久々に辺境の街に帰ってきた二人。
馬車の揺れが止まり、馴染みの石畳の道が足元に広がった。
竜騎士は荷物を降ろし、女武闘家に視線を向けた。
「色々な事があった旅だったね」
水の街の観光、神殿での出会い、村の救出など、全てが心に残る思い出だった。
女武闘家は笑顔で頷き、「うん、でも楽しかったよ。また行こうね!」
彼女の声は明るく、旅の疲れを吹き飛ばすようだった。
二人は手を繋ぎ、ギルドの石造りの建物へ向かった。
黒曜級の認識票が首に輝き、街の人々が軽く挨拶をする中、扉をくぐった。
入った途端に、二人は呼ぶ声がした。
カウンターの奥、テーブル席からだった。
「おーい、こっちだ!」
槍使いの青年が手を振り、隣には魔女が座っている。
青い鎧の彼はビールのジョッキを傾け、魔女は煙管をくゆらせて優雅に微笑んでいた。
竜騎士と女武闘家の二人は、二人のいるテーブルに行くと、槍使いは「まぁ座れよ」と椅子を勧めた。
二人が椅子に座ると、槍使いはすぐに本題に入った。
盗賊団について話を始めた、「やはり俺の読み通り、ゴブリンを増やして村を襲わせて、壊滅した後に金品を奪っていやがる連中がいたぜ! 最近力をつけている盗賊団で、ギルドの報酬もなかなかのものだ」
竜騎士は目を細め、「やはり盗賊団がゴブリンを……」と呟いた。
あの村の襲撃、女性たちの証言などが、全てが繋がる。
奴隷商人とグルになって女性を巣穴に放り込み、ゴブリンを増やして村を壊滅させる残虐な手口だ。
槍使いはジョッキをテーブルに置き、「ああ、奴等、奴隷商人とグルになって奴隷の女を縛って巣穴に放り込むんだ。胸糞悪い話だぜ。で、次に巣穴に放り込む日とターゲットの村が分かった」
女武闘家が驚きの声を上げ、「よくそんな情報分りましたね!」彼女の目は槍使いの情報網に感心した様子だった。
魔女が煙管をふかし、「長く、冒険者やっていると……色々と……ね」と優しく答えた。
彼女の妖艶な目は遠くを見据え、経験の深さを語っていた。
槍使いは笑いながら「お前らもかなりやるが、こういうのは長年培ってきた経験と人脈さ」彼の声は自信に満ち、辺境の冒険者としての誇りがにじむ。
槍使いは「報酬は山分け、一緒にやるかい?」と提案した。
テーブルに地図を広げ、次の巣穴の場所を指さす。
竜騎士は即答した。「もちろん、行かせて下さい」
あの村の惨劇を思い、女性たちの苦しみを終わらせる決意だった。
女武闘家も拳を握り、頷いた。
辺境の街から離れた森の中、ゴブリンの巣穴がある。
木々が密集し、陽光が差し込まない暗い洞窟の入り口が、苔に覆われて不気味に口を開けていた。
槍使いは槍を木に立て掛けると地図を広げて皆に説明した。
「この近くに小さな村があるんだが、村長が収集家でかなり貴重な骨董品や魔道具を集めているそうだ。その村を襲うために、近くにあるゴブリンの巣を利用と言う訳さ」
彼の青い鎧が森の影に溶け込み、声は低く抑えられていた。
女武闘家は拳を握りしめ、巣穴の入り口を睨みながら聞いた。
「でも、何故普通に襲わずに、わざわざゴブリンを……?」
槍使いは頭を傾げ、「そりゃ……あれだ!!なんでだろ?」と困ったように笑った。
魔女の女性は煙管をくゆらせ、静かに皆を見守る。
竜騎士は槍を構え、冷静に分析した。
「どんなに小さな村でも護衛の兵士がいる。大小関わらず、負傷のリスクがある。ゴブリンならいくら死のうが盗賊団に実害はないし、例えゴブリンが全滅しても、護衛も弱体しているから、その時は盗賊団で襲撃すればいいのさ」
槍使いは慌てて頷き、「そう、俺もそう言おうと思っていたんだよ!」と付け加えたが、皆の視線が集まり、少し照れくさそうに槍を回した。
魔女はふふ、と優しく笑い、「賢い……策ね」と呟いた。
4人はゴブリンの巣穴の周辺で、暫く息を潜めて待ち伏せしていた。
森の木陰に身を隠し、槍使いの合図で静かに待つ。
女武闘家の拳が握られ、竜騎士の槍が微かに輝く。
魔女は煙管をくゆらせ、槍使いは槍を肩にかけて周囲を警戒した。
遠くから馬車の音がして来る、車輪の軋む音と馬の蹄が、静かな森に響いた。
そして巣穴から少し離れた開けた場所に、馬車は停まる。
4人は見つからない様に近くまで移動して、武器を構えた。
木々の影から覗くと、馬車から盗賊の一人が奴隷女達を降ろす。
女性たちは鎖で繋がれ、ぼろ布のような服を着せられ、怯えた様子で周囲を見回していた。
自分が何処に連れてこられたのか分からない様子で、互いに体を寄せ合い、震えていた。
奥から盗賊団の頭目と思われる男と奴隷商人が現れた。
頭目は筋肉質の体に傷だらけの革鎧を纏い、腰に大剣を下げた大男。
奴隷商人は瘦せた体に派手なローブを着け、卑しい笑みを浮かべていた。
頭目は奴隷を見ると、「ちとゴブリンにやるにはいい女が多いんじゃねぇか?」と奴隷商人に話しかける。
奴隷商人は「ゴブリンの孕み袋にされて散々子供生まされた女ですよ、顔が良くても買い手は付きませんよ」と下卑た笑いをして答える。
頭目はまぁ、いいやと答えると、女性達の前で大声で話をする。
「お前達は今日からここでゴブリンと死ぬまで子作りだ!!」
周りの盗賊達も嘲笑い、女性達を煽る様に言葉をかける。
「良かったな、嫁の貰い手のないお前らに、ゴブリン様が貰ってやるとさ!!」
「毎日ゴブリンとお楽しみだ! いっぱい元気な子を作れよ」
下品な笑い声が森に響き、女性たちは固まり震え始めた。
涙を流す者、何でもするからと懇願する者もいた。
「お願い……許して……」
彼女たちの声は弱く、絶望に満ちていた。
盗賊の一人が懇願する女性に、「なら、犬の格好してワンって言ってみせろ」と笑った。
女性は命欲しさに四つん這いになり、「ワン……」と真似をする。
震える体で屈辱に耐え、涙が地面に落ちる。
盗賊達は笑い転げて、「じゃあ、次は犬みたいに片足あげてしょんべんだ!」とさらに煽る。
女性は震え泣きながら片足を上げて放尿する。恥辱の行為が、彼女の心をさらに砕く。
盗賊達は女性の前でしゃがんで覗き込み、その姿を見てニヤニヤ笑いながら、「やっぱりダメだ、ゴブリンと巣穴で仲良くやれよ、ヒャハハ!!」と女性に絶望を与える。
女武闘家が「あのクズ共っ!!」と怒りを露わにし、拳を握りしめて立ち上がろうとしたが、槍使いが静止する。
「まだだ、我慢しろ!」彼の声は低く、魔女も真剣な眼差しで頷いた。
竜騎士は槍を握りしめ、タイミングを待つ。
頭目は盗賊達に向かって、「お前ら何、遊んでいるんだ! さっさと女を穴蔵に……」
途中で言葉が止まり
「いや、今日はいい女が多いからな……」
頭目は少し考えたあと、「よし、どうせ女は死ぬんだ、死ぬ前に好きに犯していいぞ!」と命じた。
盗賊たちは歓喜して、女性達に群がり始めた。
下卑た手が服を破り、女性たちの悲鳴が上がる。
懇願する声、抵抗する体が、盗賊の笑い声に飲み込まれていく。
女性の一人が地面に押し倒され、別の者が鎖を引っ張られて引きずられる。
森の空気がさらに重く淀み、残虐な饗宴が始まろうとしていた。
槍使いが「隙が出来た、行くぞ!」号令をかける。
その瞬間、竜騎士が槍を投げ、最初の盗賊の背中を貫いた、次の瞬間、槍を強引に引き抜き、別の盗賊を斬りつける、青白いエーテルの光が閃き、槍が風を切る。
女武闘家拳をスファライ・アルテマを青く輝かせ、飛び出して別の盗賊の腹を殴り飛ばす。エーテルの波動が骨を砕き盗賊は血反吐を吐いて倒れる。
槍使いは槍を振り回し、「今だ!」と叫び、魔女の魔法が炎を放って盗賊を焼き払う。
四人は一斉に襲いかかり、女性たちを囲む盗賊団を蹴散らした。
頭目は混乱の広場で、四人の冒険者を見て顔を歪めた。
「くそっ、冒険者か! おい! 女をさっさと巣穴に放り込め!」と近くの盗賊に命じる。
頭目の大剣が振り上げられ、女性たちを囲む盗賊たちが慌てて鎖を引っ張る。
女性たちの悲鳴が上がり、涙と恐怖が混じった声が森に響く。
その間にも、槍使いの槍が盗賊を貫いた。
青い鎧の青年は槍を回し、血の飛沫を浴びながら嘲るように言った。
「もっと歯応えのある奴はいねぇのか?」
彼の槍捌きは素早く、魔女の魔法が炎を放って援護する。
盗賊の一人が燃え上がり、悲鳴を上げて転がる。
女性を犯そうとしていてズボンを脱いでいた盗賊は、慌てて履こうとした。
卑しい笑みを浮かべていた顔が、恐怖に変わる。
だが、目の前には女武闘家が立っていて、彼女の足が素早く蹴り上げた。
足のつま先が股間を直撃し、盗賊はそのままひっくり返り倒れた。
激痛が体を走り、息も絶え絶えに地面を転がる。
女武闘家はその盗賊を睨みつけ、鬼のような形相で言った。
「お前はさっき、あの犬の真似をしろと笑った奴だな!」
彼女の拳が青白く輝き、スファライ・アルテマのエーテルが強まる。
女武闘家は女性たちの屈辱を思い浮かべた。
盗賊は怯えた目で地面を這い、「あ、あれはただの冗談だよ……ゆ、許してくれよ……なっ!!」と懇願する。
必死に後退しようとするが、女武闘家の後ろには別の盗賊がいた。
そいつは短剣を抜き、ニヤリと笑って女武闘家に近づく。
だが、女武闘家は後ろを振り向かずに盗賊を睨みつけたまま、肘打ちで後ろの盗賊を吹き飛ばす。
肘が空気を切り、衝撃波が盗賊の胸を砕く。吹き飛んだ盗賊は後ろの大木に激突し、動かなくなった。
先の盗賊は「ひいぃぃ!」と叫ぶ。
恐怖が頂点に達し、体が震える。
女武闘家は冷たく言った。
「おい、お前っ!!犬の真似をしろ」
盗賊は必死に四つん這いになって、「わ、ワン……ワン……」と真似をする。
屈辱に顔を歪め、涙を流しながら地面を這う。
女武闘家は「あの女性に命令しただろ? 同じ事やってみたらどうだ?」と言う。冷徹な視線が盗賊を射抜く。
盗賊は震えながら、「は、はい、オシッコですね……」と答えると、女武闘家は即座に脚を上げて蹴り上げる。
「犬はワンだろ?」蹴りが股間に直撃し、盗賊は白目を剥いて倒れる。激痛が体を痙攣させる。
盗賊の脱ぎかけのズボンからはみ出ているペニスから失禁しているのが見えた。
女武闘家は「誰が勝手にしていいと言った!!」盗賊の頭を何度も踏みつける。
盗賊は泣きながら「すみません…すみません…」と呻き声の様な謝罪を続けていたが、そのうち動かなくなった。
竜騎士は戦いの合間を縫って女武闘家の元に行き、「大丈夫か?」と心配そうに声をかけた。
彼女の鬼のような表情が、心を痛めた。
女武闘家は息を吐き、拳を緩めた。
「コイツだけは許せなかったから……」
彼女の目はまだ怒りに燃えていたが、竜騎士の優しさに少し落ち着いた様だ。
女性たちの屈辱を思い、復讐の拳が止まらなかった。
竜騎士は頷き、槍を構え直した。「残りも片付けよう」
女武闘家は普段の調子に戻って、「分かったわ!」と答えた。
二人は再び戦いに身を投じ、女性たちを囲む盗賊たちを蹴散らした。
頭目と盗賊の一部は奴隷を鎖で引っ張り、「ほら、お前らは中に入るんだよ!」と巣穴の前に引っ張ってきた。
女性たちは泣きながら、「やめてください……お願い……」と懇願する。
足が震え、鎖の音が森に響く。頭目は女性たちの抵抗を嘲るように笑い、「さっさと入れて引き上げだ! アイツらを時間稼ぎに使うぞ」と命じた。
他の盗賊を囮にする気だった。
女性たちの絶望的な視線が、森の闇に溶けていく。
盗賊は「ほら! 早く入るんだよ!!」と鎖を引っ張ろうとした時、体に激痛が走った。
周囲を見渡すと、外の騒ぎを聞いて、巣穴のゴブリンが大量に出て来たのだった。
緑色の小鬼たちが洞窟から雪崩れ込み、棍棒や短剣を振り回す。
ゴブリンたちは先程の盗賊の一人を滅多打ちにする。
棍棒が体を叩き、ナイフが肉を刺し、鋭い牙で引きちぎる。
盗賊は「お、俺は女達を連れて来たじゃないか!な、仲間だ……ろ……」と叫ぶが、当然、ゴブリンには盗賊に仲間意識などある訳もなく、容赦なく攻撃を続ける。
盗賊は悲鳴を上げて、「お、お頭……た、たすけて……」と叫ぶが、頭目は「ゴブリンも出て来たし、ちょうどいい!」と残りの盗賊と逃げ始めた。
女性たちを囮にし、森の奥へ向かう。
ゴブリンたちは盗賊を滅多打ちにした後、奴隷達に目を向けて、今度は涎を垂らしながら、下卑た笑いでやってくる。
これから女を犯せると期待しながら近づいてくる。
小鬼たちの目は血走り、女性たちに群がろうとする。
女性たちは怯え、鎖で繋がれた体を後退させるが、逃げ場はない。
女性の一人にゴブリンの手が伸び、体を押さえつけて挿入しようとした時、ゴブリンの顔に蹴りが入った。女武闘家が女性たちを守るように前に立ち、小鬼を吹き飛ばす。
もう以前のような怯えはなく、戦う戦士の顔になっていた。
スファライ・アルテマが青白く輝き、拳が風を切る。
「近づけさせない……!」彼女の声は強く、過去のトラウマを乗り越えた決意が宿っていた。
竜騎士は槍を振り、女性たちを囲むゴブリンを薙ぎ払う。
「君は女性たちを守ってくれ! 僕が奴らを引きつける!」
ゴブリンの群れを蹴散らす。
女性たちは鎖を解かれ、涙を流しながら二人の背中を見つめた。
頭目と手下の盗賊達は、女性たちの悲鳴と戦いの喧騒を背に、森の木々を掻き分けながら馬車のところまで辿り着いた。
息を荒げ、大剣を握りしめ、頭目は馬車を見て安堵の息を吐いた。
「よし、これで引き上げだ! 奴らに構うな」残りの盗賊たちが馬に駆け寄るが、次の瞬間、皆の足が止まった。
馬車の前に、気絶して倒れている奴隷商人が転がっていた。
瘦せた体が土に伏せ、派手な服が血と泥に汚れている。
そこに、槍使いが槍を抱えて、魔女が杖を構えて、待ち構えていた。
槍使いの青い鎧が陽光に輝き、魔女の黒いローブが風に揺れる。
二人は冷たい視線を頭目に向け、逃げ場を塞ぐように立っていた。
頭目は目を剥き、大剣を構え直した。
「ば、馬鹿な……あれだけいたんだぞ! どうやって……!」
彼の声は震え、仲間たちの屍を思い浮かべた。
仲間達を女性たちを囮にし、逃げ切ったはずだったのに、馬車が既に制圧されている。
盗賊たちは慌てて剣を抜き、頭目の後ろに固まる。
槍使いは槍をゆっくり回し、ニヤリと笑った。
「全く歯応えねぇ奴等ばかりでつまらなかったぜ!」
彼の声は挑発的で、槍先が頭目を指す。
魔女は杖を構え、指先から微かな炎の粒子が舞う。
「ふふ……おしまい…ね…」
彼女の妖艶な目は冷たく、逃げ道を封じる魔法の気配が漂う。
頭目は大剣を構えて、歯を食いしばった。
「冒険者の四人の内、二人はゴブリンの相手をしている……この二人なら俺達でも問題はねぇ! やるぞ!」
彼の咆哮が森に響き、残りの盗賊たちが一斉に突進した。
大剣が風を切り、槍使いに向かって振り下ろされる。
魔女の杖が輝き、炎が盗賊たちを阻む。
槍使いの槍が閃き、最初の盗賊の胸を貫く。
戦いの火蓋が切って落とされ、馬車の周りが血の渦に変わる。
一方、巣穴の前では竜騎士と女武闘家が女性たちを守り、ゴブリンの群れを蹴散らしていた。
巣穴からゴブリンが次から次へと出てくる。
緑色の小鬼たちが洞窟の闇から雪崩れ込み、棍棒を振り上げ、短剣を閃かせて女性たちに群がろうとする。
女性たちは二人の後ろに隠れて身を寄せ合い、怯えた視線で戦いを見守った。
涙を流す者、震える手で互いを抱きしめる者、彼女たちの恐怖が、周囲の空気をさらに重くする。
竜騎士のゲイボルグ・アルテマが青白く輝き、槍がゴブリンを貫いた。
槍先が風を切り、最初の群れを一掃する。
ゴブリンの血が噴き出し、小鬼たちの体が転がる。
女武闘家のスファライ・アルテマが拳を鳴らし、ゴブリンを砕く。
拳が空気を圧縮し、衝撃波が小鬼の体を吹き飛ばす。
骨の砕ける音が響き、ゴブリンの群れが散らばる。
「二度と……近づかせない!」
彼女の目は燃え、女性たちの懇願を思い浮かべながら、拳を振るう。
今度はホブゴブリンが巣穴から現れた。
普通のゴブリンより一回り大きく、筋肉質の体に粗末な鎧を纏い、棍棒を振り回す。
女武闘家の顔が一瞬曇る、あの忌まわしい記憶、ゴブリンの巣窟で襲われ、足を掴まれて叩きつけられた恐怖がよぎった。
体が硬直しかけるが、彼女はそれを振り払うかのように、ホブゴブリンに蹴りを入れた。
蹴りが空を切り、ホブゴブリンの胸に直撃する。
巨体がよろめき、棍棒が落ちる。
ホブゴブリンはあの時のように足を掴もうとしたが、女武闘家はそのまま力任せに振り切り、ホブゴブリンに連続の蹴りをぶち込んでいく。
腕の骨が折れ、肋骨が砕ける音が響き、ホブゴブリンは胸を手で押さえ込み、苦しむ。
スファライ・アルテマが青白いエーテルの輝きを強め、女武闘家の拳がホブゴブリンの身体を貫いた。
拳が巨体の腹を抉り、血と内臓が噴き出す。ホブゴブリンは咆哮を上げて倒れ、動かなくなった。
女武闘家は息を荒げ、拳を緩めた。
過去の影を振り切ったようだ。
あの恐怖が、戦う力に変わった瞬間だった。
竜騎士は彼女の横に立ち、「君……本当に強くなったよ」と優しく言った。
彼女は頷き、「ありがとう……」と呟いた。
二人は女性たちを囲み、残りのゴブリンを一掃した。
女性たちの感謝の視線が、二人の背中を支える。
この勝利が、彼女の心の傷を少し癒すのだった。
槍使いの方も、盗賊を一掃して、残りは頭目のみとなっていた。
森の開けた場所で、馬車の周りに倒れた盗賊たちの体が転がり、血の臭いが漂う。
槍使いの青い鎧は血に汚れ、槍先がまだ滴を落としていた。
魔女の黒いローブは無傷で、彼女の杖が微かに輝きを残す。
頭目は大剣を握りしめ、仲間たちの屍を睨み、ゆっくり後退した。
「くそっ……お前ら、何者だ……」
槍使いは槍を回し、ニヤリと笑った。
「俺は辺境最強の槍使い、冒険者さ。テメーらの悪事が終わっただけだ」
頭目は息を荒げ、汗を拭う。「なぁ……冒険者よ。お前なかなかの腕だな、俺と組まないか? 金ならいくらでも稼げるぞ!」
彼の声は必死で、仲間を失った焦りがにじむ。
奴隷商人との計画が崩れ、逃げ場を失った頭目の最後の抵抗だった。
槍使いは鼻で笑い、「あ?! ふざけるなよ。誰がテメーみたいな奴とつるむかよ」と手を振って相手にしない。
シッシッと追い払うような仕草で、頭目を嘲る。
魔女は静かに杖を構え、傍観するように見守っていた。
頭目は顔を紅潮させ、大剣を振りかざして襲いかかってきた。
「くそがっ……死ね!」
大剣が風を切り、槍使いに向かって振り下ろされる。
だが、その瞬間、頭目の体がふらつき、膝から崩れ落ちた。
目が虚ろになり、大剣が地面に落ち、眠ったように動かなくなった。
槍使いが後ろを向くと、魔女がスリープの魔法を使ったようだ。
杖の先から淡い光が消え、彼女は優しく微笑んだ。
「情報……聞き出さないと……ね」
頭目の体を縄で縛り、ギルドへの引き渡しを準備する。
女武闘家は森の開けた場所で、救出された奴隷女達を介抱していた。
女性たちの傷を布で拭き、水を飲ませ、震える体を優しく抱きしめる。
「もう大丈夫よ……ここは安全だから」
彼女の声は穏やかで、過去のトラウマを乗り越えた強さがにじむ。
女性たちは涙を流しながら感謝を呟き、互いに体を寄せ合っていた。奴隷商人の鎖が解かれ、自由の空気が少しずつ心を癒す。
そこに、槍使いと魔女が現れた。槍使いは青い鎧を血に汚れ、槍を肩に担いで近づき、「そっちも片付いた様だな」と笑った。
魔女は杖を収め、優しく微笑みながら女性たちに視線を向けた。
槍使いは周囲を見回し、竜騎士がいない事に気づくと、「あれ? アイツどこ行った?」と辺りを見渡す。
森の木々が揺れ、巣穴の入り口が暗く口を開けていた。
女武闘家は女性の一人を支えながら、「巣穴に入って、残りのゴブリンと誰か囚われていないか見に行っているわ」と伝えた。
彼女の目は巣穴の方をチラリと見た、竜騎士の安全を祈るように。
やがて、竜騎士が巣穴から出てきた。
ゲイボルグ・アルテマを血に塗れ、息を少し荒げながら皆に近づく。
「ゴブリンは残党が残っていたが、女性はいなかった」と報告した。
洞窟の奥で散発的な戦いを終え、女性たちの痕跡を探したが、空だった。
皆が安堵の息を吐く中、竜騎士は槍を構え直し、巣穴に向き直った。
エーテルの青白い光が槍先に集まり、一撃で巣穴の入り口を崩壊させた。
岩が崩れ落ち、洞窟が封じられる音が森に響く。
女性たちは二人の背中を見つめ、感謝の言葉を呟いた。
槍使いは槍を肩に担いで「これで片付いたな。」と満足げに言った。
四人はギルドに戻り、盗賊団の頭目と奴隷商人を引き渡し、奴隷女達をギルドに保護してもらった。
辺境の街のギルドは賑わっていたが、二人が入ると受付嬢がすぐに気づき、カウンターへ案内した。
頭目は縄で縛られ、奴隷商人は気絶したまま引きずられ、ギルドに引き渡たされた。
女性たちは疲弊しきった体を支えられ、ギルドの保護室へ連れていかれた。
女武闘家はカウンターで受付嬢に詰め寄り、拳を握りしめた。
「彼女達はゴブリンに嬲られ、故郷に帰っても居場所がなく奴隷商人に売られたんです! ちゃんと安全な場所に保護出来ないんですか?」
彼女の声は苛立ちと同情に満ち、女性たちの苦しみを思い浮かべていた。
あの遺跡の惨状が、心を痛めていた。
受付嬢は目を伏せ、「ごめんなさい……故郷に帰るのがダメなら、修道院に送るくらいしか現状無いのよ……」と答えた。
ギルドの限界を認め、申し訳なさそうに話した。
保護の選択肢が少ないのが現実だった。
竜騎士は女武闘家の肩に手を当て、彼女を落ち着かせた。
「受付嬢さんが悪い訳じゃないのは分かっています。でも、なるべく信頼出来る場所にお願いします。彼女達にこれ以上辛い思いをさせない様に……」
彼の声は穏やかで、女性たちの未来を案じていた。
受付嬢は頷き、「分かりました……最善を尽くします」と答えた。
槍使いはカウンターの横で腕を組み、受付嬢に対して、いつもの軽口ではなく真剣に言った。
「まぁ、実際あんなのを見たら仕方ないさ。嬢ちゃんも、かつての被害者だし、悪気は無いんだ。許してやってくれ」
彼の声は優しく、真剣な眼差しで話していた。
魔女の女性も遠くから静かに頷き、煙管をくゆらせた。
受付嬢はいつもと違う槍使いに驚きの表情をしていた。
普段の彼は軽口を叩いて口説いてくるのに、今日は真摯で、彼女の心を少し揺さぶった。
「あ、ありがとうございます……」
彼女は頰を赤らめ、書類を整理しながら頭を下げた。
ギルドのカウンターで、槍使いは受付嬢から報酬を受け取ると、満足げに袋を振った。
金貨の音が軽やかに響き、皆の視線を集める。
受付嬢はいつもの笑顔で、「お疲れ様でした。頭目の賞金も加算されてますよ」と書類を渡した。
槍使いは席に戻った。魔女の女性は煙管をくゆらせ、静かに待っていた。
「じゃあ、約束通り山分けだ」
槍使いはテーブルに袋を置き、金貨を分頭した。
テーブルの上に金貨が積まれ、四人で均等に分ける。
竜騎士と女武闘家は袋を見て、「こんなに?」と驚いた。
今までの依頼報酬とは桁違いで、前回の村の救出も含まれており、意外な大金をもたらした。
槍使いは笑い、「お前らも銀等級になれば、これぐらいは稼げるさ。頑張れよ」彼の声は軽く、椅子に寄り掛かりながら言った。
魔女はふふ、と優しく微笑み、金貨を袋にしまう。
竜騎士は槍を立てかけ、槍使いに頭を下げた。
「今回は色々ありがとうございました」
女武闘家も隣で頭を下げ、「本当に助かりました」二人の声は感謝に満ち、仲間として絆を感じていた。
槍使いは肩をすくめ、「また何かあったら一緒にやろうぜ!」
魔女も「また……ね。」と優しく言った。
四人はグラスを合わせ、短い別れの乾杯をした。