ドラクエ4の世界に異世界転生したら進化の秘法で巨大金玉男にされたので憧れのマーニャ に連続種付けする 作:古のもの
城の地下、研究室。
聡美は記録板に目を落としていた。先の戦闘で得られたデータは、十分すぎるほどだった。強化兵の実戦での反応、統率、損傷からの回復速度。数名の研究者を連れて、安全な距離から観察していた成果だ。途中で外部の助けが入ったのは想定外だったが、どうでもよかった。データに影響はない。
「次は、もっと分岐させよう」
独り言のように呟き、羊皮紙に図を描き始める。
強化兵を、さらに特化させたタイプへ変化させる。飛行能力を持たせた軽量型。体躯を二倍近くに巨大化させた重量型。魔力回路を組み込み、簡易的な攻撃術式を使えるようにした術師型。同じ進化の秘法を基にしながら、用途ごとに設計を変える。被験者はまだ余っている。廃村の連中を少しずつ回せばいい。
城の内情も、変わり始めていた。
強化兵の戦力を見て、他国への侵略を公然と口にする派閥が生まれている。一方で、制御不能になることを恐れて研究の中止を求める声もあった。大臣たちの間で、静かだが確実な亀裂が走っている。
聡美はどちらにも与しなかった。
支配も、権力も、金も、興味がない。ただ、この手で究極の生命体を創りたい。それだけだ。黄金の腕輪がなくても、ここまで来られた。ならば、さらに先へ行けるはずだった。
そのとき、研究室の扉がノックもなく開いた。
入ってきたのは、強化兵のリーダーだった。灰色がかった肌に、濁った黄色の瞳。だが、その体を覆っていたのは、明らかに普通の鎧ではない。青白く鈍く光る、はぐれメタルのよろい。ヘルムも盾も剣も、揃いだった。先の戦闘で、王宮の戦士から奪ったものだろう。
「久しぶりだな、先生」
低い声で、そう呼びかけてくる。はぐれメタルの装備が、ランプの光を冷たく反射している。
「久しぶりだな、先生」
低い声で、そう呼びかけてくる。聡美は記録板を置かず、相手を見た。
「何か用?」
ラムダは部屋の中央まで歩み、あえて椅子に座らなかった。立ったまま、彼女を見下ろす。
「黄金の腕輪のありかを、知っている」
その一言に、聡美の手が止まった。
羊皮紙の上で、インクが小さく滲む。彼女はゆっくりと顔を上げ、ラムダの濁った瞳を見つめた。
「……本当に?」
「ああ。フレノールの一件でな。本物の隠し場所を、知っている」
ラムダの口元が、わずかに歪んだ。残忍で、狡猾な笑みだ。
「交渉の材料にするつもりだったが——お前なら、使い道を知っていよう。どうだ、取引しないか」
研究室のランプが、揺れた。
聡美は静かに息を吸い、記録板を閉じた。究極の生命体。その完成に、欠けていたピースが、自ら歩いてきた。
「詳しく、聞こう」
彼女の声は、低かった。
研究室の空気が、わずかに変わった。
ラムダははぐれメタルのよろいをきしませながら、一歩近づいた。濁った黄色の瞳が、聡美を真っ直ぐに見据えている。
「黄金の腕輪を、持ってきてやる」
低い声だった。交渉というより、通告に近い。
「その代わり、クーデターの準備をして待っていろ。この城も、国も、好きにしろ。研究も、好きなだけ続けさせてやる」
聡美は黙って相手を測った。権力にも金にも興味はない。だが、研究を続けられる環境と、完成に必要な材料。それが手に入るなら、話は別だ。ラムダが本当に腕輪のありかを知っているなら、この取引は悪くない。
「……条件は、それだけか」
「ああ。俺は腕輪を持って戻る。それまでに、準備を整えろ」
聡美は短く息を吐き、記録板を閉じた。
「乗ろう。ただし、嘘だった場合は、その体を解体してデータにする」
ラムダの口元が、わずかに歪んだ。笑みかどうかは、わからなかった。
「望むところだ」
彼は踵を返すと、扉の方へ歩いていく。廊下で待っていた強化兵数体が、無言で従った。はぐれメタルの装備が、ランプの光を冷たく反射しながら遠ざかっていく。やがて、足音が消えた。
聡美は一人、研究室に残された。
机に向かい、新しい羊皮紙を広げる。クーデター。自分が主導するつもりはない。だが、準備を整える必要はある。強化兵の配置、城内の兵力、大臣たちの派閥。誰を残し、誰を消すか。研究を続けるための、最低限の環境を確保するための計算だ。
「……腕輪が、本当に手に入るのなら」
呟きは、誰にも聞こえない。
究極の生命体。その完成が、また一歩近づいた気がした。
聡美は筆を取り、静かに作戦の下書きを始めました。