世界一狭いダンジョン 〜で、最悪高慢エルフたちへの復讐が始まった件〜 作:菜種K
「ああ、そうだよ」
僕は告白した。
「僕は、こことは全く違う世界から……その……転生してきたんだ」
「なぜそれを言わなかった?」
キンジェラが聞いた。
「そんなこと……話したところで、何にもならないと思ったからさ。説明もめんどくさいし、人間であることには違い無いから、君たちの扱いも変わらないだろ?」
「でも、こういう状況では大きな違いが出るのですよ。
チチェーラの言うことはもっともに聞こえた。
今回、魔物から人間に戻れたという、いい方向にその違いが働いたのも、たまたまなのかもしれない。
ではこの後は?
僕は妖精官に尋ねた。
「なあ、僕はまたそのゼルグルとかに変身しちゃうことはあるのかい?」
妖精官は小さな肩をすくめた。
「なんとも言えませんねえ。こういう例はほとんどないから。とにかく君は、あそこで完全に生まれ変わったことになってるんですよ。だから、一人になってもダンジョンの仕掛けが動かなくなったでしょ? ずっとこのままかもしれないし、また
なんとも、ままならぬ話だ。
三人のエルフたちも複雑な表情を浮かべた。
「でも、もしこの人が自由に
気楽に励ますと、妖精官は姿を消した。
日もとっぷりと暮れ、僕たちはダンジョンの出口で野営することにした。
干し肉とスープでの食事が終わったところで、僕はエルフたちに向き直った。
「どうするんだい? 妖精官はああ言ったけど、こんな危ない人間となんか一緒にいられないっていうなら別にクビでもいいんだよ?」
三人は顔を見合わせて、さらに深刻な表情になった。
キンジェラが言った。
「クビにはしない。というか、できない。私たちはお前と離れられない。これから、ずっと……」
「エルフ=プレの掟よ。女は子を身籠ったら、相手の男と臨年まで共に過ごさなきゃいけないの。私たちは普段、魔法で懐妊を避けてるけど、あんたとした時はそれが無効だった。だから……」
いきなり、身に覚えのある事情を持ち出されて、僕は気まずくなった。
確かに、できちゃった公算は高いだろう。
が、アハーレの言葉には耳慣れない単語が含まれていた。
「臨年? 臨月じゃないの?」
チチェーラが説明した。
「臨年です。エルフ=プレは
僕は愕然とした。
文字通り、顎が落ちて脂汗が滴り落ちる。
十年間も、この最悪高慢エルフたちと付き合い続けるのか?!
「逃げても無駄だぞ。魔法も駆使して居場所は必ず見つけるからな。それに……」
キンジェラの言葉が意味深に途切れた。
その先に、まだとんでもない秘密が隠されているようだ。
──と、いきなり妖精官が僕の目の前に再び現れ、耳元に囁いた。
「君に言っておいて方がいいかなー? と思って戻って来ましたよん。エルフ=プレの女の子は、孕まされると相手の男以外で満足できない体になっちゃうの。しかも、色欲最大の淫魔みたいになっちゃうから、気をつけて。というか、がんばってね!」
それだけ言って、また消えた。
そして、三人の方を見た僕はギョッとした。
エルフたちは口を半開きにして、息を荒げながら僕を見ていた。
しかも、その目が──
赤く爛々と光っている。
「えっ……? ちょっと、みんな大丈夫?」
キンジェラが、四つん這いになったまま僕の方へとにじり寄ってきた。
あとの二人も同じように続く。
焚き火の炎が、エルフたちの顔を妖しく照らし出した。
「お前が悪いんだよ。お前が私たちをこうしたんだ。責任は取ってもらうから……覚悟して」