※この作品はR-18です。

キヴォトスで性欲に振り回される男子   作:蟹の爪

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今回はエロシーンなし!ごめんね!
投稿も遅くなった!ごめんね!


風紀委員との激突

 少し薄暗いオフィス、そこでは大人が二人……機械の体を持つ男と、黒いスーツに身を包んだ人影のような大人が対面のソファーに座っている。今現在、機械の男が部下から報告を受けていた。

 

「……そうか、失敗したか。所詮は寄せ集めの雑兵だな」

 

 機械の男は任務が失敗したと報告を受けても、落胆の声色すら見せずに呟いた。しかし、未だにに自らの物にならないアビドスに苛立ちが募っていた。

 

「アビドスめ……忌々しい……」

「おや、今回の原因がアビドスだけだとお思いですか?」

「なに……?」

 

 人影がコーヒーカップを置き、一息ついて言った言葉に機械の男は疑問を投げかける。

 

「……今回、動いているのはアビドスだけではありません。連邦捜査部シャーレ──先生と、その所属生徒が動いているのですから」

「ふん、所詮は廃校寸前のアビドスに近づき、善意の悦に浸る愚か者……放っておけばいい」

 

 機械の男は物音を立てながら椅子に座り、机を指で叩く。次の策を考案しているのか、時々唸りながら書類を眺める。

 

「もはや、アビドスは詰めの段階に入っている。先生と言えど何も出来はしない……」

「おや、そうですか。余計な口出しでした」

 

 人影はそれ以上は言葉を発しなかった。ただ、カップの中に残ったコーヒーの水面を眺めるだけだ。

 機械の男はいい案が浮かんだのか、何処かへ電話を掛けながら部屋を出ていく。

 

「クックック……それでは、彼には大暴れしてもらいましょう……」

 

 人影は腰についた銃を取り出し、眺める。手に握るその銃は、彼の店で作ってもらったものだ。

 

「あなたの成長を、誰よりも期待しています──天川シンさん」

 

 薄ら笑いを浮かべながら、片手に持ったピンク色に輝くカケラを弄び、呟いた。

 

 

 

 

 

「じゃあ、少し店空けるから後はよろしくな」

『はーい!』

 

 あれからまた数日経ち、やっと店も落ち着いてきた。注文の追加も多く、思ったより時間がかかったな……という感じだ。何とか急ぎで間に合わせて、今日が部下の奴らに店を任せてアビドスへ行く日になった。

 先生にも連絡を入れといた。『楽しみにしているよ』とのこと。

 

「あ、賄いは冷蔵庫に入れてあるから食いたい奴は食えよー」

「やったー! ボスの賄いだー!」

「わー……ケーキもありますよー」

「ハンバーグはウチのもんだ!」

 

 店の中が騒がしくなり、早速冷蔵庫を見てる奴もいる。直ぐに食うと無くなるぞ……ま、いいか。後のことは任せて俺はアビドスに向かうかな。

 

 

 

 駐車場へ向かい、車の扉を開ける。助手席にはもうユメ先輩が待機していた。

 

「よっこらせ……っと」

「あはは! シンくんおじさんみたいー」

「やめろ」

 

 愛車のエンジンをかけ、動かす。この世界に来る前は当たり前だけど乗ってなかったからな、結構勉強したぞ。まあ、部下たちの方が運転は上手いが。

 

「ホシノちゃん達、元気にしてるかなー?」

「元気も元気だろうよ」

 

 前に会ったアビドスのみんなの姿を思い出す。あんな借金まみれだと知った学校に居続けるくらいだ、覚悟が違うよ。覚悟があれば心も身体も丈夫になる。

 それに先生だってあの子達の助けになってくれているはずだし、借金についても何か分かったのかもしれない。

 

「とりあえず車出すぞ」

「りょうかーい!」

 

 目的地はアビドス高等学校。いざ、出発!

 

 

 

 ***

 

 あの日、私の人生が変わった日。

 

 ホシノちゃんにガツンと言われちゃって、本当は仲直りしたかったけど……契約のための残金を振り込まないといけなかったから、砂漠へ向かった。

 

 でも、途中で砂嵐に巻き込まれちゃって……場所が分からなくなっちゃったんだよね。

 コンパスも忘れちゃって、水も持ってきた分が無くなっちゃった。どこかへ向かおうにも、砂漠の日差しで体力が持たなくて……膝をついてしまった。

 

 ああ……このまま私、ホシノちゃんに謝れないまま、仲直りもできずに死んじゃうのかな……

 

「おい、こんなとこで何寝てるんだ」

 

 その時、声が聞こえた。聞き慣れない、低い声だった。私を見下ろすように、そこに立っていた。影が私の体を覆って……辛い太陽の光から遮ってくれているようだった。

 

「天使様……?」

「ハッ! 天使だと? どちらかといえば俺は悪魔だがな!」

 

 思わず呟いた言葉に、この人は鼻で笑って返した。持っているバッグの中を漁ると、私の近くに水筒を投げてきた。

 

「ほら、飲め。死にたくないならな」

 

 身体を起き上がらせようとするも、長時間水無しの極限状態で行動していたからか、力が入らなかった。そんな状態を見て、影がこちらに近づいてくる。

 

「……チッ。良くそんなになるまで動けたもんだな。飲ませてやる、口開けろ」

 

 私の上半身を起き上がらせると、水筒の口を近づけてくる。ゆっくりと口の中に水が入ってくると、久しぶりの水分だったからか、咳き込んでしまった。

 

「こほっ、こほっ!」

「ゆっくり飲めよ、ほら」

 

 背中をさすってくれて、咳がおさまってきた頃にまた飲ませてくれる。この時の優しかった手つきが、記憶に残っている。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 さっきまでぼやけていた視界が、晴れていくのを感じる。そしてはっきりと見たのは、男の子の顔だった。でも、どこか生気が抜け落ちたかのようだった。

 

「……その水筒はお前にやる。好きに使え」

 

 そう言って、彼は私の手に水筒を押し付けるように渡してきた。……でも、私は彼をそのまま行かせるわけにはいかなかった。

 

「ま、待ってください!」

「……なんだ」

「あの……コンパスを忘れて、どこに行けばいいか分からなくて。それに、身体に力が入らないから連れて行って欲しくて……」

 

 そう、あの時の私は水筒のみで生きていける程余裕はなかった。このまま置いて行かれたら、また遭難しちゃう……だから、図々しくてもこうお願いするしかなかった。

 

「図々しい奴だな、お前……」

「うぅ……」

「ま、いいよ。ここで中途半端に見捨てて死なれるのも後味悪いし。あと……」

「?」

 

 彼がこちらをチラチラと見ながら、呟く。この時は意味がわからなかったけど、今ならわかるなぁ……シンくんのすけべ。

 

 なんだかんだ文句は言われたけど、最終的には背負って運んでくれた。運んでくれてる途中も、私が話しかけたら返事をしてくれる。

 

「あの……お名前は?」

「天川シン。高校1年」

「わ、じゃあ私の方が先輩だ! 私は梔子ユメ。3年生だよ」

「先輩? 見えない……」

 

 お互いの自己紹介をして……

 

「ね、どこの高校?」

「……通ってない」

「え! そうなの!? じゃあじゃあ、私が通ってるアビドス高等学校に来ない?」

「……悪い、パス」

「え〜……なんで〜?」

 

 アビドスに勧誘したけど来てくれなかったり……

 

「なんで私を助けてくれたの?」

「……別に、たいした理由はない。依頼の帰りに偶然見つけたから」

 

 その時、シンくんとは色んなことを話した気がする。最初は少し怪しそうな人だなって思ったけど……話してると、ぶっきらぼうだけどちゃんと返事を返してくれる彼は、優しい人なんだと思った。

 

 私はあの時救われたの。彼に……シンくんに。昔のシンくんは、ちょっと危なっかしかったけど……今は雰囲気が少し和やかになって、ちょっと嬉しいような、寂しいような。

 少しは恩返しができたかなって思ってる。でも、まだ足りない。もっともっと、シンくんを癒してあげたいの。

 

「……きろ」

 

 身体でも、あなたが望むのなら好きに使ってくれていい。それで私に目を向けてくれるなら……それで……

 

 

 

 

「起きろ! ユメ先輩!」

「むにゃ!? ……なにぃ? 着いたの……?」

 

 身体を揺らされて、意識が夢から覚める。車に乗ってる途中で寝ちゃったかぁ……。

 起きたばかりでぼやけた目を擦りながら、窓の外を見ると、まだ学校には着いてないみたい。でも、この場所には見覚えがある。みんなでよく行く紫関ラーメンがある場所だ。

 

「着いては無いけどな、少し問題は起こってるみたいだ」

 

 

 

 ***

 

 

 私が先生としてアビドスの問題を解決するために奔走し、セリカを奪還した日から様々な出来事が起こった。

 

 まず、便利屋との戦闘。アビドスを潰すために依頼されてきたゲヘナの便利屋68と戦うことになり、撃退した。

 

 次に、銀行強盗。セリカを襲ったヘルメット団の武器の分析をしたところ、ブラックマーケットのものだと判明した。

 ブラックマーケット——中退、休学、停学などの理由で学校を辞めた生徒達が集まる場所で、連邦生徒会の目が届かない場所である。

 

 早速ブラックマーケットへ向かい、襲われていたトリニティの生徒……ヒフミを協力者にして情報を得るために銀行強盗を決行。覆面水着団の誕生である。

 結果として書類を手に入れることに成功し、裏にはカイザーコーポレーションという大企業がいることが判明。

 

 そして現在。私たちは柴関ラーメンが爆破されたという情報を知り、ホシノを除いたメンバーで現場へと急行した。その結果……

 

「あんたたち、許さない!」

 

 その場にいた便利屋と戦闘。善戦を繰り広げていたが……

 

 ズガガガガ──ン!!

 

 突如として砲撃が便利屋へ向かって降り注ぐ。一体何が……?

 

「何……?」

「この砲撃は……」

『兵力の確認完了しました! ゲヘナの風紀委員会です!』

 

 アヤネの発言から間もなく、ゾロゾロとゲヘナの風紀委員会がこちらへと進行してくる。恐らく、便利屋を追ってやってきたのだろう。風紀委員会は私たちを包囲して銃を向けてくる。

 

「便利屋は風紀委員会に引き渡すしか……」

「で、でも! 便利屋は私たちの獲物なのに!」

「ん……」

 

 みんなもいきなりの乱入に困惑しているみたいで、身を寄せ合って話し合っている。

 私はどうするべきなのか……いや、決まっている。

 

「みんなは……どうしたい?」

「そ、それはもちろん……」

「便利屋は渡したくない」

「そうよ! こいつらにはちゃんと責任を取らせないと!」

『他の学園の風紀委員に、好き勝手させるわけにはいきません……!』

 

 みんなの意見は1つ……ここで風紀委員会を阻止すること。生徒の意見を尊重するのは先生である私の務めだ。

 

「よし、私が協力するよ。みんな、戦闘はお願い!」

 

 対策委員会が臨戦体制をとる。2つの勢力が一触即発の状態になったその時。

 

『……双方、武器を下ろしてください』

 

 ぴしゃり、と一括するような声。

 そして、生徒がホログラムによって表示される。すると、風紀委員会の方は動きをピタリと止めて硬直する。

 

「アコ行政官……」

「アコちゃん……」

『……先生、お噂はかねがね。いきなりの提案で申し訳ないのですが、こちらのお話を聞いていただけませんか?』

 

 アコ、と呼ばれた生徒が私に話しかけてくる。行政官、と呼ばれていたということは、かなりのお偉いさんが出てきたのだろう。

 

「……分かった。それじゃあ、話を聞かせてもらおうかな」

『ありがとうございます。私たちは学園の校則違反者……つまり、便利屋68の方々を逮捕するために来ました。少々不幸な事故はありましたが……他の学園自治区付近での出来事なので、まだ違法行為とは言い切れないでしょう。風紀委員会としての活動に、ご協力をお願いできませんか?』

『それはできません! 他の学校が別の学校の敷地内で戦闘行為をするなんて、明確な違反です! 便利屋の処遇は、私たちが決めます!』

『あらっ……?』

 

 アコから言われたのは、これは自治区付近での出来事なのだから違反ではないという事。アヤネの主張は敷地内なので違反行為だという事。明らかに矛盾しており、違和感が残る……

 

『後ろの方々も同じ考えのようですね……では、ヤってしまいましょうか』

 

 風紀委員会の方は、頑なに譲らない私たちの態度を見て、臨戦態勢に突入した。

 

 バン! バン! バン!

 

「な、何だこいつ……! うわぁぁぁあ!」

「おらおらぁ! 道を開けろぉ!」

 

 しかし、包囲網の外側の方で騒ぎが起こる。どうやら誰かが包囲網を突き抜けてこちらの方へやってきているみたいだ。

 人が突進してくるような勢いでこちらに向かってきて、急停止する。

 

「よし、到着!」

「ひぃん……乗り心地最悪だよぉ……」

「シン!」

 

 突進してきたのは、水色の髪の女の子を背負っているシンだった。彼の通り道を見てみると、何人かの気絶した風紀委員の子たちが倒れている。

 シンは女の子をゆっくりと下ろし、シロコたちに預ける。

 

「ん……ユメ先輩、大丈夫?」

「シ、シロコちゃん……ありがとぉ……」

 

 ユメ、と呼ばれた少女が腋の下を抱えられて引き摺られながらシロコに運ばれていく。

 

「すいません遅くなってしまって……で、これどういう状況ですか? ホシノも居ないし……」

「いや、ちょっと長くなるからそれはまた──」

『天川シンッ……!』

 

 先ほどよりも低い声をしたアコの言葉が会話を遮った。シンが豆鉄砲を食らったような顔でアコの方を見ると、薄ら笑いを浮かべる。

 

「あぁ……行政官殿じゃん。どうした? ここらへんで騒ぎでもあったか?」

『ええ、今現在起こっていますよ! ……なので、邪魔しないで頂けますか?』

「いやぁ、それはできない相談だな。俺と関わりのあるアビドスの後輩たちが困ってるみたいなんでね」

 

 アコが眉を顰めながらシンを睨みつけるが、シンはそれを気にしない様子で話す。

 

『はぁ……いいですか、何も知らないあなたに説明してあげましょう。まず、これは偶然の事故で──』

「嘘を吐かないで、天雨アコ。……偶然なんかじゃない、この状況は狙っていたことだ」

『カヨコさん……』

 

 いつの間にか風紀委員会の包囲網を抜けていたカヨコが、アコに向かって言葉を突きつける。偶然ではない……とはどういうことなのだろう? と、いうかどうやって包囲網を……

 

「ハルカちゃんナーイス♪ あのおにーさんのところに注目がいってたし、楽に抜けられたね♪」

「すみませんすみません! 助けるのが遅くなってしまって……」

 

 どうやらシンが起こした騒ぎに乗じて包囲網を抜けたらしい。逞しい子たちだなぁ……

 

『面白い話をしますね、カヨコさん?』

「……風紀委員会が他の自治区まで追ってくるなんて、考えにくい。しかもこんな大人数……アコ、あんたの目的はシャーレ。先生を狙ってきた……そうでしょ?」

『……』

「しかもこれはあんたの独断だ。風紀委員長ならこんな非効率的なことはしない」

 

 どうやらアコの目的は便利屋ではなく私だったらしい。……え、私?

 

「先生を、ですか……!?」

「へぇ、なるほどなるほど……」

 

 対策委員会のみんなも驚いている様子で、私のことを見てくる。いや、私だって初耳だよ? 私、そんなに狙われるようなことしたっけ……?

 

『……便利屋にカヨコさんがいることを忘れていましたね……まあ、いいでしょう』

 

 アコが指をパチン、と鳴らすと、周りからかなりの数の足音が聞こえてきた。

 

『風紀委員の更なる兵力が四方から集結しています……!』

「……増援」

 

 足音とともに人影がこちらに向かって更新してくるのが見える。かなりの数だ。この少人数を相手にするには過剰戦力と言えるだろう。

 

『少々やりすぎかとも思いましたが……シャーレを相手にするのなら、このぐらいあっても困りませんよね。それに、シンさんもいることですし?』

「……ん? すまん電話してて話聞いてなかった。なんて?」

『何呑気に電話をしてるんですか……!』

 

 そして、アコの声によって号令が掛けられる。その宣言と同時に風紀委員会が銃を構えた。

 

「ねぇ、社長。逃げるなら今しかないよ」

「あそこまでコケにされて、逃げ帰るですって……!? そんな事……私たちがするわけ無いじゃない!」

 

 便利屋も協力してくれるようで、アビドスと同じく風紀委員会に向けて銃口を向けた。

 

『今回は"条約"のことを考え、先生はこちらで大人しくしてもらおうとしていましたが……邪魔をするということでしたら、少し手荒な真似をしなくてはいけません』

「先生に手を出すなんて、俺が許すかよ」

『はぁ……風紀委員会、作戦を開始して下さい』

 

 

 ***

 

 

 こうして始まった戦闘で、先生は指揮をとる。対策委員会が見事な連携を見せ、便利屋が戦場を掻き乱す。

 

 生徒たちは障害物に隠れ、その手に握る銃を用いて遠距離から射撃する。それは敵味方同様だ。だが、シンは違った。

 

「ぐあっ……! バリケードがっ……!」

「ち、近づいてこないで……」

 

 銃弾の雨の中でもお構い無しに敵の懐へと潜り込み、その手に持った銃を撃ち込む。ほぼゼロ距離で撃ち込まれた弾丸の威力に、風紀委員会が倒れていく。

 それを避けようと障害物に隠れた者には、障害物を蹴って退かし、銃を撃ち込むといったなんとも暴力的な戦い方だった。

 

「久しぶりに見たかも、シンくんが戦ってるとこ」

「うわぁ……すごい戦い方ですね☆」

「ん……やっぱり変わってない」

「え!? これが普通なの!? というかアイツってあんなに強かったの!?」

『こ、これは……凄まじい光景ですね……』

 

 既にシンの戦い方を見たことがある3人は懐かしさを覚え、その他の2人は少し引き攣った顔で驚く。

 戦場の注目がほぼ彼に集まり、対策委員会の方は楽に敵を仕留めることができた。

 しかし、風紀委員会も黙ってやられるわけにはいかない。

 

『くっ……やはりシンさんは生半可じゃありませんね。……イオリ、お願いします』

「言われなくても!」

 

 イオリが銃を構え、シンに照準を定める。引き金をひいて飛び出た弾丸は、光の軌道を描いて無防備な背中へと命中する。そして、シンの顔がイオリの方向へと向いた。

 

「あぁ……少し痛いな」

「チッ……これで少しか……」

 

 あまり効いた様子がないシンの反応に、イオリから悪態が出る。シンの目は既に自分を撃った者を捕捉しており、足を向ける。

 

「おい、他のやつはいいのか?」

「他の奴らは……先生が居るしなんとかなるだろ。それより……お前は脅威になりそうだ」

 

 シンが走り出す。イオリも銃を発砲するが、その弾丸は腕で防がれるか避けられるかでまともに命中しない。そうしている間に距離を詰められる。

 

「舐めんなぁ!」

「お、っと……」

 

 イオリが回し蹴りを仕掛け、できた隙に弾丸を撃ち込むが、一発ではシンは怯みもせずにイオリの銃に向かって拳を振るう。

 

(痛……っ!)

 

 しっかりと両手で銃を持っていたにも関わらず、あまりの強さに銃を吹き飛ばされる。銃は近くにあった瓦礫の方向へ飛ばされた。

 シンは銃口をイオリの額につける。

 

「……終わりだ」

「ぐぅ……!」

 

 イオリは銃を既に持っておらず、銃を突きつけられた状態……勝敗は決したが、その光景を見ていたアコにはまだ勝算があった。

 

(イオリは負けましたか……ですが、先生やアビドスと距離を離したのはいい働きです。先生の方に兵力を集中させれば……)

「ねぇ、アコ? ここで何をしているの?」

 

 思考を巡らせているアコの頭の働きが急停止する。原因は、彼女にとって最も愛おしく……そして、今最も聞きたくない声が耳に入ったからだ。

 

『ヒ、ヒナ委員長……何故、ここに?』

「連絡をもらったから……彼に」

 

 ヒナの目線の先にはイオリに向けていた銃を下げ、ニヤついた顔でアコの方を見るシンがいた。

 いつの間に連絡を……と思ったアコだったが、彼が電話をしている光景を思い出し、歯噛みした。

 

『あの時ですか……!』

「ねえ、アコ? 私はどうしてこんな大勢の風紀委員会をここに連れ出したのか……その理由を聞きたいのだけど」

『そ、それは……』

 

 その時、対策委員会も戦闘が終わりこの場へ到着する。ヒナのことを見て攻撃しようとするが、それをシンが止める。

 

「あー……おい待て待て。アイツは俺の知り合い。敵じゃないから攻撃しなくていい」

「そうなの……? じゃあ、そうするけど……」

 

 彼女たちは銃を下ろし、行く末を見守る。目線の先では、ヒナとアコが話し合っている様子……もとい、尋問されている様子があった。

 

『い、委員長……私たちは便利屋を捕まえようとですね……』

「……便利屋? どこにも見えないけれど」

『先ほどまで、そこに……』

 

 しかし、便利屋はヒナが出てきた瞬間に消えたため、今はどこにもいない。現在は傍から見て、シャーレやアビドスと対峙していたようにしか見えないのだ。

 

「うへ〜……こりゃまた、とんでもないことになってるね〜」

『ホシノ先輩!?』

「お、ホシノ。遅かったな」

「わ〜! ホシノちゃーん!」

「わっぷ……ユメ先輩、やめてよぉ〜」

 

 その場にふらふらと現れたホシノがユメに抱きつかれて捕獲される。他のみんなも駆け寄って集まり、質問責めにする。

 

「今までどこ行ってたのよ!? こっちは大変で……」

「ごめんね〜お昼寝してたら遅くなっちゃった〜」

「お前が遅かったから俺が全部片付けておいたぞー」

「……」

「痛っ!? おい肘打ちすんな!」

 

 ホシノを中心として騒がしくしていると、ヒナの方も話が終わったようで、対策委員会の方へ向かってくる。

 

「ごめんなさい。今回の件、こちらに非があった。謝罪する」

「風紀委員会、だっけ? ゲヘナの……もう一回戦わなくていいの?」

「あなたと彼……小鳥遊ホシノと天川シンの2人がいて、こちらが無事に済むわけない。彼だけでもこれだけの被害なのだから……」

 

 ヒナが周りを見渡すと、半分以上が減った風紀委員会の勢力が目に入る。このまま戦って勝てる見込みはほぼゼロに等しい……そう判断するべきだとヒナは思っている。

 撤退する様子を見せたヒナに対して、シンが声をかける。

 

「まあ、なんにせよ助かった。ありがとな、風紀委員長」

「ええ、あなたにはお世話になっているし、今回も早めに知らせてくれて助かった」

「また何かあったらよろしくな」

 

 シンと言葉を交わしたヒナは、次に先生の方を見つめた。

 

「あなたが先生?」

「うん、そうだけど」

「少し話しておきたいことがある。少しこっちへ来て」

 

 ヒナが手招きをすると、先生が近寄っていく。そして、対策委員会から離れたことを確認すると……

 

「アビドス砂漠で、カイザーが何かを企んでいるみたい。一応、先生にだけは伝えておく」

 

 そう一言だけ言うと、ヒナはすぐに離れてイオリやアコたちがいる方向へと戻っていった。

 先生がヒナから言われたことについて頭の中で整理していると、ノノミが先生へ近づいてくる。

 

「先生っ! この後みんなで会議をするために、一度校舎に戻ろうと思うんですが……先生も来てくださいますよね☆」

「うん、もちろん」

 

 このことはみんなにも伝えたほうがいいだろう。そう結論づけて、騒がしい輪の中へと足を踏み入れた。




ゆるゆる小話
アル「なんだか私たち出番少なくない!?」
カヨコ「この時点だと接点少ないんだから仕方ないでしょ…」
ハルカ「すみませんすみません、活躍できなくてすみません…」
ムツキ「くふふ~♪私たちも手、出されちゃうのかな~?」



結構カットしました。銀行強盗とかシンが加わっても、大暴れして銀行の被害がさらにひどくなるだけなので…
あとユメ先輩のところ、自分があまり理解できてないのでなんか違うとこあったら言ってください…
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