※この作品はR-18です。

ドラクエ4の世界に異世界転生したら進化の秘法で巨大金玉男にされたので憧れのマーニャ に連続種付けする   作:古のもの

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新たな王

キングレオが死んでから、城はしばらく混乱した。

王位の継承問題がすぐに持ち上がった。直系の後継者がいなかったため、遠縁の貴族から適当な人物が据えられた。若い、まだ二十歳にも満たない男だ。名目上は新しい王だが、実権など最初から持っていない。大臣たちがすべてを取り仕切り、城の運営は以前とほとんど変わらなかった。

聡美にとって、それは好都合だった。

新しい王は「進化の秘法」という言葉すらまともに理解していない。研究の継続を許可する書類に、ただ印を押しただけだ。地下の研究室は、以前と変わらず彼女の領域であり続けた。むしろ、キングレオという目立つ存在がいなくなったことで、監視の目は緩んだくらいである。

強化兵の試作は、着実に進んでいた。

囚人を被験者にし、術式を重ねる。骨格を強化し、筋肉を再構築し、痛みの感覚を鈍らせる。成功例が増えるたびに、聡美は記録を詳細に残した。黄金の腕輪がなくても、ここまで精度を上げられる。彼女の自信は、日を追うごとに深まっていった。

そんなある日。

サントハイムから急報が届いた。

「バルザックが、討たれた」

報告を聞いたとき、聡美は手に持っていた羊皮紙を取り落としそうになった。

あのバルザックを、どうやって。

オニコンボウをベースに、あれほど丁寧に調整した体だ。筋力、耐久、再生能力。普通の剣や魔法で倒せる相手ではない。聡美は研究室の椅子に深く座り込み、静かに息を吐いた。

「……勇者、か」

原作通りなら、そうなる。だが、実際に目の前で完成させた生物を知っている身としては、素直に納得できなかった。近代兵器も持たない人間が、剣と魔法だけで、あの体を仕留めたのか。

報告の詳細は少なかった。食事とワインを食した後、急にもがき苦しんでいたところに人間がきて討ち取ったとの事。何か細工でもしたのだろうか?聡美は目を細めた。

 

聡美は机の引き出しから、別の羊皮紙を取り出した。進化の秘法に関する、さらに古い記録だった。

原作では「乙女の魂が必要」とぼかされていた部分がある。文献にも、曖昧な表現でしか残っていない。だが、実際に術式を解析していくうちに、聡美は理解した。

——子宮だ。

若い女性の子宮。そこに宿る、特定の生命力と魔力の流れ。それを触媒として用いることで、術式の安定性が格段に上がる。魂、などという詩的な表現で隠されていただけだった。城の地下には、そのための「資材」を確保する部屋も存在した。聡美はそこを管理する立場にもなっていた。感情を排し、必要数だけを確保する。研究者として、それ以上のことは考えなかった。

バルザックの死を知っても、彼女の手は止まらなかった。

強化兵の数は、すでに百を超え始めていた。制御の問題は残っている。だが、それも含めて、データだった。

窓の外で、城の鐘が鳴る。

新しい王は今日も、何も知らずに玉座に座っているのだろう。

聡美は羊皮紙に、静かに筆を走らせた。

「次は、もっと精度を上げる」

 

地下の最深部。

ランプの灯りさえ届きにくいその階層に、丸い巨大な水槽が並んでいた。ガラス——この世界では稀少な透明な素材——でできた円筒形の容器。中は薄い紫色の液体で満たされ、泡が静かに上昇している。あのゲーム、バイオハザードの研究所を思わせる光景だった。聡美が前世で何度も見た、あの隔離装置に近い。

水槽の中には、人型の影が浮かんでいる。

強化兵。

骨格は人間のそれを保ってはいる。が、筋肉の隆起が異常だ。肌は灰色がかった褐色で、所々に術式の痕跡が黒い紋様のように走っている。目を閉じ、浮かんでいる者。薄く目を開け、外側を睨んでいる者。彼らは凶暴性と筋力を極限まで引き上げられているが、言葉を話すことはできる。生前の記憶も、大部分が残っていた。

「……おい。また実験か」

一体が、濁った声で呟く。水槽の内側から聞こえる声は、液体に遮られて歪んでいた。

聡美は記録板に目を落とす。被験者のほとんどは、囚人や捕らわれた盗賊だ。家族の顔を覚えている者もいる。それでも、術式を施された瞬間から、彼らは「失敗作」ではなく「成果」として扱われる。

「今日は中庭で実戦試験を行う」

聡美が短く告げる。水槽の制御術式を解除すると、紫色の液体が排出され、強化兵たちが床に降り立った。体から滴る液体を振り払い、彼らは無言で並ぶ。

中庭。

石畳の広場には、すでに重装兵が五人待機していた。鉄の鎧に長槍、盾。城の正規兵だ。向かい合う強化兵は、わずか一体。武器は渡されていない。素手だ。

「始めろ」

大臣の声が飛ぶ。

強化兵が動いた。

一瞬で距離を詰め、最初の兵士の盾を素手で掴む。金属が軋む音。次の瞬間、盾ごと腕が持ぎ取られた。悲鳴。血が石畳に散る。残りの四人が槍を突き出すが、強化兵はそれをいとも容易く払い、別の兵士の首筋に手を伸ばした。クッ、という鈍い音。頭が胴から離れる。

五人は、あっという間に残骸になった。

四肢が千切れ、鎧が歪み、内臓が石畳に広がる。強化兵はそれを見下ろしたまま、静かに息を吐いた。凶暴性は高まっている。だが、理性は完全には消えていない。生前の記憶があるせいで、どこか虚ろな目をしていた。

ギャラリーにどよめきが走る。

目を覆う者。顔を青くする者。一方で、目を輝かせて前のめりになる者もいた。大臣は腕を組み、満足げに頷いている。

「素晴らしい成果だ、聡美殿。この完成度は想定以上だ」

「……実戦データが、まだ不足しています」

聡美は冷静に答えた。中庭の血の匂いが、鼻に付く。

「城の兵士をこれ以上減らすのは、避けたい。消耗が激しい」

大臣が眉をひそめる。

「ならば、どうする」

聡美は少し沈黙した。強化兵の制御は、まだ完全ではない。実戦での反応、集団行動、命令への服従度。もっと多くのデータが欲しい。だが、正規兵をこれ以上犠牲にするのは非効率だ。

「……冒険者は、どうでしょう」

彼女は静かに言った。

「街や村を徘徊する、腕に覚えのある者たち。報酬を積めば、集まってくるはずです。彼らを相手にすれば、より実践的なデータが取れる」

大臣はしばらく考え込み、やがてゆっくりと頷いた。

「良い案だ。すぐに手配させよう」

聡美は水槽の方を振り返った。残りの強化兵たちが、紫色の液体の中で静かに浮かんでいる。彼らの目が、ガラスの向こうからこちらを見ている気がした。

——冒険者。

聡美は記録板を抱き、地下へと戻る足を速めた

 

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