※この作品はR-18です。

世界一狭いダンジョン 〜で、最悪高慢エルフたちへの復讐が始まった件〜   作:菜種K

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13.最悪の打開策

 黄色い目を爛々と光らせ、青白い手に持った得物を僕たちに突きつけながら威嚇する邪鬼(オーク)の群れ。

 

 それが四方だけでなく頭上からもにじり寄ってくる。

 こういう状況にまだ慣れていない僕は、パニックに陥りそうになるのを必死に堪えていた。

 三人のエルフたちはまだ、冷静さを保てているようだった。

 

「チチェーラ、アハーレ、炎波攻撃で切り抜けるぞ。合図する。ニン、私の斜め後ろから付いてこい。斬れる奴は斬れ。いくぞ! ハッ!」

 

 キンジェラの合図で一瞬帷(バリアー)が消え、アハーレを中心とした四方と頭上に炎の波が広がった。

 奇声をあげながら後退する前方のオークたちに向かってキンジェラが前進する。

 僕とあとの二人も続く。

 キンジェラは斬れるだけのオークたちを斬りながら前進し、行き詰まったタイミングで再びチチェーラがバリアーを張る。

 

「もう一度! ハッ!」

 

 その攻撃を繰り返しながらパーティは少しずつ前進したが、後から湧いてくるオークがあまりにも多く、進む距離は次第に短くなっていった。

 チチェーラが呟いた。

 

「オークの数が資料の追加情報より多すぎます。更新が滞っていたのでしょう。このダンジョンは一級案件ですよ」

「とにかく進むしかない! がんばれ!」

 

 キンジェラは励ましたが、アハーレの術には疲れが見え始めていた。

 炎の波が勢いを失くしかけていたのだ。

 あのせい(・・・・)か?

 僕は少し後ろめたさを感じながら、どこかに起死回生の策はないかと頭を捻り──

 不確かな打開策が、一つだけ見つかった。

 

「キンジェラ。一度ばらけよう」

「何? どういう意味だ」

「僕たちの間に距離を取って、岩を動かすんだ。ここの柱と床が動けば、潰される奴もいるだろう。元に戻ったらまた攻撃しながら前進する。これを繰り返せば……」

「そんなの、時間がかかり過ぎますよ!」

「あたしたちだって潰されるかもしれないじゃない!」

 

 尼僧と魔法使いは抗議した。

 

「他にいい手があるのかい? 岩の移動さえうまく切り抜ければ、少なくとも一休みはできるぜ」

 

 キンジェラは決断した。

 

「よし、やってみよう。このままでも埒が開かん。みんな合図で四方に動け。二、三歩ですぐ戻ってくるんだ。やるぞ! 一! 二! 三! 行け!」

 

 僕たちは僕の背丈の距離をだっと一歩踏み越えて離れ、またすぐ集結した。

 

「何も起きないわ!」

 

 アハーレは叫んだ。

 だが、何か仕掛けてくると見ていったん退いたオークたちが、再びにじり寄ってきたその時──

 ズズズズズという震動があたりを包んだ。

 動き出しが遅かったのは、移動する岩の範囲が広いせいだろう。

 

「気をつけろ!」

 

 キンジェラの声に反応したように、床がめくれ上がり、柱がブロック状に分解されて動き出した。

 上から来ていたオークたちが次々に落下し、床から飛び出した岩に激突して潰されていく。

 列柱の間を形作っていた巨大な岩の群れは、僕たちを中心に渦を巻いて動いているように見えた。

 さながら岩の嵐だ。

 岩同士が火花を散らしながらぶつかる音と、オークたちの悲鳴が耳を弄する。

 やがて岩は床に積み上がって、壁を造っていった。

 僕たちを包囲していたオークたちは、かなりの数がその下敷きになったようだ。

 

「危ない!」

 

 叫んだチチェーラのすぐ背後に岩が落ちてきた。

 僕たちの居場所も、どんどん狭くなっていく。

 目の前にいたキンジェラは、真上から落ちてきた岩に気づいていなかった。

 

「キンジェラ!」

 

 僕は彼女を突き飛ばして、壁と壁の間に身を投げた。

 その上から降って来た岩が狭い空間に蓋をする。

 ズン! ズン! ズン! ズン!

 

 轟音と震動はやがて収まり──

 僕はまたしても、岩の密室に閉じ込められた。

 

 突き飛ばしたまま押し倒したキンジェラと共に。

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