世界一狭いダンジョン 〜で、最悪高慢エルフたちへの復讐が始まった件〜 作:菜種K
最悪の最期だ。
僕は髪の薄い太ったおっさんと体を密着させ、汗だくになりながら思った。
東関東自動車道は大渋滞。
事故に巻き込まれた僕の車のまわりでは、消防隊員や救急隊員が駆け回っている……音が聞こえる。
「聞こえてますか?! わかりますか?! 今、救出しますからね!」
エンジンカッターの轟音が車内にまで轟く。
でも、多分間に合わない。
暑さと圧迫感の中で僕は悟っていた。
死ぬんだ。
目の間のクソ上司と一緒に。
悪い人ではないのだが、とにかく話が長いし説教はしつこい。
同じことを何度も繰り返すし、二言目には「俺の頃は……」だ。
で、大抵同じ言葉で終わる。
「君も、チームの一員としての自覚を持てよ」
なんなんだ、自覚って。
自分なりに真面目にやってたけど、それだけじゃダメなのか?
わからないまま、一緒に営業活動。
運転を任されて、心身ともにくたびれ果てて、挙げ句の果てがこの有様。
事故は僕のせいじゃない……と思う。
疲れてはいたけど意識ははっきりしてたし、ちゃんと車間距離も取っていた。
後方からの激しい衝撃を感じたと思ったら、車両は一回転して逆さまに着地したのだ。
とにかく、これでもうあの説教も聞かなくて済むのだろう。
どこか出血してるのか、意識がだんだん朦朧としてきた。
さっきまであんなに蒸し暑かったのに、寒い。
さよなら世界。
そして──
僕は新しい世界で目覚めた。
深い森と城と城下町。
戦士と魔法使いと魔物が跋扈する、美しくも恐ろしい世界で。
見も知らぬ国王が支配する「王国」で。
何もかもが変わった……と思ってた。
だが、僕の立場は変わっていなかった。
職種こそ「戦士」となったが、未熟者として鍛えられる日々は続いていたのだ。
「貴様! 腰が入ってないぞ! そんなことではゴブリンも斬れんぞ!」
王立戦士ギルド訓練所という施設で、ゴリラのような教官に罵倒されながら、戦士としてのスキルを叩き込まれる日々。
無双ともチートとも無縁の転生に泣きたくなるのを堪えながら、僕はなんとか二級戦士という肩書きを得た。
二級戦士はギルドによって実際の任務を与えられる。
「ほれ、この紹介状を持って、明朝噴水広場に出頭しろ。そこでパーティと合流だ。せいぜい、がんばれ」
ギルド手配士の気のない励ましに送り出され、僕は辺境の魔物討伐という小さな任務に就くため、パーティと合流した。
最悪のパーティと──
「なんだ。人間じゃないの」
そのパーティのメンバーは、開口一番そう言った。
言ったのは魔法使いのアハーレ。
褐色の肌を露わにした、踊り子のような衣装の女エルフだった。
「せめて、ドワーフならよかったのに」
「仕方がありませんわ。人手不足で戦士の数が足りてないんですから。荷物運びくらいの役には立つでしょう」
そう言って笑ったのは尼僧のチチェーラ。
やはり女エルフで、黒いヴェール付きの尼僧服を着ているが、スカートの左右は大きく割れて太ももを露わにしている。
「今回の任務くらいなら問題ない。終わったらギルドに入れ替えを依頼する。行くぞ、人間」
冷たい言葉を投げてきたのは、リーダーで勇者のキンジェラ。
胸と肩、腰回りを革の防具で包んだ戦士スタイルの、これも女エルフだった。
つまりパーティは僕以外、皆、女のエルフ。
しかも全員が美女ぞろいのエルフ=プレだった。