ドラクエ4の世界に異世界転生したら進化の秘法で巨大金玉男にされたので憧れのマーニャ に連続種付けする 作:古のもの
槍が風を切った。
はるなの腕が一閃し、デーモンスピアが魔物の胴を貫く。相手はおおめだま。大きな単眼を怒らせて飛びかかってきたところを、間合いを外さず刺し穿った。黒い体液が飛び散り、魔物は苦鳴も上げずに崩れ落ちる。
「右!」
ライアンの声。はぐれメタルのよろいが鈍く光り、剣が弧を描く。今度はおおがらすの群れだ。翼を広げて急降下してくるところを、盾で受け止め、一気に切り払う。金属音と羽根の散る音が森に響いた。
ブライは後ろで杖を構えていた。不思議のボレロを翻し、幸せの帽子の下から冷静な声が飛ぶ。
「ヒャダルコ」
冷気がおおがらすの残党を捉え、動きを鈍らせる。はるなは間を置かず、次の一体へ踏み込み、槍の穂先で急所を穿った。
戦闘はあっさり終わった。
エンドール近郊の森。最近、魔物の出が少し多くなっていたが、この程度なら三人で十分に対処できる。はるなはデーモンスピアを立てたまま、軽く息を整えた。魔神の鎧は体に馴染んでいる。呪いの効果があるはずの防具なのに、なぜか自分には何の影響もない。着た瞬間からそうだった。理由はわからない。ただ、軽いし、防御力は確かだ。
「怪我はないか」
ライアンが近づいてくる。はぐれメタルのヘルムの下から、心配そうな目が覗く。王宮の戦士らしく、いつも率先して前に出る男だ。はるなを「勇者」と信じ、疑ったことがない。
「大丈夫。このくらい」
はるなは短く答えた。槍を担ぎ直す。前世で鍛えた身体は、今も嘘をつかない。オリンピックの決勝で金メダルを取ったあの感覚が、今でも筋肉の奥に残っている。槍を投げる動きと、突きを繰り出す動きは、意外と近い。
ブライが無言で近づき、軽く回復の光を走らせる。必要なとき以外、口数は多くない老魔法使いだ。アリーナ事件の後に合流し、以来、三人で行動している。
「戻るか」
ライアンが言った。はるなは頷き、森を出る。
エンドールの街は、相変わらず活気があった。三人はいつもの酒場に入り、奥の席を陣取る。注文した酒が運ばれてくる頃には、すでに日が傾き始めていた。
はるなは杯を片手に、窓の外を見ていた。
転生して、どれくらいになるだろう。海辺の村に落ち、魔物の襲撃を槍一本で凌ぎ、ライアンに「勇者だ」と認定されて旅に出た。最初は戸惑った。この身体が、前世の自分と同じ感覚で動くことにも。だが、今はもう、日常になっていた。
——日本に帰りたい、とはあまり思わない。
不思議なことに。前世の記憶は鮮明なのに、戻る手段を必死に探す気にはなれない。ここでの戦いが、どこか充実している。槍を振るう感触が、前世の競技とは違う達成感を連れてくる。
「……何か、考えてるな」
ライアンが声をかけてきた。はるなは杯を置き、軽く肩をすくめる。
「少しね」
そのときだった。
酒場の扉が開き、旅装束の男が入ってきた。手には封書を持っている。周囲を見回し、三人の席へまっすぐ近づいてきた。
「失礼します。あなた方が、最近評判の勇者パーティでしょうか」
ライアンが警戒の色を浮かべる。ブライは黙って杖に手を置いた。はるなは相手の顔を観察する。
「キングレオ城の者です。依頼があって参りました」
男は封書を差し出した。
「城の近くの廃村を、魔物の群れが占拠しております。正規の兵士では太刀打ちできない。腕の立つ冒険者に、何とかしていただきたい」
はるなは封書を受け取り、封を切った。中には簡潔な依頼内容と、報酬の額が記されている。悪くない数字だ。
廃村。魔物の群れ。
ライアンがはるなの顔を窺う。
「どうする」
はるなはゆっくりと息を吐き、封書を畳んだ。
「受けよう。詳細を聞こうか」
杯の酒は、もう冷え始めていた。