※この作品はR-18です。

女武闘家と竜騎士   作:蒼月あお

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女武闘家が目を覚ますと、自分の膝下に竜騎士の頭が乗せられ、スヤスヤと寝息を立てていた。

一日中彼女を看病し続け、いつの間にか熟睡してしまったようだ。

ベッドの端で体を折り曲げ、疲れた体を休めている彼の姿に、彼女はそんな彼がちょっと可愛いと思った。

 

昨日の疲れが体から抜け、すっかり元気を取り戻していた。

竜騎士も彼女の動きに気づき、目を擦りながら起き上がった。

 

「ごめん、いつの間にか眠ってしまったようだ……」

 

彼の声は少し照れくさく、看病の疲れが残っていた。

女武闘家は微笑み、首を振った。

 

「ううん、ありがとう。すっかり元気だよ。でも、寝汗が凄いから、お風呂入るね! 一緒に入る?」

 

彼女の言葉はからかうように軽く、しかし甘い響きを帯びていた。

 

竜騎士は少し考えて、「一緒に入るのはいいけど、病み上がりだからしないよ」と優しく諭した。

 

女武闘家は「むう……」と頰を膨らませ、しかめ面をした。

 

だが、心の中では彼の気遣いが嬉しかった。

二人は家のお風呂へ向かい、湯船に浸かり、体を洗い合った。

蒸気が立ち上る中、穏やかな時間が流れる。

着替えを済ませると、昨日の子供たちが気になり、朝食を兼ねて村の酒場へ寄った。

 

酒場のマスターは二人の姿を見つけると大声で迎えた。

 

「おう、元気になったか! 子供たちも待ってるぜ!」

 

店内には子供たちの元気な声が響き、男の子たちはテーブルで遊んでおり、女の子たちはマスターに懐いている様子だった。

酒場のマスターは大皿の朝食を運びながら、「俺、結婚していないんだけどな〜」と豪快に笑った。

 

その言葉に、子供たちが「じゃあ、ママと結婚すれば!」とからかい、店内が笑い声に包まれた。

 

二人はテーブルに座り、温かなスープとパン、果物を頰張った。

子供たちの元気な声が耳に心地よく、昨日の嫌な出来事…村の闇、奴隷たちの苦しみを少しずつ忘れさせるようだった。

この村の平和が、二人の心を癒す。

 

朝食を終えた二人は、診療所に顔を出した。

村にある小さな建物は、朝の陽光に照らされ、穏やかな雰囲気を湛えていた。

扉を開けると、薬草の匂いがふわりと広がり、女医が笑顔で迎えた。彼女は、白衣を羽織り、手に包帯の束を抱えていた。

 

女医は二人の姿を見つけ、すぐに近づいてきた。

 

「おはよう。ちょうど良かったわ。若い子の方は、本人の希望もあって、診療所の手伝いをしてもらっているのよ」

 

彼女の言葉に、二人は視線を移した。

そこには、若い女奴隷だった少女が立っていた。

清潔な服に着替えており、二人の顔を見ると深く頭を下げた。

 

「辛いけど……動いている方が気が紛れるから、手伝いさせて貰っています」

 

彼女の声はまだ弱々しかったが、目は少し輝きを取り戻していた。

過去の苦しみを振り払うように、包帯を巻く作業に集中している様子だった。

女武闘家は優しく頷き、「無理しないでね。でも、元気そうで良かったわ」少女は小さく微笑み、作業に戻った。

 

女武闘家は「でも、もう一人の彼女は……」と続ける。

視線を向けると、もう一人の女奴隷、子供たちの母親がベッドに横たわっていた。

立つこともままならない状態で、顔色は青白く、体は痩せ細っていた。

栄養失調の影響が、彼女の体を蝕み続けているようだった。

 

女医がそっと近づき、二人の肩に手を置いた。

 

「今はあんな状態で、栄養失調が酷いけど、次第に良くなるから安心してちょうだい。少しずつ栄養を摂らせて、回復魔法も併用しているわ。子供たちも酒場のマスターのところで元気にしているわよ」

 

彼女の言葉は心強く、二人は安堵の息を吐いた。

この診療所が、奴隷たちの新たな始まりの場となる。

村の平和が、ゆっくりと彼女たちを癒していくのだった。

二人は診療所で元奴隷だった二人の様子を見て、とりあえず一安心した。

若い少女は手伝いに励み、もう一人の母親も女医の献身的な看護で、少しずつ回復の兆しを見せていた。

 

子供たちの笑い声が遠くに聞こえ、村の穏やかな空気が心を癒す。

女武闘家は竜騎士の腕に寄りかかり、「これで良かったのね……」と呟いた。彼は頷き、優しく肩を抱いた。

 

診療所に停めておいた馬車に乗り、二人は再び辺境の街のギルドに向かった。

馬の蹄が土を蹴り、風が頰を撫でる道中、昨日の戦いの余韻を振り払うように軽やかな会話を交わした。

 

街に着くと、ギルドの石造りの建物がいつものように迎える。

先日の依頼の報告を済ませて、二人は掲示板で依頼を眺めた

盗賊討伐の後、黒曜級の腕が活かせるものを物色する。

 

だが、その平穏は突然一変した。ギルドの扉が勢いよく開き、ゴブリンスレイヤーが現れた。

ギルド内がざわつき、冒険者たちが視線を集中させる。

彼はギルドの全員に向かって深く頭を垂れた。

要約すると、街外れの牧場に、ゴブリンの群れが来る。

その中には、ロードと呼ばれる小鬼の王がいるらしい。

力を貸してくれとの懇願だった。

 

彼の声は低く、しかし切実だった。

牧場は彼の帰る場所であり、家族のような大切な人のいる場所、全てを投げ出しても、守りたいらしい。

 

ゴブリンスレイヤーの名は、この辺境で知れ渡っていた。

ゴブリンだけを狩る狂人として、だがその実力は本物。

噂では過去の惨劇が、彼を駆り立てるらしい。

 

受付嬢が即座にアナウンスした。

 

「ギルドからも懸賞金を出します! ゴブリン一匹につき、金貨一枚!」

 

破格の報酬に、ギルド内が沸いた。

冒険者たちが武器を点検し、準備を始める。

 

竜騎士と女武闘家も、懸賞金の話が無くとも手伝う気満々だった。

過去に遺跡調査で一緒に戦った仲間だ。

だが、この破格の報酬に、やる気がさらに漲った。

 

「行こう一緒に」

 

竜騎士が槍を担ぎ、女武闘家は拳を握った。

ゴブリンロードの影が、牧場に迫る中、二人の新たな戦いが始まろうとしていた。

ギルドの喧騒の中で、竜騎士と女武闘家はゴブリンスレイヤーに近づき、挨拶を交わした。

 

「前に遺跡で一緒に戦った時以来だね。よろしく!」

 

竜騎士が槍を担ぎながら声をかけると、ゴブリンスレイヤーは兜の下から覗く目で軽く頷いた。

隣には女神官が立っており、彼女は女武闘家を見つけると目を輝かせた。

 

「 また一緒に戦えて嬉しいです!」

 

女神官の純粋な喜びが、女武闘家を微笑ませた。

二人は軽く抱き合い、再会の喜びを分かち合った。

ゴブリン巣穴の悲劇を乗り越えて、あの遺跡での戦いが、二人の絆を強くしていたようだ。

 

ギルドの冒険者たちが準備を進める中、竜騎士は女武闘家に目を向け、「よし! 牧場に行くぞ!」と息巻いた。

 

女武闘家も拳を握りしめ、頷く。

二人の戦意を高めていた。

だが、ゴブリンスレイヤーは二人の前に立ち、「お前達に頼みがある」と低い声で言った。

その言葉に、二人は足を止め、彼の話を聞いた。

 

ゴブリンスレイヤーは地図を広げ、簡潔に説明した。

 

「ゴブリンの軍勢が牧場に向かっている間に、奴等の巣を落として帰る場所を無くさせる。俺達でそれをやる」

 

彼の計画は冷徹で、効率的だった。

 

巣窟の場所は、街外れの森の奥深く。

恐らく女性たちは肉の盾として駆り出されるだろうが、何人かは数を増やすために残してあるという。

 

ゴブリンの残酷な習性を知り尽くした彼の言葉に二人は息を呑んだ。

 

「救出したあと、お前達は女性達を守りながらギルドまで連れて行って欲しい」

 

ゴブリンスレイヤーの予想だと不利になったロードは巣に逃げ帰るはずだから、そこをゴブリンスレイヤーと女神官二人で襲うというのだ。

ただ、女性を助けた後に一緒に女性を連れて行く事は出来ない。

戦いに集中するため、移動の負担を避けたい。

更には牧場防衛の戦力は削りたくない。

よって、その役目を竜騎士と女武闘家に頼んだのだった。

 

「わかった。任せてくれ」

 

竜騎士の声は力強く、女武闘家も「女性達を救うわ」と決意を述べた。

 

ゴブリンの脅威が、再び二人の冒険を加速させる。

この作戦が、成功するかどうかは、彼らの連携にかかっていた。

ギルドの外へ向かう足取りが、重く響くのだった。

夜の帳が辺境の森を覆う頃、四人は作戦を実行に移した。

ゴブリンの軍勢が牧場に向かって出払った後を見計らい、ゴブリンスレイヤーと女神官、竜騎士と女武闘家は静かに巣穴へ侵入した。

 

森の奥深く、岩肌に穿たれた洞窟の入り口は、暗く湿った空気を吐き出していた。

 

ゴブリンスレイヤーが先頭を切り、兜の中の目が鋭く輝く。

女神官は杖を握り、祈りの言葉を呟きながら後ろを固めた。

竜騎士のゲイボルグ・アルテマが微かなエーテルの光を放ち、女武闘家のスファライ・アルテマが拳を鳴らす。

 

洞窟の中は、大規模な群れの巣窟だけあって広大だった。

迷路のような通路が広がり、天井からは水滴が落ち、足元はぬかるんだ土で滑りやすい。

ゴブリンの大半が出払っていたため、留守番の数匹が散発的に襲いかかってきた。

ゴブリンスレイヤーの剣が閃き、一匹を即座に斬り伏せる。

竜騎士は槍を振り、飛びかかるゴブリンを突き刺した。女武闘家は拳で頭を砕き、ただ女神官はロード戦の切り札らしく魔法は温存だった。

 

戦闘は短く、しかし罠に注意を払いながら進んだ。

仕掛けられた落とし穴や毒針の矢の罠などは、ゴブリンスレイヤーの経験が事前に察知し、避けていった。

あっさりと奥まで辿り着き、そこには数名の女性たちが鎖で繋がれ、衰弱した姿で横たわっていた。

 

「これで……終わりだ」

 

ゴブリンスレイヤーが低く呟き、鍵を壊して女性たちを解放した。

彼女たちは虚ろな目で四人を見つめ、感謝の言葉さえ出ないほど疲弊していた。

女性達を外へ連れ出し、新鮮な空気を吸わせると、少しずつ息を吹き返した。竜騎士がケアルガの範囲魔法で一気に回復させる。

竜騎士はゴブリンスレイヤーに視線を向け、槍を握りしめた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ロードはかなり強いと聞いたが、本当に付いていかなくていいのか?」

 

彼の声には心配が混じっていた。女神官との二人での戦いを危惧した。

だが、ゴブリンスレイヤーは静かに首を振った。

 

「……策はある。女達を頼んだぞ」

 

彼の言葉は冷徹で、しかし確信に満ちていた。

女神官が微笑み、「私たちで何とします。女性たちをお願いします」と付け加えた。

竜騎士と女武闘家は頷き、女性たちを回復させると、護衛しながらギルドまで戻っていった。

森の道を慎重に進みながら、女性たちの弱った体を支える。

女武闘家は彼女たちに優しく声をかけ、「もう大丈夫よ。一緒に帰りましょう」と励ました。

 

街に着くとギルドの灯りが遠くに見え、二人の心に安堵が広がった。

 

二人は女性たちを護衛しながら、無事にギルドに戻った。

森の闇を抜け、街の灯りが近づくと、女性たちの表情に安堵の色が浮かんだ。

ギルドのカウンターで、受付嬢が迎え入れ、女性たちを引き渡した。

彼女たちは疲弊しきっていたが、回復魔法と温かな食事の約束に、少しずつ笑顔を見せ始めた。

女武闘家は彼女たちを抱きしめ、「もう安全よ。ゆっくり休んで」と優しく言った。

竜騎士も頷き、ギルドのスタッフに託した。

 

暫くすると、ギルドに報告が入った。牧場の防衛に成功したという。

ゴブリンの軍勢は撃退され、ロードもゴブリンスレイヤーに打ち取られたそうだ。

牧場の危機は去った。冒険者たちの活躍が、牧場を救ったのだ。

ギルド内が歓声に沸き、二人はホッと胸を撫で下ろした。

 

「ゴブリンスレイヤーさんたち、無事だったのね……」

 

女武闘家が呟き、竜騎士は「彼らの策が功を奏したんだろう」と答えた。

 

やがて、冒険者たちが泥だらけの体で帰ってきて、ギルドは宴の場と化した。テーブルに酒と料理が並び、笑い声が響く。

 

妖精弓手が立ち上がり、杯を高く掲げた。

 

「私達の勝利と、牧場と街と冒険者、それからいつもいつもゴブリン言っているあの変なのに! かんぱーい!!」

 

彼女の明るい声に杯を合わせた。ゴブリンスレイヤーは黙って酒を飲むが、皆の視線が彼に注がれていた。

竜騎士と女武闘家も二人で料理を食べながら、ワインを飲んでいた。

雑談をしながら互いの目を見つめ合う。

 

「今日もお疲れ様」竜騎士が優しく言い、女武闘家は微笑んだ。

 

暫くすると「オルグボルグ兜外しているー!!」妖精弓手が騒ぎ、皆がゴブリンスレイヤーに注目行く中、二人は隅の方で見つめ合い、乾杯をする。

宴の喧騒がピークに達する中、妖精弓手がふらふらと酔っ払いながら二人の元に絡んできた。

杯を片手にニヤニヤと笑い、指を突きつけた。

 

「また二人で隅っこでイチャイチャしてるの? 私にはお見通しよ!」

 

彼女の声は高く、ギルド内の視線を集める。

女武闘家は慌てて手を振り、「え? そんな事ないですよ!」と否定したが、妖精弓手は聞く耳を持たず、二人の腕を掴んだ。

 

「ほら、こっちに来なさい!アンタ達は影の功労者でしょ!」と強引に引きずり、ゴブリンスレイヤー一行のテーブルへ連れて行った。

竜騎士は苦笑し、女武闘家は頰を赤らめながら従った。

テーブルに着くと、二人は初めて見るゴブリンスレイヤーの素顔に驚きを隠せなかった。

普段の無骨な甲冑姿とは打って変わって、整った顔立ちだった。

 

「これは……」

 

竜騎士が呟き、女武闘家も目を丸くした。

 

女神官は微笑みながら、「こっちの方が素敵ですよね」と囁いた。

 

彼女の純粋な言葉に、竜騎士と女武闘家も同意だった。

 

「確かに、兜の下は意外と爽やかだね」

 

竜騎士が頷き、女武闘家も「ええ、もっと早く見せてくれれば良かったのに」と笑った。

 

ゴブリンスレイヤーの隣にいる牛飼い娘が「この人、牧場でご飯食べる時も兜を脱がないんですよ」と話した。

彼女の声は親しげで、ゴブリンスレイヤーの素顔を当たり前のように見つめていた。

竜騎士は冗談ぽく、「なんかその言い方、奥さんみたいな感じですね」とからかった。

牛飼い娘はあっさり「うん、そうだよ」と答え、皆が一瞬固まった。

 

だが、ゴブリンスレイヤーは即座に「違う」と否定し、杯を口に運んだ。

その素早い反応に、テーブルが笑いに包まれた。

 

女武闘家は女神官にそっと寄り添い、「貴女も頑張らないとね」と囁いた。女神官は顔を赤らめ、「そんなんじゃないです……」と慌てて否定したが、目はゴブリンスレイヤーに向いていた。

 

女武闘家はさらに、「私は貴女の事、応援しているわよ」と優しく声をかけた。女神官は小さく頷き、照れくさそうに杯を傾けた。

宴は続き、皆の笑い声がギルドを満たした。

 

そして宴が終わり、二人は辺境の街を歩いていた。

ギルドの喧騒を後にし、夜の通りは静かで、街灯の柔らかな光が石畳を照らしていた。

風が涼しく頰を撫で、酒の余韻が体を温かくする。

 

女武闘家は竜騎士の方を向き、笑顔で話しかけた。

 

「ゴブリンスレイヤーさん、兜の下は意外とかっこよかったね」

 

彼女の声はからかうように軽く、宴での素顔の記憶を振り返っていた。

竜騎士は少しヤキモチを妬いたような顔をした。

恋人から他の男の魅力を言われると、胸がざわつく。

 

「むう……」と小さく鼻を鳴らし、視線を逸らした。

 

その表情が子供っぽく、女武闘家は可笑しくてクスクス笑った。

 

「そんな顔しちゃって。あなたが一番素敵よ」

 

彼女は自然と彼の腕に自分の腕を組み、寄りかかった。

温かな体温が伝わり、二人の影が街灯の下で一つに重なる。

竜騎士は何だか子供っぽい自分が恥ずかしくなり、頰を赤らめて照れた。

普段の冷静な戦士の姿とは違い、恋する男として素直になれない自分がもどかしい。

 

「あなたは彼みたいにモテなくていいの。私だけがあなたの良さ知っていれば……」

 

女武闘家はさらに甘く囁き、彼の心をくすぐった。

彼女の言葉は独占欲を込め、しかし優しく包み込む。

竜騎士は彼女の目を見つめ、微笑んだ。

 

「僕だって、君が一番だよ。」

 

その答えはシンプルだが、真摯だった。

二人は歩みを緩め、互いの温もりを確かめ合うように寄り添った。

 

夜風が二人の髪を揺らし、街の静けさが恋の甘さを増幅させていた。

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