※この作品はR-18です。

世界一狭いダンジョン 〜で、最悪高慢エルフたちへの復讐が始まった件〜   作:菜種K

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17.最悪の帷

 ケダモノ──

 

「そうだな……ケダモノだよな。君をこんなふうに……ひどいと思ってるよ……な?」

 

 僕は彼女から出ていきながら、落ち着きを取り戻していった。

 わずかな毒の効果もすでに失せたようだ。

 

「ひどいよ……ホントにひどい。二百年も守ってきた私の純潔を……踏みにじって……」

 

 僕は思わず彼女の顔を見た。

 見た目だけならまだ二十代……いや、十代でも通じるくらいの瑞々しい横顔を。

 エルフが長命種だとは知っていたが、いざ現実を突きつけられると驚愕せざるを得ない。

 二百年……二百歳……。

 ふつうエルフは一体、何歳くらいで初体験を済ませるのだろう?

 

「お前、チチェーラとアハーレにもこうしたのか?」

 

 さっきのチチェーラの言葉で察したのだろう。

 今さら嘘をついても仕方ない。

 僕ははっきりと頷いて見せた。

 なじられると思ったが──

 

「どっちが……よかった? 私と、あの二人……と」

「えっ?」

 

 僕は意外な問いに思わず息を呑んだ。

 だが、正直に答えた。

 本当にそう思っていたから。

 

「君の方が……よかった。すごく……よかったよ」

「宇宙(そら)を……見たか?」

「見た。夢かと思った、けど……君も見たの?」

 

 エルフの女戦士は宙空を見上げたまま答えた。

 

「いや。でもエルフ=プレの処女を抱いた者が何を見るかは知っているから……」

 

 そう言ってキンジェラは首をひねって僕を見た。

 

「ニン、お前初めて女を抱いたのはいつだ?」

「え? ええと……勘定に入れていいのかわからないけど……二十二の時、かな? 出張先で上司に無理やり誘われて行った風俗で。おばさんのソープ嬢と、した……けど。そんなにいいもんじゃなかったな。払いも自分もちだったし」

 

 キンジェラは笑った。

 嘲笑ったようだが、それでも僕はうれしかった。

 

「よくわからんが、商売女とってことか? 恋人を抱いたことはないのか?」

「ないよ。君が……」

 

 君が初めて……と言おうとして僕は口を止めた。

 キンジェラは好きだったが、まだ恋人と呼べるものではない。

 しかもその前に、パーティの仲間を二人も犯したとあっては、とても恋人ヅラなどできはしない。

 彼女は真顔になって言った。

 

「私が好きか?」

 

 シンプルな質問にシンプルな答え。

 

「うん。それは本当だよ」

「じゃあ、悲しいことだな。あの秘密さえ知らなければ、好きなままでいられたかもしれないのに……」

「秘密? さっきアハーレが言ってた? 魔生に堕ちる……ってどういうこと?」

 

 今更ながらの質問に、キンジェラは冷たく答えた。

 

「すぐわかる。ダンジョンが元通りになったらな。その時が終わりだ。私たちの……」

 

 僕たちの終わり──

 何の終わりだ?

 関係か?

 パーティとしての?

 それとも、僕とキンジェラの男と女としての?

 

 それ以上詳しく聞く勇気も出ないまま、時が経ち──

 ダンジョンはまた動き出した。

 今度はただ集まるだけでは済まない。

 生き残りのオークたちが待ち受けているのだ。

 

 チチェーラたちとの間の岩が消え、僕たちは速やかに合流した。

 当然、二人は僕を厳しい表情で睨め付ける。

 僕も言い訳はしなかった。

 その前に、とにかくここを脱出しなければならないのだ。

 僕はキンジェラに聞いた。

 

「さっきと同じ攻撃で進むのか?」

「いや……その前にやることがある」

 

 キンジェラは僕から目を逸らして、尼僧に声をかけた。

 

「チチェーラ、あたりが開けたら帷(バリヤー)を張れ。まず……わかるな?」

 

 含みを持たせたリーダーの言葉に、チチェーラは一瞬戸惑いの表情を見せた。

 

「キンジェラ……いいんですね?」

「ああ。仕方ないだろう」

 

 何が仕方ないのか?

 聞こうとしたその時、周辺の岩が一気に動き出して列柱が元の形になっていった。

 潰されたオークの肉と血が、あちこちから腐臭を放つ。

 そして生き残ったオークたちが動く音も聞こえてきた。

 

「来るぞ! 帷!」

 

 オークたちの姿が目に入ると同時にチチェーラが呪文の詠唱を終え、帷が下りた。

 だが、僕だけはその外にいた。

 

「キンジェラ! 僕が入ってない!」

 

 振り返った僕を、三人のエルフたちは帷の中で黙って見つめるだけだった。

 キンジェラはつぶやいた。

 

「ニン、すまない。こうするしかないんだ」

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