※この作品はR-18です。

ドラクエ4の世界に異世界転生したら進化の秘法で巨大金玉男にされたので憧れのマーニャ に連続種付けする   作:古のもの

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新章開始って感じですが、構想もまだ、ちゃんと出来ていないので、途切れる事があると思いますがご容赦ください


進化の秘法

キングレオ城の最下層。

石造りの壁は湿気を帯び、ランプの灯りが揺れるたびに長い影を伸ばした。研究室と呼ばれるその部屋は、かつては単なる物置だったらしい。棚には古い壺や金属の器具が並び、机の上には羊皮紙とインク壺、そして幾つもの小さな瓶が無造作に置かれている。

栗林聡美は、その机の前に座っていた。

五十歳。黒髪をきつくまとめ、簡素なメイド服を着ている。この城に仕えて七年。誰も、彼女がただの使用人ではないことを知らなかった。

——日本にいた頃の自分を、彼女は時折思い出す。

大学で遺伝子工学を専攻し、博士号を取得した。研究所に就職し、遺伝子編集技術の応用研究に携わっていた。CRISPR-Cas9が実用化されて間もない頃で、倫理的な議論が激しかった時代だ。同僚たちは「治療」や「品種改良」の話ばかりしていたが、聡美の興味は少し違った。

『ドラゴンクエストIV』。

子供の頃に嵌ったゲームだった。特に、進化の秘法。生物を人為的に、本来の道筋から外れた形へと進化させる技術。エスタークが生み出し、バルザックやキングレオ、そしてピサロが使ったもの。あの設定が、どこか現実の遺伝子操作と重なって見えた。

「もし本当に、生物の設計図を自由に書き換えられるなら——」

研究室の深夜、彼女はよくそう考えていた。論文を書き、実験を繰り返し、倫理委員会の報告書を提出する日常の中で。結婚はしなかった。子供もいなかった。研究が、人生のほとんどを占めていた。

そして、ある雨の夜。

帰宅途中の路地で、眩しい光に包まれた。次に気づいたとき、彼女は見知らぬ森の中に立っていた。服はそのまま。持ち物もそのまま。だが、周りを見渡せば、空を飛ぶ鳥の形が違い、木々の葉の色がどこか非現実的だった。

転生。

すぐに理解した。ドラクエIVの世界だ。場所はキングレオ城の近く。彼女は迷わず、城下町へと向かった。

最初はただの難民として潜り込んだ。メイドの欠員が出たタイミングで応募し、採用された。目立たず、従順に、しかし確実に仕事をこなした。料理も掃除も、前世で培った丁寧さが役に立った。数年かけて、上層部の信頼を得た。

「この者に、研究室の整理を任せてみてはどうか」

大臣の一人がそう言ったとき、聡美は表情を変えなかった。だが内心では、ようやく、と拳を握った。

進化の秘法。

城に残されていた資料は、断片的だった。エドガンが発見し、バルザックが奪ったとされる術式。魔力を介して生物の「設計図」——この世界ではそう呼ばれるもの——を書き換える技術。細胞の分裂速度を上げ、骨格を再構築し、筋力と耐久を強化する。痛みを抑制し、再生能力を高める。

聡美の目には、それが遺伝子操作そのものに見えた。

「黄金の腕輪が完成の鍵」と文献にはある。闇の力を増幅させる品、と。だが、具体的な作用機序は記されていない。聡美は思う。腕輪がなくても、自分の知識があれば「ある程度」まではいける、と。

実際、彼女は王子の進化に深く関わった。

あの成人もしていない王子を、獅子の怪物へと変える過程を。細胞一つひとつを書き換え、筋肉の密度を上げ、爪と牙を伸長させ、咆哮と共に理性を削ぎ落としていく。王子は痛みに耐え、何度も気を失い、それでも聡美の指示に従った。完成したキングレオは、確かに強大だった。

……なのに。

「……死んだ、だと?」

報告を受けたのは、朝のことだった。

玉座の間で、キングレオが泡を吹いて倒れていたという。変身もしないまま。急激な呼吸不全。検死を担当した侍医は「呼吸器系の異常」とだけ記した。

聡美はすぐに玉座の間へ向かった。

残された壺があった。大臣に「良い香りのするお香」として渡されたものだという。中には黒い塊が残っている。彼女はそっと近づき、匂いを嗅いだ。指で触れた。

——練炭。

一酸化炭素中毒。

日本にいた頃、自殺や事故の事例で何度も見てきた症状そのものだ。密閉された空間で不完全燃焼を起こし、血中のヘモグロビンを一酸化炭素が奪う。魔族の体であろうと、人間に近い呼吸器系を持っていれば、同じように死ぬ。

聡美は壺を見つめたまま、静かに息を吐いた。

粉炭と糊で形を整え、アロマオイルで匂いを誤魔化す。この世界の人間が思いつく方法とは思えない。あまりに近代的で、あまりに合理的だった。

転生者。

自分と同じ、向こうの世界から来た誰かかもしれないという思いがよぎった。

聡美は研究室に戻ると、羊皮紙を巻き直した。進化の秘法の研究はまだ途中だ。黄金の腕輪がなくても、さらに精度を上げられるはずだった。強化兵の試作も、いくつか成功していた。だが、今は別のことが頭を支配している。

キングレオを殺した転生者は、何者なのか。

窓の外で、城の鐘が低く鳴った。朝の光が、石の床に細い線を落としている。

聡美は静かに目を細め、インク壺に手を伸ばした。

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