お前みたいな性悪女と付き合うくらいなら、性転換した幼馴染とセックスするわ! 作:cuddle
「なんでまだ十月なのにそんな厚着してんだよ?」
まだ十月後半なのに、僕はロングコートで身体を隠し、マフラーとフードで顔を隠す。
幼馴染のとおるに女の子になったのを知られたくなかったから。
声も自分では変わってないつもりだけど、母さん言うには前より少し高くなっているらしい。
首だけを動かしてる僕にとおるは心配そうに顔を近づけてくる。
「具合、まだ悪いのか?」
縦に首を動かすと、そっかと頭を掻く。
「海外から、帰ってくんだよな?」
とおるの声が少しだけ震えているのに気付く。
その時にやっととおるも淋しいのだと気づいた。
僕はやっぱり声を出すのが怖くて代わりに手を差し出す。
とおるがそれを握った。
「帰ったら、また一緒に遊ぼうな、親友!」
その屈託のない笑顔と待っててくれる友達が居る。
それにどれだけ救われたかは、きっと本人も分からないだろう。
「は?」
それを見た瞬間にあたしの頭がフリーズした。
昼休みが終わる直前に透とあの転校生、小鳥遊歩が教室に戻ってきた。
まるで恋人同士のように腕を組んで。
思わずあたしは立ち上がる。
「ちょっと透! なんなのよそいつ! 離れなさい!!」
無理やりこの泥棒猫を透から引き剥がす。
抗う様子もなく生意気な女は透から離れた。
「乱暴だなぁ。それじゃあとおるに嫌われるよー」
「なななななっ! あたしは別に透なんて……!」
「じゃ、別にいいよねー」
そう言ってまた透の腕を組む。
頭が沸騰しそうだった。
「ちょっと透! あんたもなにデレデレしてんのよ!」
「そう見えんのかよ……」
うんざりした様子で返す透だが、転校生を見る眼が優しいのに気付いている。
あたしにだってあんな眼しないくせに!
「とにかく離れなさいよ!」
もう一度引き剥がそうとすると、チャイムがなる。
すると、転校生はパッと透から手を離して自分の席に座った。
「じゃあとおる、放課後にね」
そう手を振る。
教師がくる前に透へと詰め寄った。
「透どういうことよ! 放課後はあたしの買い物に付き合う約束でしょ!」
「どーしたもこーしたもねーよ。久し振りに日本に帰ってきたばかりの幼馴染だぞ。近所を案内して帰るくらいしてもいいだろ」
「あたしあんな奴知らない!」
「忘れてるだけだろ。とにかく、俺は歩と帰るから、お前は友達と遊べば?」
「あんた誰に向かって────」
シッシッと突き放すような言い方に声を荒げようとする。
そこで教師が教室に入ってきて、仕方なく席に戻った。
「あー。久し振りに
いつも理由を付けてつきまとってくるらしい蓮野さんが居ない下校にとおるは伸びをする。
(蓮野さんのとおるへの依存が悪化してるなぁ)
そんな事を思いながら一先ずとおるの家へと向かう。
久し振りにおばさんにも会いたいしね。
約五、六年振りの町は大分変わっていて、記憶にある店が無くなり、別の店に変わっているのが少し寂しい。
歩いて十五分くらいでとおるの実家に着いた。
「なっつかしー! 子供の頃はいっつもどっちかの家に行き来してたよね!」
「そうだったよな。特にやることがなくてもダラダラと……」
鍵を回して扉が開けるととおるのお母さんが出迎えてくれた。
「久し振りね〜歩くん。お母さんから事情は聞いてるから今日はうちでご飯食べて行ってね」
「ありがとうございます!」
それから簡単なやり取りをしてとおるの部屋に入ると思わずベッドにダイブした。
「おー! スプリングバッチリ!」
「埃立つだろやめろ! つーかスカートでそういう激しい動きすんな!」
下着見えちゃうもんね。
ちょっとからかってやろうという気分がムクムクと湧き上がる。
「見たい?」
「見るか!」
横向きに寝そべったまま、スカートの中が見えないくらいに捲ると顔をちょっと紅くしつつ目を背ける。
かわいーなぁ。
とおるが頭を掻いてから話しかけてくる。
「んでさ。詳しい話、してくれんだろ?」
「うん……」
と言っても、学校で話したこと以外は本当に細かな内容しかないんだよね。
「いや、それよりさ……大丈夫なのか?」
「なにが?」
「その……いきなり女になってだよ」
「お! この漫画まだ集めてたんだ。読ませて。向こうだと日本のの漫画高くてさ〜。しかも翻訳は違和感凄いし」
「おい……」
ジト目を向けてくる。
僕は漫画を捲りながらこれまでの事を話す。
「ホントに大して話すことないんだよ。僕が女になったせいで父さんとギクシャクしちゃったから距離置く意味で離婚したの。んでさ、こっちに残っても色々問題が起きそうだったから、母さんが海外赴任の話を受けて向こうに飛んだの」
本当なら断るか、母さんだけアメリカに行くつもりだったみたいだけど。
そういう意味ではタイミングが良かった。
「それから向こうでニ年くらい後天的性転換症の研究をしてる病院で僕と同じように性別が変わっちゃった人達と過ごしたり研究やら治療やらを受けてたの。まだ世界中でも一万人も発症者が見つかってないからね」
後天的性転換症はまだ発症例が少ない。
日本だけならまだ五十人も発症した子供は居ないと聞く。
だから医療保険とか保証が整ってない日本よりもそこら辺の認知が進んでいるアメリカの方が過ごしやすいという判断でもあった。
「と言っても別に今更男に戻れる訳もなく。女の子のことを母さんや女の
とおるは言われて今、僕がお化粧してるのに気付いたらしい。
そこで確かめたかった事を思い出す。
「とおるー。ちょっといい?」
「あ? なんだ、よっ!?」
僕が腰から背中に腕を回して抱きつく。
あぁ……やっぱりかぁ。
「おま……! いきなりなにしてんの!?」
力ずくで剥がされる。
確かめるように手の平を見る。
「この身体になってからさ、心も結構変わっちゃうんだよね。医者はホルモンバランスの関係とか環境の変化による物とか説明してたけど」
「歩?」
自分が変わっちゃったのを再認識してちょっと泣きたくなった。
「男の子に裸を見られるのが恥ずかしくなったり、逆にエッチな本とかDVDで女の人の裸を見たり、美人や可愛い娘が居ても全然意識しなくなったりね。今もさ……向こうで女の子の友達に抱きつかれるより、とおるに抱きついた方がすごくドキドキした」
もしかしたら昔みたいに普通で接する事が出来ると思ったけど、もう自信無い。
「ハハ……気持ち悪いよね、こんなの。とおるの中で僕は男友達のままなのにさ」
泣きたくなってきた。
勝手に確認したくせに勝手に落ち込んでカッコ悪い。
「ゴメン、やっぱり今日は帰るよ」
出来れば明日も避けないで居てくれればいいなと期待してしまう。
部屋を出ようとする僕の手をとおるが掴んだ。
「とおる、痛いんだけど……」
「飯、食ってくんだろ? おふくろがもう用意してるだろうから、食ってけ。お前が帰ったら俺がどやされる」
「……いいの?」
「いいも何もねーだろ。明日香の奴を避けるのに、協力してくれねぇと困るんだよ。あいつと一緒に居るくらいなら、女のお前とつるむ方がいい」
照れたように顔を背けている。
その言葉に僕は────。
「とおる……動機すっごくかっこ悪いね」
「うっせ!」
「あいつホントに誰よ! 透にあたし以外の幼馴染なんて……!」
過去のアルバムを見返しながら小鳥遊歩の事を探すがやはり見当たらない。
当然だ。透に近付く女はもちろん、男子だってあたしが────。
そこであたしは小学校の頃に転校したある男子を思い出す。
あたしがどれだけ引き剥がそうとしてもいつも透と一緒に居た幼馴染。
確か名前は────。
「小清水、歩……!」
ある可能性が浮上してあたしは大急ぎで確認を取った。