※この作品はR-18です。

世界一狭いダンジョン 〜で、最悪高慢エルフたちへの復讐が始まった件〜   作:菜種K

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3.最悪のダンジョン

 そこは「世界で最も狭いダンジョン」と呼ばれていた。

 

 荘厳な石造りの入り口を見上げながら、僕たちはチチェーラの説明を聞いた。

 

「狭いと言っても、ダンジョンそのものは広大です。狭いのは、通路や部屋の一つひとつ。エルフが一人通れるか通れないかくらいの幅しかなく、大柄なトロルなどが棲みついている心配はありません。ただ、厄介な縛りがいくつかあります」

 

「どんな?」

 

 キンジェラの問いに、チチェーラは資料である古文書を繰っていった。

 

「まず複数人で入った時は、その中で最も背の高い者の背丈よりも短い距離に全員がいなければなりません。それよりも離れると、積み石が動いて通路や部屋を分断します」

「そこに閉じ込められたら、永久に出られないってこと?」

 

 アハーレが聞いた。

 

「いえ、時間が経てば分断は解消します。長くても一時間ですね。しかし、分断されている間、その空間内では魔法や魔力の類が一切使えません」

「そいつは厄介だね。トロルはいないって言うけど、他に棲みついてる魔物は?」

 

 問いながらキンジェラは剣の柄に手をかけた。

 

「魔蛇、魔蟲のような小魔。あと、オーク戦士(レン)の一部族が棲みついているようです」

「分断されている時に襲われなければ、問題ないか。ダンジョン・レベルは?」

「三級です。踏破する価値はありそうですね」

「よし、じゃあ入るか。いいね?」

 

 リーダーの言葉に、チチェーラもアハーレも頷いた。

 例によって、僕の返答は期待されてない。

 

「アハーレ、妖精官(ピクシェラー)を召喚して」

 

 キンジェラが指示し、魔法使いは杖を振るって呪文を詠唱した。

 一瞬後、小さな羽の生えた少女のような姿の妖精官(ピクシェラー)が空中に現れた。

 

「はいはーい! 何かご用でーすかー?」

「妖精官(ピクシェラー)、勇者キンジェラの一行はこれからダンジョン西の三十二を踏破する。記録してくれ」

「了解了解! 踏破成功のポイントは二百五十点です! 成功をお祈りしま〜す!」

 

 魔法を駆使するパーティは、ダンジョンを攻略することで王立魔法庁からポイントが付与される。

 その数値によってパーティはランク付けされ、王国から栄誉や特典が与えられるのだ。

 その後の任務の格にも違いが出てくる。

 

「ニン! 荷物を整理してダンジョン行に必要なものを出しておけ」

 

 僕は素直に勇者様の命令に従って、荷物をひっくり返し始めた。

 と、妖精官(ピクシェラー)が僕のそばに飛んできて、しげしげと顔を覗き込んだ。

 

「ん〜? 君は変わった人間君だね〜。どこから来たのかな〜?」

 

 どうも僕が転生者であることを勘付いているみたいだった。

 僕は、また面倒なことになるのを避けるため、答えを濁した。

 

「ずっと、遠くからさ。気が遠くなるほど遠くだよ」

 

 空飛ぶ小さな少女は笑った。

 

「心配しなくていいよ。君の身の上は何の問題もないから。それどころか、きっと君はこの世界ですごい力を持つだろうね。このダンジョンの中で、きっと素敵なことが起こるよ。がんばってね!」

 

 この世界に来て、一番素直な激励にポカンとしていると、妖精官(ピクシェラー)は消え去った。

 

 出発の準備が完了し、僕たち一行は体を寄せ合い、離れられないようにロープでまわりを囲んだ。

 要するに電車ごっこの体裁だ。

 一番背が高い、僕の背丈よりも離れられないようにすると、お互いの体は自ずと触れ合うことになる。

 アハーレがぼやいた。

 

「あーあ、こんな狭いところで人間と近くにいなきゃいけないなんて、最悪のダンジョンだわ〜」

 

 最悪なのはこっちの方だ。

 僕は言い返す言葉を飲み込んだ。

 

 勇者キンジェラの一行は、世界で最も狭い最悪のダンジョンに足を踏み入れた。

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