※この作品はR-18です。

女神様に【真の】願いを叶えてもらいました。やったね!(ヤケクソ)   作:かりん2022

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願い叶う環境

 大変残念なお知らせがあります。

 

 神矢さんに引き取られた琥珀と日長が滅茶苦茶幸せそうだし、ハイパーしっかりしてきました……。

 

 なんだか自信満々で賢そうで大人びてきた。

 満たされてますって全身で言ってる。

 

 愛情と教育って偉大だって思い知らされる。

 

 なんだよ、私達だって可愛がってきたじゃん。

 お友達いっぱいいるじゃん。

 プチドラゴンだっているじゃん。

 

 そんなに実は名家の富豪で溺愛してくれるウルトライケメンだった父親がいいかよ……。

 

 ごめん、私もそっち選ぶわ。

 誰だってそうする。

 私だってそうする。

 

 それはそれとして捨てられるのは嫌なんだ……。

 

「草葉様、私は草葉様の方が好きです!」

「草葉様に救われ、竹井様に生涯のともをいただいた御恩は忘れません」

 

 子供達が一生懸命慰めてくれる。

 

 優しい……。

 でもその慰め、今の私にもください。

 

 ケツ差し出さないと実子に面会できないってマ……?

 

 嫌じゃないのがほんと困る。

 

 草葉さんなんて、子供と会えないのが耐えられないからなんて言って週一で行ってる。

 

 一ヶ月出張とか平気でしてただろ。

 

 おかしいだろ。

 絶対子供だけが理由じゃないだろ。

 

 本人に言ったら「日長はまだ小さいからね」とか言ってた。

 

 いや、君が一ヶ月留守にしてた時も日長は小さかったよね?

 

 認めろ。

 お前も神矢さんの家に行くのちょっと楽しみになってるだろ。

 

 ただし、神矢さん的にはイマジナリー神矢さんに萌え萌えする行いはNGらしい。

 

 そんな事するなら真正面から告白してこいという男なのである。

 

 隠キャオタクと対極の存在……っ。

 

 推しを眺めるという概念が通じない。

 好きなら好きと言え。

 欲しいなら取りに来い。

 本人が目の前にいるのに、どうして想像の中の自分を愛でる必要があるのか。

 

 そういう男なのである。

 

 ま、眩しい……!

 

 いや、実在の身近な人物に萌えて薄い本書いたりするのは隠キャ界隈でNGじゃないかって言われたら、うん。

 

 余裕でアウトですが何か?

 

 反省はしている。

 後悔は……ちょっとしている。

 

 とにかく、ファミリーハウスは神矢家の乗っ取りの憂き目に遭っていた。

 

 まず金。

 

 子供達の教育費を出すと言い出した。

 

 次に教育。

 

 読み書き計算だけじゃなく、希望する子供にはちゃんとした学校に通えるよう手配するらしい。

 退魔師になりたい子供には退魔師としての教育を。

 なりたくない子には普通に生きるための教育を。

 

 さらに仕事。

 

 大きくなった子供達の就職先まで世話するつもりらしい。

 

 健康診断まで始まった。

 

 やめろ!

 

 至れり尽くせりにするな!

 

 子供達が喜ぶだろうが!!

 

「神矢様っていい人ですね!」

「違う! 侵略者だよ!」

「でも学校のお金を出してくれるって」

「侵略者はまず現地民の支持を得るんだよ!」

「そうなんですか?」

「多分!」

 

 私は必死に抵抗した。

 

 しかし敵は強大だった。

 

 名家の庇護を得られるのは、ファミリーハウスにとって悪いことではない。

 

 むしろ滅茶苦茶いい。

 

 今まで一番怖かったのは、子供を狙われることだった。

 

 霊力を持った子供。

 珍しい術式を持った子供。

 普通の家では育てられなかった子供。

 

 そんな子達を草葉さんが拾い上げて守ってきた。

 

 でも草葉さん一人では限界がある。

 

 だから私がマイエリアを使った。

 縛りも使った。

 ペットモンスターも配った。

 

 そこに神矢家まで加わった。

 

 手を出したら草葉さんが来ます。

 私も来ます。

 そして神矢家も来ます。

 

 誰が手を出すんだよ。

 

 私でも嫌だよ。

 

 鉄壁になってしまった。

 

 ぐぬぬ……。

 

「瑠璃、いい加減諦めたらどうだい?」

「草葉さん! いつから敵に!」

「敵になったつもりはないよ。子供達にとって良い話は受け入れたいだけだ」

「正論!」

「それに神矢家が後ろにいるなら、上も今までみたいに簡単には手を出せない」

「ぐぬぬぬぬ……!」

 

 正しい。

 正しすぎる。

 

 正論で殴るな。

 

 しかもその代償はがっつり取られるわけで。

 

 人質もいるわけで。

 

 琥珀と日長という超絶可愛い人質が。

 

 会いたい。

 

 抱っこしたい。

 

 ママって呼ばれたい。

 

 ということで私は神矢家に来ていた。

 

 敗北ではない。

 

 面会である。

 

 今日は泊まりである。

 

 敗北ではない。

 

 風呂を借りて、用意された部屋で一人ぐぬぬと考えていると、戸が開いた。

 

「待たせたな」

「草葉さんも来てたんだ」

 

 神矢さんと草葉さんが部屋へと入ってくる。

 

 二人とも風呂上がりだ。

 

 私も風呂上がり。

 

 待って。

 

 なんで三人とも風呂上がりなんです?

 

 嫌な予感がする。

 

 いや。

 

 いい予感がする。

 

「今日は二人にお嫁さんになってもらうね」

 

 くっ。

 

 イケメンサンド……だと!

 

 ありがとうございます!

 

 違う!

 

 抵抗しろ私!

 

「瑠璃、顔が喜んでるよ」

「草葉さんだってちょっと嬉しそうじゃないですか!」

「私は子供に会いに来ただけだから」

「週一で?」

「週一で」

「清照は最近、僕の家の風呂にも慣れたよな」

「余計なことを言わなくていいよ、柘榴」

「ほらー!」

「君も人のこと言えないだろう?」

「私はまだ二回目ですー!」

 

 神矢さんが笑った。

 

「じゃあ三回目も来るな」

「…………」

「黙るんだ?」

「琥珀と日長が来てって言ったら来ます」

「僕が言ったら?」

「検討します」

「清照は?」

「子供に会いに来るよ」

「僕が聞いてるんだけど」

「……検討するよ」

 

 神矢さんがますます笑った。

 

 くそっ。

 

 なんか負けてる気がする。

 

 ◇

 

 翌朝。

 

 朝食は琥珀と日長と一緒に食べられた。

 

「瑠璃ママ、おはよー!」

「おはようございます! ママですよー!」

 

 捨てられてなかった!

 

 私は琥珀を抱きしめた。

 ついでに日長も抱きしめる。

 

「ママ、くるしい」

「ごめんなさい!」

 

 いそいそと席につく。

 

 神矢さんの家の朝食は美味しかった。

 

 それはいい。

 

 問題はそこじゃない。

 

 琥珀が箸を取った。

 

 日長も箸を取った。

 

 …………。

 

 気づいてしまった。

 

 食べ方がすごく綺麗になっている……。

 

 箸をちゃんと持っている。

 姿勢がいい。

 口に物を入れたまま喋らない。

 食べられる分だけ取る。

 日長がこぼしたら琥珀がさっと布巾を取った。

 

 なんだこの育ちのいい幼児。

 

 うちにいた時もっと野生児だったよね?

 

「ママ、お箸こうだよ」

 

 琥珀が私の手元を見る。

 

「…………」

「こう」

 

 ちっちゃい手で箸の持ち方を教えられた。

 

「知ってますぅー! ママだって出来ますぅー!」

「瑠璃、肘」

「はい」

 

 神矢さんに注意された。

 

 私は肘を下ろした。

 

「ママ、できたね!」

「…………できました」

 

 琥珀が嬉しそうに笑う。

 

 日長も褒めてくれた。

 

「瑠璃ママ、えらい」

「ありがとう……」

 

 私はまた一つ敗北感を積んだ。

 

「神矢おとーさんに教えてもらったの!」

 

 琥珀が自慢げに言う。

 

「日長も!」

「二人とも毎日ちゃんと出来てるぞ」

「「できてるー!」」

 

 神矢さんが二人の頭を撫でる。

 

 琥珀も日長も嬉しそうに笑った。

 

 満たされてますって全身で言ってる。

 

 くっそぉ……。

 

 幸せそうじゃねーか……。

 

 文句言えねーじゃん……。

 

「瑠璃ママ、今日あそぼ」

「遊ぶ!!!」

 

 即答した。

 

「草葉おとーさんも!」

「もちろん」

 

「神矢おとーさんも!」

「いいぞ」

 

 琥珀と日長が笑った。

 

 私は草葉さんを見る。

 

 草葉さんも私を見る。

 

 そして神矢さんを見る。

 

 神矢さんは当然のような顔をして朝食を食べていた。

 

 …………。

 

 ファミリーハウスを乗っ取られている。

 

 子供も取られた。

 

 草葉さんは毎週通っている。

 

 私まで泊まっている。

 

 なのに子供達は幸せそうで、ファミリーハウスの環境まで良くなっている。

 

 もしかして。

 

 これ。

 

 陥落してないの、私だけでは?

 

 私は考えるのをやめた。

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