ドラクエ4の世界に異世界転生したら進化の秘法で巨大金玉男にされたので憧れのマーニャ に連続種付けする 作:古のもの
キングレオが討たれる少し前、バルザックがやって来た。
錬金術師エドガンの弟子。進化の秘法の成果をエドガンから奪い殺した男。マーニャ 、ミネアの仇。聡美は彼を初めて見たとき、どこか薄ら寒いものを感じた。バルザックは既に一度、オックスベアをベースとした進化の処置を受けている。それには自分は関与していない。今回、二度目の進化を望んでいる。
「オニコンボウをベースにしろ」
命じられたのは、それだった。
オニコンボウ。棍棒を携えた鬼のような中級魔物。筋力と耐久に優れ、単純な暴力性能が高い。人間の骨格を残したまま、あの魔物の特性を上書きする。キングレオのとき以上に、緻密な調整が必要だった。
聡美は地下の研究室に籠もった。
城には、彼女以外にも数名の研究者がいた。いずれもこの世界の人間で、術式の理論を断片的に理解している程度の者たちだ。規模としては小さい。本格的な研究所というより、城の地下に作られた実験場に近い。被験者は主に囚人や、戦いで捕らえた兵士。成功例は少なく、失敗すれば即座に処分される。誰も「モラル」など口にしなかった。ここでは、成果だけが評価される。
聡美は羊皮紙に図を描き、細胞の再構築プロセスを組み立てていった。
まず、骨格密度の向上。オニコンボウの持つ剛力が、人間の骨では耐えきれない。カルシウムの沈着を加速させ、同時に弾力性を残すための調整。次に筋肉。速筋と遅筋のバランスを崩し、瞬発力と持続力を両立させる。皮膚は厚く、再生速度を上げる。痛みの伝達経路を一部遮断し、戦闘中に理性を失いにくくする。
魔力を介した「術式」は、彼女の知る遺伝子編集と驚くほど似ていた。設計図を書き換え、発現を強制する。違うのは、この世界ではそれが「魔力」というエネルギーで駆動されている点だけだ。
バルザックは何度も死にかけた。
発熱し、嘔吐し、骨が軋む音を立てながら体を震わせた。聡美は淡々と記録を取り、必要があれば鎮静の術式を施した。倫理的な呵責がなかったわけではない。自分は明らかに、魔物側に加担している。だが、ここには「それを止めるべきだ」と声を上げる人間はいなかった。探究心が、すべてに優先された。
——原作では、この男は勇者一行に討たれる。
聡美は知っていた。サントハイムの城で、剣と魔法で倒される運命にあることを。だが、目の前で完成しつつある生物を見ていると、正直に思った。
近代兵器も持たない人間が、こんなものを剣と魔法だけで殺せるものか、と。
進化は完了した。
バルザックの体は、オニコンボウを基調とした異形へと変わった。筋骨隆々とし、肌は硬質化し、瞳は濁った金色を帯びている。それでも、時間を置けばある程度まで人間の姿に戻れる。進化の秘法には、そうした可逆性も残されていた。完全に理性を失わせないための、設計上の余裕だったのかもしれない。
「サントハイムの城を任せると言われた」
完成から数日後、人間の体に一度戻したバルザックはそう言い残して城を去った。
聡美は研究室に残り、記録を整理した。
キングレオ、バルザック。二人の進化を手がけたことで、彼女の術式理解はさらに深まっていた。黄金の腕輪がなくても、ここまでできる。ならば、さらに先へ行けるはずだ。
強化兵の試作を、本格的に始める頃だった。