※この作品はR-18です。

夢魔観察計画   作:黑ヱ

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警告

……どうしてそうなる?

確かに、人間はいるな。2人。

ここに来てからずっと。

ゼノと。

もう一人。

それは分かっているさ。

だからって――

(本当に…こいつら、自分たちで……?)

こいつらがどこまで調べたのかは分からないが、少なくとも。

私が人間から"何か"を得て、それを"食事"と呼んだこと。

それが無ければ理性を失う可能性があること。

そこまでは既に知られている。

なら…

古い伝承に残った、私たちの危険性くらい、

辿り着いていてもおかしくない。

人間から活力を奪い、生命力を奪う。

時にはその命だって――

だからこそ。

自分の身を使う。

(その可能性はかなり低いと……そう、思ったが……)

もしかして――

伝承は調べていない…?

または、調べきってない?リスクについては知らない…?

それともリスクについては切り離して考えているだけ……?

「スタン」

静かな空間に、声が響いた。

「ああ」

少し離れた場所から。

特徴的な、低い声。

……スタン?あの男のことか?

「彼女は"食事"がしたいらしいよ。できるかい」

「できるね」

あまりにも。

軽い返事だった。

(こいつら……本気か?)

 

…いや、というか待て。

もしかして"今"か?

今"食事"をさせようとしているのか?

早くて二日だと提示しただろう?

別に今すぐ寄越せとは言ってないだろ?

いや、もちろん、この時点で期間を引き延ばせる。

それはこちらとしてもありがたいが…

待て、落ち着け。

こいつらの役割が分かれていることくらいは分かる。

ゼノは私を調べる側。

そして、スタンと呼ばれた男は――

私を捕らえた男だろう。

ここへ来てから私を椅子へ固定したのも。

少なくとも今確認できている中では。

あの男が、物理的な対処を担っているはず…

なのに…リスクがあるかもしれない相手へ?

物理的な対処が出来るほうの男を差し出す…?

他の"食事"の方法だってまだ予測だろ…?

(……本当に、何を…考えてるんだ?)

微かな音がした。

何かを押し潰すような。

乾いた、小さな音。

少し遅れて。

さっきまで漂っていたはずの煙草の匂いが、薄くなる。

靴音。

一歩。

また一歩。

近づいてくる。

(待て待て待て、本当に待ってくれ)

 

本当に――

今。

私に"食事"をさせようとしている…?

 

「――まあ、待て」

足音が止まった。

「…まだ何かあるん?」

呆れたように聞こえたその声は。

私が思ったよりもずっと近くで響いた。

 

「お前たちは」

「何が起こるか分かってないのか?」

少しだけ、間があった。

「ヘェ…なにかって?」

本当に……知らない?

「私が人間から何かを得る」

「その程度の認識しかないなら――」

「やめておいた方が賢明だな」

「私たちが人間から」

「直接"何か"を得たその時」

「命を――奪うことだってある」

生命の危機。生存本能。

少なくとも哺乳類に分類される生物には、備わっている機能だ。

「ヘェ」

返ってきた声は。

驚くほど、変わらない。

「んで?」

(……で?)

「だから――」

再び動く気配がした。

靴音がまた。

一歩。

(……なんで?)

「っ…待て」

止まらない。

「今の話を聞いていたのか?」

「ああ」

「…何故、止めようと思わない」

少し、笑われたような気がする。

「話は聞いてんよ。だから?」

 

いや。

いやいや。

本当に今の話を聞いていたか…?

「奪うこと“だって”」この言い方が曖昧過ぎて伝わらなかった?

それにしたって、生命の危機だぞ?

こいつら人間だろ…?

なぜ生存本能を刺激されないんだ…?

本当に人間か…?

私がまだ知らない種族の可能性、あるか?

ダメだ、混乱するな。

落ち着け。

(知った上で……止めない?)

それとも――

また一歩。

距離が縮まる。

「私の言葉が、嘘だと思っているのか?」

「自分で試すなんて、愚かな事だな」

足音は止まらない。

…駄目だ。

これじゃ止められない……っ!

 

……というか、私にどう"食事"させるつもりなんだ…?

いやわかる、分かりたくないが、想像はつく。

なら――

「命を…奪うだけじゃない」

「…ヘェ、今度はなんよ」

さすがに、止まったか…

「私にどう、"食事"をさせるのか」

「ある程度想像は出来るがな」

「"命を奪うこともある"」

「この言葉で、もし」

「一回なら、数回なら」

「間を置いて回復すれば」

「そう、勘違いしているなら」

「やめた方がいい」

「私の体液には、依存作用がある」

「止まれないさ」

「その命――尽きるまで」

「それでも」

「止めるつもりはないと?」

ここまで言えばさすがに――

「ほう、依存?」

少し離れた場所から聞こえた男の声は。

これまで以上にひどく愉しそうだった。

…失敗した。

生存本能を刺激されない奇特な連中だった。

むしろ研究出来る項目が増えて嬉しいのだろう。

(……最悪)

でも。

スタンと呼ばれた男の動きは止まった。

「…」

 

「んで…」

低い声はこれまで以上に近く。

「終わったん?」

「その話」

何も気にしていないように聞こえた。

 

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