ようやく、施設の奥にたどりついた。
亜音ちゃんの気配が強くなるほどに、その奥から甘い香りが漂ってくる。
腐敗臭なんて感じない。澄んだ蜜の気配に誘われて、あたしは一歩、また一歩と半端に開いた扉の向こうへ、体を滑り込ませた。
白い部屋。
ううん。部屋を白く見せたのは、咲き乱れた白い花だ。
教室くらいの広さの部屋に一面と、その光景に目を奪われた。今までずっと、嫌なものばかりを見てきたから。こんな所に、こんなにも綺麗なものがあるなんて、夢にも思わない。
そこかしこに伸びた枝葉は、房を作って尾花を揺らす。
絡まりあった太い茎は、もう何百年と数えた大木みたいだ。床一面に張った根の隙間を縫いながら、あたしは部屋の真ん中へと進んでいった。
それが、どうしても欲しい。
甘い香りの正体。花の蜜の、もっとも濃い場所。
酷く喉が渇いていた。飲み込んだ生唾でさえ甘く感じる。漏らした吐息から花の香りが漂うほど、濃密な香気に包まれた。
満開の一房の下に立つ。
近くで見ると、ずいぶん大きい。見上げた花は、あたしを覆えてしまえそうだ。
花びらだと思っていた一本一本は、薄く透き通った蔓のよう。印象としては、イソギンチャクにも近かった。風もないのに揺れる蔓を、つい目で追ってしまう。花びらの真ん中で、そそりたつ雌しべは周りの蔓よりまだ太い。
その表面はヌラヌラと濡れていて、先端から蜜を滴らせていた。
ちょんっと、おでこに落ちてくる。弾けた甘い香りを求めて、勝手に舌が伸びていく。
もっと、欲しいな。
膨らんでいく雫を待つ時間がもどかしかった。
一粒、頬に落ちる。濡れた肌を指で掬って、舌で舐めるくらいじゃ全然足りない。
__ポタリ __ポタリ。もどかしかった。大きく口を開いても、不規則に揺れる雌しべの狙いは定まらない。ようやく口に飛び込んだ時には、顔の周りはもうベタベタ。飲めば飲むほど欲しくなる。
鼓動が先か、呼吸が先か、知らずバラバラだった体のリズムが整っていた。
ささくれ立っていた心も落ち着いて、魔法でも塞ぎ切れなかった傷が、ゆっくりと癒されていくみたい。
限界まで舌を伸ばして、唇の周りを舐め取ってもまだ足りない。その場で何度も飛び跳ねた。垂れ下がった蔓の一本は、あたしを誘うようにユラユラ揺れている。
アレになら、届くんじゃないか?
その場で何度も飛び跳ねた。ようやく伸ばした指が蔓の一本を掠め取る。
しなり、撓んで、弾ける雌しべ。雨のように降り注いだ雫を頭から被ってしまった。
顔を洗う猫みたい。
肌を拭って、ベタベタになった手を舐める。
コクリと喉を鳴らす度、吐息が湿り、鼓動が弾んだ。それが、快感を誘う熱であることも気づかない。もっと欲しいの。もっと飲ませて。蔓を引っ張り、雌しべを揺らす。全身がムズムズとして、居ても立ってもいられなくなる。
ふぅ……ふぅ……っ
風の抜ける音がした。細く掠れた人の声に聞こえて、火照った頭を僅かに冷やす。
誰かいるの? 気になって辺りを見回せば、閉じた房のいくつかから、聞こえてくる女の子の甘い声。檻のように閉じた蔓の隙間に、人影を見つけてしまう。
「亜音ちゃんっ!?」
咄嗟に求めたのは、魔法じゃなかった。反射的に構えた銃を、房へと向ける。
けれど、引き金を弾く指を引き切れない。目が、合ってしまったんだ。
__ゴクリ
知らず、生唾を飲みこんだ。
目は潤み、頬は染まって、吐息は甘い。全身を蔓に抱かれた亜音ちゃんは、どこまでも幸せそうだ。ズルい、悔しい、なんでなの。頭に浮かぶ恨み言。
違う、そんな事考えていないのに。無事でよかった。早く助けてあげないと。頭を振っても心は晴れない。
あたしは……
こんなに辛い思いをして、こんなにボロボロになって。
なのに亜音ちゃんは、そんな幸せそうな顔するんだ。一人だけ気持ちよさそうにして。助ける必要なんて、ないじゃない。むしろ……。
羨ましい。
それが、本音だ。飲み込んだ蜜の味が恋しい。その為だったら、自分の全部を捧げたって、まだ足りない。目の前の異物を化物だと思えなくなっていた。友人や、家族。あるいは陸よりも、愛おしく思えてくる。
__シュルリ
手首に、蔓が巻き付いた。「あっ……」と、声を漏らしても、それだけだ。
引き金を、引けない。抵抗できなかったんじゃない。抵抗……しなかったんだ。
右手、左手を絡め取られて、引き上げられた体が、宙に浮かんでフラリと揺れる。
優しく腰を抱いてくれた。膝裏に、足首にも蔓が巻き付き、ハンモックに寝かされるみたいだ。
良い子だね。
頑張ったね。
偉いね。
もう、大丈夫だよ。
頭を撫でられる。お腹を擦られる。ポンポンと背中を叩かれた。
蔓の一本一本が、あたしを慰めてくれる。子ども扱いされてるみたいで、ちょっと恥ずかしい。でも、心地が良かった。惚けた吐息に、抱えていた不安が溶け出していく。このまま瞼を閉じたくなるほどの、深い安らぎに包まれる。軽く、頬を赤らめてもそれまでだ。
もう、いいかな……
なんで、がんばってたんだろう? 諦めれば、こんなにも楽なのに。
辛くて、怖くて、それでもと。今までの自分を否定したくなかった。ポケットから腕時計が滑り落ちる。拾い上げようとして、指が動かない。ちゃんとカバンに入れておかないからだ。また、叱られちゃう。本当はただ、彼に褒めて欲しかっただけなのに。
涙が頬を伝い落ちていく。
ふと、浮かんだ誰かの名前を思い出せない。檻の中に閉じ込められていく。
一本、二本、巻き付いた蔓に指を剥がされ、手の中から銃を奪われた。
まだだ。
どこかで思っちゃったんだろう。諦めたくない自分がさ。銃を握り直そうとして、だけど力が入らない。頭の上で、両手を結ばれた。足を開かされて、もう暴れることすら出来ない。亜音ちゃん……。檻の隙間から、彼女を盗み見る。
端から見れば、触手の化物に囚われてるだけの女の子。体中を弄られてさ、なのにすごく気持ちよさそう。次はあたしの番……。
近づいてくる、太い雌しべにキスをした。
リップを引くように唇をなぞられて、鼓動が跳ね上がる。
緩んだ頬が戻らない。気が抜けたように口が開いていった。プクリと膨らんだ先端に舌を這わせると、甘い蜜が滲み出す。口を埋められて、ちょっと苦しい。入り込んできた雌しべの太さに、口の中はすぐ一杯になった。
動いているのは、どっち?
甘い蜜と唾液が入れ替わっていく。一つ確かだったのは、刺激を与えるほど、滲む蜜の量が増えたこと。飲めば飲むほど甘くなる。頭がぼぅっとして、肌が火照った。全身が性感に包まれて、何も手につかない。
同じだ。
捕まった時に、打たれたお薬。あたしを食んだイモムシ達。あの化物の唾液もそうだったのかもしれない。きっと、この子から作られたものなんだ。
だから……だった、ら?
考えがまとまらない。もうどうだっていいんだ、そんなこと。気持ちいい。ただ、ただ、気持ちがいい。知らなかった。性的な快感が、こんなにも狂おしいなんて。檻の中にいる安心感も手伝って、甘い誘惑に溶かされていく。
蔓の一本。触手のように伸びた雄しべが、服の中へ入り込んできた。
器用だな。捲られて、たくし上げらていくのを、ぼぅっと眺めるだけ。擦れた服の刺激だけで、甘い痺れが全身へと広がった。ピンっと、跳ねた乳首に目を奪われる。
触って?
願うまでもなく、触手は叶えてくれた。
胸の膨らみを、優しく締め付けてくれる。意地悪なんてしないよ。右も、左も、一緒にだ。力を抜いたり、緩めたり。鼓動の音に合わせて、リズム良く。ドキドキと波打ちながら、触手の先端が乳首へと近づいてきた。
「あっ……♥」
先端で突かれただけなのに、今までの何より気持ちがいい。
巻き付かれて絞られる。鼓動の音と、乳首からの刺激。ドキドキとビリビリが、胸の内側で混ざり合い乳首を膨らませる。何の前触れもなかった。当たり前のこと。高まった快感が絶頂へと届いただけ。絞られた乳首の先から、ぱぁっと花が開くように……。
イキたくない。
反射的に、身構えてしまった。発動した魔法に、快感の熱を堰き止められる。
「ぁ、ぃゃ……」絶頂の寸止め。あたしに意地悪をしたのは、他の誰でもないあたし自身。ずっと信じていた魔法の力だ。でも、触手は期待を裏切らなかった。
あたしが上手にイケない事に気づくと、ホットパンツにその手を伸ばす。ショーツと一緒に、足の間から絡め取ってしまった。
だめ、そこは……
僅かな理性を取り繕っても、何か起きるはずもない。あたしの願いが、そこにないんだ。本当に、願っているのは……。閉じた筋をなぞるように、浅瀬に入り込んでくる触手を、ただ見つめていた。ちがう、ちがうのっ。だって、気持ちよさそうだなって、亜音ちゃんが、だから、少し思っただけ。触手が無理矢理に、犯してくれないから。優しくしてくれるから、身を任せたくなっちゃうだけで。
無意識だった。
感じたくないって、感じるわけがないって。絶頂を抑えるのと同時に、快感すらも遠ざけていた。その、魔法が切れっちゃったら。甘く疼く乳首は、今にも弾けてしまいそうなのに。飲み込んだ甘い蜜に思考が溶かされ、願い事が分からなくなる。
辛い。
何が辛いのかも分からない。犯されて感じてること? なんで我慢しなきゃいけないの? だって、こんなに気持ちがいいんだよ? 少しくらいって、思うじゃん。
膝の裏、太もも。お腹に、背中。脇の下から、首筋まで。
全身に絡みついていた触手達が、あたしを縛る。もう自分じゃ、身動き一つ出来なかった。足を大きく開かされて、赤ちゃんみたい。こんな姿、もう見せられないや。思い浮かんだ誰かの顔から、目を背けるように まぶたを閉じた。
触手の先端から視線を感じる。
見てるんだ。向けられた興味に頬が熱くなる。恥ずかしくなって身を捩っても、肌を隠せるはずもない。丸出しのお股にゆっくりと、触手が近づいてくる。
それを見つめたあたしは、願って止まない。滝のように、垂れた愛液の感触ですらもどかしい。大きく息を吸って、吐き出して。パチっと、頭の片隅で火花が散った。
「あっ……♥」
声が漏れる。ロウソクの灯りを吹き消す程度の細い溜息。快感を受け入れたあたしは、望んで魔法の力を吹き消した。細い触手の先端が、あたしに向かって伸びてくる。割れ目に触れて、だけど中には挿ってこない。筋道を遡りながら、そこにある小さな膨らみに触指を伸ばす。
割れ目の筋と、背筋が重なったみたい。
ゾクゾクとした快感が、腰から頭へ駆け抜けていく。
それを邪魔する魔法は、もうない。あたしの小さなクリトリスは、触手の刺激を素直に受け入れた。自分から、触ったことなんてない。でも、そこに触れられるのが気持ちいいのは知っている。暗いダクトの中で、イモムシ達に散々甘咬みされたから。
あの時は、耐えるしか無かった。けど、今は違う。好きに感じていいんだ。
拷問でしかなかった体験が一つ、報われた気がする。一枚ずつ、花びらを開くように。クリトリスに絡みついた食指は、丁寧に包皮を剥いていった。
風が撫でるだけでも腰が浮く。
剥かれたクリトリスは、あんまりにも敏感で、思わず腰が引けてしまう。
逃げるあたしを、触手は優しく抱きとめた。急には責めない、驚かせもしない、無理にだって。ゆっくり、ゆっくり、剥き出しのクリトリスの周りを巡りながら、少しずつ、少しずつ。近づいてきた触指の先が、根本を掠める。
「はぁぁぁ……っ」
お腹の底から、重くて、深い溜め息を吐き出した。
腰が抜けて、体が沈む。なに、これ? こんなのされたら。視線が、隣の房へと向いていた。蔓の隙間から見える亜音ちゃんの影。触手と戯れている彼女の姿は、あたしよりも上手に快感を受け止めていた。
__きゅっ
膨らんだクリトリスが、柔らかく締め付けられた。
勝手に腰が跳ね上がり、甘く痺れて、落ちていく。幸せで胸が一杯、何も考えたくない。触指の動きに合わせて、亜音ちゃんの真似をする。自分から腰を揺らめかせると、もっと気持ちがいい。
__ドロリ
不満をこぼすようだった。何もされていない割れ目が、羨ましそうに涎をこぼす。
溢れた愛液は、太ももの内側からお尻へと流れ込んでいった。
苦い記憶を思い出す。お尻の穴を穿られて、イヤなのに、堪えきれず、快感を抑える魔法を使ってしまった。閉じたお尻の穴から押し出された愛液は、まるで化物の唾液のように流れて出ていく。
そこは、違うのに……
一本。小指ほどの太さの触手が、お尻に触れる。なんで、そんな所ばっかり。
愛液を掬い上げて、中へ。__ツプっ。抵抗は無かった。穴を閉じる魔法も、快感を抑える魔法も。イヤだと思う気持ちさえ、クリトリスからくる強烈な快感に、流されていく。慣れ始めた刺激の向きが急に変わって、胸が掻き乱された。
入り込んできた触手に、お腹の熱を押し込れていくようだ。
まだ入るの? もう苦しいよ。その瞬間を想像して、身震いが止まらない。
入れられるよりも、出ていく時。そこが、お尻が一番気持ちいいのは……。
もっと? まだなの? 望めば望むほどお腹が重くなる。空気を求めるように出口が口を開いて__ズっ。
「あっ……」
一方通行だった触手の動きが切り替わった。
重力に負けて落ちていく。お腹に溜まった熱に追い出されていく。違う、違うの。
何度も頭を振っていた。腰がガクガクする、背筋がビクビク震えて止まらない。
ほっとして、気が抜けて、お股が濡れた。甘い香りの中に混ざる臭気は、チョロチョロと流れ出して止まらない。お尻から触手が抜け出るほどに、勢いを増して、檻の外にまで飛んでいってしまう。
「ぃぃぃぃぃぃっ、ぅ、ぁ、や、とま……て、あぁぁ……はぁっ」
開放感に包まれた。お尻も、お股も、もう空っぽ。頭も、心も、すっからかん。
流れ出した羞恥心は、足元で水たまりを作っている。立ち昇る余韻は、トイレの匂いにそっくりだ。これ以上はないとさえ。だけど、まだ物足りない。いつから、こんなに欲張りになったんだろう?
あたしは、まだ何もされてなかった。
おっぱいを、クリトリスを、お尻までされたのに。
洗い流されたはずの愛液は、すっかりと元通り。綻んだ割れ目から、ダラダラと溢れだす。もし、体を拘束されてなかったら。我慢出来る自信がなかった。陸のことを考えながら、あたしは絶対。
「ぁぁっ……陸」
どうして、思い出しちゃったんだろう。
名前を口ずさんで後悔する。ずっと忘れていれば、ずっと幸せなままだったのに。
僅かに残った恋心は、あたしを苦しめるだけだった。
お尻にきたものより太い。親指ほどの太さの触手。
花の雄しべは、男の人にそっくりだ。先端が浅瀬に沈んでいくのに、驚くほど抵抗を感じない。痛くて、苦しい。そうじゃなきゃ、ダメなのに。そうだったら、よかったのに。きっと初めては、陸とするんだろう。そう、思っていた。なのに、あたしの初めては触手ですらない。朧気な記憶が確かなら、きっとあの時にはもう。
__ピチャ
水遊びでもするように、水音が跳ねた。溢れた愛液が触手に絡む。自分の愛液で、ドロドロに溶けたあたしは、少し力を入れられただけで、触手を飲み込んでしまった。波打ちながら、もっと深く。とんっと、お腹を押し上げられて吐息が弾む。
「んっ……♥」
同時に、頭が白んだ。とんっ、とんっ。繰り返される刺激は、ただただ優しい。
乱暴にされれば反発だって、出来たのに。もう、ダメ、それ以上は待って。
頼りなく、首を振り続けたのは懇願じゃなかった。ゆっくりと、胸が揉みしだかれる。乳首とクリトリスを、優しく締め付けられた。お尻の穴にも触手が入り込み、背中が反り上がっていく。
逃げたいのか、もっと弄って欲しいのか。
お腹の奥を優しく突かれる度に、頭の中がグチャグチャになった。
今までされたイヤな事が、今までで一番気持ちいい事に変えられていく。咥えた雌しべが、口の中で大きく動いた。__ドロリ。蜜を吐き出して、それを飲み込んだ瞬間、頭の中で花が咲く。幸せで胸が埋め尽くされた。
もう、気持ちいい事しか考えられない。
胸の谷間に沿って、雌しべが擦り付けられた。
ヌルリとした表面。滴る蜜を肌に塗りつけながら、律動を繰り返す。淡い胸の膨らみが、太い雌しべに潰され歪む。挟めるほどの大きなんてそこにはないのに、触手達に押し上げられたおっぱいが、雌しべの動きに合わせて引っ張られた。
気持ちが、いいのかな?
植物に感情があるかなんて分からない。ただ蜜を出すだけの、反射的な動きだったかもしれない。谷間に挟まれ、擦れる刺激に身悶える。ビクビクと震えては、先端から溢れる蜜が量を増していった。いいよ? 気持ちがいいなら、あたしも嬉しい。そこにあるはずのない愛情を見つけたあたしは、その心地よさに身を差し出した。
動けないの、もどかしいな。
自分で寄せて、挟んで上げたいのに。
雌しべに合わせて、体を揺らすくらいしか出来ない。先端にキスをして、蜜を吸い上げる。ぴゅっと跳ねた雫が、顔に体に、降り注いだ。
きもちいいの? もっとだよね? あたしももっと欲しいから。
大きく口を開くと、雌しべが中に入ってくる。咥えて上げられるのが嬉しい。
愛情の深さに酔いしれた。とんっと、喉の奥と、お腹の奥を同時に突かれて、泣きたくなるほどの快感に包まれる。夢のような時間は、魔法にかかったみたい。
そうだ、魔法。あたしには、コレがあった。
「んっ♥ ふぅ、はぁ……ぇんぃに、なぁ……っ。げん、きに、な、れ。ふぁっ、はむぅ……んちゅっ、んっ♥」
元気になぁれ。隣の檻から、亜音ちゃんの声が聞こえてきた。
一緒になって呪文を反芻すると、あたしの中で、触手が太さを増していく。咥えた雌しべも、割れ目の中も、お尻の奥でも。お腹が急に重たくなった。完全に、口を塞がれて息が詰まる。目いっぱいに広げられた割れ目は、愛液を零す隙間もない。苦しい。その筈なのに、溢れた涙は温かい。あたしで興奮してくれてると思うと、それ以上の幸せが胸に溢れた。
ヒダを巻き込みながら、奥へと押し込まれる。ビクビクと震える触手の脈動を直接感じて、腰が勝手に浮き上がった。まるで自分から、捧げるように。どすっと、お腹を押されて、閉じた瞼から涙が飛び散る。ピタリと、嵌っちゃった。そこを守る魔法は、もう残ってない。
きっと時間切れなんだ。
確かめもしないで、都合の良い言い訳を願う。自分から受け入れたんじゃない、頑張っても無理だったの。だから、だから。じわぁっと、お腹の奥が熱くなる。腰がガクガク震えて、背筋を甘い痺れが駆け抜けた。お尻から触手を引き抜かれ、乳首とクリトリスを優しく締め上げられる。
頭が真っ白。
幸せの花びらが、舞い散るようだ。
体に力が入らないらないのに、きゅぅっと締まったお腹は、触手を咥えて離さない。蠕動を繰り返しながら、触手はさらに奥へ。ぐりっと、入口を押し開くと深いところへ潜り込んでくる。
「ぃっ、ぁっ……♥」
直接、出されてる。半透明の触手が薄黄み掛かるほど、送り込まれた液体が、あたしを満たしていく。身ごもった種の重たさを抱えながら、泥沼に沈みそうになった意識の隅で、思う。パソコンのモニターに映っていた文字列。妊娠、苗床、母体、適正。ああ、そっか。あたしは、お嫁さんになったんだ。
ごめん、ごめんね陸。
あたしは、本当に陸のお嫁さんになるつもりだったんだよ?
でも、もう。嫌なことばかりを思い出す。汚れた自分の体を、彼に見せられない。
きっと陸なら、他にも良い子が見つかるから。
ああ、イヤだな。
他の誰かと手を繋いでいるのを想像すると、胸が痛いんだ。
今すぐ、駆け出したくなる。その手を払って、あたしのだってっ、強く、彼の手を。
植物を枯らす魔法。
初めてだった。ズルはしても、誰かを傷つける魔法だなんて。
飲み込んでいた蜜が、急に苦みに変わる。乳首とクリトリスを締め付けていた触指が解けて、手足を縛っていた拘束が緩む。触手が中から抜け落ちるのと同時に、あたしも床へと落とされた。
ごめん、ごめんね。
嘘でもいい、一度でも愛情を向けたせいかもしれない。お股から流れ出す薄気味悪い液体は枯れ果てて、もう何も残っていなかった。あたしをお嫁さんに選んでくれたのに、たくさん愛してくれたのに。萎れた花を見上げて涙が滲む。
それも一瞬。
涙ともに未練を払う。力の入らない体で床を這いながら、亜音ちゃんの側へ。
「亜音ちゃん、亜音ちゃんっ」
言葉だけは強く。だけど、抱きしめる両手は頼りない。
ぼんやりと目を開いた彼女は、薄っすら微笑むと「やっぱり、助けに来てくれた」信じて疑っていなかった。一時でも、折れてしまった自分を恨む。
「ごめん……遅くなって」
「ううん」
やっと、見つけた。もう、離さないから。
二人で、お家に帰ろうね。今できる精一杯で、あたしは亜音ちゃんを抱きしめた。