※この作品はR-18です。

女武闘家と竜騎士   作:蒼月あお

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ゴブリン襲撃

竜騎士が診療所から外に出ると、村はゴブリン達の襲撃に飲み込まれていた。

 

木造の家々が燃え上がり、夜空を赤く染める炎の光が、逃げ惑う村人たちの影を長く引きずる。

 

叫び声と金属のぶつかり合う音が響き合い、絶望が村全体を覆っていた。

 

抵抗する者もいた、門番が槍でゴブリンに槍を突き刺し、農夫が手に持った鍬でゴブリンを牽制するが、敵の数はあまりにも多く、まるで緑色の波のように押し寄せてくる。

 

村の外れに住む家族の家も例外ではなかった。

 

粗末な木の扉がゴブリンの石斧によって叩き割られ、ゴブリンの下衆な笑い声が室内に響いた。

妻と小さな娘の父親は家族を守るため自らゴブリンに立ち向かった。

 

手に持った木の棒を手に、彼の目は決意に燃えていた。

 

男は妻と娘に対して「お前達は 裏口から逃げろ!」

彼の叫び声が、ゴブリンの哄笑にかき消される。

妻は娘の手を強く握り、涙をこらえながら裏口へと走った。

 

男が木の棒をゴブリンを叩きつける音が背後で響き、妻の心臓は締め付けられるように痛んだ。

だが、裏口の外はすでにゴブリンの群れで埋め尽くされていた。

 

 

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暗闇に光る無数の目が、母娘を捕らえた。妻は娘を背中に庇いながら後ずさったが、ゴブリンの汚れた手が彼女の腕を掴んだ。

 

「離して!」

 

女は叫んだが、力の差は歴然だった。

 

ゴブリンの爪が彼女の服を切り裂き、粗雑に引きちぎられた布切れが地面に落ちる。

冷たい夜気が白い肌を撫で、ゴブリンたちの下卑た笑い声が響く。

別のゴブリンが彼女の下着に手をかけた瞬間、恐怖と屈辱で体が震えた。

 

「やめて…お願い…」

 

彼女の声は掠れ、涙が頬を伝った。

 

 

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すぐ近くでは、娘が別のゴブリンに捕まっていた。

幼い少女の小さな体は、ゴブリンの腕力の前では余りにも無力だった。

 

「お母さああん! 助けて!」

 

娘の泣き叫ぶ声が、母親である彼女の胸を切り裂く。

彼女はゴブリンの手を振り払おうともがいたが、力尽くで押さえつけられた。

 

「娘だけは…お願い、やめて! 私になら何をしてもいいから!」

 

妻の懇願は、ゴブリンたちの嘲笑でかき消された。

ゴブリンの手が娘の服に伸び、彼女の小さな肩が震えたその瞬間だった。

 

突然、鋭い風切り音が響き、ゴブリンの頭に青白く輝く槍が突き刺さった。

 

エーテルの光を帯びたその槍は、まるで星の欠片のように美しく輝いていた。

 

ゴブリンは一瞬で動きを止め、地面に崩れ落ちる。

 

母娘が息を呑む中、空から舞い降りた青年が現れた。竜騎士だった。

彼の鎧は月光を反射し、背にはマントが翻っていた。

 

 

竜騎士の青年は一言も発さず、素早く動いた。娘の母親を襲おうとしていたゴブリンに槍を突き立て、鮮血が夜の闇に飛び散る。

 

その動きは流れるように滑らかで、無駄がなかった。

ゴブリンたちは一瞬怯んだが、すぐに数を頼みに襲いかかってきた。しかし、竜騎士の槍はまるで意思を持っているかのように敵を貫き、次々と倒していった。

 

母娘は後ろから聞き慣れた声が響いた。

母親が振り返ると、彼女の夫が血と泥にまみれながら走ってくるのが見えた。

 

彼の服はボロボロで、腕には浅い傷がいくつもあったが、生きていた。

彼女は涙を流しながら夫の名を叫んだ。男は母娘を抱きしめ、震える声で言った。

 

「無事で良かった…! 俺もあの青年に助けられたんだ。彼が現れなかったら、俺は…」

 

竜騎士の青年は振り返らず、遠くのゴブリンの群れを見据えた。

 

彼の背中からは、静かな怒りが滲みでているようだった。

月光の下、槍を握る手がわずかに震えているのが、男の妻の目には映った。

 

竜騎士の青年は言葉を発することなく、ゴブリンたちの群れへと突進していった。

エーテルの光が彼の槍に宿り、闇を切り裂くように輝いた。

 

村はまだ燃え、戦いの音は止まなかったが、彼女の心には一筋の希望が灯っていた。

 

竜騎士の姿が遠ざかる中、彼女は小さく祈った。「どうか…彼が無事でありますように」

 

 

再び、竜騎士はゴブリンの群れを切り裂くように進んだ。

 

青白いエーテルの光を帯びた槍が、月光の下で弧を描くたび、ゴブリンの断末魔が夜の闇に響いた。

彼の動きはまるで舞踏のように優雅で、しかしその一撃一撃には容赦ない重みが宿っていた。

血と泥にまみれた村の通りを進む彼の背中は、まるで嵐の中心に立つ孤高の戦士のようだった。

 

その時、遠くから豪快な笑い声が響いた。「おぉ! 兄ちゃん、無事だったか!」振り向くと、酒場のマスターが、巨大な戦斧を肩に担いで歩いてくるのが見えた。

その後ろには、門番の二人が息を切らせながら続いていた。

 

 

酒場のマスターの顔は汗と血で汚れていたが、目はまだ燃えるような闘志に満ちていた。

 

「こっちの方は俺とこいつらで片付けてきたぜ! これでも昔は銀等級の冒険者だったんだ、なめんなよ!」

 

彼は豪快に笑い、斧を軽く振り回して見せた。

その笑顔には、戦場の緊張を吹き飛ばすような力強さがあった。

 

酒場のマスターは竜騎士をじろりと見て、ニヤリと笑った。

 

「それにしても、兄ちゃんのその槍、すげぇな! そんな魔力の込められた槍なんざ、俺の冒険者時代でも滅多に見なかったぜ」

 

彼は一瞬感嘆の表情を浮かべたが、すぐに真剣な顔に戻った。

 

「だが、悪いんだが頼みがある。俺たちはここで残りのゴブリンを食い止める。戦える奴も集めてるが、数が足りねぇ。一度、診療所の方に戻って見てくれねぇか? あそこには女と病人しかいねぇ。一撃で全滅だ。頼んだぞ、兄ちゃん!」

 

竜騎士は無言で頷いた。彼の目はすでに遠くの診療所の方を向いていた。

酒場のマスターが「よし、行くぞ!」と門番たちを率いてゴブリンの群れに突っ込む背中を見送り、竜騎士はその場を後戻りした。

 

風を切り裂くように走り、槍の光が彼の道を照らす。

 

一方、村の診療所は恐怖の淵に沈んでいた。

 

粗末な木造の建物の中には、女医と武闘家の少女、そして数人の入院中の村人がいた。

 

突然、扉の向こうから不気味な笑い声が聞こえた。

 

ゴブリンの甲高い声と、木を叩く鈍い音が響く。

扉が激しく揺れ、蝶番が軋む音が室内を支配した。

女医がハッと顔を上げ、患者たちを庇うように前に出た。 

 

「みんな、落ち着いて! 隠れて!」

 

彼女の声は震えていたが、必死に冷静さを保とうとしていた。

 

次の瞬間、扉が爆音とともに砕け散った。

破片が床に飛び散り、埃が舞う中、ゴブリンより一回り大きいホブゴブリンが姿を現した。

 

その背後には、数匹のゴブリンが下卑た笑みを浮かべて続いた。

 

女医は一歩踏み出し、声を張り上げた。

 

「ここは病人がいるのよ! 出て行って!」

 

だが、ホブゴブリンは嘲るように鼻を鳴らし、巨大な腕を振り上げた。

 

女医が悲鳴を上げる間もなく、彼女の体は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

白衣が破れ、彼女は床に崩れ落ちた。

そこに、ゴブリンたちが素早く女医を取り囲んだ。

女医は痛みに顔を歪めながら、なんとか体を起こそうとした。

 

だが、ゴブリンの長い爪が彼女の白衣を切り裂き、布の断片が床に落ちる。彼女の白い肌が露わになり、ゴブリンたちの涎が床を濡らした。

また、別のゴブリンたちは女医の手を押さえつけ、彼女がこれから受けるであろう屈辱を嘲笑いながら、ニヤニヤと見つめていた。

 

 

ホブゴブリンは満足げに周囲を見渡し、ベッドの隅で震える女武闘家に目を止めた。

恐怖で引きつった顔が、ホブゴブリンの興味を引いた。

うすら笑いを浮かべ、ゆっくりと近づいてくる。

 

ホブゴブリンの巨大な手が女武闘家に伸びた瞬間、忌まわしい記憶が洪水のように蘇る。

 

ついこの間、幼馴染の青年剣士、女魔法使い、女神官と共に、冒険者として初めての依頼に挑んだ。

ゴブリンに拐われた女性を救うため、薄暗い洞窟に足を踏み入れたあの瞬間が、彼女の人生を永遠に変えた。

 

幼馴染の青年剣士はゴブリンの群れになぶり殺された。

絶叫が洞窟に響き、彼女の目の前でその命が奪われた。

女魔法使いは毒のナイフで刺され、血を吐きながら倒れた。

女神官に彼女は「逃げて」と叫んだ。

そして女武闘家自身もホブゴブリンの手が彼女の足を掴み、岩壁に叩きつけられた。

周囲にいた、ゴブリンに服は引きちぎられ、ゴブリンの下卑た笑い声が耳にこびりついた。

何度も、何度も、彼女は犯され、心は粉々に砕かれた。

助け出された時、彼女の目は虚ろで、魂は抜け殻のようだった。

 

あの日以来、ゴブリンの臭いと笑い声は、彼女の悪夢に刻み込まれていた。

 

今、ホブゴブリンの濁った目が彼女を見つめる。

 

 

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過去の恐怖が現実となって押し寄せ、彼女の体は凍りついた。

 

「また…壊される…」

 

彼女の唇が震え、声にならない呻きが漏れた。

絶望が心を飲み込み、彼女は息さえままならない状態だった。

 

だが、その瞬間、ホブゴブリンが甲高い悲鳴を上げた。

ホブゴブリンの肩に突き刺さった青白く輝く槍、ゲイボルグ・アルテマが目に入った。

エーテルの光が槍の刃に宿り、まるで魂が宿っているかのように脈打っていた。ホブゴブリンが痛みにのたうち、血が床に滴る。

 

女武闘家が視線を上げると、診療所の中央に立つ青年の姿があった。

 

数日前、彼女が負傷していた時に回復魔法をかけてくれたあの青年…だが、今の彼はまるで別人のようだった。

彼の周囲には、女医を囲んでいたゴブリンたちの肉片が散乱していた。床は血と臓物で濡れ、ゴブリンの断末魔がまだ空気に残響していた。

 

竜騎士は無言でホブゴブリンの肩に刺さったゲイボルグ・アルテマを強引に引き抜いた。

 

 

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ホブゴブリンが痛みに咆哮し、巨大な拳を振り上げて竜騎士に襲いかかった。

 

だが、竜騎士の動きはあまりにも速かった。槍が空を切り、エーテルの光が一閃。

ホブゴブリンの首が胴体から離れ、鈍い音を立てて床に転がった。

血飛沫が舞い、診療所の壁を赤く染めた。

 

一瞬にして、診療所は静寂に包まれた。

 

青白く光る槍が彼女の心の闇を照らす、光の様だった。

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