世界一狭いダンジョン 〜で、最悪高慢エルフたちへの復讐が始まった件〜 作:菜種K
僕が転生したこの世界には、雑多な種族が共存している。
人間、エルフ、ドワーフにオーク。
それらがさらに細かい種族に分かれており、特に気位が高いのがエルフの中でもエルフ=プレと呼ばれる者たちだった。
エルフ=プレはあらゆる面で高い能力を誇り見た目も美しいが、他の種族を見下すことで知られる鼻持ちならない連中でもあった。
「ほら、ニン! 食事の支度して。川があったから魚とってきな!」
勇者キンジェラの指示が飛ぶ。
名前すら呼ばれず、人間の「ニン」(僕には日本語としてこう聞こえた)というなんとも侮蔑的な呼びかけ方で。
道中は辛い下働きの日々が続いた。
荷運びに飯の支度。
ゴブリンや小魔との小競り合いもあったが、僕はほとんど役に立っていなかった。
キンジェラが言った通り、今回の任務は彼女たちだけでもなんとかなる程度のものなのだ。
だから僕がいる意味と言えば、雑用と力仕事をこなすことくらい。
おまけに用はエルフ=プレの高飛車な態度で言いつけられるのだからたまらない。
とんだ、ブラック・パーティだ。
おまけに野営で酒が入ると、彼女たちはセクハラにも走った。
「ほおら、どこ見てんの? 私のおっぱいに触りたいの?」
アハーレは、わざとらしく僕にしなだれかかってからかった。
ほとんど二枚の布でしかない踊り子のスカートからのぞく褐色の太ももを見せびらかしながら。
「いいんだよ? 襲っても。ほらほら、男ならやってみな?」
「…………」
僕は黙りこくったまま、火を消さないよう燃えさしを崩すフリをしながらじっと耐えた。
実際に襲いかかったところで、緊縛の術で動きを封じられるだけなのはわかっているのだ。
それはそれで楽しむ向きもあるだろうが、僕にそういう趣味はなかった。
魔法使いの酒臭い息が、僕の耳に吹きかけられる。
「ねえん、エルフの男とどっちが上手か見てあげるからさあ」
「……やめろよ」
「やーん、チチェーラぁ! こいつ冷たいぃん! 溜まってるくせにぃい!」
さすがに尼僧はセクハラこそしなかったが、僕の様子を楽しげに笑いながら見ていた。
勇者キンジェラはカップの酒を飲み干して立ち上がった。
訓練用の木剣を僕の足元に放り投げる。
「溜まってるなら発散しろ。稽古をつけてやるぞ、二級戦士殿」
そう言って防具を外し、薄い胸帯と下履きをむき出しにする。
はっきり言って、すごい体だ。
戦士らしく筋肉質だが、女らしさが十分残っていてグラビアに出ててもおかしくない。
ロン毛の二人と違ってベリーショートでボーイッシュな雰囲気のキンジェラは、白状すると僕の好みだった。
中学の卓球部で好きだった女子にちょっと似ていた。
だから、なおさら僕への態度は辛いものであった。
「そら、私に一太刀でも決めることができたら、ここを触らせてやる!」
下履きに手を突っ込み、挑発するように指を動かして見せる。
アハーレが黄色い声をあげて喜んだ。
「きゃーっ! すごいご褒美!」
いい加減、無視を決め込むのにも疲れたので、手っ取り早く済まそうと僕は木剣を取った。
適当に切り結び出すと、またキンジェラの叱責が飛ぶ。
「ほら! ほおら! もっと本気を出せ!」
ヤケになって猛烈に攻めかかるが、キンジェラは笑いながら難なくかわしていく。
そういえば、卓球部でも彼女にはかなわなかったなあ……。
大きな乳房が、胸帯からはみ出しそうに揺れながら僕をからかう。
「ほら! 私の膝をつかせて犯すくらいの勢いでやれ! そら!」
ピンク色の乳首がチラと見えた直後、勇者は色気を発散させながら僕の腹に一撃をくわえて、その場に崩れさせた。
「まだまだだな。もっと修行しろ、人間」
こんなことなら、前の世界で上司の説教を聞かされていた方がマシだったかもしれない。
説教の時間も楽しいものではないが、少なくともここまで屈辱を感じることはなかったのだから。
そんなこんなで僕たちは旅の最後の障害である、あのダンジョンに辿り着いた。
世界で最悪の──
最も狭いダンジョンに──