※この作品はR-18です。

女神様に【真の】願いを叶えてもらいました。やったね!(ヤケクソ)   作:かりん2022

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過去願ったもの、未来に願うもの

 親友の家で食事をしていたら、薬を盛られている事に気づいた。

 何故? どうして?

 

 混乱する。

 

 毒じゃない。

 

 眠り薬だ。しかも僕に効かせるには少し弱い。

 

 僕が気づかないとでも思ったんだろうか。

 

 清照を見る。

 

 いつも通り食事をしている。

 

 いや。

 

 少し緊張している?

 

 僕の様子を気にしている。

 

 でも罪悪感はなさそうだ。

 

 何だ?

 

 誰かに脅されている? いや、清照はそんな簡単に脅されるようなタマじゃない。

 

 それとも、何らかの術を掛けられている? そんな、まさか……。

 

「どうしたの、柘榴」

「いや」

 

 清照が笑う。

 

 いつもの顔だ。

 

 分からない。

 

 突然の裏切りと、信じたい気持ちと。

 

 清照が理由もなく僕に薬を盛るとは思えない。

 

 でも、最近の清照は妙だった。ファミリーハウスの体制も変わったし、縛りを強要するようになったという。清照も何かを強要されてる側なのか。

 

 ひとまず、僕は眠くなったフリをすることにした。

 

「ごめん、ちょっと眠いかも」

 

「そう? 疲れてるんじゃない?」

 

「かも……」

 

 白々しい。

 

 お前が入れたんだろ。

 

 でも、もう少し様子を見る。

 

 僕は用意されていた布団に横になった。

 清照が毛布まで掛けてくれる。

 

「おやすみ、柘榴」

「……ん」

 

 目を閉じる。

 

 気配は消さない。

 

 清照も動かない。

 

 僕が眠るのを待っている。

 

 しばらくして。

 

「……柘榴?」

 

 返事をしない。

 

「寝た?」

 

 返事をしない。

 

 清照の顔が近づく。

 

 息まで確認している。

 

 なんなんだ。

 

 僕を殺すつもりなら、もう少しマシな薬を使うだろ。

 

 そもそも清照なら、僕を殺すためにこんな回りくどいことをする必要が――。

 

「今だよ、瑠璃!」

 

「しー! 草葉さん、静かに!」

 

 …………。

 

 瑠璃?

 

 何故?

 

 足音がする。

 

 何人かいる。

 

 敵意はない。

 

 というか、小さい。

 

 子供?

 

「本当に寝てます?」

「寝てる寝てる」

「神矢さん相手にその自信どこから来るんですか」

「神矢は私の用意するものなら無警戒に食べてくれるからね」

「それ本人に聞かれたら殺されません?」

「大丈夫だって」

 

 おい。

 聞いてるぞ。殺さないけど、今のところは。

 

「じゃあ神矢さん、ちょっと失礼しますねー」

 

 瑠璃の声が近づく。

 

 僕の腕を掴んだ。

 

 何をする。

 

 思わず反応しそうになるのを堪えた。

 

「重っ」

「そりゃ成人男性だからね」

「こっちに腕やりたいんですけど」

「こう?」

「そうそう!」

 

 僕の腕が勝手に動かされる。

 

 なんだこれは。

 

「琥珀、こっちおいでー!」

「はーい!」

「日長も!」

「はーい!」

 

 キャアキャアと楽しそうな声。

 

 布団が沈む。

 

 僕の隣に小さな気配。

 

 反対側にも。

 

「草葉さんも早く!」

 

「はいはい」

 

 清照まで横になった。

 

 …………。

 

 本当に何をしてるんだ?

 

「もうちょっと神矢さんに寄って!」

 

「こう?」

 

「もっと!」

 

「近くない?」

 

「近い方がいいんです!」

 

「わかったよ」

 

 清照の体温が近づく。

 

 子供たちがその間でキャアキャア笑っている。

 

「琥珀は神矢さんの隣!」

 

「はーい!」

 

「日長は草葉さんの隣ね!」

 

「うん!」

 

「よし!」

 

 何がよしなんだ。

 

「うわー……」

 

 瑠璃が妙に感動した声を出した。

 

「草葉さん」

 

「うん」

 

「家族です」

 

「家族だね」

 

 何が?

 

「やばい。すごい。めちゃくちゃいい。二人とも顔がいいから子供に挟まれてると破壊力がすごい」

 

「瑠璃、早く撮って」

 

「撮ります! 激写! 激写! いいよいいよー! かわいいよー!」

 

 フラッシュ。

 

 …………。

 

 写真?

 

 僕に薬を盛って?

 

 写真?

 

「もう一枚!」

 

 フラッシュ。

 

「琥珀、もうちょっと神矢さんにくっついて!」

 

「ぎゅー!」

 

 小さな体が僕にくっつく。

 

「うおおおおおお!」

 

「瑠璃、静かに!」

 

 瑠璃がこんなに興奮してるなんて初めて。

 一体何をしているのだろう。

 

「草葉さんも日長ぎゅーして!」

 

「こう?」

 

「最高!」

 

 フラッシュ。

 

 キャキャキャキャキャ。

 

 子供達の笑い声。

 

 …………。

 

 僕は今、とんでもなく警戒していた自分が馬鹿らしくなってきた。

 

 裏切り。

 

 暗殺。

 

 脅迫。

 

 術。

 

 敵襲。

 

 色々考えた。

 

 全部違った。

 

 こいつら。

 家族写真撮りたくて僕に薬盛ったの?

 

 というか、誰だよ琥珀と日長。

 

「もういいかな?」

 

「あと二十枚」

 

「撮りすぎだよ」

 

「選別するんです!」

 

「なるほど」

 

 なるほどじゃない。

 

「よし! じゃあ神矢さんねんねするから、撤収しようね!」

 

「はーい」

 

「おやすみ、柘榴」

 

 さーっと去っていった。

 

 …………。

 

 静かになった。

 

 僕は目を開けた。

 

 天井を見る。

 

「…………何がしたかったんだ、あいつら」

 

 別に恥ずかしい写真を撮られたわけではない。

 

 普通に寝っ転がっているところだけだ。

 

 清照もいた。

 

 子供もいた。

 

 それだけ。

 

 それだけのために。

 

 僕に。

 

 薬を。

 

「…………」

 

 瑠璃はやっぱりよく分からない。

 

 今日なんて全然様子が違った。 

 

 清照も最近ちょっとおかしい。

 

 しばらく待ってみる。

 

 どうせ起きたことはバレていない。

 

 何か続きがあるかもしれない。

 

 気配を探る。

 

 清照と瑠璃は離れた。

 

 子供たちも――。

 

 いや。

 

 一つ戻ってくる。

 

 もう一つも。

 

 小さな足音。

 

 ぱたぱた。

 

「神矢おとーさん?」

 

 …………。

 

 何?

 

 めちゃくちゃかわいい声がした。

 

 僕は思わず目を開けた。

 

 小さい頃の自分がいた。

 

「!??」

 

 僕は跳ね起きそうになった。

 

 寸前で止める。

 

 何?

 

 僕?

 

 いや、子供。

 

 四歳、五歳くらい?

 

 髪も。

 

 目も。

 

 顔立ちも。

 

 幼い頃の僕に、びっくりするほど似ている。

 

 しかも肩には小さなドラゴン。

 

 式神?

 

 いや、何か違う。

 

「神矢おとーさん、起きてるよね?」

 

 僕の顔を覗き込んでくる。

 

 近い。

 

 かわいい。

 

「…………」

 

「あっ」

 

 目が合った。

 

「あっ、やっぱり寝たふりだった」

 

 バレた。

 

「今日はありがと」

 

 そう言って。

 

 ポスッ。

 

 胸に抱きついてくる。

 

 …………。

 

 何。

 

 この。

 

 可愛い生き物。

 

「君……」

 

「琥珀!」

 

「琥珀?」

 

「うん!」

 

 琥珀。

 

 さっき瑠璃が呼んでいた子か。

 

「僕のこと知ってるの?」

 

「知ってるよ。神矢柘榴! 琥珀のおとーさん!」

 

「…………」

 

 待って。

 

 お父さん?

 

 僕が?

 

 何故?

 

 子供を作った覚えはない。

 

 というか。

 

 誰と?

 

「ダメだよ、琥珀。ねんねの邪魔いけないんだー」

 

 もう一人が入ってきた。

 

 僕はそちらを見る。

 

「…………」

 

 清照。

 

 小さい清照がいる。

 

 何これ。

 

 髪も顔も清照にそっくり。

 

 こっちの頭の上にもプチドラゴン。

 

 琥珀の肩からドラゴンが飛んで、清照似の子供の頭へ。

 二匹のドラゴンは顔を合わせると、当たり前のように尻尾を絡ませた。

 

 仲がいいらしい。

 

 子供たちも当然のように隣り合って手を絡ませる。

 

 僕と。

 

 清照?

 

「君は?」

 

「日長」

 

「日長君」

 

「うん」

 

「清照の……?」

 

「草葉おとーさんの子!」

 

 …………。

 

 なるほど。

 

 いや。

 

 なるほど?

 

 僕そっくりの琥珀。

 

 清照そっくりの日長。

 

 二人は一緒に暮らしている。

 

 同じくらいの年齢。

 

 仲がいい。

 

 お揃いのドラゴン。

 

「君たち、兄弟?」

 

「きょうだい!」

 

「仲良し!」

 

 二人揃って答える。

 

 兄弟。

 

「…………」

 

 僕と親友のよう。

 

 いや待て。

 

 なんだこれは。

 

「琥珀のお父さんは僕?」

 

「うん!」

 

「日長君のお父さんは清照?」

 

「うん!」

 

「…………君達は兄弟?」

 

「うん!」

 

 二人同時に答えた。つまり両親は僕たち。そういうこと?

 つまり、えっ どういうこと。

 僕たち男同士だし、そもそも僕、清照とそういうことしていない。

 式神? そんなバカな。いくらなんでも式神と人間の区別くらいつくぞ。

 

 つまり……

 

 どういうこと?

 

 いや。

 

 ファミリーハウスには色々な事情の子がいる。

 

 清照が引き取った子供も多い。

 

 その延長だ。

 

 じゃあ本当の母親は?

 

 琥珀の母親。

 

 日長の母親。

 

 兄弟というなら、同じ母親?

 

 そういう可能性もある。そうだよな。だって僕たちは男同士だ。

 つまり僕と清照が同じ女性との間に、それぞれ子供を作った?

 

 …………。

 

 いや。

 

 ない。

 

 僕には心当たりがない。

 

 そもそも琥珀くらいの年齢の子供が生まれるような時期に――。

 

「神矢おとーさん」

 

「ん?」

 

「ぎゅーして」

 

「…………」

 

 思考が吹き飛んだ。

 

「いいよ」

 

「わーい!」

 

 ぎゅー。

 

 小さい。

 

 柔らかい。

 

 あったかい。

 

 なんだこれ。

 

 めちゃくちゃ可愛い。

 

「お父さんいい匂い」

 

「そう?」

 

「大好き!」

 

 胸を射抜かれた。

 

 死ぬ。

 

 何これ。

 

 僕の子?

 

 作った覚えないけど。

 

 僕の子なの?

 

 いや、こんなに僕に似てるんだから僕の子だろ。

 

 僕の子でいい。

 

「琥珀だけずるい」

 

 日長が寄ってくる。

 

「日長君も?」

 

「ぎゅー」

 

「おいで」

 

 反対の腕で抱き寄せる。

 

 こっちは清照に似ている。

 

 すごく似ている。

 

 小さい頃の清照を思い出す。

 

「…………かわいい」

 

「えへへ」

 

「神矢おとーさん、日長も好き?」

 

「好きだよ」

 

「やった!」

 

 二人とも笑う。

 

 かわいい。

 

 なんだこの空間。

 

 天国?

 

「さっき、なんで眠り薬入れたの?」

 

「ごめんね」

 

 琥珀がしゅんとする。

 

 あ。

 

 そんな顔しないで。

 

 怒ってない。

 

 全然怒ってない。

 

「神矢おとーさんと草葉おとーさんと日長と四人で家族写真撮りたかったの」

 

「家族写真」

 

「うん」

 

「瑠璃ママが、絶対かわいいって!」

 

 …………瑠璃?

 

「瑠璃はママなんだ?」

「そうなの。瑠璃はままですよーって言いながらミルクくれるの」

「そう」

 

 やっぱり瑠璃はわからない。さっきの撮影の時といい、別人になってないか?

 

「草葉おとーさんもやりたいって!」

 

 …………清照。

 

 お前まで何やってるんだ。

 

「でも神矢おとーさんにお願いするのは申し訳ないって」

 

「だから薬?」

 

「うん……」

 

「薬盛る方が申し訳ないって思って欲しかったな……」

 

「草葉おとーさんと瑠璃ママめっする?」

 

「そうだね。勝手に薬を盛るのは良くないね」

 

 二人はへにょんとする。

 子供は悪くない。

 悪いのは大人二人だ。

 

「ごめんなさいしたら許してくれる?」

 

「ちゃんとごめんなさいしたらね」

 

「ほんと?」

 

「ほんと」

 

「よかった!」

 

 また抱きついてくる。

 

 あまりにも可愛すぎた。

 

 許す。

 

 全部許す。

 

「神矢おとーさん」

 

「ん?」

 

「また遊びにきてね」

 

「…………」

 

「琥珀、おとーさん好き」

 

 決めた。

 

 絶対また来る。

 

 というか。

 

 何故僕が「遊びに来る側」なんだ?

 

 僕の子なんだろ?

 

 僕そっくりだし。

 

 僕をお父さんと呼んでいる。

 

 なのに清照が囲っている。

 

 僕には存在すら教えずに。

 

 しかも日長までいる。

 

 清照そっくりの。

 

 ものすごく可愛い子供。

 

「…………」

 

 清照。

 

 お前。

 

 こんな宝物を二人も独り占めしてたの?

 

 許せない。

 

 僕は琥珀をぎゅっと抱き締めた。

 

 日長もまとめて抱き締める。

 

 二人がキャアキャア笑う。

 

 かわいい。

 

 欲しい。

 

 僕の子供を作った覚えはない。

 

 だが、どうやったかはさておいて、僕と清照の愛の結晶が二人、腕の中にいる。

 

 僕は心に決めた。

 

 宝を独り占めする極悪非道の清照から、僕の宝物を必ずや取り返してみせる。

 

 

 親権は僕のものだ。

 

 子供を作った覚えはないが、いるのだから奪うのだ!




マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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https://odaibako.net/u/karin2022v
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