※この作品はR-18です。

一人称が「俺様」の褐色爆乳美女は好きですか?   作:ビジュゲイト推し

21 / 43
同じ金

追加検査の見積書を見て、ミクリオはしばらく黙っていた。

 

「高い?」

向かいで寝転がっていたザビーダが聞く。

「……少し」

「少し?」

「今の予算だと、全部は難しいな」

机の上。

 

専門術師への解析依頼。高精度霊力測定器の借用。過去の契約痕跡を調べるための検査。複数の項目。一つ一つは、払えない額ではない。だが、全部となるとそれなりになる。

 

「僕の貯金を使えば――」

「待て待て」

ザビーダが身体を起こした。

「お前の金使うの?」

「そのつもりだ」

「何で」

「何でと言われても」

ミクリオが見積書を見る。

「僕が調べたいと言い出した部分もあるし」

「俺様も調べたいって言ったじゃん」

「ああ」

 

「じゃあ半分出す」

「君の報酬では足りない」

「いくら足りねえの?」

ミクリオが金額を言う。

ザビーダは少しだけ目を丸くした。

「……あー」

「だから」

「じゃ」

何でもないように言った。

「俺様、何晩かマンコ売ってくるわ」

ミクリオの顔から、一瞬で、表情が消えた。

「駄目だ」

 

ザビーダが瞬きをする。

「早っ」

「駄目だ」

「二回言った」

「何度でも言う」

ザビーダは少し笑った。

「何で?」

「何で?」

「いや」

本当に分からないような顔。

「金足りねえんだろ?」

「だからといって」

 

「俺様なら稼げるぜ。口でもマンコでも、何人でも出せるし」

ザビーダが自分の股間を軽く指す。

「元々そういう用途で使われてたんだからさ。マンコ開いて金もらうだけだろ」

ミクリオの眉間に深く。

皺が寄る。

「何人か取れば、一晩でもそこそこになるだろ。中に出させて追加料金取ればもっと稼げるし」

「やめろ」

「何が」

「そういう計算をするな」

「何でだよ」

ザビーダはまだ。

笑っている。

「店通さねえなら取り分も増えるし。昔の客に『またマンコ使いてえ?』って声かけりゃすぐ来るぜ」

「ザビーダ」

「何人連続でも大丈夫。喉奥まで咥えても、ケツにぶち込まれても平気だし」

「ザビーダ」

声が低くなる。

 

ザビーダがようやく少しだけ口を閉じた。

 

「……何」

ミクリオは見積書を机へ置く。

「君は」

一度、息を吐く。

「身体を売りたいのか」

ザビーダが目を瞬く。

「え?」

「研究費が欲しいかどうかは聞いていない」

「そりゃ欲しいだろ」

「研究を続けたいかどうかでもない」

「続けたい」

「それも聞いていない」

ザビーダが少し眉を寄せた。ミクリオは真っ直ぐ。見る。

 

「君自身が」

言う。

「金を取って、知らない人間や昔の客に身体を触らせたいのか」

笑みが、少しだけ薄くなる。

「抱かれたいのか」

沈黙。

「君が売ると言ったんだろう」

「まあ」

「したいのか」

ザビーダは答えない。

「……別に」

口から、出る。

でも、ミクリオは逃がさない。

「嫌じゃない、ではなく」

「……」

「したいのか」

「…………」

長い。

 

沈黙。ザビーダは視線を逸らした。

 

「……したいわけじゃねえよ」

小さく。

答える。

「でも平気。口でもマンコでも、別にどうってことねえし」

ミクリオが目を細める。

「平気だから?」

「ああ」

「平気なら、したくないことをしても構わない?」

「金になるじゃん。中に出されても金もらえりゃいいだろ」

 

「別の方法でも稼げる」

「こっちの方が早い。一晩で何発も出させりゃすぐ稼げるし」

「早ければ何でもいいのか」

「俺様が別にいいって言ってんだからいいだろ」

少し声が強くなる。

「俺様のマンコだぜ? 好きに使って金もらうだけじゃん」

ミクリオは黙った。

ザビーダが続ける。

「お前、ずっと言ってるじゃん。俺様が決めろって」

「ああ」

 

「誰と寝るかも、誰にマンコ使わせるかも俺様が決めるんだろ」

「ああ」

「なら」

「そうだ」

ミクリオが遮った。

「君の身体だ」

ザビーダが少し止まる。

「最終的に決めるのは君だ」

「じゃあ――」

「だから僕は」

少し間。

「所有者の命令としては禁止しない」

ザビーダが目を細める。

「……へえ」

 

「でも」

ミクリオは明確に言った。

「僕は嫌だ」

「……」

「かなり嫌だ」

ザビーダは少しだけ意外そうな顔をした。

「何で」

「君がまた」

ミクリオは言葉を探す。

「自分の身体を、金に換えられるものとして扱うのを見るのが嫌だ。女性器を商品みたいに言うのも」

 

「……俺様、実際そうやって生きてたぜ。何人にもマンコ使わせてた」

「知っている」

「何百年も」

「知っている」

「何人に抱かれたかも覚えてねえ。中に出された回数なんて数え切れねえよ」

「それも聞いた」

「だったら今さら」

「今さらだから何だ」

ミクリオの声が少し強くなる。

「今まで何百年そうしてきたら、これからも続けなければならないのか」

「そうは言ってねえよ」

 

「なら」

「でも俺様、得意だぜ」

ザビーダがまた。

少しだけ笑おうとする。

「相手が何したいか大体分かるし。どう触らせりゃ満足するかも、どう反応すりゃ喜ぶかも――口で咥えてる最中に腰振って欲しがるとか、マンコ奥突かれて喘げば喜ぶとか、全部分かるし」

「それを」

ミクリオが止めた。

「誇らなくていい」

ザビーダの笑みが、消えた。

「……」

「否定しているんじゃない」

ミクリオは少し声を落とす。

「君が生きるために身につけたものなんだろう」

「……まあな」

「でも」

「うん」

「上手だから、またやらなければならないわけじゃない」

ザビーダは何も言わない。

 

***

 

しばらくして、ザビーダが小さく。言った。

 

「……お前以外なら」

ミクリオが見る。

「何?」

「平気だと思う」

「……」

「この前の夢でさ」

ザビーダは自分の膝を見る。

「あの夢のお前にマンコ使われんのは」

少し顔をしかめる。

「本気で嫌だった」

「うん」

 

「でも」

指を組む。

「それより前の奴らは、別に普通だった。口に出されても、マンコ突かれても、普通」

「夢の中で?」

「ああ」

「だから?」

「だから」

ザビーダはミクリオを見る。

「俺様、お前だけ駄目なんじゃねえかな」

ミクリオが黙る。

 

「お前には」

ザビーダは少しだけ照れ隠しのように笑う。

「そういう扱いされたくねえ。マンコ開け、使わせろ、とか。言われたくねえ」

「……うん」

「でも他なら」

「“平気だと思う”」

ザビーダが止まった。

「何」

「今」

 

ミクリオが言う。

「平気だ、ではなく、平気だと思う、と言った」

「細けえな」

「大事だ」

「何が」

「君自身が」

ミクリオは静かに答える。

「もう、本当に平気なのか分からなくなっているんじゃないか」

 

ザビーダの顔から、笑みが消えた。

「……」

「違うか」

「……知らね」

「なら」

「でも」

 

ザビーダが少し苛立つ。

「昔はできたんだよ。何人でもマンコ開けた」

「ああ」

「昨日まででも、必要ならできると思ってた」

「ああ」

「今さら急に」

手を広げる。

「嫌かもしれねえとか言われても」

「僕は言っていない」

「じゃあ何だよ」

 

「君が」

ミクリオは真っ直ぐ見る。

「そう思い始めているように見えると言っている」

ザビーダは言葉を失った。

「……」

夢。

『今さら?』

何百年。

 

平気だと言った。慣れていると言った。別に嫌じゃないと言った。でも、夢の中で、今の自分は「したくねえ」と言った。

 

「……ミクリオ以外なら」

もう一度言う。

さっきより、弱い。

「平気だと思うんだけどな。マンコ売っても、別にどうってことねえ気がする」

ミクリオは否定しなかった。

「そうかもしれない」

「……そこは否定しねえの?」

「僕には分からない」

「何だよ」

「だから」

少し間。

「確かめるために身体を売る必要もないだろう。わざわざ使わせて確かめる必要もない」

ザビーダが吹き出した。

「確かに」

笑う。

 

少しだけ力が抜けた。

 

***

 

「じゃあどうすんの」

ザビーダが見積書を指す。

「金」

「僕の貯金を――」

「それは嫌」

「なぜ」

「俺様の研究だぜ?」

「僕も知りたい」

「じゃあ半分」

 

「君の手持ちでは」

「足りねえ」

「ああ」

「じゃあ働く」

ミクリオが目を瞬く。

「何を」

「調査」

「……」

「前みたいなやつ」

 

ザビーダは少し得意そうに笑う。

「俺様、昔の術式とか施設にはそこそこ詳しいだろ?」

「ああ」

「報酬出る仕事探せよ」

「僕が?」

「所有者サマ、仕事斡旋して」

「便利に使うな」

 

「使えるもん使えって言ったじゃん」

「それは僕の名前の話だ!」

ザビーダが笑う。

「じゃあ、俺様ができそうなやつ」

少し考える。

「探すの手伝って」

ミクリオはしばらくザビーダを見る。

「……分かった」

「お」

 

「調査協力者として正式に報酬が出るものを探そう」

「できれば高いやつ」

「危険度も上がるぞ」

「身体売るよりマシだろ? マンコ売って中に出されるよりは」

ミクリオの顔が、また露骨に険しくなる。

「比較するな」

「はいはい」

「本当に」

「分かったって」

 

ザビーダは笑って、見積書を取った。

「これ」

「何だ」

「俺様も持ってていい?」

「当然だろう」

「研究費、いくら必要か計算しとく」

「君が?」

「俺様の身体調べる金だぜ?」

少しだけ笑う。

「俺様も考える」

ミクリオの表情が少し柔らかくなった。

「ああ」

「何嬉しそうにしてんの」

「気のせいだ」

「嘘くせえ」

 

***

 

その日の夜、ザビーダは見積書と自分の報酬袋を机へ並べていた。まるで足りない。

 

「マンコ売った方が早えんだけどなあ。一晩で何発も出させりゃすぐ稼げるし」

ぽつり。

 

そう口にした瞬間、昔なら覚えなかった妙な引っかかりが胸に残る。知らない男と部屋へ入り、金のために服を脱ぐ。相手が満足するように触らせ、必要なら笑い、口もマンコも開いて、中に出されても終わるまで待つ。それで金を受け取る。多分、今でもできる。

 

できる。

「……」

でも、したい?

 

ミクリオの声が蘇る。――したいのか。

 

「……したくはねえな」

一人で、呟く。

 

それも以前なら考えなかった言葉だった。したいかどうかなんて、必要なかった。できるか。耐えられるか。役に立つか。金になるか。それだけだった。ザビーダは報酬袋を手に取る。遺跡を調べた。昔の知識を話した。役に立った。それで、もらった金。同じ金なのに妙に違って見える。

 

「……こっちのが」

少し考える。

「いいかもな」

まだ断言はできない。身体を売ることが、本当にもう嫌なのか。ミクリオだけが、特別なのか。他の誰かなら。本当に以前と同じように平気なのか。分からない。でも、研究費を稼ぐ方法が、一つしかないわけではない。それは分かった。明日はミクリオと、自分がやりたいと思える仕事を探す。それで得た金で、自分の身体について調べる。

 

「……めんどくせえ」

小さく。

 

笑う。昔なら。もっと簡単だった。マンコを差し出せば、済んだ。今は、選ぶことが、増えた。嫌かどうか。したいかどうか。どう稼ぎたいか。何に金を使いたいか。一つずつ。考えなければならない。それでも、ザビーダは見積書を捨てなかった。報酬袋の隣へ丁寧に置いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。