※この作品はR-18です。

世界一狭いダンジョン 〜で、最悪高慢エルフたちへの復讐が始まった件〜   作:菜種K

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12.最悪の襲撃

「チチェーラ! ニン! 無事か!」

 

 キンジェラの声が聞こえた。

 開けたトンネルの中で、パーティは三度(みたび)集結する。

 アハーレは、彼女の視線を逸らすチチェーラの様子に、何があったか目ざとく感じ取ったらしい。

 僕を責めるような目で見た。

 キンジェラだけは相変わらず、僕の所業に気づいていないようだった。

 女として、この鈍さは不思議ですらある。

 あとの二人にとっては、ありがたいことなのかもしれないが。

 

 この女戦士に手を出すと、恐ろしいことになる?

 僕はチチェーラの言葉を反芻しながら考えた。

 魔法なしでも強い彼女には、密室で二人きりになっても手など出せそうもないが──

 

 キンジェラは言った。

 

「チチェーラ、ここは傾斜路の底だ。この先はどうなってる?」

 

 魔法も回復し落ち着きを取り戻していた尼僧は、古文書を出して確認した。

 

「ええと……通路の先は『列柱の間』ですね。たくさんの柱で仕切られた広間です。問題はそろそろオーク戦士(レン)たちの領域に入っていくことですけど」

「襲撃があるかもしれないってことか。皆、ひと塊りになって四方に注意しながら進もう。私は正面。アハーレは右。チチェーラは左。ニンは後方から目を離すな」

「え? 僕は後ろ向きに歩けってことかい?」

 

 キンジェラはロープを取り出すと、自分と僕のベルトに結びつけた。

 

「私が引っ張ってやるから、後ろ向きについて来い。離れずにな。オークを見たらすぐ報せろ。行くぞ!」

 

 一行は短い通路を抜けて、列柱の間に足を踏み入れた。

 

 そこは天井が高く、果てが見えないほどの広間だったが、ぼうっと光る石積みの柱が林立していて、通れるところの狭さはさっきまでとあまり変わらない。

 オークに襲われても、一人ずつ相手にすることになりそうだった。

 僕は疑問を口にした。

 

「なあ。オークどもは離れて行動できるのかい? 僕たちみたいにしていなくても、岩が動いたりしないのか?」

 

 チチェーラが答えた。

 

「ダンジョンには、その中で生まれた者たちには無効の罠というものがあります。ここの仕掛けも恐らくそういう風にはたらくのでしょう」

 

 なるほど。

 自由に動ける敵に襲われたら危ないが、狭さというハンデはこちらと同様だろう。

 それに高慢極まりないとはいえ、彼女たちなら並のオーク戦士(レン)軍団など問題にしない……はずだった。

 

「ここにも魔蟲がいるわ」

 

 アハーレが受け持ちの右側を指差して言った。

 列柱の間を、黒く小さい影が舞い飛んでいる。

 

「そこに巣があるぞ」

 

 キンジェラの声に振り返ると、前方の柱に開いた穴から魔蟲が湧いて出てきていた。

 解毒薬のおかげで毒は怖くないが、噛まれれば怪我をする。

 近づきたくはない。

 

「念の為、焼いておくか。アハーレ、魔法で火槍を出してくれ。巣の奥まで届くようにな」

 

 魔法使いが呪文を詠唱して印を結ぶと、その手に炎でできた小ぶりな槍が現れた。

 エルフ以外のものを焼くようにできているのだろう、キンジェラはそれを難なく受け取り、魔蟲の巣に向けて構えた。

 槍はその手を離れ、生きている炎のように虫を焼きながら巣穴の奥へと入っていった。

 そして──

 あたりからザワザワと不吉な音が響いてきた。

 

「魔蟲が!」

 

 チチェーラが頭上を指さした。

 見ると、あちこちの柱から魔蟲の群れが雲霞の如く湧き出している。

 

「しまった……巣穴が繋がっていたんだ!」

 

 魔蟲は渦を巻くように舞い飛び、あたりを豪雨のような音で埋め尽くした。

 アハーレが不吉な予感を滲ませながら言った。

 

「これは……気づかれるわ」

 

 次の瞬間、僕の頭をかすめて弓矢が柱に突き立った。

 それを追って、次々と矢が襲いかかってくる。

 

「チチェーラ! 防御魔法! 帳を張れ!」

 

 僕たちは魔法のバリヤーに包まれ、弓矢の脅威から逃れた。

 

「逃げるぞ!」

 

 こうなっては見張りの必要もない。

 僕たちは全員前を向いて走り出した。

 やがて、何者かが柱の間を追ってくるのが見えた。

 オーク戦士(レン)だ。

 

「見て! 上からも来る!」

 

 アハーレの声に見上げると、天井からもオークたちがわらわらと現れ、柱を這い下りてくるところだった。

 すごい数だ。

 

「前からも来た!」

 

 キンジェラが足を止め、剣を構えた。

 左右、後方からも灰色の邪鬼どもが迫ってくる。

 

 僕たちは完全に包囲されつつあった。

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