ドラクエ4の世界に異世界転生したら進化の秘法で巨大金玉男にされたので憧れのマーニャ に連続種付けする 作:古のもの
魔族の王、ピサロが討たれた。
その知らせは、城に静かに、しかし確実に届いた。
場所は、エンドールとボンモールを結ぶトンネルの中だという。原作ではあり得ない展開だった。聡美は研究室の机に肘をつき、報告文書を何度も読み返した。
トンネル内での討伐。トラップを多用した、という断片的な情報もある。ギガデインを連発した、とも。
「……随分と、原作と違うことになってきた」
独り言が、静かな部屋に落ちる。
自分のような転生者が、世界の流れを少しずつ歪めているのだろうか。キングレオの死も、バルザックの死も、あまりに合理的で、あまりに「知っている者」の手法だった。ピサロまでもが、想定外の場所で倒される。導かれし者たちの物語は、確実に別の軌道を走り始めていた。
その頃、強化兵の数はすでに二百に近づいていた。
城の地下ではもう、収容しきれない。水槽は満杯で、簡易的な檻を増設しても追いつかない。制御は安定してきたが、これ以上城内に置くのは危険だという声が、大臣たちから上がり始めていた。
「廃村を使え」
最終的に出た決定は、それだった。
城から半日ほど離れた、捨てられた小さな村。住民は魔物の襲来で逃げ、今は空っぽの家屋が並ぶだけだ。そこを強化兵たちの拠点とする。物資の補給は定期的に行うが、狩りや採集で自活もさせろ、という方針だった。聡美は反対しなかった。実戦データの収集には、むしろ好都合だった。
そして、その日。
冒険者候補のリストが、彼女の元に届いた。
実戦試験用の「相手」を集めるための名簿だ。報酬を積めば、腕に覚えのある者たちが集まってくる。リストには十を超えるパーティの名前が並んでいた。その中で、ひときわ目を引く一団があった。
王宮の戦士、ライアン。
サントハイムの魔法使い、ブライ。
そして、投げ槍を操る女勇者、はるな。
最近、話題になっている冒険者パーティだという。
聡美はリストのその部分に、指を止めた。
ライアンとブライ。
導かれし者たちのメンバーだ。原作では勇者パーティに合流するはずの二人。なのに、今は別行動をしているらしい。勇者とは合流しなかったのか。それとも、何か事情があって離れ離れになったのか。
そして、はるな。
投げ槍の女。
その名前と武器を見た瞬間、聡美の脳裏に、前世の光景がちらりと過った。スタジアム。観客の歓声。金色のメダルを掲げる、引き締まった身体の女性。槍投げの金メダリスト。
「……まさかな」
声に出して、否定した。
この世界に、前世の著名人が転生しているなどと考えるのは、思索として野放図すぎる。単なる偶然だろう。槍を使う女冒険者など、珍しくもない。
だが、リストから目を離せない自分もいた。
聡美はゆっくりと息を吐き、名簿の端に印を付けた。
「このパーティを、優先的に呼ぼう」
強化兵の実戦データとして、導かれし者たちの端くれを相手にするのは悪くない。もし、あの「はるな」が本当に何か特別な存在なら——そのときは、また別の判断をすればいい。
窓の外で、城の鐘が鳴った。
廃村へ移る強化兵たちの準備が、着々と進んでいる。ピサロが死に、世界のバランスが変わり始めている今、自分の研究も、次の段階へ進める必要があった。
聡美は名簿を閉じ、静かに立ち上がった。