砦の入り口で、二人は見張りたちに素早く襲いかかった。
竜騎士のゲイボルグ・アルテマが風を切り、一人の見張りの剣を弾き飛ばす。
女武闘家はスファライ・アルテマを構え、もう一人の見張りに拳を叩き込んだ。
骨の砕ける音が響き、二人は瞬く間に倒れた。血の臭いがわずかに漂うが、二人は息を潜め、砦の中へ足を踏み入れた。
内部は薄暗く、石の壁が湿気を帯びて冷たい。
ゴブリンの巣窟のような悪臭はないが、代わりに酒と汗の匂いが混じり、盗賊たちの生活臭が充満していた。
二人は警戒を強め、武器を構えたまま静かに進む。
廊下の隅に積まれた金品や食料の袋が、村から奪われたものだと一目でわかった。
足音を殺し、影に身を寄せながら奥へ奥へと進む。
すると、奥の部屋の方から、女の喘ぎ声が漏れ聞こえてきた。
苦痛と快楽が混じったような、抑えきれない声。
竜騎士と女武闘家は顔を見合わせ、急いでその方向へ駆け込んだ。
心臓の鼓動が高鳴る。
奥の部屋に飛び込むと、そこは惨たらしい光景が広がっていた。
粗末なベッドの上に、若い女が四つん這いに、二人の盗賊が彼女を犯していた。
一人は彼女の口に自らのものを突っ込みながら腰を振りながら低くうめく。
もう一人は後ろから彼女の体を貫き、笑いながら荒々しく腰を振っていた。
女の体は汗にまみれ、抵抗する気力さえ失われているようだった。
彼女の目は虚ろで、ただ耐えるだけの存在に成り果てていた。
部屋の奥には、数名の盗賊が輪を成して座り、笑いながらその様子を見物していた。
「へへ、いい声出してるぜ」
一人が酒瓶を傾けながら嘲笑う。
別の男は腰に剣を下げ、次は俺の番だからなと待ち構え、貪欲な視線を女に向けていた。
空気は欲望と暴力に淀み、部屋全体が腐敗した空気に満ちていた。
女武闘家は、その犯されている女を見て息を呑んだ。
彼女は、かつて女武闘家がゴブリンに壊されて村に戻る馬車で、一緒に乗っていた女だった。
名前は知らないが、だがゴブリンの巣穴の奥で一緒に犯されていた女性。
女武闘家の心が痛み、拳を握りしめる。
「あ……あの子……」
彼女の声は震え、過去の記憶が蘇る。
この女性が、再びこんな目に遭っているなんて…
運命の残酷さが、胸を締めつけた。
竜騎士も状況を察し、槍を構えた。
女を救うため、二人は盗賊たちに飛びかかった。
部屋に飛び込むや否や、盗賊たちに襲いかかった。
鍛えられた二人の動きは迅く、槍の閃光と拳の嵐が部屋を駆け巡る。
盗賊たちは不意打ちの状態で、快楽に溺れている者、酒に酔い酩酊している者ばかり。
剣を抜く間もなく、一人また一人と倒れていった。
槍先が喉を突き、拳が胸を砕く。
勝負は呆気なく終わった。
部屋に残るのは、血の臭いと静けさだけだった。
女奴隷はベッドの上に崩れ落ち、体を震わせていた。
竜騎士は彼女に近づき、ケアルの回復魔法をかけた。
エーテルの光が彼女の体を包み、犯されて消耗した体力を多少回復させる。
傷は癒え、無事だったが、彼女の目は虚ろで、心の傷は深かった。
女武闘家が駆け寄り、優しく声をかけた。
「大丈夫……?」
彼女の声は心配に満ち、黄色いスカーフが揺れる。
紫と白の綺麗な武闘着が、戦いの後でも美しく輝いていた。
横には竜騎士が立ち、彼女を守るように見守る。
女奴隷は虚ろな目で「ありがとう……ござ……」と呟きかけたが、そこで女武闘家に気づいた。
かつて自分と一緒にゴブリンの巣穴で犯されて、馬車で運ばれた女性。
彼女の綺麗な姿、黄色いスカーフに紫と白の武闘着、そして横にいる男。
何故、同じくゴブリンに犯されて壊されたのに、この女は美しく、男なんか連れているの?
女奴隷の心に、暗い渦が巻き起こった。
私は自身の村に連れ戻された後に家族に邪魔扱いされた挙句に奴隷商人に「ゴブリンの孕み袋にされた女」という烙印を押され、安く売られて、あの貧乏たらしい村で男たちの慰み者になった。
更には命欲しさに盗賊に引き渡され、再び地獄を味わった私……。
怨念が胸を焦がし、彼女が悪くないのは頭では分かっていても、心が許せなかった。
そして、女奴隷は女武闘家を睨みつけ、叫んだ。
「何でアンタはそんなに綺麗で男なんか連れ歩いているの!! アンタも私と同じ目に遭うべきなのよ!!」
その声は怨嗟に満ち、部屋に響き渡った。
女武闘家は息を呑み、竜騎士も槍を握る手に力を込めた。
女武闘家はその様子に言葉を失ってしまった。
女奴隷の叫びが、心に深く突き刺さった。
同じ苦しみを共有したはずの者が、なぜ自分を憎むのか。
彼女の綺麗な武闘着が、今はただの皮肉のように感じられた。
拳を握りしめ、唇を噛むが、何も言えなかった。
竜騎士は静かに女奴隷に近づき、彼女の虚ろな目を見つめて話しかけた。
「これだけは分かって欲しい。返り討ちにあってしまったが、彼女は君達を救うために、あのゴブリンの巣穴に入ったんだ。君の命を、助けようとしたんだ」
彼の声は穏やかだが、確信に満ちていた。
女奴隷は話を聞くと、黙ってしまった。
怨念の炎が一瞬揺らぎ、虚ろな瞳にわずかな光が差した。
だが、言葉は出なかった。ただ、視線を落とし、体を縮こまらせるだけ。部屋に沈黙が広がった。
女武闘家が割って入り、話しかけようとした。
「あの……私は……」
彼女の声は震え、過去の記憶を振り払おうとするが、竜騎士は静かに手を挙げて止めた。
「今は刺激しない方がいい。彼女の心は、まだ癒えていないんだ」
彼の目は優しく、女武闘家をなだめる。
彼女は頷き、唇を噛んで後退した。
竜騎士はスプリルの魔法を唱え、女奴隷を優しく眠らせる。
エーテルの柔らかな光が彼女を包み、深い眠りへと導いた。
外で待つ馬車に彼女を運び、丁寧に載せる。
女奴隷の体は軽いが、その分の苦しみの重いのだろう。
二人は馬車を砦の外へ移動させ、村への帰路を準備した。
女武闘家は周囲を見回し、眉を寄せた。
「しかし、盗賊団にしては規模が小さいわね。もっと大勢いるはずじゃ……」
彼女の言葉に、竜騎士は突入する時の見張りの言葉を思い出した。あの談笑の中の言葉「あの馬鹿ども、村の連中からまた何か巻き上げてくるかな」それは、ただの雑談ではなかった。
村が危ない! 二人は急いで馬車に走らせた。
この砦は、ただの残りの留守しかいなかった。
村へ向かう途中、女武闘家は竜騎士にそっと話しかけた。
眠る女奴隷の姿を横目に、彼女の声は不安げだった。
「まさかこの子、村に返す訳じゃないでしょ?」
あの村人達の悪意を思い出し、彼女の心はざわついていた。
同じ目に遭った女性を、再びあの場所に戻すなど、考えたくもなかった。
竜騎士は手綱を握りしめ、静かに答えた。
「当たり前じゃないか。とりあえず、僕たちの村に連れて行こう。放ってはおけないよ」
彼の言葉は優しく、しかし決意に満ちていた。
女武闘家はホッとした表情を浮かべ、竜騎士の肩に軽く寄りかかった。
「ありがとう……そうよね」
馬車の車輪が回る音が、二人の沈黙を優しく包んだ。
村に近づくと、何か異変を感じた。煙が薄く立ち上り、馬の蹄が土を踏む音に混じって、荒々しい声が聞こえてくる。
二人は馬車を止めて様子を窺い、村の中心へ慎重に近づいた。
そこで見た光景に、息を呑んだ。
盗賊団が村にいた。
砦の残党ではなく、本隊らしき大勢の男たちが、村を囲むように立っていた。
中央では、盗賊団の頭目が村長を睨みつけ、威圧的な声で詰め寄っていた。
「まだあるんだろう……出せよ、調べはついているんだ」
頭目は筋肉質の体に傷だらけの鎧を纏い、腰の大剣が威嚇的に揺れる。
村長は震える手で額の汗を拭き、必死に抵抗するが、粗末な建物の扉が開き、数人の子供たちと、もう一人の女奴隷が引きずり出された。
頭目は女奴隷を一瞥し、顔を歪めた。彼女は衰弱しきっており、歳も若くはない。
きっと何年も監禁されて犯され、子供を生まされたのだろう。
髪は乱れ、目は虚ろで、体は骨と皮ばかりであった。
「ちっ、こんな汚い女は使い物にならないな、だが……」
頭目はニヤリと笑い、子供たちに視線を移した。
あの子供たちは、きっとこの女奴隷と村人の間にできた子たちなのだろう。
村長は膝をつき、懇願した。
「子供は勘弁してください。男は労働力、女は成長したら子を産ませる為に必要なんじゃ……」
その言葉は、村の絶望的な現実を露わにしていた。
貧しさの中で、子供たちさえも「資源」として扱われる。
頭目は嘲るように笑いながら
「俺も鬼じゃねぇ、女のガキだけで勘弁してやるよ」
彼の部下たちが、女の子たちを掴み、泣き声を上げさせる。
遠くからそのやりとりを見ていた竜騎士と女武闘家は、絶句した。村の闇は、想像以上に深かった。
頭目は苛立った様子で周囲を見回し、吐き捨てるように言った。
「ちっ、他には何もないのかよ! 引き上げるぞ」
部下たちが女の子供たちを縄で繋ぎ、村の外へ向かって動き始めた。
村長は地面にへたり込み、住民たちは怯えた目でそれを見守るだけ。
村の空気は絶望に満ち、女の子の泣き声が風に混じっていた。
その時、村の入り口から二つの影が現れた。
竜騎士と女武闘家が、馬車を隠した後、静かに立ち塞がった。
ゲイボルグ・アルテマを構えた竜騎士の目は鋭く、スファライ・アルテマを嵌めた女武闘家の拳は固く握られていた。
馬車の奥で眠る女奴隷を思い、二人はこの村の闇を終わらせる決意を固めていた。
頭目は二人の姿を見て、眉をひそめた。
「なんだお前ら? 冒険者か? 男は殺せ、女は売り飛ばすぞ!」
その言葉を合図に、盗賊たちが集団で襲いかかった。
大剣や斧を振り上げ、野蛮な叫びを上げて突進する。
だが、二人の前では烏合の衆に過ぎなかった。
竜騎士の槍が風を切り、最初の数人を一瞬で薙ぎ払う。
女武闘家は素早い身のこなしで敵の間を駆け抜け、拳の連撃で骨を砕く。
鍛えられた技が、この世界の盗賊たちを圧倒した。
次々と倒される盗賊の体が、土の上に転がる。血の臭いが広がり、村人たちの目が驚きに変わった。
頭目は剣を抜き、顔を紅潮させて息巻いた。
「ふざけるな! ぶっ殺してやる!」
彼は大剣を振り回し、女武闘家に斬りかかった。
重い一撃が空を裂くが、彼女の動きは流れるように軽やか。
身を翻して避け、鋭い連撃を放つ。
拳が頭目の腹に、胸に、顎に叩き込まれ、彼の体はなす術なく崩れ落ちた。
最後の一撃で剣が飛ばされ、頭目は膝をついて息絶えた。
戦いは、短く激しく終わった。
村に静けさが戻り、二人は縄を解いて女の子たちを保護した。
泣きじゃくる子供たちを優しく抱き、母親の女奴隷も無事だった。
彼女は衰弱しながらも、子供たちに駆け寄り、涙を流して抱きしめた。
村長が近づき、震える声で礼を言ったが、二人の目は冷たく、村の闇を忘れてはいなかった。
戦いの余韻が村に残る中、村長はゆっくりと立ち上がり、保護された女の子たちに近づいた。
衰弱した奴隷の女が子供たちを抱きしめる姿を横目に、彼は手を伸ばそうとした。
「これで一件落着じゃのう。子供たちはこちらで引き取ろうかの」
その言葉は、村の「秩序」を取り戻すためのものだった。
子供たちは労働力や将来の数を増やす「資源」として、村の存続に欠かせない存在だ。
だが、その瞬間、竜騎士はゲイボルグ・アルテマを構え、鋭い槍先を村長に向けた。
冷たいエーテルの光が、村長の喉元を照らす。村長は目を丸くし、意外な態度に驚いた。
「な、何をするんじゃ! お前たち、味方じゃなかったのか!」
彼の声は震え、住民たちもざわつき始めた。
竜騎士の目は厳しく、戦士の威圧感が村全体を包む。
「貴方達の奪われていた物は取り返したが、この様な非人道的な行いを見過ごす訳にはいかない」
竜騎士の声は低く、しかし断固として響いた。
エオルゼアの冒険者として、数々の不正を見てきた彼にとって、この村の闇は許せなかった。
奴隷の女と子供たちを「道具」として扱う現実が、心を痛めた。
「その奴隷の女と子供達は、僕たちが預かる」
村人たちは非難の声を上げた。
「何を言うんだ! あの子たちは村のものだぞ!」
「外から来た奴に何がわかる!」
怒りと不安が混じった叫びが飛び交う。
女武闘家は拳を握りしめ、竜騎士の横で静かに見守った。
彼女の心も、村の醜い側面に苛立っていた。
竜騎士は槍を少し下げ、静かに続けた。
「この事をギルド経由で都に伝えてもいいんだぞ。その場合、どうなるかは分かるよな?」
もちろん、それはハッタリだった。この小さな辺境の村に、中央都市の権力者がわざわざ対応するわけがない。
だが、小さな世界で生きてきた村人たちには、権力とは恐ろしいものだという認識があった。
都の兵が来れば、村は一瞬で潰されるかもしれない。
それに、盗賊団をあっさり倒した彼らと敵対したところで、勝ち目がないのは明白だった。
村長の顔が青ざめ、住民たちの声が徐々に収まる。
沈黙が広がり、村長は肩を落とした。
「……わかった。好きにしろ」
それ故に、手出しせずに引き渡しに応じた。
奴隷の女と子供たちは、二人の馬車に運ばれ、村を後にした。
この出来事が、村に変化をもたらすかどうかはわからない。
だが、この小さな村の奴隷と子供達の運命は変えるものとなっていた。
馬車は村の道をゆっくりと進み、二人が住む辺境の村へと向かった。
奴隷の女二人と、男の子が二人、女の子が三人、奴隷を連れて帰るなど想定していなかったため、馬車の中はギリギリの状態。
子供たちは怯えた目で互いに寄り添い、母親の奴隷女は衰弱した体を横たえ、若い女奴隷は虚ろな視線を窓の外に向けていた。
竜騎士は手綱を握り、女武闘家は子供たちに優しく声をかけながら、狭い空間を何とかやりくりした。
道中、女武闘家は竜騎士にそっと話しかけた。
「あの村……どうなるのかしらね」
彼女の声には、村の闇を思い出した不安が混じっていた。
竜騎士は前を向いたまま、静かに答えた。
「恐らく、ほとぼりが冷めたら繰り返すだろうな……ゴブリンもだが、奴隷商人を潰さねば、こんな悲劇が繰り返す……」
彼の言葉は重く、二人は沈黙した。この世界の根深い問題を、この世界ではただの冒険者である彼がどう解決するのか。
エオルゼアの記憶が、遠くに感じられた。
やがて、二人が住む辺境の村に着いた。
小さな家々が並ぶ静かな農村で、住民たちは穏やかに暮らしていた。
まずは村唯一の診療所へ馬車を寄せ、女医に診てもらった。
女医は若い女性で、優しい目をして皆を迎え入れた。
子供たちは怖がりながらも、彼女の穏やかな声に少しずつ心を開いた。
若い女奴隷の方は、精神的に疲弊はしていたが、肉体的には大丈夫だった。
盗賊の残した傷は癒えかけ、回復魔法の効果もあって体は持ちこたえていた。
一方、子供たちの母親の方が衰弱が酷く、暫く診療所で診ることになった。
何年もの監禁と出産の負担が、体を蝕んでいた。女医は「安静にさせて、栄養を摂らせましょう」と言い、二人は頷いた。
暫くは村で身体を癒して、今後どうするかを考える様だった。
子供たちは村の酒場のマスターが面倒見ることになり、奴隷の女たちは診療所で休養を取る。
竜騎士と女武闘家は、彼女たちの面倒を見ながら、奴隷商人の影を追うことを心に決めた。
診療所を出る時、若い女奴隷が駆け寄ってきた。
彼女の目は少し澄み、疲れた体を支えながら、女武闘家に頭を下げた。
「あの時は……ごめんなさい。そして、助けてくれてありがとう」
その言葉は素直で、怨念の影は薄れていた。
女武闘家は微笑み、彼女の肩を抱いた。
「いいのよ……一緒に、強く生きましょう」
二人は馬車を村の診療所に預け、ようやく自身の家に帰った。
小さな木造の家は、辺境の村に溶け込むように佇み、窓から柔らかな灯りが漏れていた。
扉を開けると、馴染みの匂いが二人を迎える。戦いの疲れが一気に体にのしかかり、女武闘家は肩を落とした。
竜騎士は優しく彼女を抱きしめた。
強靭な腕が彼女の体を包み、温もりが伝わる。
女武闘家は竜騎士の胸に顔を埋め、彼の匂いが彼女を落ち着かせた。
今日の出来事、村の闇、奴隷たちの苦しみが、心を蝕んでいた。
彼女の体は自然と力を失い、ホッとしたのかぐったりとしてしまった。
竜騎士はそんな彼女を抱え上げ、ソファに横たえた。
額に手を当てると、熱い。
色々な事が積み重なり、熱を出してしまったようだ。
「無理しすぎたね……」
彼は呟き、優しく彼女の武闘着を脱がせた。
汗ばんだ体を清潔な布で拭き、軽い寝間着に着替えさせてベッドへ運ぶ。
冷たいタオルを水で湿らせ、彼女の額に乗せた。
さらに、ギルドで買ったスタミナポーションの瓶を開け、彼女の唇に優しく当てて飲ませる。
液体が喉を通り、体に活力を与えるはずだ。
女武闘家はか細い声で「ありがとう……」と呟き、すぐにスヤスヤと寝息を立て始めた。
竜騎士は彼女の側に座り、髪を優しく撫で続けた。
外の風が窓を叩く中、彼はずっと彼女の傍らにいた。
暫くして、女武闘家が目を覚ました。
ベッドの上で体を起こすと、近くの椅子に竜騎士が座り、本を読んでいた。
穏やかな灯りが彼の横顔を照らし、静かな部屋にページをめくる音が響いていた。
彼女の気配に気づいた竜騎士は、本を閉じて立ち上がり、「大丈夫か?」と優しく尋ね、彼女のおでこに手を当てた。
熱は下がっており、柔らかな肌が彼の指先に触れる。恐らくは疲れだろう…村の闇、戦いの余波、奴隷たちの苦しみが、心身を蝕んでいた。
女武闘家は少し申し訳なさそうに「ごめんね……」と謝ったが、竜騎士は首を振り、「謝る事はないよ。大変だったね」と優しく言った。
彼の声は温かく、彼女の心を溶かすようだった。
「ちょっと待っててね」と言い、台所に向かう。
鍋の音が聞こえ、湯気が立ち上る匂いが部屋に広がった。やがて、彼は温めたお粥の碗を持って戻ってきた。
「お粥作ったけど、食べられる?」と聞くと、彼女は少し照れくさく「何だか、ちょっとだけ空いたかも……」と答えた。
竜騎士はスプーンでお粥をすくい、彼女の口に優しく持っていった。
柔らかなお粥が唇に触れ、温かな味が広がる。
「美味しい……」彼女の言葉に、竜騎士は照れくさそうな顔をした。
エオルゼアのリムサ・ロミンサの調理師ギルドで鍛えた腕前が、こんな時に発揮されて良かった。
彼の料理は、ただの食事ではなく、愛情のこもったものだった。
お粥を食べ終わると、彼女は甘えて彼に寄りかかってきた。
竜騎士は優しく頭を撫でてあげた。
柔らかな髪が指に絡み、彼女の体温が伝わる。
この瞬間、二人は戦士ではなく、ただの恋人として、静かな時間を共有した。外の風が窓を叩く中、癒しの夜がゆっくりと流れた。