陸
「ハァ…ハァ…」
彼の名前は【空原 陸】
現在彼は人通りがほぼ無い路地裏の壁に背を預け座り込んでいた
身体の至る所に傷があり出血もしていた
陸
「こりゃ死ぬな…」
彼自身、死を悟っていた
最早思うようには動けず意識も少しずつ薄くなっていた
何故こんな事になっているか彼自身も分かっていなかった
普通に歩いていた所をいきなり背中から攻撃され何とか逃げようとしたが逃げれず気付けばこんな状態だった
陸
「はぁ…ろくな人生じゃなかったな…楽しかった事なんて何1つ無かったな…」
陸の人生は本当にろくでもなかった
家族と友人にも恵まれず悪い噂は印象をどんどん悪くし仕事の関係以上の相手は誰も居なかった
???
「こんな所に居たか…まあ誰にも見られず死ぬのはお前らしいだろうな」
陸
「なるほど…色々恨まれてるとは思ってたけど納得したわ…お前なら平気でこういうことするだろうな」
陸の目の前に現れた男
その男の顔に陸は見覚えがあった
否、見覚えなんて甘い言葉じゃない
この男こそ陸の人生を狂わせた理由の1つである
???
「最後に何か聞こうか?君みたいなクズでもそれぐらいは許してやろう」
陸
「はっ!何を言うのかと思ったら下らねえ…」
そう言うと陸は中指を立てて
陸
「くたばれクソ野郎…!!」
ドンッ
それと同時に陸の腹に衝撃が走った
陸
「ゴフッ…」
口から大量に出血しそこで陸の人生は終わりを告げた
???
「ふぅ…今日も大変だったけどいっぱいお客さんが来てくれて良かった、明日も頑張ろうって…えっ!?」
1人の女性が仕事の帰り道、明日への気合いを入れて帰っていると
???
「だ、大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」
目の前で倒れている1人に男に呼びかける
女性はこの時思わなかっただろう、この男との出会いが人生を大きく変えると
陸
「うっ…ん…ここは…ぐっ!?」
目を覚ますと見覚えが無い天井だった
身体を起こそうとすると痛みが走り上手く動かせなかった
陸
「俺はいったい…」
何があってここに居るのか分からずにいると
???
「あっ!目覚めたんだね、大丈夫?」
部屋に入ってきて声を掛けてきたのは紫色のショートカットの女性だった
陸
「アンタは誰だ?それにここは…?」
すず菜
「あっ、ごめんね、私は七瀬すず菜でここは私の家だよ、職場から帰ってる途中でアナタが道で倒れているのを見つけて家に連れてきたの」
陸
「そうだったのか、よく覚えてないんだがありがとう…俺は空原陸でえーとっ…」
自己紹介をしようとするが名前以外何も覚えていなかった
すず菜
「どうしたの?」
陸
「悪い、名前以外何も思い出せなくて…」
すず菜
「ええっ!?それって記憶喪失ってこと!」
陸
「おそらく…助けてもらったのにごめん、何も返せる物は無いが…いずれ何かしらの形で恩は返す」
そう言って陸は立ちあがろうとするが力が上手く入らず思うように動けなかった
すず菜
「無理しちゃダメだよ、君を見つけたとき身体中傷だらけだったんだよ、知り合いの人に診てもらって今の今まで目を覚ますかどうかも分からなかったんだから」
陸
「七瀬って言ったか?俺がそんな状態で見つかったって事は俺はろくでもない生活をしてたって事だ…そんな奴がここに居たらお前を巻き込んじまうかもしれない…もしかしたら記憶が無いだけで俺は極悪人なのかもしれない…だから…」
無理矢理立とうとすると
すず菜
「絶対にダメ!例えそうだとしても放っておく事なんてできない!」
陸
「どうしてそこまで…」
すず菜
「それは…」
すず菜が陸を看病した際、陸は寝言で何度も言っていた
陸
「1人にしないで…離れないでくれ…」
この言葉を聞いてすず菜は家にいる時は殆ど離れず看病していた
すず菜
「1人にしちゃいけないと思ったから…それに少ししか話していないけど悪い人じゃないと思う」
真っ直ぐな目で言われた陸は
陸
「分かった…そこまで言ってくれる人を蔑ろにする訳にはいかないしな、もう少しだけ世話になるな」
すず菜
「うん!てかさぁ、お腹空いてる?簡単な物ならすぐに用意できるからちょっと待っててね」
そう言ってすず菜は部屋から出て数分程度で戻ってきた
すず菜
「起きたばかりで一気に食べると良くないから少しずつ食べようね」
陸
「ありがとう、いただきます」
すず菜が持ってきたのはおにぎりと味噌汁で陸は受け取り一口食べ
陸
「美味い…凄く美味いよ」
すず菜
「良かった」
そう言って無言に食べ続けると
陸
「ぐすっ…わ、悪い…何か分からねえけど…本当にごめん…」
陸は突如涙を流してしまい手で何度も拭うが止まらなかった
そんな陸を見てすず菜は隣に座り優しく頭を撫でて
すず菜
「大丈夫だよ、気にしなくていいから」
陸
「………!」
そう言われると陸はそのまま涙を流し続けた
しばらくして涙が止まり食事も終えて
陸
「度々ごめん…情けない所見せちまって」
すず菜
「ううん、全然気にしてないよ、それに吐き出したい時は誰にもあるんだから」
陸
「ありがとう、それで話を戻して悪いんだがやっぱりこのままここに居るのは良くないと思うんだ」
すず菜
「もしかしてさっきのこと気にしてる?」
陸
「気にしない方が無理だろう、実際俺はどういう人間か分からねえし七瀬には七瀬の生活があるだろ?記憶はねえわ一文無しだわで迷惑しか掛けてねえんだ、このまま一緒に居たら迷惑掛けるだけだ、今は本当に申し訳ねえけど動けるようになったらここを出るよ」
すず菜
「気にしなくていいのに…それにここを出ての宛てはあるの?」
陸
「そりゃあ無いけど…」
すず菜
「だったらしばらくはここに居ること!はい!この話はこれで終わり!」
陸
「待て待て待て!?何も解決して…」
すず菜
「1つ分かった!陸は人に頼るって事をしてこなかったんだと思う、だから全部1人で何とかしようとしてる」
陸
「そうなのかな?」
すず菜
「絶対そうだよ、それに今ここで私が分かったって言って陸が出て行ったら本当に1人になっちゃう、それは私も嫌だから、だから時間が掛かってもいいから色々と解決してから後のことは決めよう」
そう言われて陸は完全に根負けし
陸
「分かった俺の負けだ、七瀬の言う通りにするよ」
すず菜
「うん、それでよろしい、それじゃこれからよろしくね陸」
陸
「こちらこそよろしく七瀬」
握手をし一旦住む所が決まった
すず菜
「それじゃこの話は終わりで今どれぐらい動ける?」
陸
「激しく動くのは厳しいかな、普通にする分には問題無いと思う」
すず菜
「オッケー、それじゃお風呂沸かすから入ろうか」
陸
「分かっ…はい?」
いきなりの言葉に思考が一瞬停止した
陸
「いやいやいや!男が女性の風呂に入るのはまずいだろ!」
すず菜
「そうは言っても陸1週間寝てたんだよ、ちゃんと入らないと」
陸
「シャワーだけで大丈夫です!」
すず菜
「ダメです!私が許しません!ちゃんと湯船に浸からないなら私が一緒に入って無理矢理入れるからね」
陸
「色々アウト過ぎるだろ!勘弁してくれ!」
結局すず菜に押し切られ
陸
「はぁ…世話になり過ぎて申し訳ねえ」
久しぶりのお風呂を堪能していた
記憶は無いが感覚からしてこんな風にゆっくり風呂も入っていなかったんだろと身体が覚えていた
湯船に浸かりながら1つの事を考えていた
自分は七瀬に何を恩返しできるのだろうかと
世話になってるのはもちろんだが七瀬と話して心がスッとしているのを感じていた
誰かに頼ってもいいんだなと思うことができた
おそらく記憶があった時なら出来ないと思った事を七瀬は簡単に乗り越えて助けてくれた
陸
「兎にも角にも働かないとな…無職はまずい」
そう決意し湯船から出て浴室の扉を開けると
陸・すず菜
「「あっ…」」
服を持ったすず菜と目が合い数秒程思考が停止し
すず菜
「ご、ごめんね///服とかここに置いておくから自由に使ってね!」
すず菜は爆速で服を置いてその場を去って行った
陸
「タイミング悪過ぎるだろ…謝りにいくか」
借りたタオルで身体を拭きながら覚悟を決めすず菜の所に向かう事にした
一方のすず菜は
すず菜
「どうしよう…男の人の身体初めて見ちゃった///そ、それに大事な所も…あんな感じなんだ///」
僅か数秒だが陸の身体をマジマジ見てドキドキしていた
すず菜は年齢は25歳なんだがそういった経験は無く本物を見るのは初めてだった事もあり頭の中でぐるぐるしていた
陸
「七瀬居るか?」
すず菜
「り、陸!?どうしたの?」
陸
「服とタオルありがとな、それとさっきはごめん」
すず菜
「な、何で陸が謝るの!?私がノックして入れば良かったんだから何も悪くないよ」
陸
「お前の家なんだからノックとかしないの普通だろ、俺が言うのもなんだが気にしなくて大丈夫だぞ」
すず菜
「分かった…でも、ごめんね」
陸
「気にしなさんな」
これ以上は陸自身も気まずくなりそうな気がしたので現在借りている部屋に戻ろうとするとすず菜が扉を開け顔を出し
すず菜
「わ、私のも見る?」
陸
「ぶっ!?何言っとんねん!?」
すず菜
「陸のを見ちゃったから私のも見せようと思って…あんまりおっぱい大きくはないから見ても嬉しくないかもしれないけど…これならおあいこかなって」
陸
「そう思ってくれる気持ちは嬉しいけど気持ちだけ受け取るよ、それに七瀬は女性なんだからそういうの簡単に言うなよ、勘違いする男は絶対に居るからな」
まだそんなに話していないがすず菜は強引な所があると思ったのでそれ以上言うのはやめて部屋に戻りそのまま眠った
???
「起きてください…起きてください」
陸
「誰だ…七瀬の声じゃねえ…」
聞き覚えがない声が聞こえ目を開け身体を起こすとそこは真っ白な空間だった
陸
「何処だここ?もしかして夢でも見てるのかな…二度寝するか」
そう言って横になろうとすると
???
「待ってください!?寝ないでください!!」
陸
「どちらさん?」
目の前に白い服に白い髪をした女性が居た
女神
「いきなり申し訳ございません、私はあなた達が神と呼ぶ存在で女神です」
陸
「えーと…その女神様が俺に何の用ですか?」
女神
「この世界に来て色々と混乱していると思いますので説明をしようと思いまして、今日まで目も覚ましていなかったので説明が遅くなってしまい申し訳ございません」
陸
「ちょっと待ってくれ、話を遮る様で悪いんだがアンタの言い分からして俺がいるこの世界は別世界って事なのか?」
女神
「その通りです、アナタが居た元の世界で殺されかける瞬間に肉体を急いで回収しこの世界に送ったのです、急ぎだった為まともな治療が出来ずすみませんでした」
陸
「死んだ訳じゃねえなら別に良いけど…俺って殺されかけたのか…やっぱりろくな人生を送ってなかったみたいだな」
女神
「それは違います、アナタはある人物によって人生を壊されたんです、その人物は私達神の世界で反逆した者から力を貰い今アナタがいる世界に来たのです…その神自体は何とか出来たのですが…」
陸
「力を貰った奴に関しては対処できていないわけか…それは神様でもどうにもできないのか?」
女神
「神は直接人間に干渉するのは禁止されているのです、反逆した神はあらゆるルールを破りその人間に干渉し力を与えたのです」
陸
「だったら今アンタが俺にこうして干渉するのはまずいんじゃないのか?」
女神
「本来ならそうなのですが神には神を人間の対処には人間をという事が決定し今回は超特例で干渉しているのです」
陸
「神様にも面倒なルールがあるんだな…」
その後、女神から色々と説明された
・この世界は【にじさんじ】と呼ばれ、あらゆる生物が住む世界である
・この世界では他の生物と公平にする為に特別な能力が与えらており戦うこともできる
・この世界では【動画配信】がメジャーであらゆる配信が常に行われている
(配信をメインにしている者もいれば副業や趣味でやっている者も多くいる)
・陸の記憶が無いのは死にかけの際に緊急でにじさんじへ来た為、そのショックで失っている
女神
「説明は大体こんな感じですね、何か質問はありますか?何でもお答えしますよ」
陸
「この世界と俺自身の事についてはある程度分かりました、それでアンタを含めた神様は俺に何をして欲しいんだ?まさかと思うが俺を殺そうとした相手を殺せとか言わないよな?それなら断るが…」
女神
「いえ、そこに関しては完全にアナタに一任します、こちらの不手際でアナタを巻き込んでしまいましたのでこちらでアナタを縛る様なことはしませんので安心を」
陸
「つまり俺の自由でこの世界で過ごしていいと?」
女神
「構いません、それがどの様な結果になろうと我々がどうこう言う権利はありませんので」
陸
「律儀なんだな…それでその人間ってのは誰なのか分かるのか?」
女神
「それに関しては申し訳ございませんが分かりません、反逆した神が最後の最後の認識阻害を行い誰に力を与えたのか不明なのです」
陸
「そっか、まあそっちはその時が来たら何とかするしかないか…そんじゃ最後に色々お願いをしたいんだが構わないか?それを叶えてもらえれば後は俺自身で何とかしてみせる」
女神
「分かりました」
陸は女神に願いを伝えた
・空原陸はこの世界で身分が無いのでそれを作ってもらうことプラス最低限の物を用意してもらう
(必要な物は神側で用意してもらい半永久的に使用可能にすること)
・3ヶ月は暮らせる金銭を用意してもらう、それ以外は自身で稼ぐ様にする
陸
「とりあえずこんな所なんだが可能ですか?」
女神
「問題ありません、すぐに用意致しましょう、他にはありますか?アナタにお願いする立場で申し訳ないのですが今回の干渉以外の干渉は今後できませんので出来ればこの場である程度決めてほしいんですよね」
陸
「そんじゃ最後に1つだけ、俺の記憶に関して何とかできないか?自分が分からないままこの世界に住むのは嫌なんだ、頼む」
頭を下げてお願いすると女神は
女神
「アナタの覚悟受け取りました、ですが先程伝えように認識阻害を受けていますので話した人物に対する記憶はおそらく抜けた状態になると思いますが…」
陸
「構いません、何となくですけどソイツとは必ず会いそうな気がしますので」
女神
「分かりました、それではアナタの記憶を体験という形で渡します」
そう言うと女神の手は光その光を見た陸は一気に記憶が流れ実際に体験した
陸
「ハァ…ハァ…」
女神
「大丈夫ですか!?」
陸
「大丈夫です…やっぱりろくな人生じゃなかったですね…」
女神
「このまま生まれ変わる事も可能ですよ?」
陸
「悪いすけど遠慮しときます、俺をやった奴をどうにかしないといけないですけどそれ以上に世話になった人に恩を返したいので」
女神
「分かりました、それでは最後にアナタを戻す前に能力を渡します、正確には能力の種のような物です」
陸
「種?能力そのものではなくてですか?」
女神
「はい、能力そのものを渡す事も可能ですがそれだとアナタと相性が良い能力を渡せるとは限りませんから、だから私達はアナタにきっかけを与えます」
そう言って女神は両手を前に出すと黒い光と白い光が現れた
陸
「ん?コレって2つですよね?普通は1つじゃないんですか?」
女神
「これは私達からアナタへのプレゼントだと思ってください、1つはアナタが戦うための力です、アナタなら戦う力があれば負ける事はないと私達は思っています、そしてもう1つはアナタの欲の為の能力です」
陸
「欲のためってマジで言ってます?」
女神
「マジです、私達はアナタに色々と頼んでいる上に巻き込んでしまっているんです、これは報酬の前払いと思ってください、戦う力に関してはきっかけさえ掴めれば使えるようになります、欲の方に関してはアナタの自由にしてください、イメージして固まれば使えるようになります」
陸
「それ大丈夫ですか?俺がろくでもない能力考えたらどうするんですか?」
女神
「アナタがそんな人じゃないのは分かっていますので」
陸
「分かりました、それじゃ遠慮なく貰いますね、それと説明や願いを聞いてくれてありがとうございます」
女神
「こんな事を言うのも何ですがどうかこの世界ではアナタの自由と幸せになる事を願います」
そう言われると意識が無くなりその場から陸は消えた
陸
「夢じゃねえみたいだな…」
朝になり目を覚ます
先程までの女神とのやり取りは夢かと疑ったが自身の記憶の体験の感覚はハッキリと残っていた
補足すると陸自身の記憶が戻った訳ではなく体験したという形になっているが陸自身はそれを体験ではなくちゃんと自分の記憶として受け止めていた
陸
「さて、とりあえず七瀬に声を掛けて…俺の話は後でするか」
部屋から出て七瀬の所に向かうと声が聞こえ耳を澄ますとおそらくだが女神が言っていた配信をやっているのだと思い流石に入って声を掛けたら色々と問題だと思い静かに離れ部屋に戻った
部屋に戻るとテーブルの上に見覚えが無い物がいくつか置いてあった
そこにあったのは端末と財布で中身を確認したり操作すると陸自身の物だと分かり女神が用意してくれた物だと分かった
七瀬の配信が終わるまで暇だったので試しに端末で七瀬の配信を見てみると朝から元気にリスナーと話しており見てると自然と笑ってしまった
七瀬の配信が終わると足音が近付く音が聞こえこちらに向かってくると思い一旦端末をしまい
コンコンッ
ノックが聞こえ返事をすると
すず菜
「おはよう陸!」
配信してる時と同じくらい元気に部屋に入ってきた
そんなすず菜を見てこれからここで新たな生活が始まるんだと思った