※この作品はR-18です。

一人称が「俺様」の褐色爆乳美女は好きですか?   作:ビジュゲイト推し

31 / 43
夕暮れの部屋

その夜も、ザビーダはミクリオの書斎にいた。最近では、特に理由がなくてもここへ来るようになった。ミクリオが仕事をして、その隣でザビーダが本を読んだり、酒を少し飲んだり、何もせずぼんやりしたりする。

 

「ミク坊」

「何だ」

「手」

「……またか?」

「嫌?」

「嫌ではない」

「なら貸せ」

当然のように差し出された左手を取る。

 

以前なら、ミクリオはこれだけで露骨に緊張していた。今も少し意識しているのは分かるが、それでも大人しく手を預けてくれる。ザビーダは指を絡め、掌を重ねた。

 

「やっぱでけえな」

「前にも言っていたな」

「ああ」

そこで、指が止まった。

 

前にも、ミクリオに、ではない。もっと昔。同じように、大きな手を両手で弄っていた。傷のある指。少し硬い掌。呆れたような低い声。前に戻った記憶より、もう少しだけ先へ行けそうな気がした。

 

「……ミク坊」

「何だ」

「ちょっと思い出しそう」

ミクリオは何も尋ねなかった。

 

ただ、手を引かない。ザビーダは目を閉じた。その温度を握ったまま、古い感触の方へ意識を沈めた。

 

***

 

夕暮れだった。どこだったのかは、まだ思い出せない。宿なのか、誰かから借りた部屋なのか。窓が開いていて、外から風が入ってくる。テーブルには飲みかけの酒。その向こうで、アイゼンが何かの道具を手入れしていた。ザビーダはその隣に座っている。もっと正確には、アイゼンの手を勝手に取って、指を弄っている。

 

「お前、手ぇでけえな」

「さっきから何なんだ」

「いや、でけえなって」

掌を合わせる。

やっぱり、自分の方が小さい。

「お前が小さいんだろ」

「俺様のどこが小せえって?」

アイゼンが露骨に嫌そうな顔をした。

「……そういう言い方をするな」

「何想像したんだよ」

「お前がそういう意味で言ったんだろうが」

「ははっ、バレた?」

「離せ。手入れが終わらない」

アイゼンが手を引こうとする。

ザビーダは離さなかった。

「もうちょいいいじゃん」

「さっきからずっと触ってるだろ」

「嫌?」

そう聞くと、アイゼンは一度こちらを見た。

「嫌ならとっくに振り払っている」

「そっか」

それならいい。

 

何となくその手を自分の頬へ持っていった。アイゼンが僅かに眉を上げる。

 

「何だ」

「何となく」

「お前は何となくが多いな」

「細けえこと気にすんなよ」

掌に頬を預ける。

 

暖かい。それだけで妙に気分が良くて、ザビーダは目を細めた。アイゼンの親指がごく自然に頬を一度撫でる。

 

「……」

今度はザビーダの方が、少し黙った。

「何だ」

「いや」

「今度は何も言わないのか」

「ちょっといいなって思っただけ」

「そうか」

「反応薄くね?」

「何を言えっていうんだ」

「俺様可愛いとか」

「自分で言うな」

「言ってくれねえからだろ」

笑いながら、ザビーダはアイゼンの手を離した。

 

代わりに肩へ寄りかかる。これも、覚えている。いや、今、思い出している。自分から近づいた。アイゼンがそこにいるから、触りたかったから、相手の都合を読んでいたわけではない。命令されたわけでもない。役に立つためでもない。ただ、そうしたかった。

 

「重い」

「嘘つけ」

「重い」

「じゃあどける?」

そう言いながら、ザビーダは動かない。

アイゼンも押し返さない。

「……そのままでいい」

「素直じゃねえなあ」

「お前に言われたくない」

その言葉に、ザビーダは笑った。

 

酒の匂い。風。肌に触れる服。アイゼンの肩。そのどれもが、不思議なくらい穏やかだった。

 

「なあ」

「何だ」

ザビーダは顔を上げる。

 

近い。少し考えてから、自分から頬へ手を伸ばした。アイゼンが動きを止める。

 

「ザビーダ?」

「何」

「いや」

今度はアイゼンが言葉を探している。

それがおかしい。

「何だよ、その顔」

「お前が急に」

「嫌?」

「そればかり聞くな」

「大事だろ」

アイゼンは小さく息を吐いた。

「嫌じゃない」

「じゃあ」

ザビーダはそのまま、距離を詰めた。

 

唇が触れる。ほんの短く。一度。離れると、アイゼンが少し驚いた顔をしていた。

 

「……何その顔」

「お前から来ると思わなかった」

「俺様だってするだろ」

「するが」

「じゃあ何だよ」

「今日は妙に甘えるな」

「悪い?」

「悪いとは言ってない」

ザビーダは笑って、今度は服の襟元を掴んだ。

「なら、もう一回」

「お前な」

文句を言いながらも、アイゼンは逃げなかった。

 

二度目はさっきより長かった。触れたかった。触れ返してほしかった。相手が自分を欲しがっているのが嬉しかった。自分も欲しいと言いたかった。そんな感覚を知っていた。ずっと昔に唇が離れたあとも、ザビーダはアイゼンの服を掴んだままだった。アイゼンがこちらを見る。

 

「ザビーダ」

「何」

「……今日は、この先もいいのか」

ザビーダは瞬きをした。

それから笑う。

「何だよ、急に真面目な顔して」

「確認してる」

「さっきまで散々くっついてたじゃん」

「それとこれは別だろう」

「あー」

そうだった。

 

こいつは、こういうところが、少し面倒だった。でも、嫌ではなかった。むしろ、その面倒さを知っていて、好きだった。

 

「いいよ」

「本当に?」

「何回聞くんだよ」

「後で嫌だったと言われても困る」

ザビーダは少し考えて、それからアイゼンの首へ腕を回した。

自分から。

「俺様がしたいの」

アイゼンが黙る。

「これでいい?」

「……分かった」

「遅え」

「お前が軽すぎるんだ」

「じゃあ分かりやすく言ってやろうか?」

「何を」

ザビーダは耳元へ顔を寄せる。

「俺様、お前としたい」

アイゼンの肩が僅かに強張った。

「お前ので埋めてほしい」

「……お前な」

「嫌?」

「嫌じゃない」

「じゃあ」

ザビーダは自分からアイゼンの膝の上へ跨った。服の上からでも、熱が伝わってくる。

「触っていい?」

「お前から聞くのか」

「大事だろ」

アイゼンは小さく息を吐き、ザビーダの腰へ手を回した。

「いい」

その一言で、ザビーダは笑った。

 

服を脱がせる手つきも急がない。一枚ずつ脱がせ、肌が触れるたびに温かさを感じる。アイゼンの胸へ手を這わせると、心臓の音が少し速かった。

「お前、興奮してんじゃん」

「お前がいきなりそんなこと言うからだ」

「俺様のせい?」

「そうだ」

ザビーダは笑い、自分から唇を重ねた。今度は深く、舌を絡め、息を混ぜる。アイゼンの手が背中を撫で、腰を掴んだ。嫌な力ではない。欲しいという熱だけが伝わってくる。

 

下着を下ろすと、すでに濡れていた。指が触れた瞬間、小さく息が漏れる。

「……熱い」

「お前のせいだろ」

「俺のせいなのか」

「ああ」

アイゼンの指がゆっくりと中へ入る。一本、二本と丁寧に広げられる感触に、ザビーダは腰を揺らした。

「んっ……いい」

「痛くないか」

「痛くねえ。もっと」

「焦るな」

「お前が遅いんだよ」

文句を言いながらも、声は甘い。アイゼンが、珍しく柔らかい笑い方をした。

「お前、本当に……」

「何」

「可愛いな」

「……今さら」

耳まで熱くなった。それでも離れなかった。

 

やがて、アイゼンが自分のものを取り出す。硬く、熱い。先端が入口に触れた瞬間、ザビーダは自分から腰を落とした。

「あっ……」

ゆっくりと奥まで埋まり、満ちていく。痛いわけではない。ただ熱くて、大きくて、愛しい。

「……全部、入った」

「ああ」

アイゼンの額がザビーダの肩へ寄りかかる。息が荒い。

「動いていいか?」

「ああ」

 

腰がゆっくりと動き出す。奥を擦るたび、甘い声が漏れた。

「んっ……あっ……アイゼン……」

「痛くないか」

「痛くねえ。……いい」

ザビーダも求めるように、自分から腰を合わせる。アイゼンの手が腰を支え、時に強く掴んだ。嫌な力ではない。欲しがられている実感だけが胸を満たす。

「ザビーダ」

「何」

「……お前が、したいって言ってくれて」

「ん?」

「嬉しかった」

その言葉に、ザビーダは目を細めた。

「俺様も」

 

唇を重ね、腰を動かしながら何度もキスをする。部屋に響くのは、肌の音と甘い吐息だけだった。外の風が時折カーテンを揺らし、夕暮れの光が二人の肌を優しく照らしている。

「もっと、奥」

「こうか」

「んっ……そこ……」

アイゼンが角度を変える。奥を突かれるたび、視界が白く霞んだ。

「あっ……あっ……アイゼン……」

「俺も、もう……」

「出して。……中に」

「いいのか」

「いい。お前の、欲しい」

 

最後の一突きで、熱いものが奥深くに注がれる。ザビーダは小さく喘ぎ、腕に力を込めて抱きついた。アイゼンも彼女を強く抱き返す。二人はしばらく、繋がったまま動かなかった。やがて息が少しずつ落ち着いていく。

「……幸せだな」

ザビーダがぽつりと呟く。

「何が」

「こういうの」

「曖昧だな」

「細けえこと気にすんなよ」

笑いながら額を合わせる。アイゼンの手が背中をゆっくり撫でた。

「ザビーダ」

「ん」

「俺もだ」

「何が」

「幸せだ」

 

その言葉に、ザビーダは目を閉じた。風、酒の匂い、肌の温もり、中に残る熱。すべてが優しかった。命令ではない。金のためでもない。ただ互いに欲しがり、触れ合い、満たされる。それがどれほど幸せなことだったか、当時のザビーダは知っていた。

「……もう一回、していい?」

「貪欲だな」

「嫌?」

「嫌じゃない」

アイゼンが微笑み、ザビーダも同じように笑った。夕暮れの部屋で、二人はもう一度ゆっくりと身体を重ねた。

 

***

 

そこで、記憶が切れた。ザビーダは目を開ける。書斎。机。灯り。自分の手の中にある、ミクリオの手。しばらく、何も言えなかった。

 

「……ザビーダ?」

ミクリオが静かに呼ぶ。

「ああ」

「戻った?」

「うん」

「大丈夫か」

ザビーダは少し考えた。

 

大丈夫。平気。そういう言葉で終わらせず、自分の中を確かめる。痛い記憶ではなかった。むしろ、温かかった。少し恥ずかしくて、少し寂しい。でも、思い出せて嬉しい。

 

「……大丈夫」

今度の言葉には、自分で納得できた。

「いい記憶だった」

ミクリオの表情が柔らかくなる。

「そうか」

「アイゼンとさ」

「うん」

ザビーダは繋いだ手を見る。

「やっぱり俺様から触ってた」

ミクリオは黙って聞いている。

「手ぇ触って、くっついて。俺様からキスして」

そこで、少しだけ笑った。

「その先も、俺様からしたいって言ってた」

ミクリオの目が僅かに泳いだ。

「……そこまで思い出したのか」

「嫉妬した?」

「……少し」

正直だ。

ザビーダは思わず笑った。

「ミク坊かわいいな」

「そういう反応を期待して言ったんじゃない!」

「分かってるって」

笑いながらも、ザビーダは手を離さなかった。

 

やがて笑いが落ち着くと、少しだけ真面目な顔になる。

「俺様さ」

「うん」

「客に何されても平気だったのと、全然違った」

ミクリオが何も言わず、続きを待つ。

「アイゼンには俺様から触りたかったし、向こうから触られんのも嬉しかった。……そういうの、ちゃんと知ってたんだな」

「忘れていただけ?」

「多分」

ザビーダは少し考える。

「いや。忘れたっていうより、後から上に色々積もりすぎたのかもな」

何百年。

 

誰でもいい。何でもいい。嫌じゃない。平気。慣れている。そんなものを積み重ねて、その下にあった感覚が見えなくなった。でも、消えていたわけではない。

 

「……ミク坊」

「何だ」

ザビーダは絡めた指をもう一度握り直した。

「俺様、お前にも自分から触ってるな」

ミクリオが固まる。

ザビーダもその事実を口にしてから黙った。

「……」

「……」

しばらくして、ミクリオが慎重に言う。

「今、その先まで考える?」

ザビーダは天井を見た。

 

答えの形は、もうかなり見えている。けれど。

 

「……今日はやめとく」

「分かった」

「逃げたって言わねえ?」

「言わない」

「そっか」

ザビーダは再び、ミクリオの肩へ頭を預けた。

「じゃあ、今日はこれでいいや」

「ああ」

「手、離すなよ」

「君が離したくなるまで離さない」

「……それ」

ザビーダは小さく笑った。

「結構好き」

ミクリオがまた固まったので、今度は声を上げて笑った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。