一人称が「俺様」の褐色爆乳美女は好きですか? 作:ビジュゲイト推し
夢の始まりは、いつも、どこだったか分からない。天井。薄汚れた天井。ひびが、一本。二本。三本。ザビーダはそれを数えていた。
「次、入るぞ」
声がする。
「あいよ」
自分の声。
軽い。いつもの聞き慣れた声だった。扉が開く。男が入ってくる。顔は、よく見えない。知っている人間だったような。知らない人間だったような。どちらでも、よかった。
「今日は何人?」
ザビーダが聞く。
「あと三人」
「りょーかい」
「疲れてる?」
「別に。まだ中に出せるぜ」
「ならいいな」
「おう」
それで、話は終わる。
男が扉を閉める。鍵。音。ザビーダは自分から、いつもの位置へ移動した。どうすれば、相手が満足するか。知っている。何を求められるか。大体。分かる。服をどこまで外せばいいか。どの言葉を言えば喜ぶか。どのくらい声を出せばいいか。どの程度。反応しているように見せればいいか。
全部。覚えている。身体が勝手にやる。
「慣れてるな」
男が笑う。
ザビーダも笑う。
「年季入ってるからねえ。何回でも出していいぜ」
「いい聖隷だ」
「褒め言葉?」
「もちろん」
「ならどーも」
笑う。
男がズボンを下ろす。すでに勃起した肉棒が、跳ねる。ザビーダは跪いて、自分から口を開ける。舌で先端を舐め。亀頭をしゃぶり。一気に喉奥まで咥え込む。
「う……っ」
喉が抉られる。
精液の味が、まだ残っている。さっきの男の。それでも、頭を掴まれ。喉を犯される。
「ふっ……っ、くっ……」
鼻から、よだれと精液が垂れる。
男が腰を振るたび。喉の奥が、ぐぽぐぽと音を立てる。
「いい喉だな。何人でも使える」
「……んぐっ、んっ……」
天井。
四本。五本。六本。途中で、数が、分からなくなる。もう一度。一本。二本。三本。早く終わればいい。
――違う。夢の中で、何かが、引っかかった。
早く終わればいい? 俺様。今、そう思った?
「どうした」
声。
「何でもねえよ」
すぐに返す。
「平気?」
「平気平気。まだ中に出せる」
それも、すぐ。
出る。考えるより、早く。男が口から抜く。糸を引くよだれが、落ちる。
「じゃあマンコも」
「はいはい」
ザビーダは四つん這いになり自分で広げる。すでに何度も使われた穴が、緩く開いている。精液が、少しずつ垂れている。男が容赦なく突く。
「んっ……あっ……」
奥まで、一気に抉る。
腰を掴まれ。激しく。ぐちゃぐちゃに。
「く……っ、はぁっ……」
声が出る。
わざと少しだけ。
「気持ちいい?」
「……んっ、まあまあだな……」
嘘。
でも、そう言う。男が奥で射精する。熱いものが、たっぷりと注がれる。
「次も待ってるぞ」
「はいはい」
***
次。扉。別の部屋。天井が違う。古い。ずっと昔。窓がある。外は、雨。ザビーダは寝台の端に座っている。男が服を整えている。
「やっぱりお前は楽だな」
「何が?」
「嫌がらない。口もマンコも好きに使える」
「嫌がってほしい?」
「いや」
男が笑う。
「その方が使いやすい。中に出しても文句言わないし」
「あっそ」
「お前みたいなのばかりなら助かるんだが」
「俺様、優秀だから、何回でも出せるぜ」
笑う。
それで、いい。そういうもの。嫌がらなければ、相手は機嫌がいい。相手が機嫌よく帰れば、次も、面倒が少ない。拒んで、怒らせて、痛い目を見るより、ずっと賢い。
「次、待ってるぞ」
扉の向こうから、声。
「はいはい」
立つ。
脚が、少し重い。中に溜まった精液が、歩くたび。太ももを伝う。でも、歩ける。なら。平気。扉を開ける。次の男がもう立っていた。
「口からやれ」
「あいよ」
跪く。
また喉を犯される。
***
次。知らない部屋。次。知っている部屋。次。百年前、次。五百年前、次。いつかも分からない。服装だけが変わる。家具も、言葉遣いも、建物も、人間の顔も、全部。変わる。ザビーダだけが、同じだった。
「嫌じゃない?」
「別に。中に出されても平気だぜ」
「今日は休む?」
「平気。まだ穴開いてる」
「もう一人いい?」
「好きにしろよ」
「俺の相手も?」
「はいはい。二人同時でもいいぜ」
「お前は本当に――」
言葉が重なる。
扱いやすい。慣れている。便利。愛想がいい。壊れない。使い減りしない。長持ちする。口も、マンコも、何度でも、出せる。一つずつ。夢の中で、響く。ザビーダは笑っている。ずっと笑っている。
「はいはい、次どーぞ。精液まだ出せるなら出していいぜ」
誰かにそう言った。
その瞬間、声がした。――君は、したいのか。ザビーダの笑みが、止まった。
「……」
誰の声だ。
知っている。
「どうした?」
目の前の男が聞く。
「いや」
答えようとする。
「別に――」
――したいのか。
また声がする。
「……」
喉が詰まる。
男が少し苛立つ。
「何だよ」
「……」
「嫌じゃないんだろ? さっきまで喉奥まで咥えてたじゃねえか」
昔なら。
すぐ答えられた。別に嫌じゃない。慣れてる。平気。何でもない。でも、今は。
「……したく」
言葉。
小さい。
「何?」
「……したくねえ」
言った。
世界が、止まった。本当に止まった。男の手も扉の向こうの音も、雨も、何も、動かない。それから、部屋の端にいた。いつからいたのか分からない人間たちが、一斉にザビーダを見る。顔がない。でも、声だけは、ある。
「今さら?」
誰かが言う。
「何百年やってきたと思ってる。口もマンコも何人にでも開いてたくせに」
別の声。
「嫌なら最初から言えばよかっただろ」
「お前、自分で平気って言ってたじゃないか」
「慣れてるって」
「別に嫌じゃないって」
「自分から笑って、穴広げてたじゃないか」
「中に出されても『まだ出せるぜ』って言ってたろ」
ザビーダは何も、言えない。
全部。言った。本当に自分で言った。
「……そうだけど」
ようやく出た。
「じゃあ何が嫌なんだ?」
聞かれる。
ザビーダは口を開く。答えが、ない。何が、嫌だった?触られること?裸にされること?相手を選べないこと?終わるまで、そこにいること?笑うこと?平気な顔をすること?喉を犯されること?マンコを抉られること?中に出されること?それとも、全部?分からない。何百年も、考えなかった。
「……知らねえよ」
「なら平気だろ」
誰かが言う。
「嫌だって説明できないなら」
別の声。
「今まで通りでいいじゃないか。口もマンコも開けばいい」
「違――」
言い返そうとする。
でも、何が違うのか。分からない。自分でも。
***
場面が、また変わる。今度は見慣れた部屋。ザビーダはすぐ分かった。ミクリオの家。自分の部屋ではない。ミクリオの部屋。机。本。ザビーダが買った筆。全部。ある。だから、安心した。
「……ミクリオ?」
扉が開く。
ミクリオが入ってくる。いつもの服。いつもの顔。
「何だ」
「何だって」
ザビーダは笑う。
「夢、変なの」
「そうか」
「ああ」
近づいてくる。
ザビーダは安心する。ミクリオなら。大丈夫。そう。思った。
「でも」
ミクリオが言う。
「君は僕の所有聖隷だろう」
ザビーダの呼吸が止まる。
「……は?」
「書類上は」
いつもの言葉。けれど、続きが違った。
「なら、僕には君を使う権利がある」
「……」
笑えない。
「何言ってんだよ」
「制度上はそうだ」
「お前」
「買ったのも僕だ」
一歩近づく。
「口でもマンコでも好きに使える。君は何人にでも開いてきたんだから」
ザビーダは一歩下がった。
「待て」
「なぜ」
「……」
「君は今まで」
ミクリオの声。
なのに、知らない。
「何人にでも使われてきただろう。喉奥まで咥えて、中に出されて」
「……」
「僕だけ嫌なのか?」
胸。
痛い。
「そうじゃ」
ない。
と言いかける。でも、身体が勝手に後ろへ下がる。
「ザビーダ」
手が伸びる。
「平気なんだろう?」
違う。
「慣れてるんだろう?」
違う。
「嫌じゃないんだろう?」
違う。
「なら」
触れられるその前に。
「やだ」
声が出た。
自分でも、驚くほど、はっきり。
「……」
夢のミクリオが止まる。
ザビーダは息を吸う。
「やだ」
もう一度、その名を呼ぶ。
「ミクリオ」
喉が震える。
「それは」
嫌だ。
昔の誰か。顔も、名前も、覚えていない。何人いたかも、もう。数えられない。口を使われ。マンコを抉られ。中に出されても、笑って耐えた。それなのに目の前の男に同じように扱われることだけは、想像しただけで、全身が、拒んだ。
「やだ、ミクリオ。口もマンコも、お前には開きたくねえ」
その瞬間、目が覚めた。
***
暗い。天井。自分の部屋。ザビーダは息を吸う。浅い。速い。
「……」
手を自分の胸へ置く。
服。着ている。寝る前のまま。毛布。そのまま。誰も、いない。扉。閉まっている。鍵。かけた。自分でかけた。
「……夢」
声が掠れた。
夢だ。何も、起きていない。なのに、身体だけが、まだ分かっていない。肩が震える。息がうまく入らない。喉の奥が、まだ抉られた感覚を覚えている。奥が、熱い。ザビーダはベッドの上で、膝を抱えた。
「……何だよ」
自分へ吐き捨てる。
今さら、何だ。昔。何度でも、やった。もっと長い夜もあった。もっと人数が多い日も、雑に扱われた日も、痛かった日も、あった。多分、それでも、翌朝には、笑った。
「平気」と言った。
「まだ出せるぜ」
とも、なのに夢で、少し思い出しただけで、何で、こんなに。
「……」
そして、一番。
頭から離れない。夢の中の。ミクリオ。
『僕には君を使う権利がある』
そんなこと現実のミクリオは絶対に言わない。
分かっている。だから、余計に嫌だった。
「……ミクリオだけは」
呟く。
そこで、止まる。ミクリオだけは、何だ。ミクリオだけには、そうしてほしくない。どうして、分からない。昔の誰かと何が違う。
「……知らねえよ」
答えは、出なかった。
***
朝。食卓。ミクリオがザビーダを見る。
「眠れたか」
いつもの。
質問。ザビーダは反射的に笑う。
「まあまあ」
ミクリオが頷きかける。
ザビーダは止めた。
「……いや」
「うん?」
パンをちぎる。
「変な夢見た」
ミクリオの手が止まる。
「どんな」
聞いてから、ザビーダの顔を見る。
少し間を置いて、ミクリオは続けた。
「……話したくないなら、いい」
ザビーダはそれを聞いて、少しだけ息を吐いた。
「昔の夢」
「昔?」
「ああ」
「覚えていたこと?」
「知らね」
「そうか」
また、それ以上は聞かない。ザビーダはパンを食べる。一口。二口。それから。
「お前も出てきた」
ミクリオが顔を上げる。
「僕が?」
「ああ」
「何をしていた」
「最悪だった」
「なぜ僕が出ただけで最悪なんだ」
「夢のお前、別人だったから」
「俺様のこと所有物だから好きにしていいとか言ってた。口もマンコも使わせろとか」
ミクリオの表情から、笑いが消える。
「……僕が?」
「夢の話だぜ」
「それでも嫌だな」
「俺様も嫌だった」
口から、自然に出た。
ミクリオが少しだけ目を細める。ザビーダは自分でも、驚いた。嫌だった。もう。言える。
「……お前に」
ザビーダは少し躊躇う。
「そうされんのは」
ミクリオは黙って、待つ。
「すげえ嫌だった」
「そうか」
「昔の奴ら相手なら」
言ってから、また。
言葉を探す。
「夢の中でも、最初はいつも通りだったのにな。口開けて、穴広げて」
「うん」
「お前が同じことしようとしたら」
ザビーダは眉を寄せる。
「無理だった」
「……」
「何でだろうな」
ミクリオはしばらく答えなかった。
「分からない」
「お前も?」
「ああ」
「そこ推理しねえの?」
「君の感情だろう」
「そうだけど」
「僕が理由を決めるものじゃない」
ザビーダが少し笑う。
「またそれ」
「ああ」
「でも」
少しして、ザビーダは目を伏せる。
「現実のお前が」
言う。
「夢みたいな奴じゃなくて、よかった」
ミクリオは真面目な顔で。
「僕は」
答えた。
「君が嫌だと言うことはしない」
「……知ってる」
すぐに返せた。以前なら、本当かとどこかで疑ったかもしれない。今は知っている。あの夜、ミクリオは何もしなかった。一人になりたくないと言えばそばにいて、触れる前には確認し、嫌だと言えば止まった。何度も、何度も。
「知ってるよ」
もう一度言う。
今度は少しだけ笑った。
***
その日の午後、ザビーダは自室の机へ突っ伏していた。傍らには、真名の欄がまだ空白の紙と、ミクリオから渡された研究記録がある。
《霊力総量:高水準》
《高出力術式形成時、経路閉塞》
《原因不明》
それをぼんやり眺める。夢、ビジュゲイト、術、昔の自分。分からないことが増えたようで、実際は前から全部あった。ただ見ようとしなかっただけだ。
「……嫌だったのかな」
ぽつり。
誰に聞くでもなく、使われること何百年も、別にと言っていた。嫌じゃない。平気。慣れてる。口も、マンコも、何度でも、出せるって、でも、夢の中で、今の自分は嫌だと言った。
「……」
ザビーダは顔を上げる。
「今さらかよ」
苦笑する。
けれど、頭の中でミクリオの声が返ってきた気がした。今さらでも、嫌なら嫌だと言えばいい。あの男なら、きっとそう言う。ザビーダが窓を開けると、少し冷たい風が弱く入ってきた。
「……まあ」
呟く。
「今さらでも、いっか」
誰も、聞いていない。
だから、少しだけ素直に言えた。