※この作品はR-18です。

女武闘家と竜騎士   作:蒼月あお

36 / 36
盗賊団を追って

竜騎士と女武闘家は早速、ギルドに戻ると、受付嬢から過去の資料を見せてもらう為に資料室に案内して貰った。

資料室はギルドの奥深く、埃っぽい空気が漂う薄暗い部屋だった。

木製の棚が天井までびっしりと並び、古い羊皮紙や革表紙の記録書がぎっしり詰まっている。

受付嬢は鍵束をジャラジャラ鳴らしながら、奥の棚を指さした。

 

「古い依頼記録や事件簿はここにあります。冒険者たちの報告書も混ざってるので、探すのは大変かも知れませんが……頑張ってくださいね」

 

彼女は軽く頭を下げて部屋を出て行き、扉が閉まる音が静かに響いた。

二人はすぐに作業に取りかかった。

竜騎士は高い棚の記録書を一つずつ下ろし、女武闘家は低い棚から順にめくり始めた。

古い紙の匂いと、かすかなインクの香りが部屋に満ちる。

女武闘家は一冊の分厚い記録簿を開きながら、ぽつりと呟いた。

 

「森人は私達とは時間の感覚が違う、数十年といっても彼らには一瞬……って、聞いた事があるわ」

 

竜騎士は別の棚から古い依頼書を抜き出しながら頷いた。

 

「そうだな。人間の一生が彼らにとってはほんの一瞬……だから、数十年前の事件でも、彼らにとっては『つい最近』のことなんだろう」

 

二人は黙々とページをめくり続けた。

依頼書、事件報告、冒険者の日誌、村の記録など、何十年分もの紙の山を、しらみ潰しに調べていく。

時折、埃が舞い上がり、くしゃみが漏れる。

女武闘家は古い羊皮紙を広げ、指で文字をなぞりながら言った。

 

「これ……二十年前のゴブリン討伐依頼の記録。依頼主は森人の集落の生き残り……報酬は…かなり少ない金額ね…」

 

竜騎士は彼女の横に寄り、紙を覗き込んだ。「依頼内容は『ゴブリンによる、集落壊滅、生存者の女性はゴブリンの巣穴に連れ込まれた模様、女性達の救出及びゴブリンの殲滅』……。冒険者パーティーの報告書が添付されてるな」

 

二人は報告書を読み進めた。

 

そこには、ゴブリン討伐の成功と、生存者の無しの報告だっだが、詳細は曖昧だった。更に追記のギルドの調査報告書には「調査の結果、実際には女性数名を救出している可能性あり」「奴隷商人の関与あり」「依頼主は行方不明」と記載があった。

 

そして、その後の報告書には

 

『別の冒険者の証言により、冒険者による不適切行為の疑いあり。冒険者資格の剥奪及び犯罪行為により拘束しようとするが、対象の冒険者一味は逃走』

 

女武闘家は息を飲んだ。

 

「これね……あっ!この証言したの、うちの村の酒場のマスターさんよ、確か元冒険者だったわ!」

 

竜騎士は、資料室の埃っぽい空気を払うように深呼吸をし、女武闘家に言った。

 

「なら一度、村に戻り話を聞いてみよう……。マスターなら、何か詳しいことを知ってるかもしれない」

 

女武闘家は頷き、記録書を丁寧に棚に戻した。

 

「うん……行こう。この事件のこと、ちゃんと聞いておきたいしね」

 

二人は資料室を出て、ギルドの廊下を歩いた。

 

 

 

その時、入り口の方から赤髪の魔術師の少年がやって来た。

眼鏡の奥の目が少し腫れぼったく、疲れた表情を浮かべている。

彼は竜騎士と女武闘家に気づくと、軽く会釈した。

 

「…………あの、俺たちが逃げ出した後のゴブリン、倒してくれたんだってな。仲間の敵を……その、ありがとう……」

 

少年の声は小さく、しかし心からの感謝が込められていた。

女武闘家は彼の姿を見て、胸が締め付けられる思いだった。

赤髪、眼鏡、知的な雰囲気が亡き女魔法使いを思い出させる。

彼女は意を決して、少年に近づいた。

 

「ねえ……少し、話してもいい?」

 

少年は少し驚いた顔をしたが、頷いた。

三人はギルドの隅のテーブルに座った。

女武闘家は深呼吸をし、静かに話し始めた。

少年のお姉さんの事、一緒に冒険者になった幼馴染が誘った事。

ゴブリンの巣穴の事、女神官の事は避けつつ、全てを話した

 

彼女はあの日のことを、できるだけ優しく、しかし正直に語った。

 

ゴブリンの残虐さ、自身の迂闊な行動、毒のナイフによる攻撃で彼女は回復出来ない状態だった事。

少年は黙って聞き、眼鏡の奥で目が潤んでいく。

話が終わると、少年は震える声で言った。

 

「……そうか……アンタみたいに強い人が一緒でも駄目だったんだ。確かに……実際にゴブリンと戦って分かったよ。姉ちゃんは弱かった訳じゃない。悔しいけど……運が無かったんだ……」

 

少年は涙をこらえきれず、頰を伝う雫を拭った。

女武闘家は優しく彼を抱き寄せ、背中を撫でた。

 

「ごめんなさい……今まで黙っていて……」

 

少年は首を振り、涙声で答えた。

 

「いや……姉ちゃんの最後を教えてくれてありがとう……。この街を出る前に知れて良かったよ!」

 

竜騎士は静かに聞いた。

 

「出るのか?」

 

少年は頷き、眼鏡を直した。

 

「ああ! 色々見て回ろうと思うんだ…」

 

竜騎士は穏やかに微笑み、少年の肩を叩いた。

 

「そうか……冒険者だもんな。元気でやれよ。」

 

女武闘家も別れの挨拶をした。

 

「気をつけてね……。またどこかで会えたら、話そう」

 

少年は涙を拭い、力強く頷いた。

 

「武闘家の姉ちゃん、竜騎士の兄ちゃんも元気でな!!」

 

少年はギルドの扉を押し開け、朝陽の中へ歩き出した。

背中が少し小さく見えたが、歩みは力強かった。

女武闘家は少年の背中を見送り、静かに呟いた。

 

「……がんばってね」

 

竜騎士は彼女の手を握り、優しく言った。

 

「彼も、きっと大丈夫だよ。君の言葉が、届いたはずさ」

 

竜騎士は村に戻る支度を終えると、女武闘家に軽く微笑んだ。

 

「行く前に、立ち寄りたい所があるんだ」

 

女武闘家は首を傾げながらも、竜騎士の後について歩いた。二人はギルド内の奥、武具店へと向かった。店内は鉄と革の匂いが濃く、棚には様々な武器や防具が並んでいる。

 

カウンターの奥には、一見すると鉱人の様な職人気質の只人の鍛冶屋がいた。

筋骨隆々とした体躯に、焼けた肌と白髪交じりの髭。ハンマーを置いて二人の姿を見つけると、大きな声で笑った。

 

「おう、来たか! お前さんが前に頼んでいた鎧、出来上がったぞ!」

 

工房の翁は奥から漆黒の鎧を持ち出してきた。黒く艶やかな表面に、細かな刻印が施され、軽量ながらも頑丈そうな作りだ。

竜騎士は今の鎧を脱ぎ、新しいものを身に着けた。

肩当てがぴたりと収まり、胸当てが体に吸い付くようにフィットする。動きを試すと、違和感はほとんどない。

 

「完璧だ……ありがとう」

 

工房の翁は前の鎧を受け取り、目を細めて眺めた。

 

「しかし、これだって中々の逸品だが、よくもまぁ、ここまで使い込んだな……」

 

鎧は見た目は綺麗だが、所々痛みと傷がかなり酷い。

無数の斬撃痕、焦げ跡、血の染み等、竜騎士の戦いの歴史が刻まれていた。翁は感慨深げに息を吐いた。

竜騎士は金貨の入った袋を手渡した。

翁は中を確認し、満足げに頷いた。

女武闘家は新しい鎧を眺め、目を細めて微笑んだ。

 

「新しい鎧も素敵だよ。漆黒がよく似合ってる」

 

竜騎士は照れくさそうに頰を掻き、

 

「ありがとう……前の鎧より竜騎士向きのデザインに変えたんだ…」

 

 

【挿絵表示】

 

 

と小さく答えた。

二人はギルドを後にし、自身の村に向かって出発した。

新しい鎧を纏った竜騎士の背中は、少しだけ軽やかで、女武闘家は彼の横を歩きながら手を繋いだ。

街の門をくぐり、村への道を進む。

風が二人の髪を優しく揺らし、村への道が広がっていた。

 

 

 

 

二人は久々に自身の村に帰って来た。

懐かしい木々の匂いと遠くの川の音が迎える。

村の入り口に立つと、変わらぬ風景に胸が温かくなった。

女武闘家は竜騎士の手を握り、静かに微笑んだ。

 

「やっと……帰ってこれたね」

 

早速酒場に向かい、情報を集める事にした。

 

扉を開けると、いつもの賑わいが広がり、マスターの大きな声が響いた。

 

「おう! 久しぶりじゃないか! たまには自分達の家があるんだから、帰ってこいよ!」

 

マスターはカウンター越しに笑顔を向け、二つのエールを注いでくれた。

竜騎士と女武闘家はカウンターに座り、過去の事件について聞いた。

マスターはかつて別の村で性奴隷にさせられていた給仕の女性と子供達を別室に行かせると、グラスを磨きながら、遠い目をした。

 

「ああ、あれか。今でも覚えているよ」

 

彼は声を低くし、周囲を気にしながら話し始めた。

 

「腕は確かだが素行の悪い冒険者がいて、当時の査察官からの依頼で内定調査をしていたんだ。奴等のやっていた事は盗賊と変わらなかった。自ら村を略奪して盗賊団の仕業にしたり、助け出した人達を死亡扱いにして奴隷商人に売り飛ばしたり……」

 

マスターはため息をつき、エールを一口飲んだ。

 

「調査結果を受けて、奴らを捕まえようとしたんだが、寸前のところで逃げれちまった……。元々盗賊あがりだったみたいで、噂じゃ盗賊団のリーダーになったとか。ギルドで聞いてみたらどうだ? 奴等の事は分かる範囲で話をしよう」

 

その後、マスターから盗賊団について詳しく聞いた。

名前、特徴、最近の噂、すべてをメモに取る。

マスターは最後に、優しく言った。

 

「今日は遅い。たまには自分達の家でのんびりしたらどうだ?」

 

竜騎士は頷き、女武闘家の手を取った。

 

「ああ、そうさせてもらうよ」

 

二人は酒場を出て、村の小道を歩いた。

懐かしい家並み、灯りが漏れる窓、遠くの犬の遠吠え。

家に着くと、女武闘家は扉を開け、懐かしい匂いに目を細めた。

 

「ただいま……」

 

竜騎士は彼女を抱きしめ、優しく言った。

 

「二人の家に帰って来たね…」

 

二人は家に入り、暖炉に火を入れ、静かな夜を過ごした。

 

竜騎士と女武闘家は優しく抱きしめ合った。

久しぶりの家だし、「今日はいいよね……」と、女武闘家が耳元で囁く。

彼女の声は甘く、少し照れくさそうに震えていた。

竜騎士は優しい笑顔で彼女の髪を撫でながら

 

「僕も……多分同じ事を考えていた……」

 

と小さく答えた。

二人はそのまま、互いの体温を感じ合いながら、ゆっくりと唇を重ねた。

キスは優しく、しかし深く、長い夜を二人で過ごす合図のように続いた。

服が一枚ずつ床に落ち、肌と肌が触れ合う感触が、静かな部屋に甘い熱気を生む。

窓から差し込む月光が、二人の影を優しく包み込んだ。

 

 

翌朝、女武闘家は生まれたままの姿で竜騎士に抱きついて寝ていた。

朝の日差しがカーテンの隙間から差し込み、彼女を優しく照らす。

ゆっくりと目を開けると、すぐ隣で竜騎士が静かな寝息を立てて眠っていた。

穏やかな寝顔、わずかに開いた唇、朝陽に照らされた頰の柔らかな輪郭。

女武闘家は少しニヤけながら、彼の寝顔をじっと見つめた。

 

「ふふ……可愛い……」

 

彼女はそっと指先で彼の頰を撫で、髪を優しく触った。

いつも戦場で凛々しく、槍を構える姿とは違う、無防備で穏やかな表情。

それが、彼女の心を温かく満たす。

 

この寝顔は、誰にも見せない、自分だけが知っている、彼の素顔。

彼女はそっと彼の胸に顔を寄せ、寝息のリズムに耳を傾けた。

 

「大好き……」

 

小さな呟きが、朝の静かな部屋に溶けていく。

竜騎士はまだ眠ったまま、彼女の髪を無意識に撫でるように手を動かした。

女武闘家はくすりと笑い、もう少しだけ、この温もりに浸ることにした。

暫くして、竜騎士は目が覚めると、隣で眠る女武闘家の顔を優しく見つめた。

 

朝陽がカーテンの隙間から差し込み、彼女の頰を柔らかく照らす。

彼はそっと体を起こし、彼女の額に優しいキスを落とした。

 

「おはよう……もう起きていたのかい?」

 

女武闘家は目を細めて微笑み、優しい声で返した。

 

「おはよう……」

 

彼女はベッドからゆっくり降り、伸びをして言った。

 

「朝ごはん準備するから、待っててね」

 

竜騎士は慌てて起き上がり、彼女の後を追った。

 

「僕も一緒に手伝うよ」

 

女武闘家は振り返って笑い、「折角のお休みなのに……いいの?」

 

とからかいながらも、嬉しそうに頷いた。

二人は小さなキッチンで朝食を準備した。

竜騎士が薪をくべ、女武闘家がパンと卵を焼く。

簡単な料理だが、二人で作る時間が心地よい。

食卓に並んだ温かな朝食を前に、二人は向かい合って座った。

 

暫くして、二人は家から出た。

久々の帰宅、村の周りを散歩する二人。

村の道を歩き、懐かしい家並みや、変わらぬ風景に目を細める。

手をつなぎ、時折言葉を交わしながら、ゆっくりと村の外れへ向かった。

そして村の外れにある墓地に来た。

 

女武闘家の父親の墓にお参りに来た。

彼女は持ってきた花を丁寧に添え、竜騎士と共に手を合わせた。

 

静かな祈りの時間。

 

風が墓石の間を吹き抜け、二人の髪を優しく揺らす。

次に、女武闘家の幼馴染の青年の墓に来た。

 

意外にも彼の墓は綺麗にされていて、一輪の花が添えられていた。

 

女武闘家は少し驚き、そっと花を追加して祈りを捧げた。

竜騎士も静かに手を合わせ、彼女の横で寄り添う。

祈りが終わると、青年剣士の兄がやって来た。

彼は二人の姿を見て、穏やかに微笑んだ。

少し雑談をすると、兄はぽつりと語った。

 

「数日前に、神官の女の子が一人で来て、花を添えて行ったよ」

 

竜騎士は一言「あの子も、きっと忘れられないんだろうな…」

 

女武闘家は墓石を見つめ、静かに言った。

 

「そうだよね……もう一年だよね、また来るからね」

 

彼女は墓に向かって優しく話しかけ、涙を堪えた。

帰り道、女武闘家は竜騎士に幼馴染の青年の話をした。

幼馴染だった事、密かに思っていた事──。

 

言葉を紡ぐたび、声が少し震える。

竜騎士は優しい顔で、黙って聞き続けた。

彼女の痛みを受け止め、ただそばにいる。

女武闘家は歩みを止め、竜騎士の顔を見上げた。

 

「貴方にこんな話をしても、困るよね……ごめんなさい」

 

彼女の目は少し潤み、言葉を続ける。

 

「でも今は貴方しか考えられない。愛している気持ちは本物だよ……」

 

竜騎士は彼女の手を強く握り、静かに微笑んだ。

 

「困らないよ、君の過去も、今も、全部受け止める。僕も……君だけだ」

 

二人は再び歩き出した。

村の道を、手を繋いで。

過去の影は消えないが、二人の未来は、互いの手の中で温かく輝いていた。

 

 

竜騎士と女武闘家は、準備を整えると、村の人たちに見送られながら再び辺境の街のギルドに向かった。

村の入り口に集まった人々が、二人の姿を惜しむように手を振る。

 

「おい、ゆっくりして行けよ! 久しぶりに帰ってきたんだから、休んで行けよ!」

 

マスターの大きな声が響き、近所のおばさんが持ってきた干し肉の包みを押しつけてくる。

 

「これ、持ってきな! 道中腹減るだろ!」

 

女武闘家は笑顔で受け取り、丁寧に頭を下げた。

 

「ありがとうございます……。でも、この仕事終わったら、ゆっくり帰ってきますから」

 

竜騎士も皆に会釈し、静かに言った。

 

「心配かけてすみません。必ず、無事に帰ってきます」

 

村の人たちは少し寂しげに、しかし温かく見送った。

 

「気をつけろよ!」「また帰ってこい!」

 

そんな声が背中に届く中、二人は馬に跨り、辺境の街への道を進み始めた。

馬の蹄が地面を叩く音が、静かな朝の村に響く。

女武闘家は竜騎士の横に並び、軽く肩を寄せた。

 

「みんな、優しいよね……。久しぶりに帰ってきたのに、すぐにまた出かけるなんて、ちょっと悪い気もするけど……」

 

竜騎士は馬の手綱を握りながら、穏やかに答えた。

 

「ああ。でも、あの事件の真相を突き止めて、ちゃんと決着をつけないと……」

 

女武闘家は頷き、遠くの空を見上げた。

 

「うん……。私も。あの闇人のためにも、妹さんのためにも……ちゃんと終わらせたい」

 

二人は言葉少なに馬を進め、辺境の街へ向かった。

道中、朝日に照らされた川がキラキラと光り、鳥のさえずりが聞こえる。

暫く進んで行くと街が見えて来た、そして中に入る。

ギルドの建物の前で二人は馬を降り、互いに視線を交わした。

 

二人は再びギルドに戻り、竜騎士と女武闘家はメモを参考に過去の資料を漁り、他の冒険者たちに聞き込みを始めた。

資料室の埃っぽい棚から古い依頼書や事件報告書を引っ張り出し、受付嬢に再度、古い記録の閲覧を許可してもらう。

冒険者たちの噂話も集め、ベテラン冒険者に直接話を聞いた。

時間はかかったが、少しずつ輪郭が見えてきた。

分かったのは、辺境の街周辺で長年暗躍している昔からの盗賊団だった。

 

頭目は、かつて闇人の妹たちを奴隷商人に売り飛ばした男たちの一味が盗賊団を結成して、当時の冒険者のリーダーが、そのままリーダー格になっているらしい。

村を襲って略奪や人身売買にも手を染め、ギルドからも長年高額の討伐依頼が出ていたが、なかなか捕まえられずにいた。

 

「奴ら、森の奥深くに隠れ家を作ってるって話だよ。様々な魔物を使役して、襲撃の痕跡を消したり……相当狡猾だ」

 

ベテラン冒険者の一人が、渋い顔でそう教えてくれた。

二人はその依頼書を正式に受け、ギルドを後にした。

女武闘家は静かに言った。

 

「これで……決着をつけられるかもね」

 

竜騎士は頷き、ゲイボルグ・アルテマを背負い直した。

 

「ああ。本当の意味で決着を付ける為……向かおう」

 

二人は馬に跨り、街の門をくぐった。

 

 

 

 

闇人の魔術師は、滅びた集落の小さな家で妹と静かに暮らしていた。

 

かつての憎しみは消えた訳では無かった。

只人や冒険者に対する怒りは、心の底にくすぶり続けていたが、竜騎士と女武闘家との出会いが、彼の心に小さな揺らぎを生んだ。

今はただ、大切な妹と静かに生きられれば、それでいいと思っていた。

妹はあんな目に遭わされたのに、今でも優しく、慎ましい生活で満足している。

闇人の魔術師は妹の寝顔を見ながら、復讐の炎を抑え込もうとしていた。

ある朝、気配を感じて外に出ると、竜騎士と女武闘家が立っていた。

 

朝霧が森を包み、二人の姿がぼんやりと浮かぶ。

竜騎士の槍が朝陽に輝き、女武闘家の拳が静かに握られている。

闇人の魔術師はフードを深く被り直し、低く聞いた。

 

「何だ……あんた達か……俺にまだ何か用があるのか?」

 

竜騎士は槍を地面に軽く突き立て、静かに答えた。

 

「君を殺そうとし、妹さんを奴隷にした奴の事を調べた。

どうする? 一緒に行くか?」

 

闇人の魔術師は一瞬、目を細めた。

 

「ふん……どうせ一緒に捕まえようとか、そういう話だろ?」

 

竜騎士は首を振り、穏やかだが強い声で言った。

 

「いや、奴は生かしておく意味も無いだろう?君が少しでも前に進む為には、奴を見つけ出し、君自身で復讐を果たすんだ」

 

闇人の魔術師は、英雄と呼ばれた男の意外な言葉に少し驚いた。

 

フードの下で赤い目が揺れ、杖を握る手が震える。

 

「あんたみたいな英雄から……復讐の協力なんて聞くとは思わなかった」

 

竜騎士は静かに微笑んだ。

 

「僕は別に聖人君子でもないさ。どうする?」

 

闇人の魔術師は長い沈黙の後、ゆっくりと頷いた。

 

「ああ……奴を殺せるなら、願ったりだ……フフフ」

 

彼の笑いは低く、しかしどこか解放されたように響いた。

妹の寝顔を振り返り、静かに言った。

 

「少し……待っててくれ」

 

女武闘家は優しく頷き闇人の魔術師に声をかけた。

 

「一緒に……終わらせましょう」

 

闇人はフードを被り直し、杖を握りしめた。

その時、闇人の魔術師の妹は目を覚まして、竜騎士と女武闘家の姿に気がついた。

ベッドの上でゆっくり体を起こし、髪を軽くかき上げながら、兄の隣に立つ二人の姿を不思議そうに見つめた。

まだ眠気が残る瞳が、好奇心と少しの警戒を帯びて揺れる。

竜騎士は穏やかに微笑み、妹に近づいて優しく声をかけた。

 

「今度の依頼で、君のお兄さんの魔術師としての力が必要なんだ、いいかな?」

 

妹は少し驚いた顔をしたが、すぐに兄の方を向いた。

闇人の魔術師は、妹の視線を受け止め、静かに言った。

 

「こいつらがどうしても俺の力が必要らしい。こないだの借りを返す為にも、暫く留守にするが……いいか?」

 

妹はベッドの上で膝を抱え、兄の顔をじっと見てから、柔らかく微笑んだ。

 

「大丈夫よ、兄さんは過保護なんだから。協力してあげて」

彼女の声は優しく、やはり、どこか寂しげだった。

女武闘家は妹に近づき、温かな笑みを浮かべて言った。

 

「ありがとう……絶対に大丈夫だから」

 

もちろん、半分は嘘である。

余計な心配を彼女にさせたくはないからだ。

本当の目的は、復讐の相手を討つこと、妹の心の傷を癒すためにも、闇人の魔術師の憎しみを終わらせるためにも。

だが、それを今、彼女に伝える必要はない。

竜騎士は懐から地図を取り出し、広げて場所を示した。

古い羊皮紙に描かれた森の道、辺境の村の印、そして盗賊団の隠れ家と噂される場所。

 

「場所はここだ。まずは近くの村まで行ってみよう。そこから情報を集めて、奴らの足取りを追う」

 

闇人の魔術師は地図を覗き込み、ゆっくり頷いた。

妹はベッドから降り、二人の前に立った。

小さな手で兄のローブの裾を握り、静かに言った。

 

「兄さん……気をつけて、無事に帰ってきてね」

 

闇人の魔術師は妹の頭を優しく撫で、珍しく柔らかな声で答えた。

 

「ああ……約束する」

 

女武闘家は妹に微笑みかけ、

 

「私たちも一緒にいるから大丈夫よ!待っててね」

 

闇人の魔術師の妹は小さく頷き、三人を見送った。

家の扉が閉まり、森の静けさが再び訪れる。

三人は集落を後にし、馬に跨って森の奥へ向かった。

朝霧が立ち込める道を、決意を胸に進む。

 

 

 

 

 

ここはとある、盗賊団の本拠地の砦。

 

森の奥深く、崩れかけた石壁に囲まれた砦は、周辺の村から奪った金品と、女達で溢れていた。

金貨や宝石が粗末な木箱に山積みになり、女たちは縄で繋がれ、隅に蹲らされていた。

薄暗い広間に、松明の炎が揺らめき、酒と汗と血の臭いが混じり合っている。

 

盗賊の一人が、女を犯していた。

女は必死に抵抗したが、力の差は歴然だった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

盗賊の拳が彼女の顔を殴りつけ、頰が腫れ上がり、唇が切れて血が滴る。

体には青黒い痣が無数に浮かび、衣服は引き裂かれ、裸に近い姿で地面に押さえつけられていた。

周りの盗賊達は酒を飲みながら、笑い声を上げて見物している。

 

「へへっ、いい声で鳴くじゃねえか!」

 

「どうせお前は、帰る村も無いし、奴隷落ちだよ! 諦めな!」

 

女性は死んだ目をして、ただ涙を流していた。

抵抗する力も、叫ぶ声も、もう残っていなかった。

ただ、静かに涙が頰を伝い、地面に落ちるだけ。

 

その時、盗賊団の頭目の男が歩いて来た。

 

体格の良い、傷だらけの顔に髭を生やした男。

腰に大剣を下げ、革鎧を着た姿は、威圧感に満ちていた。

 

「おう! なかなか楽しそうじゃねえか?」

 

盗賊は頭目を振り返り、ニヤニヤしながら言った。

 

「ちょっと抵抗するんで殴ってやったら大人しくなりまして、へへっ。女を犯すのはたまらねぇ! 頭目も一緒にどうですか?」

 

頭目は腫れ上がり、痣だらけの女を見下ろした。

彼女の虚ろな目、震える体、血と涙にまみれた顔…

頭目はにやりと笑い、盗賊を呼び寄せる。

 

盗賊は頭目の近くに行き、期待に満ちた顔で近づいた。

次の瞬間、頭目は剣を抜き、盗賊の腹に突き刺した。

刃が肉を裂く音が響き、血が噴き出す。

 

盗賊は目を剥き、地面に倒れて、もがき苦しんだ。

 

「ぐ……あ……な、なぜ……!」

 

頭目は冷たく見下ろし、剣を抜いて血を払った。

 

「女は大切な商品だ! こんな風にしやがって、売り物にならなくなったらどうするんだ?」

 

頭目は苦しんでいる盗賊に蹴りを入れ、声を荒げた。

 

「犯すのはかまわねぇが、傷つけるなよ!分かったな!!」

 

周りの盗賊たちは一瞬静まり、すぐに慌てて頷いた。

 

「わ、わかってます……頭目……」

 

頭目は剣を鞘に収め、女を見下ろした。

彼女はまだ震え、死んだ目で地面を見つめている。

頭目はため息をつき、部下に命じた。

 

「この女、綺麗に洗って、傷の手当てをしろ。売り物に傷がついてちゃ値が下がる」

 

盗賊たちは慌てて動き、女を運び出した。

 

頭目は広間の隅に座り、酒をあおった。

 

「まったく……使えねぇ奴らだ」

 

砦の闇は深く、女の泣き声が遠くに響く。

 

しかし、この砦に、影が近づいていることを、まだ誰も知らなかった。

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ニブルヘイムの村長の息子ハメルに転生した読者(貴方)が、無双してティファを寝取る話。


総合評価:4287/評価:8.84/完結:25話/更新日時:2026年07月31日(金) 07:07 小説情報

【R18】皇帝が変える(作者:ボルメテウスさん)(原作:アカメが斬る!)

帝国には、存在を隠された第一皇子がいた。▼彼の帝具は、百通りの行動を脳内でシミュレートし、その一つを現実として確定する力。 ▼その力で彼は、帝国に渦巻く暗殺、反乱、処刑、裏切りを次々と回避していく。▼本来なら死ぬはずだった者たちは生き残り、壊れるはずだった心は踏みとどまり、敵同士だった者たちも別の未来へ歩き出す。▼しかし、悲劇を救った代償は大きかった。▼百…


総合評価:1822/評価:8.86/完結:16話/更新日時:2026年06月04日(木) 02:00 小説情報


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