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―――――目を覚ました源二郎がおもむろに躰を起こした時、障子の向こう側にはやや白みがかった明るさがあった。
そろそろ夜明けの到来を告げようとする薄明を目に焼き付けた時、源二郎は自分が寝間の中に一人きりであることに気づく。
「お江・・・・・・」
昨晩自分を“男”にした相手の名前を呟いてみると、改めて自分の躰の節々や肌のあちこちに遺る女の体温と肌の触感が生々しく蘇ってくる。
武芸や遠乗りとは違った独特の疲労感の中、源二郎は生欠伸をしながら姿なき女の気配を感じようとする。
だが暫しの沈黙の中でもそれらしい気配は周囲に感じられなかった。
「どこへ、行ったのか・・・・・」
傷を癒やしに訪れているのに、まともに湯治をすることなく、しかも源二郎を置き去りにして立ち去ることはなかろうと思い直す。
「うむ・・・・・」
何ともなしに呻きつつ、源二郎は両腕を掲げ大きく背伸びする。
昨晩は負傷してから湯殿、そして寝間へと場所を変えたことで新たな疲労を積み重ねてしまった。
湯船に浸かってゆっくりしたいという思いの反面、
お江の豊かな肉付きを更に味わいたいという“男の欲求”も源二郎の中に湧き始める。
そんな相反する思いを胸に腰を上げた源二郎は乱れた襦袢の襟元と裾を整えると、寝間を出て手拭い片手に湯殿へと向かう。
(もしや・・・・・・)
(お江は、先に湯船で待っていたりしてな・・・・・)
湯殿の前で襦袢を脱ぎ、鍛えられた若々しい躰一つになった源二郎の周囲には煙のような朝靄がそこかしこに漂い、歩を進める足の裏から湯殿の縁の冷たい水気が伝わってくる。
明るくなりつつあるとはいえ夜明け前ということもあり、一見して湯殿には人はいないと思っていた。
いや、だからこそ“先客”だけはいるのではないかという期待もあったのだ。
そんな源二郎の期待は外れなかった。
源二郎が湯船に片足を沈ませようとしたのに合わせて、広い湯殿の奥の岩影の微かな水音と共に黒い影がゆっくりと白い靄の中から姿を現した。
「お江・・・・・・」
源二郎の呟きに、湯船に半身を浸していたお江の横顔に微笑みが浮かんだのが分かった。
源二郎同様に手拭いを持ち胸元を隠してはいるものの、上から見下ろす形の源二郎の視線の先に昨晩目にしたのと同じ豊かな乳房の膨らみと谷間の陰影がそこにあった。
玉のような汗が一滴、首元から乳房の谷間に向かって白い肌を滑り落ちていく。
闇の中でお江と結ばれた時の躰の反応を源二郎は思い出す。
自分の下腹部が反応するのが分かった。
ゆっくりと湯の中をかき分けながら、お江の方へ近づいていく。
待ち受ける形のお江も微笑みを絶やさずに源二郎を見上げている。
「昨晩はよく眠れたようでございますなぁ・・・・」
「・・・・お陰でこんなに早く目を覚ますことになったわ」
「ま・・・・・・・」
「・・・・おれが来るのが分かっていたのか?」
「何となく・・夜が明けてしまうと、何分人目もありますから」
「うむ・・・・・」
言葉を交わしながらも源二郎の目は、
お江の躰に釘付けになっている。
昨日も同じ湯殿で初めてお江の裸体を目にしていたが、その時は見事な女体を目にした衝撃が先にたち、女体そのものを愛でる余裕すらなかった。
昨晩の交歓を通じて“女体とはいかなるものか”の一端に触れたこともあり、源二郎の瞳は自然と湯船の中に沈むお江の躰の節々まで捉えていた。
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