ドラクエ4の世界に異世界転生したら進化の秘法で巨大金玉男にされたので憧れのマーニャ に連続種付けする 作:古のもの
大灯台の前に立ったとき、一行の装備はこうだった。
勇者ソロは鉄の鎧に鉄の盾、鋼の剣を携え、静かに息を整えている。ミネアは鉄の鎧と鉄の盾、金の髪飾りを身につけ、ホーリーランスを握っていた。ホフマンは鉄の槍と鱗の盾、青銅の鎧に皮の帽子。マーニャは相変わらず銀の胸当てに橙色の腰布——踊り子の服のまま、毒蛾のナイフを腰に下げている。健太は鎖帷子を着込み、鎖鎌を手にしていた。
薄暗い入口から、湿った空気と低い唸り声が漏れてくる。灯台内部は螺旋の階段が続き、壁には古い松明の跡が残っていた。
「行きましょう」
ソロが先頭に立ち、階段を上り始める。すぐに最初の戦闘が起きた。
コドラが複数、闇から飛びかかってくる。健太は素早くピオリムを唱えた。身体が軽くなり、動きが加速する感覚が広がる。サポート系の呪文に才能があったらしく、最近になってバイキルトも使えるようになっていた。
「バイキルト!」
ソロの鋼の剣が鋭く輝き、コドラの一体を両断する。ホフマンが鉄の槍で突き、マーニャがベギラマを放つ。ミネアのベホイミが味方の傷を癒やしていく。連携はスムーズだった。
さらに上る。
人喰いサーベルが刃を光らせて襲いかかってきた。健太が再びピオリムをかけ、全員の速度を上げる。マーニャのイオが爆発し、ホフマンが槍で止めを刺す。テベロが集団で現れたときは、バイキルトでソロとホフマンの攻撃力を底上げし、一気に押し切った。
(……俺がサポートに回ることで、確実に楽になっている。だが、この調子で種火まで行けるのか)
階段を何度も折り返し、中層に差し掛かった頃、一行は小さな祭壇のような空間に出た。中央に古い宝箱が置かれている。公式の記憶では、ここに聖なる種火があるはずだった。
健太が箱に手をかけ、蓋を開けた。
中は、空だった。
開けられた痕跡が残っている。誰かが既に回収していったようだ。
「……ない」
健太の声が、灯台の冷たい空気に溶けた。マーニャが覗き込み、ミネアが静かに息を呑む。ソロの表情が硬くなった。
(公式では、ここにあったはずだ。誰が……先に取った?)
上から、低い咆哮と金属のぶつかる音が聞こえてきた。最上階で、何かが起きている。
健太は鎖鎌を握り直し、小さく息を吐いた。
「……とりあえず、上へ行きましょう。様子を見ないと」
一行は、さらに螺旋の階段を上り続けた。
聖なる種火は、既になかった。
最上階の聖火台に到達した瞬間、激しい戦闘の轟音が耳を打った。
広い石造りの空間。中央の聖火台はまだ暗い。その周囲で、三人の先客がモンスターと激しく打ち合っていた。
相手は灯台タイガーと、炎を纏った戦士が二体。灯台タイガーは巨大な体躯で咆哮し、炎の戦士たちは燃え盛る剣を振り回している。
先客の構成はこうだった。
一人は全身を重い鎧と盾、兜で完全に固めた戦士。もう一人は長いローブを纏った老魔法使い。そして中央で鋭く指示を飛ばしながら戦っているのは、体躯の大きな女性だ。ドラゴンメイルを身に纏い、長い槍を構えている。筋肉の隆起した腕と、安定した下半身。明らかに実戦で鍛え上げられた体つきだった。
「ヒャダルコ!!」
老魔法使いが杖を振り上げる。極寒の氷塊が空間を切り裂き、炎の戦士の一体に直撃した。炎が消し飛んで悲鳴が上がり、もう一体も凍てついた空気に動きを鈍らせる。
「今だ!」
大柄な女性が低く喝を入れ、手にしていた槍を勢いよく投擲した。槍は風を切り、灯台タイガーの肩口に深く突き刺さる。獣が激しくのけ反り、バランスを崩した。
その隙を逃さず、鎧の戦士が咆哮とともに踏み込む。両手で握った大剣を振りかぶり、灯台タイガーの頭部を真上から叩き割った。鈍い音と共に、タイガーの巨体が石床に崩れ落ちる。炎の戦士も老魔法使いの追加の氷撃で完全に沈黙した。
健太たちが加勢する間もなく、戦闘は終わっていた。
大柄な女性が息を整えながら、懐から小さな炎——聖なる種火を取り出す。それを聖火台に投げ入れた瞬間、清らかな光が灯台全体を駆け上がった。邪悪な炎が消え、本来の優しい光が周囲を照らす。窓の外では、海を覆っていた不穏な気配が薄れていくのがわかった。
灯台は、元の姿を取り戻した。
健太は一歩前に出て、声をかけた。
「あの……」
老魔法使いと鎧の戦士の顔立ち、雰囲気を見た瞬間、健太の脳裏に公式の記憶が鮮明に蘇った。
(……ブライさんと、ライアンさんだ。王宮の戦士ライアンと、サントハイムの魔法使いブライ。なんでここにいる? この時点で顔を合わせるはずがない)
思わず口が動いた。
「ブライさんと、ライアンさんですよね? よく存じ上げています」
二人は同時にこちらを見た。ブライが杖を杖に付き、怪訝な声を出す。
「はて? 会ったことがあるかのう? それとも、ワシらは有名人か?」
健太はとっさに調子を合わせた。
「ええ、有名人ですとも。アリーナ姫にも会いましたよ、ブライさん」
その言葉と同時に、ブライの表情が一変した。顔を歪め、杖を強く床に突き立てる。
「ふん! その話はするでない! あんなもの、もう姫でも何でもない!」
怒気を孕んだ声が、聖火台の空間に響いた。健太は苦笑いするしかなかった。一応、確認しておこうと思い、クリフトについても聞いてみた。
「……クリフトさんは、どうされましたか?」
ブライの目が一瞬、潤んだ。老いた声が、力なく続いた。
「クリフトは死んだよ。自殺だった。……愛する姫を、あんな形で奪われ、見せつけられては、当然じゃて」
涙をこらえるように、ブライは顔を背けた。
健太の背筋に、冷たいものが走った。
(……ヤバい。クリフトが自殺? アリーナがあんな形で……九条のやつが、ここまで影響を広げているのか)
そして、健太の視線は自然と、中央に立つ大柄な女性へと移った。
ドラゴンメイルに包まれた逞しい体躯。槍を軽く持った手つき。顔立ちを見つめた瞬間、元の世界の記憶が鮮明に蘇る。
(この女性は……元の世界で、オリンピック槍投げ金メダリストの、沢口はるな選手だ)