世界一狭いダンジョン 〜で、最悪高慢エルフたちへの復讐が始まった件〜 作:菜種K
「はあ……はあ……バカぁああぁ……」
エルフ=プレの魔法使いは喘ぎながら涙をこぼし、僕の背中に回した手を放してぐったりと岩に身を預けた。
「自業自得だろ」
僕は我ながら欺瞞に満ちてると思うセリフを吐き捨てながら、なんとかしゃがみ込んでアハーレの衣装を拾おうとした。
見ると、アハーレの体は彼女と僕の汗でドロドロだった。
エルフの秘所に恥毛は無い。
その奥からは、今しがた僕が放ったものが潮と混ざって滴り落ちていた。
熱と湿気にむせかえりながら、僕は立ち上がってアハーレに衣装を押し付けた。
「そら、身繕いしろよ。キンジェラたちに知られたくないだろ」
アハーレは力のない視線でチラと僕の顔を見ると、目を逸らして衣装を身につけ出した。
しばらくして、周りの岩が動き出した。
断絶していた空間が再びつながり、狭い通路にキンジェラとチチェーラの姿が現れた。
キンジェラが叫んだ。
「急いで集まれ! 岩が落ち着く前に集まるんだ!」
僕たちは再度距離を詰めて集合し、なんとか元の状態に戻ることができた。
魔蟲たちもどこかに消え失せている。
チチェーラがアハーレに声をかけた。
「あ、あなたたち同じ場所に閉じ込められてたの?」
「う、うん……」
チチェーラはアハーレにいつもの姦しさが無いのを気にしているようだった。
僕の方とチラと見ながら問い正す。
「何か……あったの?」
「別に。長く閉じ込められてちょっと疲れただけ」
それを聞いたキンジェラが指示を出した。
「チチェーラ。
尼僧は何があったか敏感に感じ取っているようだったが、キンジェラは全く気づいていないらしい。
再度、ダンジョン踏破を進めていくと、天井から水が滴り落ちてきた。
地下水にしては、妙に粘り気がある。
ほのかに輝く積み石といい、このダンジョンにはどこかそれ自体、生き物めいたところがあった。
僕は背後の魔法使いと尼僧が、何やら囁き声で話をしているのを感じた。
エルフ同士だけで通じる言葉を使ってるらしく、意味はわからない。
もし、僕がアハーレにしたことを知られたら──
「止まれ」
先頭のキンジェラが制した。
「先が坂になってる。傾斜路だ」
彼女の肩越しに見ると、確かに下へ向かう通路がカンテラに照らされていた。
斜路は滴る液体で濡れており、気をつけて進まないと足を取られそうだった。
しかも、結構傾斜がきつい。
「みんな手を繋げ。滑り落ちても手を離すな」
斜路はこれまで通ってきた通路より少し広くなっており、完全に円形のトンネルになっていた。
その内面を何かの配管のように太い管が一本、螺旋状に這いながら奥へと消えている。
一行は慎重に歩を進めながら斜路を下っていった。
キンジェラに遅れないよう気をつけながら、僕は妙なことに気づいた。
てっきり、トンネルの一部だと思っていた壁面の管が──
「なあ。この管、なんか動いてないか?」
「管が?」
キンジェラは浮かぶカンテラを操作して、壁の方へと近寄せた。
そこにあった管は、確かに動いていた。
脈動していると言った方が正しいかもしれない。
そして、カンテラの光に照らされた管の表面を覆っているのは──
鱗だった。
キンジェラは足を止めると、声を落として言った。
「まずいな……こいつは……」
勇者の首がぐるりとトンネルの内側を見渡す。
「……魔蛇だ」