すみれ通り商店街の『食事処ゆきひら』。
「すみれ印の唐揚げロール」の試作と仕込みが一段落した深夜、厨房の灯りは消え、店の奥にある小さな和室には行灯の柔らかな光だけが灯っていた。
畳の上に並んで腰を下ろしていたのは、倉瀬真由美と水戸郁魅であった。
「……はい、水戸さん。温かいお茶、淹れたよ」
「……あ、ありがとう。倉瀬さん」
昼間の勢いあまった喧嘩腰のやきもち合いが嘘のように、室内にはどこか照れくさく、心地よい静けさが漂っていた。郁魅は差し出された湯呑みを受け取ると、ふうっと息を吹きかけて一口含んだ。
「……ねえ、水戸さん。創真くんのこと……いつから好きなの?」
真由美が膝の上で手をぎゅっと握りしめ、上目遣いに尋ねる。郁魅は一瞬目を見張り、カッと顔を真っ赤に染め上げたが、すぐに愛おしそうな笑みを浮かべた。
「っ……! べ、別にいつからだっていいでしょ! ……でも、アタシが食戟で負けた時……あのアイツの真っ直ぐな目と、お肉の可能性を教えてくれた料理の熱に……身も心も全部奪われちゃったのよ」
郁魅は照れくさそうに胸元を隠すように腕を組んだが、その表情は一人の愛する男を想う素直な女の子そのものだった。真由美はその姿を見て、優しく微笑んだ。
「……うん、わかるよ。創真くんって、自分のことより周りの人のために一生懸命になれる人だもんね。遠月に行って遠い存在になっちゃったみたいで寂しかったけど……私、やっぱり創真くんのことが大好きなの」
「倉瀬さん……」
幼馴染として長年寄り添ってきた真由美の一途な想い。そして食戟を通じて創真に魂を打ち抜かれた郁魅の情熱。
同じ男を真真剣に愛し、その熱に魅了された者同士。立場は違えど、二人の間には強い共感と、互いへの深い尊敬の念が芽生えていた。
「……あたしたち、最高のライバルね」
郁魅がポツリと呟き、照れ隠しのように力強い笑顔を浮かべた。真由美も嬉しそうに目を細めると、ぽん、と自分の身体を郁魅の豊満で健康的な胸元へと寄せた。
「うん! 私、水戸さんのこと……すごく素敵な人だと思う。創真くんを好きな気持ち、負けたくないな」
「ちょっと……不意打ちね、倉瀬さん……っ!」
真由美の思いがけない可憐なアプローチに、郁魅の胸が大きく跳ねた。真由美の柔らかで華奢な身体を抱き返すうちに、郁魅の心の中に、ライバルとしての愛おしさと、同じ熱を共有する者同士の甘い愛着が溢れ出していく。
「あたたかいね……水戸さん……」
「倉瀬さんだって……すごくいい匂いがする……」
二人はそっと抱き合い、お互いの体温と胸の鼓動を確かめ合った。創真を想う情熱が二人を包み込み、ライバル同士のハグは次第に甘く濃厚な熱を帯びていったのだった。
行灯の淡い光が畳に映える静かな和室。二人はしばらくそのまま抱きしめ合っていたが、ふと真由美が顔を上げると、郁魅の豊かな胸の谷間に自分の頬がすっぽりと埋まっていた。
「……水戸さんの身体……すっごくあったかい……」
「なによ倉瀬さん……そんなにじろじろ見ないでよ……っ!」
ヘルシーで健康的な褐色の肌をカッと赤く染める郁魅。その戸惑う様子があまりにも可愛らしくて、真由美はそっと郁魅の露わになった鎖骨へと指先を這わせた。すると、普段は豪快で強気な郁魅の身体がピクンと大きく震えた。
さわさわっ…… ぷにゅん……
「ひゃっ!? ちょっ……そこはアタシの弱点なんだからぁ……っ!」
「ごめんね? 水戸さんがあんまり素敵だから……」
無自覚な妖しさを漂わせながら首を傾げる真由美。その上目遣いな瞳に魅入られた郁魅の胸の奥で、理性がじんわりと蕩けていく。同じ男を愛する少女への愛おしさが、急速に身体の奥から熱となって込み上げてくる。
「もう……ライバルだからって容赦しないわよ?」
郁魅はお返しとばかりに、真由美の華奢な両肩を掴み、畳の上へと優しく押し倒した。
「ふわっ……!?」
軽い抵抗もなく真由美の身体が仰向けになる。白い寝間着から伸びる細く柔らかな脚が畳の上に投げ出されると、郁魅の喉仏がゴクリと鳴った。真由美の透き通るような白肌と、自分の健康的な褐色肌のコントラストがやけに艶めかしい。
「倉瀬さん……アタシもずっとこうしたかったのよ」
強引そうな口調とは裏腹に、郁魅は壊れ物を扱うように恐る恐る手を伸ばした。その手つきの優しさが伝わり、真由美も抵抗することなく、全身の力を抜いて郁魅へ身を委ねた。
なでなでっ…… さわさわっ……
郁魅の温かく大きな掌が、真由美のしなやかな二の腕から鎖骨、そして胸元へとゆっくりと滑り、愛おしむように撫で上げていく。
「あ……っ! くすぐったいよぉ……水戸さん……っ」
「可愛い声出すじゃない……ほらほら」
つんつんっ…… こりこりっ……
「ひゃうぅ……っ! 弱いところばっかりいじらないでよぉ……っ!」
褐色の指先が真由美の胸元に触れ、小さな先端を優しく弾くと、真由美から甘い悲鳴が漏れた。料理以外ではどこか不器用なはずの郁魅が、こんなにも繊細な指使いで自分を愛撫してくれる事実に、真由美の胸がときめきで激しく鳴り響く。
「アタシだって創真に負けたくないんだから……ライバルのお前を知り尽しておかないとね?」
「ずるいよ水戸さん……そんなこと言われたら……」
逆襲とばかりに、真由美の小さく柔らかい手が郁魅の豊かな胸元へと這う。
ぺたぺたっ…… ぷにゅんっ……
「ひぃん!? そこで攻め返すの反則よぉ……っ!」
豊かなバストを下から包み込むように持ち上げられただけで、郁魅の腰が軽く浮き上がった。真由美はそのままそっと顔を近づけ、郁魅の柔らかな谷間へ顔をうずめた。
ふにゅぅ…… すりすりっ……
「ふわぁ……っ! ダメ……感じちゃうよぉ……っ!」
「水戸さんのここ……すごく大きくて柔らかくて……私、すごく好きだよ」
谷間に埋もれた真由美の甘い囁きが直接肌に伝わり、郁魅の頭の中が熱さで沸騰しそうになる。
「アタシだって倉瀬さんのこと……好きなのよぉ……っ! もう我慢できないわよ……!」
ぎゅむむっ…… くちゅくちゅっ……
感極まった郁魅は、真由美の下着の奥へとしなやかな指先を滑り込ませた。秘部はすでに真由美自身の体温と期待でしっとりと濡れており、指先がすべらかに奥へと沈み込んでいく。
「あぁっ! 水戸さんったら……っ! もうそんなところばっかり……っ!」
「アンタが可愛いからいけないんだからね……責任取りなさいよ」
強引なように見えて、どこか余裕のない必死さが混ざる郁魅の声。真由美も羞恥心を乗り越え、素直に頷いた。
「うん……私……水戸さんの全部知りたいの……」
ぬぷぷ…… くりくりぃ……
「ひゃうぅっ! 指が入ってきちゃうよぉ……っ!」
「倉瀬さんの中……すごい熱いよ……っ。アタシのも触ってみて?」
二人は互いの秘部を素肌越しに晒し合い、手と手を絡め合わせるように指先を重ねた。
くちゅくちゅっ…… ぬちゃぬちゃっ……
「はぁん……っ! 水戸さんの指……っ! 刺激強すぎるよぉ……っ!」
「倉瀬さんのそこ……すっごく締まってる……っ! もうヤバいわ……っ」
同じ男性を愛する熱を分け合うように、ライバル同士の愛撫は激しさを増していく。滑らかな蜜の音が和室に響き渡り、お互いの快感がシンクロして波のように押し寄せてくる。
ぐちゅぐちゅっ! こりこりこりぃっ!
「あっあっあっ……っ! イっちゃうよぉ……っ! 水戸さんと一緒にイキたいのにぃ……っ!」
「アタシももうダメ……っ! 同時にイこうね……倉瀬さん……っ!」
ぷしゃあぁぁっ!! ぶしゅぶしゅぅぅっ!!
「ああぁぁ……っ!!」
「ひゃうぅぅっ!!」
ほぼ同時に、お互いの指先を濃厚な愛液で濡らしながら絶頂を迎えた。弾むような呼吸とともに痙攣する二人の肉体が、畳の上で強く抱き合わさる。
しゅるるっ…… ぎゅむむっ
「はぁ……はぁ……水戸さんってすっごくエッチなんだね……」
「倉瀬さんこそ……想像以上に積極的でビックリしたわよ……」
お互いの汗ばんだ肌を慈しむようにすり寄せ、抱き合うふたり。
「私たち……ライバルなのに変な関係になっちゃったね」
「ええ……でも悪くないわ。創真にもあんたにも負けないくらい……もっともっと強くなれそうだから」
照れくさそうに笑みを交わし、ふたりは引き寄せられるように唇を重ね合わせた。
ちゅ…… ぺろりっ……
「ん……水戸さんとのキス……すごく甘いね」
「アンタのキスだって負けてないわよ」
創真を巡るライバルでありながら、互いを深く受け入れ合ったふたりの間には、確かに特別な絆が芽生えていたのだった。
乱れた敷布団の上。行灯の淡い光が、汗ばんだふたつの綺麗な素肌を優しく照らしていた。
甘く芳醇な情熱の余韻が漂う中、真由美は郁魅の豊かな胸の中にすっぽりと収まり、彼女の首元へ細い腕を回していた。
健康的な褐色の肌と、しなやかな白い肌がぴったりと吸い付くように重なり合っている。
「……ふふ、水戸さん……。なんだか夢みたい。ライバル同士なのに……こんなに気持ちよくて、あたたかくなっちゃうなんて……」
真由美は頬を赤く染めながらも、郁魅の抱擁から離れようとはせず、甘えるように頬を擦り寄せた。
「……うぅ、倉瀬さんったら、照れるようなこと言わないでよ……っ。アタシだって……こんなの初めてなんだから……っ」
郁魅は耳まで真っ赤にしながらも、真由美の華奢な背中を愛おしそうにしっかりと抱きかかえ、彼女の額へ優しく唇を落とした。
「でも……不思議ね。倉瀬さんとこうしてひとつになったら……もっと創真のことが愛おしくなったし、倉瀬さんのことも……もっと大好きになっちゃったわ」
「私も……! 水戸さんのこと、もっともっと大好きになったよ」
真由美は眩しい笑顔を浮かべると、つま先立ちをするようにして郁魅の唇へそっと甘いキスを重ねた。
「これからも、創真くんの『一番』を賭けて……切磋琢磨しようね、水戸さん!」
「ええ、望むところよ! 創真にも、あんたにも……絶対負けないんだからッ!」
二人は互いの絆と情熱を深め合い、密かに手を繋ぎながら、愛おしそうに微笑み合ったのだった。
(第22話 おわり)