※この作品はR-18です。

一人称が「俺様」の褐色爆乳美女は好きですか?   作:ビジュゲイト推し

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生きてるから

翌日は、ほとんど何もしなかった。ミクリオは左の脇腹と背中を軽く打撲していた。幸い重症ではなかったものの、念のため今日は安静にするよう言い渡された。本人は「書類整理くらいならできる」と主張したが、ミューズに取り上げられ、ザビーダにも睨まれ、結局おとなしく寝室へ戻された。

 

「特等対魔士って、みんなこんな往生際悪いの?」

「僕は仕事を――」

「寝ろ」

「まだ昼だ」

「昼でも寝ろ」

「眠くない」

「じゃあ横になってろ」

「ザビーダ」

「何」

「君、昨日から僕への扱いが雑じゃないか?」

「生きてるから雑にできんだよ」

ミクリオが黙った。

 

ザビーダも言ってから少しだけ止まる。でも、訂正はしなかった。

 

「……そっか」

ミクリオが小さく笑う。

「何笑ってんの」

「嬉しい」

「怪我人のくせに余裕あんな」

「それは関係ないだろう」

ザビーダは呆れながら、ベッド脇の椅子へ座った。

 

昨夜は、ほとんど眠れなかった。施設から戻ったあと、治療を受けるミクリオのそばにずっといた。傷の程度が分かって、命に別状はないと言われて、それでも何度も呼吸を確認した。眠ったあとも、胸が上下している。息をしている。それを確かめてからでなければ、目を閉じられなかった。

 

今は、朝も越えた。昼になった。ミクリオは相変わらず文句を言っている。

 

「腹減った?」

「少し」

「何食う?」

「軽いもの」

「具体的に」

ミクリオが少し考える。

「スープ」

「了解」

ザビーダは立ち上がった。

「持ってくる」

「ありがとう」

扉まで行って、少しだけ戻る。

 

額へ軽くキスした。ミクリオが目を瞬く。

 

「何?」

「したかった」

「……そう」

「何だよ」

「いや」

ミクリオが少しだけ笑う。

「僕もしたい」

ザビーダは一瞬考えた。

それからもう一度近づく。

「じゃあ一回」

「いいの?」

「俺様もしたいから」

短く。

 

唇を重ねる。昨日。死ぬかもしれないと思った人と今日、普通にキスをしている。それだけのことが、妙に嬉しかった。

 

***

 

夜になっても、ザビーダは自分の部屋へ戻らなかった。ミューズも何も言わなかった。ミケルだけが何か言いたそうな顔をしていたが、妻に肘で小突かれて黙った。寝室。ミクリオは先にベッドへ入っている。ザビーダは椅子へ座り、その横顔を眺めていた。

 

「何だ」

「別に」

「また見てる」

「見てる」

「なぜ」

「生きてんなって」

ミクリオが少しだけ困った顔をする。

「何度確認するつもり?」

「俺様が飽きるまで」

「それはいつ」

「知らね」

ザビーダは笑った。

 

でも、胸の奥にあるものは、昨日とは少し違った。昨日は、怖かった。失うのが、いなくなるのが、触れられなくなるのが、今日は、触れたい。ただそれだけが、昨日よりずっと強い。

 

「ミク坊」

「何?」

「今日さ」

一度言葉を止める。

 

昔なら。こういう時、相手の顔を見て、相手が何を望んでいるか探した。何を言えば喜ぶか。何を差し出せば機嫌が良くなるか。そういうことばかり考えていた。今は、自分へ聞く。俺様は何がしたい。答えは、もう分かっている。

 

「今日、したい」

ミクリオが止まった。

「……何を」

「またそこから確認すんの?」

「いや」

顔が少し赤い。

「分かってる」

「じゃあ聞くなよ」

ザビーダは笑った。

でもミクリオはすぐにいつもの表情へ戻った。

「昨日のことで気持ちが高ぶってるだけじゃない?」

「違う」

「本当に?」

「ああ」

今度は迷わない。

「昨日は、したくなかった」

 

ミクリオが黙る。

ザビーダは続けた。

「昨日は、お前が生きてるか確認したかっただけ」

「うん」

「触って、息してんの見て、一緒に寝て」

「うん」

「それで十分だった」

ミクリオは静かに聞いている。

「でも今日は」

ザビーダは椅子から立ち上がった。

ベッドのそばへ行く。

「お前に触りたい」

 

「……」

「もっと」

ミクリオの喉が小さく動く。

「恋人だから?」

「違う」

即答。

「昨日死にかけたから?」

「それだけでもねえ」

「じゃあ」

ザビーダは笑った。

「俺様がお前を欲しいから」

 

ミクリオが目を閉じた。

「何でそこで目閉じんの」

「少し整理させてくれ」

「まだ整理する?」

「する!」

「ほんっと真面目」

ザビーダはベッドの端へ座った。

「嫌?」

「嫌なわけない」

「したい?」

少しだけ意地悪く聞く。

 

ミクリオは目を開けた。そして、今度は逃げなかった。

 

「したい」

「そっか」

「かなり」

ザビーダが笑う。

「お前、言えるようになったな」

「君が僕も言っていいって」

「言ったな」

嬉しい。

 

本当に自分だけが選ぶのではない。ミクリオも欲しいと思っている。でも、それを命令にはしない。

 

「じゃあ」

ザビーダは手を伸ばした。

「キス」

「うん」

「して」

ミクリオがゆっくり身体を起こそうとする。

「待て」

「何」

「怪我」

「あ」

「忘れんな」

「……ごめん」

「謝んなくていいけど」

ザビーダは笑い、今度は自分から近づいた。

 

唇が触れる。短く。もう一度少し長く。それだけで、胸が熱くなる。

 

「……ミク坊」

「何」

「これ」

「うん」

「やっぱ好き」

「僕も」

「あと」

少し迷って、ミクリオの手を取る。

自分の頬へ触れさせた。

「ここ」

「……いいの?」

「ああ」

指が頬を撫でる。

 

優しい。ザビーダは目を閉じた。昔。アイゼンにも、こうして触れられたことがある。その記憶は、もう邪魔ではなかった。大事なもの。自分が一度。ちゃんと誰かを好きで、ちゃんと欲しいと思って、ちゃんと愛された記憶。だから、今も分かる。これは違う。客とは、命令とは、所有とは、全然違う。

 

「ザビーダ」

ミクリオの声。

「何」

「今も、このまま触ってほしい?」

ザビーダは目を開ける。

「ほしい」

ミクリオが少し笑った。

「続けたい?」

「したい」

「うん」

「だから触って」

「分かった」

今度はもっと自然に手が頬から髪へ移る。

 

ザビーダはその手に自分から擦り寄った。

 

***

 

しばらく二人はキスと抱擁だけで過ごした。ミクリオが怪我をしているせいもある。無理に進める必要もない。でも、ザビーダの中に少しずつ。

 

「もっと」が増えていく。

「ミク坊」

「何」

「俺様」

言葉にする。

ちゃんと。

「抱いてほしい」

ミクリオの表情が変わった。

「……本当に?」

「ああ」

「途中で嫌になったら」

「止める」

「僕も止める」

「うん」

「何か嫌だったら」

「言う」

「分からなくなったら」

「分かんねえって言う」

「……うん」

ザビーダは笑った。

「確認終わり?」

「多分」

「多分かよ」

 

「あと一個」

「何」

ミクリオがまっすぐ見る。

「これは、僕が君を所有しているからじゃない」

ザビーダは数秒黙ってから答えた。

「知ってる」

「うん」

「でも言っとく?」

「ああ」

「じゃあ」

ザビーダはミクリオの手を握る。

「俺様はお前の所有物じゃねえ」

「うん」

「恋人」

「ああ」

「で」

 

少し笑う。

「今日は俺様がお前に抱いてほしいって言ってる」

ミクリオの目が少し潤んだ。

「……分かった」

「泣く?」

「泣かない!」

「泣きそうじゃん」

「君がいちいち大事なことを自然に言うからだ!」

「俺様悪くねえだろ」

「悪くない」

二人で笑った。

 

緊張が少しほどけた。

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