極寒の北海道を舞台に繰り広げられる、反逆者(創真たち)を絶望へ叩き落すための遠月学園・進級試験『ツール・ド・ノール』。
吹雪が吹き荒れる第1次試問の調理場において、創真たちの前に立ちはだかったのは、遠月学園の教壇に長年君臨するベテラン女性審査員・広井講師であった。
他の生徒たちには脂の乗った極上の生鮭が与えられる中、広井は冷徹な薄笑いを浮かべ、創真たちの調理台に置かれた「異様な鮭」を指差した。
「ふん……幸平創真。貴方たち反逆者組に配給されたのは、産卵を終えて川を上り、身も脂もスカスカに痩せ細った『ホッチャレ』よ。通常なら食用にすらならない廃棄品。セントラルに従わない反逆者には、これで十分だわ。このゴミのような食材で合格基準に達するわけがない。貴方たちの遠月での命運もここまでね」
広井の姑息で理不尽な嫌がらせに対し、仲間たちが憤る中、創真は焦るどころか不敵で眩しい笑みを浮かべた。
「へへ……ホッチャレねぇ。確かにそのまま使ったらパサパサで食えたもんじゃねぇな。だがな……講師のおばさん。俺たちがただ指を咥えて待ってたと思ってんのか?」
創真が合図を送ると、タクミと恵が厳重に保冷された特殊なコンテナを運び込んできた。蓋を開けると、そこには銀色に眩しく輝く、まるでもぎたてのように完璧な解凍状態の高級鮭が収められていた。
「な……なんですって……!? それは……本物の『トキシラズ(時不知)』!? なぜそんな季節外れの極上物がここに……ッ!?」
目を剥く広井に、創真はニッと八重歯を見せた。
「時期外れに獲れる貴重なトキシラズを、超低温の塩酸カリウム水溶液に浸けて急速凍結させる『ブライン法』で保存してあった特級品を、さっき短時間で競り落として仕入れてきたんだよ! 氷の結晶を作らず細胞を一切壊さないブライン法なら、解凍しても旨味のドリップが一切出ねぇ! 粗悪なホッチャレなんか使わなくても、俺たちの腕とアイデアでいくらでも道は拓けるんだよ!」
「な……ッ!? 規則上、持ち込み食材の禁止事項には触れていないけれど……そんな力技を……ッ!?」
周りの生徒たちが普通の生鮭を使う中、創真たちは最高峰の『ブライン冷凍トキシラズ』と、あえてあのパサついた『ホッチャレ』の出汁を抽出し、究極のソースへと昇華させるダブルの仕掛けを施していった。
強火の鉄板から立ち上る、芳醇で香ばしいバターと北海道味噌、そしてトキシラズの濃密な脂の香気が調理場全体に吹き荒れる。
創真が仕上げて提示したのは——『ゆきひら流・ブライン仕立てトキシラズのムニエル〜ホッチャレ濃厚旨味味噌ソース〜』。
「お前たちがゴミだと切り捨てたホッチャレも、旨味のベースとして煮詰めれば最高のソースの素になる。捨てる食材なんて一つもねぇんだよ!」
創真は胸を張り、力強い一言を叩きつけた。
「おあがりよッッッ!」
威勢の良い決め台詞とともに差し出された一皿。広井は圧倒されながらもフォークを伸ばし、一口口へと運んだ。
その瞬間——広井の脳内と全身を、溢れ出るような若々しい快感と生命力の奔流が駆け巡った。
「っ……!? な……なんて瑞々しくて、溢れんばかりのトロける脂なの……ッ!? ブライン法で完璧に保持されたトキシラズの濃密な身の旨味に、ホッチャレから抽出した極限の出汁味噌ソースが絡み合って……身体中に熱いエネルギーが駆け巡る……ッ!!」
料理から溢れ出すトキシラズの圧倒的な生命力と温かさが広井の体内を駆け巡り、長年の疲労と老化を吹き飛ばすかのように肌にツヤとハリを与えていく。
不機嫌で厳格だった老講師の姿は、まるで奇跡のように若々しく艶やかな肉体へと変化し、着ていたスーツが弾け飛ばんばかりに熱く火照っていった(おはだけ・若返り)。
「あぁっ……身体が……身体の奥から熱い熱量が満ち溢れて……私、若返っていくわ……ッ! こんな……こんな凄まじい料理、食べたことがない……ッ!!」
姑息な策で追い詰めようとしたプライドが音を立てて崩れ去り、広井は創真の型破りな行動力と圧倒的な料理技術に、身も心も完全に屈服した。
「私……間違っていたわ。幸平創真……貴方の料理が……貴方の温もりがなければ、私の身体はもう生きていけないわ……ッ!」
若々しく艶やかな美貌を取り戻し、真っ赤に頬を染めた広井は、厳格な講師の面影を脱ぎ捨て、創真の胸元へと自ら激しくすがりついたのだった。
吹雪が轟音を立てて窓を叩く特設控え室。室内には薄暗い照明が灯り、二人の荒い息遣いと情熱的な熱気が立ち込めている。
広井がそっと創真の膝から降りると、未だに小さく震える指先でスーツのジャケットを肩から脱ぎ捨てた。重厚な衣服の下からは、シルクのように滑らかで艶やかなシャツが現れる。その胸元には、以前の老いた肉体には見られなかった豊かな張りとしなやかさが宿っていた。
「あの……幸平……私のこんな若い身体を見るのは初めてでしょう?」
「ああ。前までの堅苦しい感じとは大違いだぜ」
創真が不敵に笑いながら手を伸ばし、薄いシャツ越しにその柔らかく弾力のある膨らみを優しく撫で上げる。
ふにゅっ……くりくりっ
「んあっ!?」
突然の指先の刺激に、広井の身体がビクンと大きく跳ね上がった。
「触れるだけでこんな反応……若返りってのは凄ぇもんだな」
「だ、だめよ……生徒にこんなこと……っ」
恥じらいに声のトーンを落としながらも、広井は創真の手を払いのけようとはせず、自らその熱い掌の感触を貪るようにじっと佇んでいる。
「講師のくせにホッチャレなんてあてがうような姑息なおばさんが、今さら倫理観か?」
創真が顔を寄せ、広井の敏感な耳元へ低く甘い吐息を吹きかけた。
はぁっ……ぴとっ
「きゃあっ!? ゆ、言わないでよぉ……っ」
過ちを突きつけられ、広井の顔は耳の先まで真っ赤に染まった。創真の手先は迷うことなく、シャツのボタンを一つ、また一つと外していく。
ぷつっ……ぱさりっ
「見てくださいよ先生……こんなに若くなったんですから」
はだけたシャツの間から露出した肌は、まるで20代前半の乙女のように瑞々しく、透き通るような白さを誇っていた。
「やめて……っ! 自分でも信じられないのに……っ」
創真はその瑞々しい素肌の鎖骨へ向けて、そっと唇を寄せていった。
ちゅぷっ……れろれろっ
「ひゃあぁんっ! そ、そこは敏感すぎるわよぉっ!」
広井が必死に抵抗しようと身体を捩らすが、熱を帯びた肉体はあまりの心地よさに素直に従ってしまう。創真の手はそのままなだらかなスカートのラインを辿り、その裾から内側へと滑り込んでいった。
すすぅっ……すべすべっ
「きゃあぁっ!? ど、どこ触ってるのよ……っ」
「先生の一番大事なところですよ」
繊細なレース地のショーツ越しに、熱く火照った秘部をゆっくりと指先で探っていく。
すりすりっ……くちゅぅっ!
「あんっ! 指が……直接あたるわっ……っ」
「ブライン法で冷凍された魚みたいに固くなってるじゃありませんか」
「へ、変な例えはやめて……っ」
言葉とは裏腹に、創真の指先が動くたび、広井の身体からは甘い体液と熱風のような吐息が漏れ出していく。
創真が一度手を離すと、緊張の糸が切れたように広井は肩を揺らし、ハァハァと安堵の息をついた。
「先生……本当はどうしたいんですか?」
「私は……講師としての立場が……っ」
「ほんとは俺のブライン法みたいな衝撃的な愛撫が欲しいんじゃないですか?」
「……っ!」
図星をつかれ、広井は逃げるように視線を落として俯いた。
「ブライン法で閉じ込められたトキシラズの旨味みたいに……貴方の熱が私の身体の奥まで届いているのよ……っ」
頬を熱く染め上げ、ついに包み隠さず本音を漏らした。
創真がゆっくりと立ち上がり、ズボンを下ろす。下着をずらして露わになった男性としての象徴は、彼女の想像を遥かに超える威容を誇っていた。
「これが……若い男性の……っ」
「先生の大好きなブライン法で仕込んだ特製品ですよ」
「そ、そんなバカな……っ」
呆然と立ち尽くす広井の肩を掴み、創真はそのまま静かにベッドの上へと押し倒した。
どさっ!
「あぁっ! 幸平……っ!」
創真がその上に覆いかぶさると、押しつぶされた空気とともに広井の身体がガクガクと武者震いのように震え出す。
「抵抗しないんですね先生」
「貴方に食べられた料理が……身体中で貴方を求めているのよぉっ!」
その切実な叫びを聞いた創真は、広井の濡れた肉体に向けて一気に腰を深く押し付けた。
ずにゅぅぅっ!
「ひゃあぁぁんっ!? は、入ってきたわぁっ!」
若返った肉体は、細部まで異常なまでに敏感かつ繊細に出来上がっていた。
ぱんっ! ぱんっ! どちゅっ!
「きゃあぁんっ! げ、激しいわよぉっ!」
「先生の中……若返った分めちゃくちゃ締まってますよ!」
創真が情赦なく腰を振り、奥の最も深い部分を何度も叩き上げていく。
ぐりぐりっ! どすんどすんっ!
「そこダメェッ! よ、弱いところばかり突かれてるわぁっ!」
肉体の悦びに目覚めた広井は、自らも創真の動きに合わせて腰をくねらせ、しがみついてきた。
「もっとぉっ! 若返った私の身体を貴方で一杯にしてぇっ!」
「先生……素直になりましたね」
創真が上から覆いかぶさり、その開いた唇を深く奪い去る。
ぢゅぷっ……れろれろぉっ!
「んんん~っ! き、気持ちいいわぁっ!」
二人の激しく結合する部位から、湿った艶やかな水音が周囲に響き渡っていく。
ぐちゅぐちゅっ! ずぶずぶぅっ!
「ひゃあぁっ! 音が部屋中に響いているのがわかるわぁっ!」
「先生のここ……若返りすぎてるんじゃ?」
創真がその開いたシャツの間から、大きく波打つ乳房をしっかりと掴み上げた。
もみもみっ……ちゅぱぁっ!
「そこはダメよぉっ! 胸だけで感じちゃうぅっ!」
絶頂の波が互いの肉体を激しく駆け抜け、ついに限界の時が訪れる。
「幸平……っ! も、もうダメぇっ!」
「一緒にいきましょう先生!」
全身の力を込め、最後の一突きを奥深くまで叩き込む。
どすんっ!
「ひゃあぁぁぁんっ! イクゥッ!」
ぶしゃぁぁぁっ! がくがくがくぅっ!
広井が激しい絶頂とともに全身を跳ねさせて果てる。同時に創真もその奥底へと熱い精華を解き放った。
びゅるるるぅっ! どくどくどくぅっ!
「あぁんっ! 出てるわぁっ! 温かいものが中いっぱいにぃっ!」
灼熱の液体が広井の胎内深くに幾度もドクドクと注がれていく。
「身体中に幸平の熱が染み渡るわぁ……っ」
若返った可憐な肉体は、その全てを慈しむように受け止めたのだった。
ふたりは重なり合ったまま、荒い息を整えていく。
「はぁ……はぁ……これが……若いってことなのね……」
創真が優しく手を伸ばし、汗ばんだ彼女の髪をなだめるように撫でた。
「先生……気持ちよかったですか?」
「……ええ。こんな経験、人生で初めてよ」
広井は顔を赤らめ、少女のように照れくさそうに笑ってみせた。
吹雪が吹き荒れる試験会場の特設控え室。
甘く濃厚な余韻と、ほのかな味噌バターの香気が漂う中、大きなレザーソファの上で、若返った艶やかな肌を覗かせた広井は、乱れたスーツの胸元を押さえながら創真の膝の上に腰掛け、彼の首元へうっとりと身を預けていた。
かつての不機嫌で厳格なベテラン講師の面影は微塵もなく、朱に染まった頬と蕩けた瞳で、素直に創真の胸元を撫で上げている。
「……ふあぁっ……幸平……っ。私……試験の講師なのに、姑息な真似をした挙句、生徒の貴方にこんなにも身体を組み替えられて……乱されてしまうなんて……っ」
広井は甘い吐息を漏らしながら、創真の首筋に何度も濃密なキスを重ね、彼の手を愛おしそうに握りしめた。
「でも……身体がすごく軽くて、胸がはちきれそうなほど幸せ……。貴方の料理と、あの逞しい腕の熱がなければ……私、もう生きていけない身体になっちゃったわ……っ」
「へへ、広井講師。姑息な嫌がらせするより、美味いもん食って素直になる方がずっと良いだろ? これからも俺の料理、たっぷり食わせてやるよ」
創真が優しく笑い、若々しくしなやかになった彼女の背中となで肩を抱き寄せると、広井は「ん……っ」と愛おしそうに身を擦り寄せ、上目遣いに創真を見つめた。
「ええ……っ。これからは貴方の特別なパートナーとして……私をずっと温かく愛してね……っ」
プライドを完全に捨て去り、素直な甘えを爆発させる広井の姿に、創真は胸を張り、力強い笑顔で彼女の手を握りしめた。
「お粗末!」
その決め台詞とともに、広井はとびきり可憐で艶やかな笑顔を浮かべ、創真の唇へとそっと背伸びをして甘く濃厚なキスを落としたのだった。
(第50話 おわり)