一人称が「俺様」の褐色爆乳美女は好きですか? 作:ビジュゲイト推し
追加検査の見積書を見て、ミクリオはしばらく黙っていた。
「高い?」
向かいで寝転がっていたザビーダが聞く。
「……少し」
「少し?」
「今の予算だと、全部は難しいな」
机の上。
専門術師への解析依頼。高精度霊力測定器の借用。過去の契約痕跡を調べるための検査。複数の項目。一つ一つは、払えない額ではない。だが、全部となるとそれなりになる。
「僕の貯金を使えば――」
「待て待て」
ザビーダが身体を起こした。
「お前の金使うの?」
「そのつもりだ」
「何で」
「何でと言われても」
ミクリオが見積書を見る。
「僕が調べたいと言い出した部分もあるし」
「俺様も調べたいって言ったじゃん」
「ああ」
「じゃあ半分出す」
「君の報酬では足りない」
「いくら足りねえの?」
ミクリオが金額を言う。
ザビーダは少しだけ目を丸くした。
「……あー」
「だから」
「じゃ」
何でもないように言った。
「俺様、何晩かマンコ売ってくるわ」
ミクリオの顔から、一瞬で、表情が消えた。
「駄目だ」
ザビーダが瞬きをする。
「早っ」
「駄目だ」
「二回言った」
「何度でも言う」
ザビーダは少し笑った。
「何で?」
「何で?」
「いや」
本当に分からないような顔。
「金足りねえんだろ?」
「だからといって」
「俺様なら稼げるぜ。口でもマンコでも、何人でも出せるし」
ザビーダが自分の股間を軽く指す。
「元々そういう用途で使われてたんだからさ。マンコ開いて金もらうだけだろ」
ミクリオの眉間に深く。
皺が寄る。
「何人か取れば、一晩でもそこそこになるだろ。中に出させて追加料金取ればもっと稼げるし」
「やめろ」
「何が」
「そういう計算をするな」
「何でだよ」
ザビーダはまだ。
笑っている。
「店通さねえなら取り分も増えるし。昔の客に『またマンコ使いてえ?』って声かけりゃすぐ来るぜ」
「ザビーダ」
「何人連続でも大丈夫。喉奥まで咥えても、ケツにぶち込まれても平気だし」
「ザビーダ」
声が低くなる。
ザビーダがようやく少しだけ口を閉じた。
「……何」
ミクリオは見積書を机へ置く。
「君は」
一度、息を吐く。
「身体を売りたいのか」
ザビーダが目を瞬く。
「え?」
「研究費が欲しいかどうかは聞いていない」
「そりゃ欲しいだろ」
「研究を続けたいかどうかでもない」
「続けたい」
「それも聞いていない」
ザビーダが少し眉を寄せた。ミクリオは真っ直ぐ。見る。
「君自身が」
言う。
「金を取って、知らない人間や昔の客に身体を触らせたいのか」
笑みが、少しだけ薄くなる。
「抱かれたいのか」
沈黙。
「君が売ると言ったんだろう」
「まあ」
「したいのか」
ザビーダは答えない。
「……別に」
口から、出る。
でも、ミクリオは逃がさない。
「嫌じゃない、ではなく」
「……」
「したいのか」
「…………」
長い。
沈黙。ザビーダは視線を逸らした。
「……したいわけじゃねえよ」
小さく。
答える。
「でも平気。口でもマンコでも、別にどうってことねえし」
ミクリオが目を細める。
「平気だから?」
「ああ」
「平気なら、したくないことをしても構わない?」
「金になるじゃん。中に出されても金もらえりゃいいだろ」
「別の方法でも稼げる」
「こっちの方が早い。一晩で何発も出させりゃすぐ稼げるし」
「早ければ何でもいいのか」
「俺様が別にいいって言ってんだからいいだろ」
少し声が強くなる。
「俺様のマンコだぜ? 好きに使って金もらうだけじゃん」
ミクリオは黙った。
ザビーダが続ける。
「お前、ずっと言ってるじゃん。俺様が決めろって」
「ああ」
「誰と寝るかも、誰にマンコ使わせるかも俺様が決めるんだろ」
「ああ」
「なら」
「そうだ」
ミクリオが遮った。
「君の身体だ」
ザビーダが少し止まる。
「最終的に決めるのは君だ」
「じゃあ――」
「だから僕は」
少し間。
「所有者の命令としては禁止しない」
ザビーダが目を細める。
「……へえ」
「でも」
ミクリオは明確に言った。
「僕は嫌だ」
「……」
「かなり嫌だ」
ザビーダは少しだけ意外そうな顔をした。
「何で」
「君がまた」
ミクリオは言葉を探す。
「自分の身体を、金に換えられるものとして扱うのを見るのが嫌だ。女性器を商品みたいに言うのも」
「……俺様、実際そうやって生きてたぜ。何人にもマンコ使わせてた」
「知っている」
「何百年も」
「知っている」
「何人に抱かれたかも覚えてねえ。中に出された回数なんて数え切れねえよ」
「それも聞いた」
「だったら今さら」
「今さらだから何だ」
ミクリオの声が少し強くなる。
「今まで何百年そうしてきたら、これからも続けなければならないのか」
「そうは言ってねえよ」
「なら」
「でも俺様、得意だぜ」
ザビーダがまた。
少しだけ笑おうとする。
「相手が何したいか大体分かるし。どう触らせりゃ満足するかも、どう反応すりゃ喜ぶかも――口で咥えてる最中に腰振って欲しがるとか、マンコ奥突かれて喘げば喜ぶとか、全部分かるし」
「それを」
ミクリオが止めた。
「誇らなくていい」
ザビーダの笑みが、消えた。
「……」
「否定しているんじゃない」
ミクリオは少し声を落とす。
「君が生きるために身につけたものなんだろう」
「……まあな」
「でも」
「うん」
「上手だから、またやらなければならないわけじゃない」
ザビーダは何も言わない。
***
しばらくして、ザビーダが小さく。言った。
「……お前以外なら」
ミクリオが見る。
「何?」
「平気だと思う」
「……」
「この前の夢でさ」
ザビーダは自分の膝を見る。
「あの夢のお前にマンコ使われんのは」
少し顔をしかめる。
「本気で嫌だった」
「うん」
「でも」
指を組む。
「それより前の奴らは、別に普通だった。口に出されても、マンコ突かれても、普通」
「夢の中で?」
「ああ」
「だから?」
「だから」
ザビーダはミクリオを見る。
「俺様、お前だけ駄目なんじゃねえかな」
ミクリオが黙る。
「お前には」
ザビーダは少しだけ照れ隠しのように笑う。
「そういう扱いされたくねえ。マンコ開け、使わせろ、とか。言われたくねえ」
「……うん」
「でも他なら」
「“平気だと思う”」
ザビーダが止まった。
「何」
「今」
ミクリオが言う。
「平気だ、ではなく、平気だと思う、と言った」
「細けえな」
「大事だ」
「何が」
「君自身が」
ミクリオは静かに答える。
「もう、本当に平気なのか分からなくなっているんじゃないか」
ザビーダの顔から、笑みが消えた。
「……」
「違うか」
「……知らね」
「なら」
「でも」
ザビーダが少し苛立つ。
「昔はできたんだよ。何人でもマンコ開けた」
「ああ」
「昨日まででも、必要ならできると思ってた」
「ああ」
「今さら急に」
手を広げる。
「嫌かもしれねえとか言われても」
「僕は言っていない」
「じゃあ何だよ」
「君が」
ミクリオは真っ直ぐ見る。
「そう思い始めているように見えると言っている」
ザビーダは言葉を失った。
「……」
夢。
『今さら?』
何百年。
平気だと言った。慣れていると言った。別に嫌じゃないと言った。でも、夢の中で、今の自分は「したくねえ」と言った。
「……ミクリオ以外なら」
もう一度言う。
さっきより、弱い。
「平気だと思うんだけどな。マンコ売っても、別にどうってことねえ気がする」
ミクリオは否定しなかった。
「そうかもしれない」
「……そこは否定しねえの?」
「僕には分からない」
「何だよ」
「だから」
少し間。
「確かめるために身体を売る必要もないだろう。わざわざ使わせて確かめる必要もない」
ザビーダが吹き出した。
「確かに」
笑う。
少しだけ力が抜けた。
***
「じゃあどうすんの」
ザビーダが見積書を指す。
「金」
「僕の貯金を――」
「それは嫌」
「なぜ」
「俺様の研究だぜ?」
「僕も知りたい」
「じゃあ半分」
「君の手持ちでは」
「足りねえ」
「ああ」
「じゃあ働く」
ミクリオが目を瞬く。
「何を」
「調査」
「……」
「前みたいなやつ」
ザビーダは少し得意そうに笑う。
「俺様、昔の術式とか施設にはそこそこ詳しいだろ?」
「ああ」
「報酬出る仕事探せよ」
「僕が?」
「所有者サマ、仕事斡旋して」
「便利に使うな」
「使えるもん使えって言ったじゃん」
「それは僕の名前の話だ!」
ザビーダが笑う。
「じゃあ、俺様ができそうなやつ」
少し考える。
「探すの手伝って」
ミクリオはしばらくザビーダを見る。
「……分かった」
「お」
「調査協力者として正式に報酬が出るものを探そう」
「できれば高いやつ」
「危険度も上がるぞ」
「身体売るよりマシだろ? マンコ売って中に出されるよりは」
ミクリオの顔が、また露骨に険しくなる。
「比較するな」
「はいはい」
「本当に」
「分かったって」
ザビーダは笑って、見積書を取った。
「これ」
「何だ」
「俺様も持ってていい?」
「当然だろう」
「研究費、いくら必要か計算しとく」
「君が?」
「俺様の身体調べる金だぜ?」
少しだけ笑う。
「俺様も考える」
ミクリオの表情が少し柔らかくなった。
「ああ」
「何嬉しそうにしてんの」
「気のせいだ」
「嘘くせえ」
***
その日の夜、ザビーダは見積書と自分の報酬袋を机へ並べていた。まるで足りない。
「マンコ売った方が早えんだけどなあ。一晩で何発も出させりゃすぐ稼げるし」
ぽつり。
そう口にした瞬間、昔なら覚えなかった妙な引っかかりが胸に残る。知らない男と部屋へ入り、金のために服を脱ぐ。相手が満足するように触らせ、必要なら笑い、口もマンコも開いて、中に出されても終わるまで待つ。それで金を受け取る。多分、今でもできる。
できる。
「……」
でも、したい?
ミクリオの声が蘇る。――したいのか。
「……したくはねえな」
一人で、呟く。
それも以前なら考えなかった言葉だった。したいかどうかなんて、必要なかった。できるか。耐えられるか。役に立つか。金になるか。それだけだった。ザビーダは報酬袋を手に取る。遺跡を調べた。昔の知識を話した。役に立った。それで、もらった金。同じ金なのに妙に違って見える。
「……こっちのが」
少し考える。
「いいかもな」
まだ断言はできない。身体を売ることが、本当にもう嫌なのか。ミクリオだけが、特別なのか。他の誰かなら。本当に以前と同じように平気なのか。分からない。でも、研究費を稼ぐ方法が、一つしかないわけではない。それは分かった。明日はミクリオと、自分がやりたいと思える仕事を探す。それで得た金で、自分の身体について調べる。
「……めんどくせえ」
小さく。
笑う。昔なら。もっと簡単だった。マンコを差し出せば、済んだ。今は、選ぶことが、増えた。嫌かどうか。したいかどうか。どう稼ぎたいか。何に金を使いたいか。一つずつ。考えなければならない。それでも、ザビーダは見積書を捨てなかった。報酬袋の隣へ丁寧に置いた。