※この作品はR-18です。

未知なる未来   作:雛月 加代

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プロローグ

ある夜のことだった。携帯が鳴り、誰かと思ったら、母親からのものだった。

 

「もしもし?」

 

「あ・・・・もしもし?藍子?」

 

「お母さん?どうしたの?」

 

「・・・・・・・。」

 

いきなり黙り込んでしまい、私はさらに変だなと思った。なにか、重たい雰囲気がある。電話越しでも、それがわかるのだ。

 

「お母さん・・・・?」

 

「藍子・・・・驚かないで聞いてちょうだいよ・・・・」

 

「えっ・・・・・」

 

「お母さん、いま・・・・病院からかけてるのよ。」

 

「・・・・・病院?誰か入院したの?」

 

「いいえ、違うの。私なのよ。」

 

「・・・・・・・。えっ、ちょ・・・・ど、どうしたの?病気かなんかで?」

 

「ううん、違うの・・・・」

 

母親は疲れたように吐息を震わせた。私は心配になって、携帯を握りしめてしまう。

 

「・・・・・刺されたのよ。」

 

「・・・・・・はっ?」

 

すぐには言葉が焦点を結ばない感じだった。ふわふわと無秩序に漂って、意味を成さない。

 

「えっ・・・・あの・・・通り魔?お母さん、大丈夫なの?」

 

「ええ・・・もう平気。一時期は・・・・危なかったそうだけどね。」

 

自嘲気味にそんなこと言って、私は声を失ってしまう。

 

「捕まったの?犯人は」

 

「・・・・いいえ、まだよ。」

 

「・・・・・・・・。」

 

通り魔なんて、なかなか捕まらないのかもしれない。私ははらわたが煮えくりかえるほどの怒りを覚えた。できることなら、私が行って、犯人を捜してやりたい。話によると、通り魔の男は実家に来たという。

 

「それがね・・・その人・・・・ひどい有様だったのよ・・・・」

 

「ひどいって?」

 

「なんていうのかしらね・・・凶相を浮かべていたというか・・・・・」

 

「凶相・・・・・・・」

 

すぐには漢字が浮かんでこなかった。

 

「憎しみや恨みを、全身から発散させていたのよ。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「お母さん、すぐに追い返そうとしたわ。」

 

「そうしたら・・・・・・『娘を出せ』って。」

 

「・・・・・・・。」

 

「藍子に何のようかと思って、要件を聞いたのよ。そうしたら、娘に人生をメチャクチャにされたって言われたのよ。」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

「ウチの娘はそんなことしませんって言ってやったわ。そうしたら・・・・・」

 

「刺してきたの?」

 

「ええ・・・。」

 

「それで・・・・藍子、ここが重要なのだけど・・・・」

 

「え?」

 

刺されてしまったという報告以上に、重要なことなんかあるのだろうか?

 

「お母さんを刺した男、きっと、藍子のところに行くわ。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「そんなことを言っていたのよ。私はもう意識も朦朧としていたけど、はっきりと耳にしたわ。『あんたの娘は必ず殺す』・・・・・ぞっとするほど・・・・・おぞましいような声音で。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「藍子、逃げて。」

 

「えっ・・・・?・・・・・・・・。でも・・・・逃げるっていっても・・・・・」

 

「もちろん、一時的でいいの。姿をくらましていれば、あの男も諦めるでしょう。それに、その間に逮捕されることだって考えられるから。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「藍子、お願いよ。逃げて。ね?」

 

「う、うん・・・・・わかった。」

 

とにかく、私としてはうなずくしかなかった。

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