ドラクエ4の世界に異世界転生したら進化の秘法で巨大金玉男にされたので憧れのマーニャ に連続種付けする 作:古のもの
モンバーバラの広場に、人だかりができていた。
壁に貼り出された大きな紙を、何人もの市民が取り囲んでいる。この世界で「ニュース」を伝えるための張り紙だ。インクの匂いがまだ新しい。先頭に大きく書かれた見出しが、健太の目に飛び込んできた。
『エンドール陥落』
王城が落され、王は降伏。港も市街も、見たことのない兵士たちに占拠されたという。目撃者の話として「灰色の肌をした、獣のような兵士」「空を飛ぶ者もいた」「普通の武器がほとんど通じなかった」との記述がある。
健太は紙の端を押さえ、静かに読み終えた。
——あれだ。
コーミズの廃村で見た、あの妙な兵士達。キングレオ城でクーデターが起きたという噂と、すべてが繋がった。キングレオ城を落とし、今度は海を越えてエンドールまで飲み込んだ。
「このままじゃ、とんでもないことになる」
独り言が、喉の奥で潰れた。
だが、自分に何ができるというのか。
勇者でもないし、大軍を率いる立場でもない。ただの、現代知識を持った何でも屋だ。ルカと二人で動ける戦力など、たかが知れている。はるなはコーミズに残ったままだろう。マーニャを危険に晒したくはない。
情報が足りない。
城に再び潜入するか? 以前、ソロと一緒にキングレオ城へ入ったときは、まだ内部が緩かった。今はあの兵士達が巣くっている。見つかれば即座に殺されるか、実験台にされる。危険すぎる。
ならば、傭兵として参加を申し出るのはどうだ。
「戦力を貸す」と近づき、内部の情報を探る。自然な口実になる。向こう側が腕利きを求めているなら、受け入れられる可能性もある。だが、それもまた、火中に飛び込む行為だ。
健太は張り紙から離れ、宿への道を歩き始めた。
頭の中で、いくつもの選択肢が浮かんでは消える。動かなければ、この勢いは止まらない。動けば、自分たちが巻き込まれる。
とりあえず、今は情報が足りない。
それだけは、確かだった。
モンバーバラの宿の一室。
健太はテーブルに簡易の地図を広げ、向かいのルカと、壁際に座るマーニャを見据えた。
「エンドールが落ちた。キングレオ城を乗っ取った連中が、いきなり襲ったらしい。情報が足りない。このまま黙って待ってても、次はこっちに来るかもしれん」
ルカが金髪のポニーテールを揺らし、腕を組んだ。
「城に潜入するの? ケンタ一人で?」
「ああ。表向きは傭兵だ。募集してるって噂が流れてるからな。中に入って、敵の数や装備、指揮系統を探る。お前らまで連れてったら目立つ」
マーニャが膝の上で手を組み、静かに聞いている。銀の胸当てがランプの光を柔らかく反射していた。
「ケンちゃん、一人は危ないよ? 門番があの……変な兵士たちなら、普通の人間なんて簡単に追い返されるんじゃないの」
「わかってる。でもやってみる価値はある」
健太はベッドの上に並べた荷物を示した。傷だらけの皮の鎧――安くて傭兵らしく見えるもの。鱗の盾。そして新調した武器。
柄の先に黒いボタンが付いた棍棒。押すと電撃が走る。コンポジットボウ。矢筒には普通の矢と、小型の金属筒に詰め物をした「例の手榴弾」を数本。
「これで最低限は戦える。ルカはモンバーバラに残って、街の様子を見ててくれ。マーニャさんも劇場の方で情報を集めててくれ。俺が戻るまで、無理はするな」
ルカは不満げに唇を尖らせたが、やがて小さく頷いた。
「……わかった。でも、三日経っても戻らなかったら、迎えに行くから」
マーニャも静かに微笑んだ。
「気をつけてね、ケンちゃん」
翌朝。
健太は一人、モンバーバラの東門を出てキングレオへ続く街道を進んだ。空は晴れ、風は乾いている。しかし街道の空気は明らかに以前と違っていた。商人の姿が減り、遠くに煙が立ち上っている。
半日ほど歩いたところで、森の中から異様な咆哮が響いた。
「……来たか」
健太は棍棒を右手に、ボウを左手に構えた。
現れたのは、体の一部が金属のように変色したスライムの群れと、二体のオーク系の魔物だった。目が濁った赤に光っている。城の技術が、すでに街道にまで漏れ出している証拠だった。
健太は棍棒のボタンを押し、電撃を纏わせてオークの一体に突進した。火花が散り、オークがのけぞる。その隙にコンポジットボウを構え、後ろのスライム群に矢を放つ。一本、二本――そして三本目は導火線に火を付けた手榴弾を矢に括りつけて飛ばした。
爆音が森に響き、スライムが飛び散る。残ったオークも、電撃の棍棒で動きを止めてから、盾で押し倒して終わらせた。
「……強化されてやがる。普通のより固い」
健太は息を整え、血のついた棍棒を拭うと、再び歩き出した。
キングレオ城の門前。
巨大な石壁が空を切り取り、門には二人の兵士が槍を構えて立っていた。体は人間の形を保っているが、肌は灰色がかり、目は虚ろで、筋肉が不自然に盛り上っている。
健太は皮の鎧に鱗の盾を構え、前に出た。
「傭兵だ。募集してるって聞いた。使ってくれ」
門番の兵士が、低い声で答えた。
「知らん。我らだけで充分だ。帰れ」
「待て。役に立つぞ。情報も持ってるし、戦える」
「帰れと言った」
槍の穂先が、健太の胸元に向けられる。押し問答が続き、空気が張り詰めた瞬間――
門の影から、一人の女がゆっくりと現れた。
白と黒のメイド服。年齢は五十前後。落ち着いた目元と、この世界では珍しい切れ長の目。黒髪、骨格――明らかに、この世界の人間とは違う日本人特有の顔立ちだった。
「何の騒ぎかしら」
女の声は静かで、しかし通る。
兵士が事情を説明した。
「この男が傭兵だと名乗って、入れろと粘っております」
健太は、彼女の顔をじっと見た。
「……あんた、日本人かい?」
女の目が、わずかに細められた。驚きというより、興味を示したような表情だった。
「あら、そう言う事」
彼女は兵士に向き直り、淡々と命じた。
「通しなさい」
兵士は一瞬迷ったが、女の命令に逆らうことはできなかった。門が軋んで開く。
女は振り返らずに歩き出しながら、小さく言った。
「……興味深い人が来たわね」
城門が、健太の背後で閉まった。