器・防具・ツールの詰め合わせセットである。値段は全種九万銭。新入生に配られた十万銭でこれを買えと言わんばかりの商品だ。

 

「これ、馬鹿やるやついそうだよな」

 

「ホントそれ。先生も言ってたけど、聞いてないやつもいそうだ」

 

「実地講習の一環みたいだね。とはいえ、取返しつかないのは勘弁してほしいな」

 

「下調べ大事」

 

 購買部には武器や防具はたくさん並べてある。中学卒業したての男子高校生なんて、こんなの見せられたらたまらないだろう。目移りしてしまうのも当然のことである。で、格好いい武器や防具はやっぱり値段も高い。下手をすると武器だけで十万銭だ。そんな武器を買ってしまえば防具も探索に必要な道具もないままダンジョンに挑まなければならなくなってしまう。つまり、新入生はおすすめ装備一択なのだ。

 

 新入生おすすめ装備には、バックパックに簡易ボディーアーマー、サバイバルナイフ、強化プラスチックの盾にLEDランタン、水筒や応急手当用の医療用品。そして、各自のスタイルに合わせた初期装備武器が用意されている。一番人気のショートソードに、威力重視な斧、唯一の長柄武器槍、そして女子でも扱いやすい鈍器メイスがある。

 

「それじゃあ僕はこのスピアのやつにしよっかな」

 

 背丈ほどの長さの棒の先端に両刃が付いたスピアを選ぶ。

 

「俺は剣」

 

「で、私と里奈はメイスね」

 

 銀二は扱いやすさを重視した軽量のショートソード。燈子と里奈は柄の部分が伸び縮みするメイスを選んだ。近くに試着スペースもあり、着心地を確かめる。問題ないことを確認してから購入する。財布中身を見る。さっきまであった十万銭が一万銭になっている。命のためには仕方ないとはいえ、一気にお金が減るのはやっぱり悲しい。

 

「それじゃあ、四時ごろに羅城門で」

 

 と、燈子より一時解散の合図があった。平日の閉門時間は五時。初回から長時間の探索ができるとは思っていない。さうがにそれほどまでにうぬぼれていない。この武器を買ったということで無意味に高まってしまっているテンションのままでいれば死ぬリスクも高いだろう。とりあえず初めは一時間、それくらいなら大丈夫だろう。これでもダンジョンを舐めているかもしれない。これでだめだったら次はもう少し時間を縮めればいいだけなのだ。

 

 あと少しの辛抱だ。ニートにならないためにも我慢するのもあと少しだけだ。レベルを上げたら存分にエッチなことをしてやるんだ。それだけを心の支えにしてここまで来たのだ。がんばれ僕。耐えるんだ僕!

 

 今日の探索でいいところを見せれば、彼女らともあわよくばあんなことやこんなことだってできるかもしれない。彼女たちと仲良くするために格好いいところを見せてやる! それで、いちゃらぶセックスをするんだ!

 

 

 

 

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