翌朝、女武闘家が目を覚ますと、彼女は竜騎士に抱きついていた。
彼の身体の温もりと匂い、全てが彼女を安心させる。
ベッドのシーツが二人の体を優し包み込む。
窓から差し込む朝の光が部屋を柔らかく照らしていた。
彼と一緒に寝る様になって、それまで毎晩の様に見ていた仲間が殺され、泣き叫ぶ自分を嘲笑うかのように何度も犯すゴブリンの夢を見なくなった。
彼の存在が少しつづ女武闘家の心を癒していた。
でも昨日、急にあの忌まわしい記憶が蘇り、怖くなって震えてしまった。
突然、あのゴブリンの残虐な行為を思い出させた。
体が硬直し、心が凍りついた。
彼がそんな私の事を嫌にならないか不安になった。
トラウマを抱えた自分が、負担になっていないか。
武闘家として最近自信がついて来たのに、心の弱さが露呈して、悔しかった。
そんな事を考えていると、隣で寝ていた彼が目を覚ました。
竜騎士はゆっくりと体を起こし、女武闘家の髪を優しく撫でた。
「おはよう……」
彼の声はいつものように穏やかで、優しいキスを唇に落とした。
朝の光が彼の横顔を照らし、彼女の心を溶かす。
キスは優しく、互いの息が混じり、昨日の余韻を優しく繋ぐものだった。
女武闘家は彼の胸に顔を埋め、不安を振り払うように抱きついた。
そして女武闘家はベッドの上で体を起こし、昨日の事を謝った。
「昨日はごめんね……」
彼女の声は小さく、目を伏せて指を絡めた。
竜騎士はそっと彼女を抱きしめ、温かな腕で包み込んだ。
「そんな事ないよ」
彼の声は優しく、彼女の背中を撫でる。
「君の気持ち、わかってる。僕がそばにいるよ」
彼女の震えを優しく受け止め、キスを額に落とした。
女武闘家は彼の胸に顔を押しつけ、恐る恐る聞いた。
「私の事……負担になっていない……?」
トラウマを抱えた自分が、彼の重荷になっていないか。
不安が胸を締めつけた。
竜騎士は首を振り、彼女の顔を優しく持ち上げて目を見つめた。
「そんな事ある訳ないよ。君と一緒にいるだけで、僕は満足だよ」
その言葉は真摯で、彼女の心を溶かした。
女武闘家は涙目で「うん……ありがとう」と答え、彼に寄りかかった。
二人はベッドで少し寄り添い、朝の静けさを味わった。
やがて起き上がり、宿屋の朝食を取った。
温かなパンとスープ、果物がテーブルに並び、穏やかな会話を交わす。
食事が終わると、二人は宿屋を出た。
街の朝の空気が気持ちよく、商人たちの声が活気づいていた。
竜騎士は彼女の手を握りしめた。
「今日は無理して依頼こなさなくてもいいんだよ 一緒にデートする?」
戦いの合間の休息を、彼女のために提案した。
女武闘家の顔がパッと明るくなり、「デートする!」と喜びの声を上げ、彼の腕を組んだ。
彼女の笑顔が、朝陽に輝く。
二人は街を歩き始め、この穏やかな時間が、昨日の影を優しく払うのだった。
そして竜騎士と女武闘家は手を繋いでデートをした。
辺境の街の通りを歩き、二人は自然と指を絡め合った。
彼女の温かな手が、彼の心を優しく満たす。
ありふれた日常、しかし二人にはそれが特別に感じられた。
まず、二人は買い物をした。
街の市場で、新鮮な果物や布地を眺めながら買い食いをする。
彼女が可愛いアクセサリーを見つけて目を輝かせた。
「これ、似合うかな?」
彼女が黄色いスカーフに似たリボンをポニーテールの頭に付けて見せると、竜騎士は微笑んで頷いた。
「君にぴったりだよ。買おうか」
小さな宝石のブレスレットを一緒に選び、互いの腕に付け合った。
笑い声が混じり、日常の喜びが心を癒す。
お昼には、一緒に食事をした。
街角の小さな食堂で、温かなスープと焼きたてのパン、チーズのサラダを注文した。
テーブルに向かい合い、穏やかな会話を楽しんだ。
女武闘家は竜騎士を見張りながら、「ちゃんと野菜食べないとダメだよ」と注意する。
竜騎士は苦笑いしながらも、「あ、でもこのチーズのサラダは美味しい!あの牧場のチーズかな?」と答えた。
その後、公園で二人で話をして過ごした。
ベンチに座り、木々の葉ずれの音を聞きながら、互いの過去や未来を語り合った。
ありふれたいつものデートだったが、二人はそれが楽しい時間だった。
彼女の笑顔が彼の心を明るくし、彼の優しさが彼女の不安を払う。
そして夕陽が街を橙色に染める中、二人は肩を寄せ合い、幸せを噛み締めた。
この穏やかな一日が、ずっと続いて欲しいと願った。
デートの一日が終わり、二人は宿屋に戻った。
辺境の街の夜は静かで、街灯の柔らかな光が窓から差し込む。
女武闘家は竜騎士の腕を離さず、部屋の扉を閉めると、自然と彼を抱き寄せた。
「今日、楽しかった……あなたと一緒にいると、時間があっという間」
彼女の声は甘く、公園での会話の余韻が残っていた。
竜騎士は彼女の腰を抱き、優しくキスをした。
「僕もだよ。君と一緒にいると時間を忘れちゃう、毎日一緒にいるのにね」
唇が再び触れ合い、互いの息が混じる。
デートの興奮が、再び熱を帯びて体を駆け巡る。彼女は彼の胸に手を当て、シャツのボタンを外し始めた。
「続き……しよ?」悪戯っぽい笑みが浮かぶ。
二人はベッドに倒れ込み、服が次々と落ちた。
竜騎士は彼女の体を優しく愛撫し、正常位で見つめ合いながら繋がった。
昨夜のトラウマを思い出しながらも、彼の優しい視線が彼女の心を安心させる。
「あなたを見てると、怖い記憶が消えていく……」
彼女の声は甘く、腰を絡めて彼を引き寄せた。
リズムはゆっくりから激しくなり、二人は頂点に達した。
息を切らしながら抱き合い、汗ばんだ体を寄せ合う。
女武闘家は彼の胸に顔を埋め、「大好き……」と呟いた。
竜騎士は髪を撫で、「僕もだよ。ずっと一緒にいようね」
長い二人の夜を過ごした。
翌朝、女武闘家が目を覚ますと、竜騎士はすでに起きていて、窓辺で街の景色を眺めていた。
朝の光が彼の横顔を照らし、穏やかな表情が彼女の心を落ち着かせる。
昨夜の甘い時間と、わずかな不安の余韻が残る中、彼女はベッドから体を起こした。
「おはよう……」
竜騎士は振り向き、優しく微笑んだ。
「おはよう、よく寝れたかい?」
彼はベッドに近づき、彼女の髪を撫でた。
昨日のデートが楽しかった分、彼女の心の影を少しでも払いたいと思った。彼はそっと提案した。
「たまには違う街に行ってみないかい?」
女武闘家はえっ、と驚いて目を丸くした。
いつもはこの辺境の街や近くの村を拠点に冒険を続けていたのに、突然の提案に戸惑った。
「違う街……? どうして急に?」
竜騎士は彼女の手を取り、優しく言った。
「違う地に行けば、少しは君の気持ちも晴れるんじゃないかと思ってさ。水の街というのがあるらしいよ。ここより大きな街みたいだ。運河が張り巡らされていて、船で移動したり、市場が賑わってるんだって。たまには気分転換で遊びに行ってみるのもいいだろう?」
彼の言葉は、彼女のトラウマを気遣ったものだった。
この地のゴブリンの記憶が蘇るのを、少しでも遠ざけたい。
女武闘家は彼の意図を感じ取り微笑んだ。
「うん、あなたとならどこでもいくわよ」
彼女は笑顔で答え、竜騎士の腕に寄りかかった。
二人は朝食を済ませ、荷物をまとめ、水の街への旅を決めた。
彼女の心を癒すものになることを祈りながら。
二人は旅を楽しむ様に準備をして、水の街へ向かった。
荷物を最小限にまとめ、辺境の街を後にする。
ギルドで地図を確認し、道中の村や宿を調べた。
急がずゆったりとした旅を提案した。
女武闘家は笑顔で頷いて
「あなたと一緒なら、どんな道も楽しいわ」
乗り合い馬車を乗り継ぎ、時には徒歩で進んで行った。
馬車の車輪が土を転がる音が心地よく、道中の風景が心を癒す。
森の緑、川のせせらぎ、道端の花々が、二人の会話を弾ませた。
馬車の中で隣り合い、手を握り、時には肩を寄せ合って眠る。
徒歩の時は、手を繋いで歩き、途中で休憩を取りながらゆっくり歩いて行く
そして、のどかな村に二人は辿り着いた。小さな家々が並び、畑が広がる平和な場所。
村の中心の広場にベンチがあり、二人は腰をかけた。
木陰が涼しく、子供たちの笑い声が遠くに聞こえる。
女武闘家は周囲を眺め、深呼吸をした。
彼女の顔は何処か楽しげで、昨日の不安が、少しずつ薄れているようだった。
竜騎士はそんな彼女を見て、安心した。
トラウマが彼女を苦しめるのが心配だったが大丈夫な様だ。
「君が笑顔になって良かった」
彼はそっと手を握り、彼女は照れくさく笑った。
「あなたのおかげよ……ありがとうね」
二人はベンチで少し休み、水の街で何をするか話していた。
広場のベンチで休む二人の元に、小さな少女がやって来た。
村の子供らしく、粗末な服を着て、髪を三つ編みにした可愛らしい子だった。
彼女は少し緊張した様子で近づき、大きな目で二人を見上げた。
「お兄さんとお姉さんは、冒険者さんなの?」
女武闘家は少女に向かって優しく微笑み、ベンチから身を乗り出した。
「そうだよ、私達は冒険者だよ。どうしたのかな?」
彼女の声は穏やかで、少女の緊張を解すように柔らかかった。
竜騎士も隣で頷き、少女の視線を優しく受け止めた。
少女は少しもじもじしながら、言葉を続けた。
「実は、お母さんが病気で……薬草取りに行きたいんだけど、大人はみんなダメって言うの。だから、冒険者さんと一緒なら大丈夫かなって……」
彼女の目は切実で、小さな手がスカートの裾を握りしめていた。
村の大人たちが心配するのは当然だ。
竜騎士は少女の頭を優しく撫で、「駄目じゃないけど、お母さんや周りの人が心配するから、お兄ちゃんとお姉ちゃんで行って来てあげるよ」
彼の言葉は優しく少女を安心させるものだった。
女武闘家も少女に語りかける。
「そうだよ。私達に任せて。お母さんを早く元気にしようね」
少女は目を輝かせ、「ほんと!」と喜びの声を上げた。
彼女は小さなポケットから、恐らく自分で溜めたであろうお金…銅貨が数枚を取り出し、「これ、依頼料だよ!」と差し出した。
子供らしい純粋さが、心を温かくした。
女武闘家は優しく手を振り、「これは私達が薬草取って来てからでいいわよ」と言い、受け取らなかった。
少女の小さな努力を尊重しつつ、負担をかけまいとする優しさだった。
少女は少し残念そうだったが、すぐに頷き、地図を持って来た。
粗末な紙に、手描きの地図が描かれていた。
「この辺にあるの……森の奥の川辺だよ」
二人は地図を受け取り、少女に約束した。
女武闘家は少女に優しく「わかった。すぐに行って来るよ。お母さんと一緒に待っていててね」と頭を撫でた。
少女は手を振って見送り、二人は広場を後にした。
二人は少女の依頼を引き受け、まず村の中心から少し離れた薬屋に寄った。
流石に少女の手描き地図だけでは心許ない部分があったので、情報を集めに聞き込みをするためだ。
薬屋は小さな木造の建物で、棚に瓶や乾燥した草が並び、薬草の香りが漂っていた。
カウンターで女性店主が迎え、優しい笑顔で対応した。
彼女は薬師で、村の病気を治す頼れる存在らしい。
少女の話と地図を説明すると、店主は頷き、ちゃんとした地図を広げて教えてくれた。
「この薬草は森の奥、川辺の湿った土に生えてるわ。道はここを通って、大きな岩を目印に……」
彼女の説明は詳しく、地図に赤い線を引いてくれた。
少女の病気の母親のため、薬の調合についてもアドバイスをしてくれた。
薬師は二人に対して、ついでにこの森で取れるキノコを見かけたら取って来て欲しいと言う。
精力剤の材料になり、希少価値があるらしい。
薬師は行き先の森について語った
ただ、森は恐ろしい魔物が出る訳ではないが、イノシシや熊といった危険な動物がいるので、狩人以外はあまり近づかないらしい。
「冒険者さんたちなら大丈夫だろうけど、気をつけてね」
店主の言葉に、二人は頷いた。
竜騎士は槍を担ぎ、女武闘家は拳を握りしめ、準備万端だった。
二人は村を出て、薬草を探しに森に入っていった。
木々が密集し、陽光が葉の隙間から差し込む中、地図を広げて奥へ進む。
足元は柔らかな落ち葉が敷き詰められ、鳥のさえずりが心地よい。
女武闘家は地図を覗き込み、「この道で合ってるわよね?」と確認した。
竜騎士は頷き、「そうだよ。小川が目印だ」二人は手を繋ぎ、時折笑い声を上げながら歩いた。
旅の途中でのこの小さな冒険が何だか楽しい。
やがて、小さな小川に辿り着いた。
水の流れが清らかで、周囲の湿った土に青々とした薬草が生えていた。
薬剤師から教えて貰った特徴、細長い葉に白い花弁と一致する事を確認すると、二人は丁寧に採取した。
女武闘家は袋に詰めながら、「これであの子のお母さん、元気になれるわね」と微笑んだ。竜騎士も手伝い、「少女の顔が楽しみだね」
女武闘家は辺りを見渡し、「あとは薬師さんに頼まれたキノコがあればいいんだけどね」と呟いた。
薬師の話を思い出しながら茶色の傘に白い斑点の希少なものを探す。
竜騎士は注意を促し、「毒キノコに似ているから、注意だね。間違ったら大変だ」二人は木の根元や倒木の近くを慎重に探した。
その時、気配がした。森の奥からガサガサと音が近づき、いきり立ったイノシシが突進してきた。
角が鋭く、目が血走った大型の獣。
竜騎士と女武闘家は素早く避け、竜騎士のゲイボルグ・アルテマがイノシシの脇腹を突き刺した。
勢いが止まらず、女武闘家が跳び上がり、首の部分に踵を落とす。
骨の砕ける音が響き、イノシシは倒れた。
女武闘家は息を吐き、「びっくりしたね……」と笑った。
竜騎士も槍を収め、「そうだね。急に来たよ。」二人は互いの無事を確認し、軽く肩を叩き合った。
そしてまた気配がして、二人は警戒した。だが、今度は村の狩人だった。
弓を背負った中年男性で、森の奥から現れ、倒れたイノシシを見て目を丸くした。
「まさか人がいるとは思わず、追い込んでしまった……すまない!」
彼は頭を下げ、謝罪した。
狩りの最中で、獣をこの方向へ誘導していたらしい。二人は許し、「大丈夫ですよ」と答えた。
狩人はお詫びにイノシシを解体し、「ここは一番旨い部分だ」と肉を分けてくれた。
脂の乗った新鮮な肉で、村の名産らしい。
それと、キノコのある場所を教えて貰った。
「あのキノコなら、川上流の湿地に生えてるよ。気をつけてな」
彼の情報は正確で、二人は感謝した。
二人は教えて貰った場所に行くと、キノコが生えていた。茶色の傘に白い斑点の希少なもの。毒キノコと見分け、慎重に採取した。
袋に詰め、少女の依頼と薬剤師のついでの両方を果たせた。
「これで完璧ね!」
薬草とキノコの採取を終え、二人は森を後にして村への帰り道を歩いた。
木々がまばらになり、陽光が差し込む中、道の脇に小さな滝が見えてきた。
水の音が爽やかで、周辺の岩が苔に覆われ、自然の隠れ家のような場所だった。
女武闘家は足を止め、目を輝かせた。
「ねぇ、ちょっと汗かいたし、水浴びしない?」
竜騎士は周囲を警戒しつつ、微笑んだ。
「僕は周囲を見張っているから、浴びて来なよ」
槍を肩に掛け、丁度良さそうな石の上に座り、辺りを見渡した。
森の気配を感じ取り、危険がないかを確認する。
先程のイノシシの様な野生動物の脅威は残っていた。
女武闘家は少し残念そうに、「え? 一緒に浴びないの?」と尋ねた。
竜騎士は首を振り、「さっきみたいに突然何が来るか分からないからね。君の安全が第一だよ」
彼女は頰を膨らませ、残念そうな顔をしたが、納得して頷いた。
「わかったわ……残念…」
彼女はスカーフを外し、武闘着と下着を脱いでポニーテールを解いた。
長い髪が背中に流れ、美しい肉体が陽射しを浴びてキラキラと輝いていた。
引き締まった肢体、柔らかな曲線が、水辺の風景に溶け込むように美しかった。
竜騎士は彼女の姿に見惚れ、息を潜めて見守った。
武闘家としての強さと、女性としての優美さが、心を奪う。
水浴びしている彼女を、つい見惚れていたら、突然彼女に水をかけられた。
冷たい水しぶきが顔に飛び、竜騎士はびっくりして立ち上がった。
「じっと見ててエッチなんだから!」
彼女の声はからかうように軽く、悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。裸の体を隠さず、水をすくってさらにかける。
竜騎士も仕返しとばかりに、水辺に近づき、水をかけた。
「これでどうだ!」
二人は子供のように水をかけ合い、笑い声が滝の音に混じる。
服が濡れ、彼女の髪が乱れても、楽しげにじゃれ合った。
水浴びが終わり、女武闘家は再び髪をポニーテールにまとめ、武闘着を着た。
濡れた体を拭き、黄色いスカーフを首に巻くと、いつもの冒険者の姿に戻っていった。
竜騎士の鎧の中の服も濡れてしまったので、鎧を脱いで着替え、再び鎧をつけた。
重い甲冑が体に馴染み、槍を肩に担ぐ。
「さて、女の子が待っているから、村に戻ろう」
彼は笑顔で言い、二人は手を繋いで森を後にした。
陽射しが木々の間から差し込み、穏やかな帰り道だった。
村に戻ると、まず薬屋に寄った。
採取した薬草とキノコを店主に渡し、少女の母親のための薬を調合してもらう。
店主は薬草をすり潰し、瓶に詰めながら、「これで熱が下がるはずよ。よく採ってきてくれたわね」と感謝した。
依頼のキノコの代金として、意外に大きな袋の金貨を渡された。
女武闘家は袋を見て、「こんなに?」とびっくりした。
辺境の村で、これだけの額は珍しい。薬剤師は笑いながら説明した。
「とても貴重で、効果も凄いのよ。精力剤の材料として、高値で売れるの。村の外の商人に卸せば、倍になるわ」
女武闘家は悪戯っぽく、「じゃあ、スタミナポーションより凄い効果かもね」と言った。
以前の記憶がよぎり、頰を少し赤らめる。
薬師は苦笑いしながら、「スタミナポーションは精力剤じゃないから、そんな効果ないわよ。疲れは取れても精力増強の効果は無いわよ」と笑った。
三人で笑い合い、薬屋の空気が和やかになった。
二人は薬の瓶を受け取り、少女の元へ向かった。
少女の家は村の外れにあり、粗末な木造の小屋だったが、綺麗にされている感じだった。
窓辺に花が飾られ、庭の雑草が丁寧に抜かれ、貧しさの中にも温かな生活の跡が見えた。
女武闘家は竜騎士に視線を向け、「ここね……」と呟いた。彼は頷き、扉を軽く叩いた。
中から元気よく少女が出て来た。彼女の目が輝き、「お兄さん! お姉さん!」と駆け寄る。
女武闘家は薬の瓶を渡し、「これでお母さん、元気になるわよ」少女は「ありがとう!」と受け取り、銅貨の入った小さな袋を差し出した。
「じゃあ、依頼料ね!」彼女の純粋な笑顔に、二人は微笑んだ。
竜騎士は優しく受け取り、「ちゃんと頂くよ。ありがとう」
少女は部屋の方に走っていき、「お母さん! 冒険者のお兄さんとお姉さんが薬持って来てくれたの!」と元気よく母親に声をかけた。
家の中は質素で、ベッドに寝込んでいる母親の姿が見えた。
彼女は咳をしながら体を起こし、青白い顔で二人を迎えた。
「すみません……娘が無理を言って……」
薬剤師に調合してもらった薬を、少女が母親に飲ませた。
少しずつ色づいた液体が喉を通り、母親の表情が緩んだ。
咳が少し落ち着いたようだった。
母親はベッドから手を伸ばし、「本当にありがとうございます。薬代は何としても払いますから……」と申し訳なさそうに言った。
竜騎士は首を振り、「ちゃんと娘さんから頂いていますから、ご心配なく」と安心させた。
女武闘家は袋から金貨を取り出し、「あと、これは薬草手に入れる時についでに希少なキノコを取って来て売ったお金です」と母親に渡した。
母親は目を丸くし、「こんなにして頂いた上に、受け取れません……」と拒んだ。
今度は女武闘家が優しく言った。
「これはこの子の依頼中に手に入れた物なので、使って下さい」
母親は涙を浮かべ、「本当にありがとうございます……」と頭を下げた。
少女は母親を抱きつき、喜びの声を上げた。
二人は家を後にし、村の空気が優しく二人を包んだ。
その日は小さな村唯一の宿屋に泊まった。
辺境の村らしい質素な建物で、部屋は狭く、ベッドが一つと小さなテーブルだけだったが、二人はそれで十分だった。
今日の出来事、少女の依頼、森の冒険、イノシシの遭遇などを話した。
女武闘家はベッドに座り、ニコニコしながら竜騎士の話を聞いていた。
彼女の笑顔が、部屋の灯りを優しく照らすようだった。
「あの狩人の顔、びっくりしてたわよね!」
彼女が笑うと、竜騎士もつられて笑った。
竜騎士も女武闘家も、心の中で同じことを思っていた。
こんな依頼ばかりだったらいいのに。
危険な戦いや闇の遺跡ではなく、少女の笑顔や村の平和を守るような、穏やかな冒険。
二人はベッドに横になり、優しいキスをして眠りについた。
唇が触れ合い、互いの温もりが心を満たす。夜の静けさが、二人の絆を優しく包んだ。
翌日、二人はあの親子の所にやって来た。
朝の陽光が村を照らし、鶏の声が遠くに聞こえる。
粗末な家の扉を叩くと、母親が出て来た。
そして後から少女が「お兄さんとお姉さんおはよう!」と元気良く挨拶をする。
彼女の声は明るく、昨日よりさらに活気づいていた。
女武闘家は「お母さん体調はどうですか?」と聞くと、母親はだいぶ良くなりましたよと笑顔で答えた。
顔色が少し良くなり、咳も止まっていた。
「おかげさまで、薬が効いて熱が引きました。本当にありがとうございます」
母親の言葉は感謝に満ち、二人はホッと胸を撫で下ろした。
竜騎士は思い出したかのように、袋から昨日手に入れた肉を取り出した。
「良かったらこれ食べてください。僕達は旅の途中で、料理する事ないので」
新鮮なイノシシの肉が、脂の乗った部分で、親子の食料として役立つはずだった。
母親は何から何までありがとうございますとお礼を言った。
目が少し潤み、娘を抱き寄せた。
せめて、この肉を使った料理をご馳走したいからお昼にまた来て下さいと言う。
母親の言葉は温かく、二人は頷いた。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
女武闘家が笑い、少女が手を振って見送った。
この小さな交流が、二人の旅に優しい思い出を刻むのだった。
村の広場で、竜騎士と女武闘家は少女と村の子供たちと一緒に遊んでいた。
子供たちは冒険者の二人が珍しく、目を輝かせて質問を浴びせた。
「お姉さん、拳で岩を割れるの?」「お兄さん、槍でドラゴン倒したことある?」
女武闘家は笑いながら拳を握り、「見てて!」と軽く石を叩いて砕いてみせた、子供たちの歓声が上がった。
竜騎士は槍を回して技を披露し、皆を沸かせた。
この無邪気な時間は、旅の疲れを忘れさせるものだった。
お昼が近くなると、それぞれお昼を食べに家に帰っていった。
子供たちが手を振って散らばる中、二人は少女に「早く早く!」と急かされながら彼女の家に向かった。
少女の小さな手が二人の手を引き、足取りが軽やかだった。
「お母さんの料理、絶対美味しいよ!」
彼女の声は興奮に満ち、粗末な家に着くと、扉を勢いよく開けた。
家では母親が料理をご馳走してくれた。昨日もらったイノシシの肉を使ったローストや煮込み、それに村の野菜を加えたスープやパン。
粗末なテーブルに並んだ料理は、香ばしい匂いが部屋に広がり、温かな家庭の味がした。
ローストは外側がカリッと焼け、中はジューシー。煮込みは肉の旨みが染み出し、野菜の甘さが優しく溶け合っていた。
「どうぞ、召し上がれ」
母親は少し照れくさそうに言った。
少女はお母さんの料理美味しいでしょ!とドヤ顔で自慢していた。
「これ、特別なんだよ!」と胸を張る。
竜騎士と女武闘家も本当に美味しいですよと絶賛した。「お肉の火加減が完璧ですね。」竜騎士が言うと、女武闘家が「スープの味付けも最高! 村の野菜が新鮮で、染みるわ」と付け加えた。
母親は照れながらも満更でもない表情で、「ありがとうございます……皆さんのおかげで、こんなご馳走が作れました」
食事が進む中、少女の笑い声が部屋を明るくした。二人はこの温かな時間に、心が癒されるのを感じた。
お昼のご馳走が終わり、二人は満足げに箸を置いた。
イノシシの肉を使った料理は、母親の腕前で予想以上に美味しく、村の温かな味が心に染みた。
だが、時間は過ぎ、二人は旅を続けることに…
竜騎士が立ち上がり、「では、僕達はそろそろ行きます」と優しく言った。
水の街への道はまだ長く、村での滞在はここまでだった。女武闘家も頷き、「本当にごちそうさまでした」と母親に頭を下げた。
少女は目を丸くし、「えー、もう行っちゃうの?」と寂しそうに言った。
小さな手がテーブルの端を握り、別れを惜しむ表情が可愛らしかった。母親も少し寂しげに、「もう少しゆっくりしていっても……」と引き留めたが、二人は笑顔で首を振った。
女武闘家は少女の頭を撫で、「帰りにまた村に寄るよ。お母さんの料理、食べに来るわ」と約束した。
竜騎士も付け加え、「そうだな、次はもっとゆっくりするね」少女は少し元気を取り戻し、「絶対約束だよ!」と約束を交わした。
少女と母親に見送られながら、二人は水の街を目指して村を後にした。
村の入り口で振り返ると、母娘が手を振っていた。少女の元気な声が遠くに聞こえ、二人は互いに視線を交わして微笑んだ。
この小さな出会いが、旅の途中に優しい思い出を残した。森の道を進む二人の足取りは軽く、水の街への期待が心を膨らませるのだった。