※この作品はR-18です。

人造人間の悪魔   作:女主人公スキー

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09.人造人間と合同任務

 -18号視点-

 

 

 

 ――まずいことになった。

 

 

 

「おぎゃ……おんぎゃあ……」

 

 

 

 デンジが……壊れた。ソファで横になりながら、虚ろな目で呟く姿を私が

 

 ここ数日の反動もあって、厳しい修行が続いていた。

 

 徐々にギアを上げていって、今日は過酷さがピークに達していた。

 

 その甲斐もあって新技の習得もできたし、戦闘力もずいぶん上がった。

 

 だがその引き換えにデンジが壊れたまま戻ってこない。

 

 

 

「ど……みら……ぁびゅ……」

 

 

 

 これは治るのか……? もしこのまま治らなかったら、私の計画は――

 

 心配になって、近づいて様子を見に行くとデンジが私にすがりついてくる。

 

 

 

「ママぁ……」

 

「な、なんだ?」

 

 

 

 久しぶりに意味のある言葉を聞いて、反射的に反応してしまう。

 

 

 

「……おっぱい」

 

「いつものデンジに戻りつつある……か? ほら、触っていいぞ」

 

「おぎゃー!!」

 

 

 

 デンジは私の胸に飛びついて、顔を埋めたりむにゅむにゅと感触を確かめるように揉む。

 

 

 

「ママぁ……好きぃ!!」

 

「はいはい」

 

 

 

 壊れてなくてもこの数日はこんな調子だった事もあり、もはや慣れたものだった。

 

 されるがままのんびりテレビを見ていると、マキマから電話がかかってくる。

 

 

 

『マキマです。今、平気かな?』

 

「ああ」      「おぎゃ……まんま……」

 

『……? 森野ホテルに悪魔が出たんだ。二人にも出動を要請したい』

 

「そうか、分かった」

 

『ちょっと厄介な悪魔かもしれないから、今回は合同任務だよ』

 

「合同任務?」    「あぶぅ……んまんま」

 

『特異4課の別部隊の3人と、早川くんの部隊の3人。それと18号ちゃんを入れて7人での任務になります』

 

「そういえば私ってどの部隊に所属してる扱いなんだ?」    「はむ……ぱいぱいちゅきぃ……」

 

『18号ちゃんは私(・)の(・)直(・)属(・)だよ。ところで、何か低い声の赤ちゃんみたいな声が聞こえるんだけど……大丈夫?』

 

「たぶんな――あっ、こら! 服をめくりあげようとするな!!」   「おぎゃー!?」

 

 

 

 物凄い力で服を脱がそうとしてくるデンジを何とか引き剥がす。

 

 家の中だからいいが、万一外で同じことをやられてはたまったものじゃない。

 

 

 

『とりあえず、午後1時に森野ホテル前集合で。大変だろうけど、デンジくんもちゃんと連れて行ってね」

 

「ああ……切るぞ」

 

 

 

 私は電話を切って深いため息をついた。

 

 デンジは相変わらず壊れたまま私にしがみついて離れない。

 

 ポチタはというと、壊れてはいないもののグロッキー状態で完全にダウンしている。

 

 

 

「このまま運ぶしかないか……」

 

 

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 

 

「このホテルに?」

 

「ああ。銃の悪魔の肉片に反応がある。恐らく銃の悪魔の肉片を食べた悪魔だ」

 

 

 

 銃の悪魔。13年前突然現れ、世界各地を襲い5分で120万人を殺して姿を消した。

 

 隣にいるアキもまた銃の悪魔の被害者で、復讐のためにデビルハンターになったそうだ。

 

 

 

「ところで……デンジはそれ、どうなってんだ……?」

 

「過酷な修行を課したら壊れた。まぁそのうち戻るだろう」

 

 

 

 デンジは相変わらず喃語のような言葉しか喋らない。ポチタは私の肩で眠っている。

 

 

 

「軟弱じゃのう。どれ、ワシが叩いて直してやろう!! こういうのは叩けば直ると決まっておるからな!!」

 

 

 

 そう言ってパワーが拳骨でデンジを叩こうと振りかぶるのを手で制する。

 

 

 

「やめろ。悪化したらどうする」

 

「これ以上バカにはならんわ。今が底じゃろ」

 

「それはそうだが……」

 

 

 

 尚も叩いて直そうとするパワーとそれを止める私との攻防が続く。

 

 その後方で別部隊のリーダーらしき女がアキに近づいて話しかける。

 

 

 

「ねーアキくん。噂のチェンソーマンってどの子?」

 

「姫野先輩――言いにくいんですが、アイツらです」

 

 

 

 アキが私のほうを指差して姫野に示す。

 

 

「あの金髪の女の子? それともしがみついてる金髪の男の子?」

 

「男のほうです。名前はデンジ――それと肩で眠ってる犬がポチタ。あの2人が変身した姿がチェンソーマンです」

 

「はぇ~、そうなんだ。変身って、ほんとにヒーローみたいじゃんね」

 

「精神性は全然ヒーローじゃないですけどね……まぁよくやってるとは思いますが」

 

 

 

 あれからデンジは何度かヒーローとして出動し、何十人かの命を救っている。

 

 そのたびにマスコミに取り上げられ、チェンソーマンの知名度は日に日に増している。

 

 

 

「それじゃあ、あの金髪の女の子は誰?」

 

「マキマさん直属の部下で、自称『人造人間の悪魔』。名前は18号」

 

「へー、悪魔なんだ」

 

「驚かないんですね」

 

「それぐらいで驚いてちゃこの仕事やってけないって。それで、自称っていうのは?」

 

「うちの魔人――パワーが言うには匂いは人間らしいです。機械の匂いもするそうなので実際に人造人間ではあるんでしょう。

 

でも、悪魔特有の契約の力は持ってる。今はデンジとだけ契約してるそうです」

 

「はぇ~」

 

 

 

 姫野は興味津々といった表情で私達に近づいてくる。

 

 

 

「やっほー。えっと18号ちゃん……でいいのかな」

 

「ああ」

 

「私は姫野。アキ君より古参で今はアキ君とおなじく特異4課の部隊長やってるんだ。よろしくね?」

 

「そうか、よろしく」

 

 

 

 そっけない対応をする私に、姫野はくじけず質問をなげかける。

 

 

 

「ねぇキミとデンジくんてめちゃ距離近いけど、どーいう関係?」

 

「どうって……契約者で保護者ってところだな」

 

「恋人じゃないんだ? 胸とか尻揉まれてるのに?」

 

「コイツをコントロールするにはそういうことが一番手っ取り早いからな。仕方ない」

 

 

 

 人前ではやめてほしいが……今回は私にも非がある。許容するしかない。

 

 

 

「じゃあ、私がデンジくんとキスしても問題ないわけだ」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 胸を揉みながら私の横っ腹から顔に出しているデンジの顎を、姫野が指で上向ける。

 

 

 

「デンジくんは私とキスしたいよねぇ?」

 

「き……きす……?」

 

 

 

 姫野は唇と唇が触れそうな距離でデンジに囁く。

 

 

 

「…………」

 

(あれ、止めに来ないな。まぁいいや、それならそれで……)

 

 

 

 姫野は目を閉じてデンジにキスしようとするが――ぶつかったのは唇ではなく額だった。

 

 

 

「いったぁ~!?」

 

「キスはしねぇ。俺はキスするなら18号さんと心に決めてんだ!!」

 

 

 

 デンジは胸を鷲掴みにした状態のまま、キメ顔で私を見上げて言った。

 

 

 

「正気に戻ったんなら――手を離せバカ!」

 

「あだぁ!?」

 

 

 

 私は肘でデンジの頭を叩く。

 

 

 

「す、すいません……」

 

「これから合同任務だそうだ。しっかり働けよ」

 

「うす……」

 

 

 

 私はポチタをデンジに預けて背を向ける。

 

 

 

「爛れている……!!」

 

 

 

 姫野の部隊のメンバーらしき男が私と姫野を見て声を荒げる。

 

 

 

「姫野先輩も、そこの18号という女性も! 簡単に胸を触らせたり、せせ、接吻しようとするなんてどうかしてます!!

 

これから任務だというのに、もう少し緊張感を持ってもらいたい……!」

 

「ごめーん荒井くん。でもまぁおかげでデンジくんが正気に戻ったワケだし?」

 

 

 

 軽薄に謝罪しながら、荒井と肩を組んで怒りを諫める。

 

 荒井はというと、胸が当たっていることに気付いて注意する声は次第に小さくなっていく。

 

 

 

「コイツはアレだな。むっつりスケベってやつ。ホントはその姫野とかいう女ともキスしてーし18号の胸もさわりてーんだ」

 

「なっ……」

 

「俺が羨ましいんだろぉ? でも残念だったな。18号さんの胸も唇も俺のもんだ。お前はその姫野とかいうショボ女で我慢してなァ!!」

 

「なんだとぉ!! 姫野先輩は素敵な女性だ、ショボ女じゃない!!」

 

 

 

 荒井がデンジに掴みかかるが、悉く躱されている。

 

 荒井という男は熱意はあるようだが才能はそれほどでもなさそうだ。

 

 

 

「うーん、嬉しいような傷ついたような」

 

「おい、そこの陰で縮こまってる女は何だ?」

 

「ああ、コベニちゃん? この子、人見知りなんだよね」

 

 

 

 姫野がコベニの手を引いて、私と早川隊の前に引き摺りだす。

 

 

 

「ほら、自己紹介して。一緒に戦う仲間なんだからさー」

 

「ひっ……東山コベニ、です。あの……よろしく……」

 

 

 

 ぼそぼそとした声で名乗るコベニに対して、デンジとパワーが腕を組んで疑義を唱える。

 

 

 

「根暗な女じゃのォ~!! こんなの戦力にならんじゃろ」

 

「おー確かにな。これからの戦いに雑魚はいらねーしなぁ?」

 

 

 

 じりじりとコベニに近づくデンジとパワー。

 

 

 

「行け、パワ子!!」

 

「ワシ最強!! ワシ最強!! ワシ最強!!」

 

 

 

 パワーがコベニに殴りかかるが、コベニは「ひえええ」と甲高い声をあげながらも攻撃を避け続ける。

 

 

 

「何故じゃ、何故当たらん!? おいデンジ、貴様もやれ!」

 

「ハッ、情けねーな。ま~いいや。修行ん成果見せてやるぜ!」

 

 

 

 本気を出してはいないが、スピードだけなら全力に近い速度でコベニに迫る。

 

 しかしその攻撃もコベニには遂に当たることはなかった。

 

 

 

「すごいな……デンジもだが、コベニも」

 

「でしょ? この子、ちょっとすごい悪魔と契約してんのよね。なんと、ご――」

 

「姫野先輩!! け、契約悪魔は秘密って、言った……」

 

「なんでそんな秘密にすんのさー。別に恥ずかしい悪魔ってわけでもないじゃーん。

 

変な悪魔だと誤解されるより良くない? 例のデメリット(代価)もあるし、教えといたほうがいいと思うけどなー」

 

「う……ううぅ~……」

 

 

 

 呻くコベニに、アキが助け船を出す。

 

 

 

「俺は不用意に教えない派だ。俺は2体の悪魔と契約してるが、1体は姫野先輩やマキマさんしか知らない」

 

「でっ、ですよね。教えないほうがいいですよねっ」

 

「だが、デメリットがでかいなら話は別だ。お前自身のため、仲間のためにも話しておくべきじゃないか?」

 

「うっ、ううう……分かりました。言いますぅ……」

 

 

 

 コベニは観念して白状することを決めた。

 

 

 

「私の契約悪魔は――『豪運』の悪魔、です」

 

「豪運……?」

 

「絶対に死にそうな時でも生き残れる……みたいな力です」

 

「なるほど。さっき、パワーとデンジの攻撃を躱せたのもその悪魔の力か」

 

 

 

 アキがそう言って納得しかけたが、姫野が首を振って否定する。

 

 

 

「いんや、半分半分てとこかな。半分はコベニちゃんのセンスだと思う。

 

この子、危機察知能力が異常に高いのよ。コベニちゃん、さっき豪運の能力は発動した?」

 

「えっと……魔人の方の時は別に……。デンジ? って人の時は1回だけ……」

 

 

 

 

 

 

 

「なんじゃと……!? まるでワシが実力で負けたような言い方をされた気がするが……気のせいじゃな?」

 

「気のせいじゃない。それがお前の実力だ。もっと精進するんだな」

 

「嘘じゃ!! 嘘じゃあ~!! ワシがこんな陰気な女に劣ってるわけがない!!」

 

 

 

 パワーが地団太を踏んで悔しがり、アキはそれを見て大きなため息をついた。

 

 

 

「ちなみに、豪運の能力は自動で発動するの。コベニちゃんの意志に関係なくね。

 

そして発動するたびに、日常での得(・)ら(・)れ(・)る(・)は(・)ず(・)だ(・)っ(・)た(・)幸(・)運(・)が(・)奪(・)わ(・)れ(・)る(・)。それが対価」

 

「それじゃ、さっきのおふざけでコベニは一つ幸運じゃなくなったってわけか……」

 

 

 

 私の呟きを聞いて、デンジは苦い顔をする。

 

 

 

「そりゃ、悪いことしちまったなぁ……でもお前も悪いんだぜ? そんな風にオドオドしてっからさぁ」

 

「そうじゃ! ワシは悪くない!! ワシは正しい!!」

 

「無茶苦茶だ……この人たち」

 

 

 

 私は泣きそうになっているコベニの肩を叩く。

 

 

 

「うちのデンジとパワーの馬鹿がすまなかったな。デンジはああいう奴だが、悪い奴じゃないんだ。仲良くしてやってくれ。

 

――おいデンジ、ちゃんとコベニに謝れ」

 

「え~!?」

 

「謝れないなら、もう胸の件はナシだぞ」

 

 

 

 私がそう脅すと、デンジはコベニの前に直立し、深く頭を下げる。

 

 

 

「コベニ……さん。本当にすみませんでした!!」

 

「ひぃ……もういいです、気にしてないので……」

 

「パワー、お前もだ」

 

「ワシは謝らん!!」

 

「あ?」

 

 

 

 私が睨むと、パワーは青い顔をしてコベニに向き直る。

 

 

 

「すまんかった。許せ」

 

「あ、はい……」

 

 

 

 ほんの少し頭を傾けただけの謝罪だったが、まぁプライドの高いパワーならこれが限界だろう。

 

 私はアキに近づいて話しかける。

 

 

 

「親睦も深まったことだし、そろそろ行くか」

 

「そうだな……姫野先輩もいいですか?」

 

「いつでもオッケーよーん」

 

「それじゃ、行きましょう。全員、警戒を怠るなよ」

 

 

 

 アキの合図で、私達はホテルに足を踏み入れた。

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