-デンジ視点-
「ワンッ!」
ポチタの声で目が覚める。
時計が動かないから何時間寝たのかは分からない。
腹は減ってるがまだ耐えられる。
「ポチタ……やっと起きたのか」
「ワフ……」
「実はちょっと厄介なことになっててな……」
ポチタを俺と18号さんの間に置いて、状況を説明する。
「――ってわけだ。分かったか?」
「ワン!」
「悪魔の倒し方を考えないといけねーが……肝心の悪魔が影も形もねーし、どうすっかなァ」
頭をかきながらぼやいていると、コンコンとノックの音が鳴る。
「邪魔するぞ――なんだ起きてたのか。ポチタもやっと起きたんだな」
「ワフゥ」
「何か用か? 8階から出られるようになった?」
「それはまだだな。とりあえずホテルに残ってた水と食料は確保してるが……18号は?」
「まだ寝て――あ」
振り返ると、18号さんがむくりと起き上がった。
ポチタが18号さんに抱き着くと、そのまま抱き上げられる。
「悪いな、起こしてしまったか」
「いいよ……何かあったか?」
「コベニが殺した悪魔がいたろ。あれがどんどん大きくなっている」
廊下で待機していた姫野とパワーも連れて様子を見に行くと、あの手足悪魔が増殖し合体したような姿に変わっていた。
「気持ちわりー。何の悪魔だよこれ」
「さぁな……コイツを殺せばいいなら話は早いんだが」
悪魔は今のところ襲ってくる様子はない。ただモゾモゾと動くだけだ。
パワーが血で作り出した武器を手に取り構える。殺す気満々だ。
アキがパワーを止めようとした時、悪魔の無数の顔のうちの一つが口を開く。
『人間……愚かな人間たちよ。私は契約を交渉する』
「……契約だと?」
『チェンソーマンを私に差し出せ……死体でもいい……喰わせろ』
「チェンソーマン? デンジのことか」
『違う……そこの犬のような姿をした悪魔だ……食わせろ……そうすれば他のものは無事に帰す……契約しろ』
全員の視線が、18号さんに抱かれているポチタに集まる。
「どうすんのアキ君」
「悪魔の要求に従って、それで何になります? 無事に帰れても任務は失敗だ」
「そりゃそうだけど……」
「私もアキに賛成だ。それに、ポチタは絶対に渡すわけにはいかない」
「俺もやだ!! ポチタを差し出すぐらいなら飢えて死んだほうがマシだね」
話し声を聞いていたのか、コベニが扉を開けて出てくる。手には包丁を持っている。
「チェンソーマン……喰わせれば助かるんだぁぁぁぁ!!!!」
振りかぶろうとする前に俺が手刀で包丁を落とさせる。
姫野がコベニの腹に肘打ちすると、不様に転がってうずくまった。
騒ぎを聞きつけたのか、あるいはずっと隠れて聞いていたのか、荒井も顔を出す。
「けっ、契約すべきです。このままじゃ飢えて死ぬだけですよ。その犬を差し出すか殺して――」
「ポチタの死が悪魔の利益になるなら、契約はするべきじゃない」
「それに、ポチタが死ねば――マキマもブチ切れるだろうな」
「マキマさんが!?」
「それより、この悪魔への攻撃を試してみるべきだ」
18号さんが悪魔を指差して言った。
「そうだな――デンジ、やれ」
「おう、まぁ見てな。一撃でぶっ殺してやる」
一気に気を開放する。結構ハラ減ってたが、18号さんの人造人間としての力が流れ込むのか飢餓感は薄まる。
俺は手のひらを上に掲げて、開放したエネルギーを一点に集める。
それを薄くピザ生地みたいな円盤にして、高速で回転させる。
「行くぜっ、『気円斬』!!」
今朝の修行でようやくモノにした新技。あの日、18号さんが見せてくれた技だが習得にはかなり時間がかかった。
物凄い切れ味のそれは、悪魔の肉体を豆腐か何かのように切り裂いた。
「ギャアアアア!! 痛イイイイ!!」
悪魔は痛みに叫び続ける。
斬られた傷口から、ボコボコと肉が再生し体積が増殖していく。
「うげぇ」
『無駄だ……これは私の本体ではない。
「8階にいる限り、お前は絶対に倒せないということか」
『その通りだ……お前らが生き残る術はない――この私、『永遠の悪魔』と契約する以外はな』
永遠の悪魔は動きを止める。どこか俺達を嘲け笑っているような感じでムカつく。
「どうするんだ、アキ」
「……本体じゃなかろうが、俺の刀ならあの悪魔を殺せる。それで――」
アキが背中の刀に手をかけるが、その手を姫野が掴み押し留める。
「ダメ。絶対ダメ……その刀は使わないで」
「それ以外に手立てはないですよ」
「だとしても……ダメ」
あの背中の刀、そんなにやべーもんなのか。あんだけ姫野が言うってことはアキが払う対価が重いんだろうな。
「デンジ、何か思いついたか」
「あー……なんか思いつきそうな感じはあるっすけど」
「そうか……もしあの悪魔を倒せたら、手でシてやろうかと思ったが……」
「ええーっ、マジすかぁ!? き、キスは!?」
俺が要望を出すが、18号さんは渋い顔をする。
「それは……よっぽどだな。悪魔を倒すだけじゃ足りない」
「よっぽど……分かりました。俺、もっと考えてみます!」
18号さんの隣でパワーも何やら考え込んでいた。
「パワーも脱出方法考えてんのか?」
「脱出できたら狼狽えるウヌらを見れなくなるからのう。そんなものは考えもせんわ。
ワシはノーベル賞を考えておった。ノーベル賞を発明すれば人間はワシにひれ伏すじゃろうからな。
そしてそれを踏み台にワシは総理大臣になる。人間を苦しめるために……手始めに消費税は100%じゃ!!」
ガハハハハ、と笑うパワーと、それを見て溜め息を吐くアキと18号さん。
「とりあえず、部屋に戻って考えるか――」
アキが部屋に戻ろうとした時、いつの間にか18号さんの背後にいた荒井が18号さんを羽交い絞めにする。
「てめーっ」
「コベニちゃん!!」
俺が荒井を引き剥がそうと手を伸ばすと同時に荒井が叫んでコベニを呼ぶ。
転がっていたコベニが素早く起き上がり包丁を再び手に取る。
そして猛烈なスピードで18号さんが抱いているポチタめがけて駆けていく。
「まずい……コベニちゃん
コベニは笑い続けるパワーと、止めようとするアキを躱す。
見えないはずの姫野の幽霊ですらも第六感で躱され、18号さんとポチタまで2mほどの距離まで肉薄する。
「死んでェェェェ!!!」
コベニが包丁を振りかぶって叫ぶ。
18号さんならこの状況でも難なく対処するだろうということは分かっていた。
それでも、黙ってみているわけにはいかない――俺は18号さんの前に出る。
「デンジ!?」
「どいてェェェ!!」
「どくのはてめェだよ、クソ女――『太陽拳』!!」
眩い光でコベニの動きが一瞬止まる。
俺はその隙を逃さずに、コベニの頬に平手打ちして壁まで吹っ飛ばした。
ついでに放心している荒井も。
「……無茶をする」
「自分より強いからって、惚れた女を守らないのはヒーロー失格ってもんでしょう」
「惚……そ、そうか……」
一瞬、18号さんの頬が赤くなった気がしたが、すぐに元に戻った。
「なぁ、こいつら命令違反でクビにできねーの??」
「難しいな。前にも言ったがうちは人手不足だし、いいとこ減給処分ぐらいだろ」
「なら、その減った給料分を慰謝料として18号さんが受け取るとかよ~……あ」
その時、俺の頭ん中でスパークが起こり、この窮地を完璧に収めるアイデアが降りてきた。
すぐに言おうとしたが、俺の声は
「もうおしまいなんだぁぁぁ!! このまま飢えて死ぬんだぁぁぁぁ!!」
「こ、コベニちゃん落ち着いて……」
荒井が落ち着かせようと近づくが、コベニはその手を振り払う。
「無事に出られてもマキマさんに怒られて給料減らされて……風俗で働くしかなくなるんだぁぁぁ!!!!」
コベニの恐怖と将来への不安が増大し、それがそのまま永遠の悪魔の力も増大させていく。
『ケヒッ』
不気味に笑う永遠の悪魔は、その体積をぶくぶくと増す。
更に空間が傾いて、廊下が箱のないエレベータみたいになった。
俺達は部屋の扉から、廊下の底に溜まる永遠の悪魔を見下ろす。
「――刀を使います。いいですよね、先輩」
「ダメ!! お願い、やめて!」
「しかし……!」
刀を使う使わないで問答を続けるアキと姫野。
「悪魔と契約を!!」
「ポチタを悪魔に喰わせましょうよぉぉぉ!!」
ひたすら同じことを叫ぶ荒井とコベニ。
「ガハハハハ!! 面白いのう!!」
『クフフフ……!』
笑い続けるパワーと永遠の悪魔。
「……」
18号さんは何も喋らない。脱出方法を考えているんだろうと思う。
俺は18号さんを安心させたくて、その手を握る。
「デンジ?」
「18号さん。俺ぁ……ノーベル賞ものの解決法を考えついちまったぜ」
「……何?」
俺は他の連中を集めてその解決法を話し始める。
「あの悪魔……永遠の悪魔つったか? 弱点はここにゃないらしいが、俺の攻撃を受けて痛がってやがった。
そこで俺は思った……奴が弱点を差し出したくなるまで痛めつけてやりゃいいってな」
「悪魔みたいな発想じゃな!」
パワーが茶々を入れてくる。
「だけどなぁ……俺らは腹も減れば眠たくもなる。体力もいずれ尽きる。
あいつにはきっとそのどれもない。耐え切られたら俺らの負けだ。それじゃ賭けになっちまう」
「賭けてみる価値はあると思うが……それで?」
アキが納得の顔を浮かべながら話の続きを促す。
「話は変わるがよ……18号さんと契約して気を開放してると、
18号さんは人造人間の悪魔だからな……その影響があるのかもしれねー。
そこで俺は思った。18号さんと契約してる俺なら、いつまでも戦い続けられるんじゃねーかと」
「気を開放してれば、悪魔の攻撃は効かないだろうしな」
18号さんが補足してくれる。俺は頷いて、すぐに首を振る。
「でもそれじゃダメだ。よっぽどじゃないから18号さんとキスできねぇ!!」
「は?」
「アハハハ!! デンジくんって……本当にブレないね」
姫野が笑いながら呆れた表情を浮かべる。
「それに俺だけが頑張るってのも何か嫌だぜ。ポチタを殺そうとした奴が俺が戦ってる間ぐーすか眠ってるのは我慢ならねぇ」
「う……」
「ってわけで、お前らにも戦ってもらうぜ。つっても、お前らは眠気や空腹を我慢しなきゃならねぇ。
そんな状態であのクソ悪魔と戦うのは危険だからな……どうすりゃいいか、俺は考えた」
俺はたっぷりと間をとって、口を開いた。
「ついに閃いたぜ。簡単な話だ……全員が18号さんと契約すりゃあいい!」
「なっ……!?」
「そんで、対価は給料の2割を18号さんに捧げること。
5人いるからな……これで18号さんは俺のぶんも含めて公安3人ぶんの給料を得るってわけだ!!
全員活躍できるし、18号さんは更なる金を得られる。こりゃノーベル賞は総なめだぜぇー!!」
俺が叫ぶと、18号さんは俺の手を握り返してくれる。
「いいのか? お前以外に契約者が増えても」
「単に気を分け与えるだけの契約なら気にしないっす。技とか修行つけてくれんのは俺とポチタだけにしてくれんなら」
「分かった。お前らもいいか?」
18号が5人を見回して確認する。
「給料の20%かぁ……なんか税金みたいだ」
「デンジ並の頑強さが手に入るなら、生命保険に入るようなものですね」
「確かにねー……分かった。契約するわ」
「俺も契約する。お前らはどうするんだ」
アキがコベニと荒井の意志を確認する。
「給料減るの嫌だけど……死ににくくなるなら……でも……」
「20%って結構重いですよ……」
渋るコベニと荒井に、姫野が声をかける。
「契約してあの悪魔と戦うなら、失態はマキマさんには報告しない。戦わないなら包み隠さず報告するよ。
どっちにしろ給料は減るけど、どうせなら力を得たほうがいいんじゃない?」
「うぅぅ……分かりました。契約します……!」
「コベニちゃんが契約するなら俺も……契約します!」
アキは最後にパワーに顔を向ける。
「ワシは契約せんが?」
「言うと思った……アキ君」
「
18号さんとの契約で、パワーはバディの命令には従うしかない。
「ず、ずるいぞ貴様!! すればいいんじゃろ、すれば!」
「ちなみに、二重契約になるのは大丈夫なのか?」
「前のはパワーが主体の契約、今回は18号が主体の契約だ。二重にはならないから問題はない」
そして全員が18号さんとの契約を結び終える。
「気を開放してみろ。全身に力を込めるイメージだ」
18号さんに言われ、それぞれ気を開放する。
アキと姫野はすんなりと、コベニとパワーは少し時間をかけて……荒井だけなかなか使えなかった。
「とりあえず俺から行くからよ、おめーらはしばらく気のコントロールに慣れとくんだなァ」
俺は部屋の入口から廊下の永遠の悪魔を見下ろす。
「永遠の悪魔さんよぉ~! 俺達の誰か一人でも殺せたらポチタを差し出してやってもいいぜぇ!!」
『――それは契約か?』
「おー、それでいいぜ。じゃあ俺から行くからなぁ!!」
そう言って、俺は扉から廊下へ飛び込んでいく。
*
-18号視点-
「あいつ、勝手なことを……」
「負けられなくなっちゃったね」
アキと姫野はじっと荒井を見る。
「気のコントロールの修行がてら、組み手でもするか。気も紛れるしな――荒井、来い」
「は、はいっ」
「コベニちゃんは私と。パワーちゃんは……どーしよ?」
パワーは腕を組んでベッドに腰掛ける。
「ワシは修行などせんぞ。そんなことしなくても最強じゃからのう」
「ほう……言ったな? ならポチタと戦ってみろ。勝てれば給料の対価はなしでいい」
「ワフッ?」
「ポチタとか……よし、やってやる。かかってこい……ボコボコに――」
「ワンワンワンワンワン!!!!」
ポチタはそのフォルムからは想像できない速度で俊敏に動き、パワーに連続攻撃を仕掛ける。
パワーは血の能力を使う暇すらなく、ポチタに組み伏せられてしまった。
「ポチタも私が手ずから鍛えてるんだ。お前みたいないい加減な奴には負けん」
「ぐ……ぬぬぅ」
「ポチタに鍛えてもらえ。私は――寝る」
特にすることもないので眠ることにした。
扉の向こうから響く、永遠の悪魔の悲痛な叫びを聞きながら――
・
・
・
「18号ちゃん、起きて」
「うん……? 終わったのか?」
「まだ。かなり永遠の悪魔もキツそうだけど、全員と戦わずに諦めるわけにはいかないんでしょうね。
とりあえず2時間交代で戦って、今最後の荒井くんが戦ってるところ」
「そうか……大丈夫か、あいつは」
「まぁ、何とかね。とりあえず死ぬことはなさそうだけど」
私は起き上がって、廊下の様子を見る。
『ウウゥ……何でだァ……弱いのに倒せないィィ』
「ハァハァ……何とか戦えてる……ぞ……」
荒井は肩で息をしながら懸命に戦っている。
「デンジは?」
「向かいの部屋で寝てるよ」
私は向かいの部屋へ行き、デンジを起こす。
「んぉ……あ、18号さん……おはようございます」
「おはよう。荒井も悪魔もそろそろキツそうだし、もうお前で決めてこい」
「りょーかいです。最後はチェンソーマンになっとくかァ~。チェンソーで斬られたほうが痛えだろ」
「ワンッ!」
布団の上でポチタが元気に吠える。やる気は充分らしい。
「……デンジ」
私はデンジの耳元に顔を寄せて囁く。
「無事に帰れたら――無限にキスさせてやる」
「!!!!????――ぃやったああああああああああああ!!!!!!!」
デンジは叫びながら、ポチタを抱えてドアから飛び出す。
「荒井ぃ!! 交代だ、退け!!」
「わ、分かった」
荒井は拙い舞空術で部屋に戻り、入れ替わりでデンジとポチタが落ちていく。
落ちながらデンジはポチタを飲み込んでチェンソーマンに変身する。
「今俺の腹ん中にポチタがいるぜぇ!! 殺して奪ってみろよ永遠の悪魔さんよぉ~!!」
『来たか、チェンソー!! 殺してや――』
ようやくのチェンソーマン登場に気勢を上げる永遠の悪魔。
しかし、デンジのチェンソーがその気勢ごと悪魔の肉体をぶった斬る。
『ギャアアアア!! いっ痛イイイイイ!!!』
「てめぇの薄汚え血もよぉ!! これからキスし放題と思えば恵みの雨に思えてきたぜ~!!」
デンジは大量の血を浴びながら、気で強化したチェンソーを振り回す。
永遠の悪魔も必死に反撃するが、デンジにはせいぜい石を投げられた程度の痛みしかないのだろう。
『何故だァァ!! 何故お前たちはそんなに強い!?』
「愚問だなぁ!? 俺達には勝利の女神がついてんだよバァーーカ!!」
そこからはただひたすら一方的な戦いだ。
チェンソーで斬る、斬る、斬る。
あえて遅くノコギリのように動かして、より痛覚を刺激したり。
刺して、斬って、噛み千切って……次第に悲鳴は断末魔に変わっていく。
「てめーの攻撃は効かねえ、こっちは空腹は気にならねぇし交代で眠れて体力はバッチリ。
てめーだけがいつまでも一方的にボコられる気分はどうだァ!? 『永遠』が
それから1時間、交代で戦い続けてからは12時間ほど経ったあたりでついに永遠の悪魔は根をあげた。
『これが私の
永遠の悪魔は心臓を掲げて、涙を流して懇願する。
「もうおしまいかぁ~!? これに懲りたら二度と永遠なんて名乗んなよな~!!」
『ハイ……すみません……調子乗ってました……』
デンジが心臓をぶった切ると、血が溢れて悪魔は絶命する。
その顔はすべて、どこか安心したような表情だった。
それと同時に空間の傾きは元に戻る。
「終わったか」
・
・
・
悪魔の死により、私達はホテルから外に出ることが出来た。
「出られたな……腹減りましたね。マキマさんに報告したら、飯食いに行きましょうか」
「いいね。そうと決まればさっさと戻ろ」
「あ、あの……姫野先輩。俺達のことは……」
「言わない言わない。飯も奢ってあげるから、しゃんとしときな~」
それから私達は本部までタクシーで向かい、マキマへ足早に報告を済ませた。
7人とポチタで焼肉でも食べに行くことになったのだが、私だけマキマに残らされた。
「大変だったみたいだね?」
「ああ」
「しかも、あの5人と契約したって聞いたけど……本当?」
「ああ。それだけか?」
私が踵を返そうとすると、マキマは立ち上がって告げた。
「アメリカの病院から連絡がありました。ドナーが見つかったそうです」
「それを先に言え……手術の日程は?」
「こちらの都合に合わせてくださるそうです。可能なら明日にでも可能だと聞いてます」
「分かった。明日向かう。そう連絡しておいてくれ」
「分かりました――それと」
私がドアノブに手をかけると、背後から声をかけられる。
「まだ何かあるのか」
「デンジくんとキスするというのも本当?」
「……何で知ってる?」
「否定しないんだね? ――私は下等生物を支配して、色々と情報収集をしてるの。
それで、デンジくんが譫言みたいに呟いてたのを聞いちゃったんだ」
私は振り返ってマキマを睨む。
「出歯亀女が……プライベートもあったもんじゃないな」
「ひどいなぁ。流石に個室までは踏み入らせないよ」
「どうだか……それじゃもう行くぞ」
私はマキマの執務室を出て、あいつらを追いかける。
・
・
・
食事を終えて、夜。宿舎に帰る途中で私はデンジに手術が決まったことを明かす。
「明日手術っすか!? 急っすね……まだ心の準備が」
「大丈夫だ。全身麻酔で眠って起きたらもう終わってる」
「そういうもんなんですね……ありがとうございます。俺がんばります!」
デンジはぺこりと頭を下げる。
「手術しても何日かはリハビリが必要だからな。見舞いには行くが……しばらくはお預けだ」
「また~!? 俺頑張ったのに……」
「我慢しろ――だが、お前のおかげで給料も1人分上がったしな。こっちに来い」
私はデンジを手近な路地裏へ引っ張り込む。
「18号さ、んむっ……!?」
デンジを壁に押し付けて、ただ唇と唇を合わせて押し付けるだけのキスをする。
ちゅっ……ん……ぁむ……
ゆっくりと唇を離すと、顔を真っ赤にしたデンジの顔が見えた。
「――続きは心臓移植が終わってからな。これ以上は心臓にいらない負担がかかりそうだ」
「…………はい」
俯くデンジに右手を差し出す。
しっかりと指を絡めて手を繋いで、私達は家路についた。
ここまでが書き溜めたものです。
しばらく更新が止まりますがご容赦ください。
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