連隊食戟の特設会場。
デコラとともに審査員席に並び、おっとりとした雰囲気を漂わせつつも冷静な眼差しで創真を見つめているのは、WGO(世界美食機構)一等執行官・クラージュであった。
肩先でやわらかく揺れる少し長めのブロンドボブヘアに、優しげなタレ目と透き通るような緑の瞳を持つ可憐な美女。彼女は穏やかで柔らかな声を静かに響かせる。
「……幸平創真。アン先輩やデコラが貴方の料理に心を動かされたのは認めます。けれど、私を納得させるのは容易ではありませんわ。WGOの審査官として、一過性の刺激ではなく、真に心を安らげる至高の完成度を提示しなさい」
おっとりとした上品な佇まいでありながら、立ち入る隙のない張り詰めた静寂を纏う彼女。
だが、創真は焦るどころか、白いバンダナをきゅっと結び直すと、ニッと不敵で温かい笑みを浮かべた。
「へへ、WGOのクラージュさんね。確かに静かで厳しそうだ。だけどな……料理ってのは身構えて分析するものじゃねぇ! 一口飲んだ瞬間に緊張がほどけて、体の芯からホッとする……そんな最高の温もりの一皿を見せてやるよ! 俺の『ゆきひら流・特製味噌と甲殻類の極上スープ・ド・ポワソン』だッ!」
創真が取り出したのは、特製の鍋でグツグツと煮込まれた、芳醇な香気を放つポタージュ仕立ての魚介スープ。
北海道の新鮮な海老や蟹、旬の白身魚を贅沢に用い、大衆食堂『ゆきひら』秘伝の味噌と芳醇なハーブでじっくりと仕立てられている。
立ち上る甲殻類の濃厚な旨味と、どこか懐かしい味噌の温かい香気が、会場の張り詰めた空気を優しく包み込んでいった。
創真が仕上げて提示したのは——『ゆきひら流・魚介の旨味溢れる極上スープ・ド・ポワソン』。
「……これは……。甲殻類の濃厚なコクと、心を落ち着かせる温かい香気が……これほど深く調和しているなんて……」
澄んだ緑の瞳を揺らすクラージュに対し、創真は胸を張り、力強い一言を叩きつけた。
「おあがりよッッッ!」
威勢の良い決め台詞とともに差し出された一皿。クラージュは静かにスプーンを取り、そっとスープを口へと運んだ。
その瞬間——クラージュの胸の奥で固く張っていた緊張の糸が、温かい旨味の波によって優しく解き放たれた。
「っ……!? ん……っ!? なに……この深く包み込まれるような心地よさは……ッ!? 凝縮された魚介の旨味が体中に染み渡り、まるで温かい温泉に浸かっているかのような安心感が……心を和ませていく……ッ!!」
WGOの重責に縛られていたクラージュの心が、創真の包容力溢れる温かい一皿によって綺麗さっぱり解けていく。
あまりの多幸感と深い安心感に、クラージュの静かな仮面が弾け飛んだ。
極上の旨味が全身を駆け巡り、彼女の白い肌がポカポカと朱に染まると、着用していた執務服が音を立ててしなやかに弾け飛んだ(おはだけ・授与(おさずけ))。
「あぁっ……私……こんなに温かくて穏やかな気持ち……初めて……っ。創真……貴方の温もりに……包まれていたい……ッ」
タレ目の瞳に溢れるほどの涙と潤いをたたえ、うっとりとした恍惚の表情を浮かべるクラージュ。
創真の圧倒的な料理と温かい人柄に深い安心感を覚えた彼女は、創真の胸の中へとそっと身を預け、愛おしそうにしがみついたのだった。
試合終了を告げる重厚な鐘の音が館内に響き渡る中、VIP控室へと案内された創真が扉を開けると――そこには執務官服を大胆に乱したクラージュが一人待っていた。
豪華な長椅子の隅に小さくうずくまるように座る彼女は、普段のおっとりとした佇まいとはまるで別人であった。
乱れた衣装の隙間から覗く白い肌はほんのりと美しい赤みを帯び、やわらかな長めのボブヘアも幾筋かがふわりと乱れて頬に落ちている。
「……幸平創真」
名を呼ばれて振り返る彼女の声は、どこか切なく震えていた。
「私の心を……貴方のあの温かい料理が、優しく解きほぐしてしまったみたいですの……っ」
伏せられた長い睫毛の奥で、タレ目の緑の瞳がどこか不安そうに揺れている。創真が一歩足を踏み出すと、彼女は無意識にその華奢な身をさらに小さく縮めた。
「クラージュさん」
呼びかける創真の声はあえて低く、穏やかだった。威圧感を与えるためではなく、彼女に確かな安心感を伝えるための絶妙な距離感。
すると、彼女の白く細い肩が微かに震えた――それは恐怖ではなく、これから訪れる触れ合いへの強い期待による震えなのだと創真は瞬時に悟った。
「寒くないですか?」
差し伸べられた創真の手が、彼女の滑らかな額へと優しく触れる。その掌を通じて、彼女の熱がダイレクトに伝わってきた。
氷のように静的だった彼女の体温が、今は人間らしい温かさと情熱に満ち溢れている。
「……あなたの熱が欲しいのです……」
今まで見せたことのない、あまりにも弱々しく素直な本音。クラージュは朱に染まった唇を震わせながら訴えかけた。
「この胸の奥から湧き上がる熱気と温もりを……もっと深く……ずっと感じていたいのですわ……っ」
その懇願に導かれるように、創真は彼女の身体をゆっくりと引き寄せ、包み込むように深く抱きしめた。無理に強く力を込めるのではなく、羽毛のように優しく包む抱擁。
ふわり……
羽のような軽い接触。だが、極限まで感度が高まっていたクラージュはその温もりに過敏に反応し、切なげな息を漏らして腰をわずかに浮かせてしまった。
「だめ……っ! 身体が……身体の奥が……熱く痺れて変になってしまいますわ……っ!」
未知の快感と昂ぶりに戸惑うそのいじらしい様子に、創真はさらに優しく手を添え、焦らすような慎重な愛撫を重ねていく。
すっ……さらっ……
温かい指腹で白くしなやかな鎖骨のラインを丁寧になぞり、乱れた襟元の隙間から柔らかな布地をそっと引き出すと、豊満で淡い膨らみが露わになった。
形よく整ったその美しい胸を、創真の掌が下からそっと優しく掬い上げる。
にゅぷ……むにゅ……
「ぁ……っ……んっ……!」
彼女の喉の奥から漏れ出す小さな吐息。それは拒絶の抗議などではなく、純粋な驚きと溢れ出す喜びに満ちていた。
先端に鎮座する小さな蕾を、親指の腹でやわらかく撫で回しただけで、彼女の全身に痺れるような電流が走り抜ける。
「すごく敏感になってますね」
耳元で優しく囁かれると、クラージュは顔を真っ赤に染めてうつむいた。恥じらいに震えながらも、彼女の中に拒絶の意志は欠片もない。
それどころか、彼女は白く細い腕を創真の背中に回し、すがるように自ら強く抱きついてきたのだった。
「もっと……私にいろんなことを教えてくださいませ……。私……こういう気持ち、よくわからないのですから……っ」
完璧主義者であればあるほど、未知なる快楽の空白に対する焦燥と期待は大きい。
創真は一度彼女と距離を置くと、その目の前に静かに立った。
「じゃあ、まずは俺のことを全身で感じてもらう番です」
静かに腰のベルトを外し、解放された男性器の圧倒的な存在感に、クラージュの緑の瞳が吸い寄せられるように固定される。創真は敢えて自分からは動かない。
やがて、クラージュのほうから恐る恐る伸びてきた白い手が、その熱い先端を優しく包み込んだ。
ぬちゃ……ぴちゅ……
「熱い……こんなにも太くて熱いなんて……でも、不思議と怖くありませんわ……」
おそるおそる手で竿を上下に滑らせる、拙くも健気な単調な手つき。しかし、それだけでも創真の全身に充分すぎるほどの快感が突き抜けた。
創真は彼女の掌の上に自分の手をそっと重ね、優しく添えるように動作を導いていく。
「そう、ゆっくり滑らせて……」
シュッ……ジュプッ……
「上手いですよ、クラージュさん」
創真に褒められると、彼女の薄い唇がほんのりと和らぎ、頬が甘く緩んだ。健気に奉仕しようとするその一途な姿勢こそが、男にとって最大の媚薬となる。
創真の先端から透明な愛液がぽとりと滴り落ちると、クラージュは自然と身体を屈め、その顔を近づけていった。
「ん……っ……」
口腔内の熱気が触れるだけで、創真の肌に心地よい鳥肌が立つ。
彼女は唇の温度を確認するように何度か優しく先端を往復させると、思い切ってそれを口内へと深く咥え込んだ。
はむっ……ジュルッ……
「おぉ……っ」
予想以上の温もりと吸着感。特別な技巧を学んだわけではないはずなのに、本能的な野生の勘のようなものが働き、男の象徴が無防備な温もりに優しく包み込まれていく。
根元近くまで飲み込まれ、彼女の柔らかい喉奥できゅっと締め上げられた瞬間、創真も危うく感情を爆発させそうになった。
「ぷぁ……っ……はぁ……っ」
息苦しさに耐えかねて一度口を離したクラージュだったが、荒い息を整えると、愛おしそうにすぐさま再挑戦を試みた。
今度は器用に舌先を使い、裏筋の繊細なラインを優しく舐め上げるように奉仕してくる。
「凄いな……才能ありますよ、本当に」
湧き上がる情動が限界に達するのを感じ、創真は彼女の華奢な肩を軽く押してソファの上へと戻らせた。
長椅子に仰向けになった彼女の滑らかな脚を優しく開かせ、濡れそぼった股間の秘部へと顔を埋める。
ぐちゅ……クポォッ……
「やっ……!? そんなところ……直接触られたら……っ!」
指を二本滑り込ませた蜜壺は、創真の予想以上に甘い愛液で溢れ返っていた。うねるような粘膜の蠢動がどんどん激しくなり、今にも達してしまいそうな兆候を見せている。
創真はギリギリのところで指を引き抜くと、己の昂った熱杭をその熱い入口へとまっすぐに宛がった。
「準備はできましたか?」
優しく問いかけながらも、創真は返事を待たずにゆっくりと体重をかけ、自然な流れで内部へと侵入を開始した。
にゅるぅ……ドシンッ……!
「っ……!? はいっ……入って……深く突き刺さってきますわ……っ!」
最奥の壁にカチリと到達したところで、創真は一旦動きを止めた。クラージュがその強烈な存在感に慣れるのを優しく待つためだ。
それでも彼女の熱い膣壁は自動的に激しく収縮を繰り返し、脈打つ命の感触で創真を強く締め付けてくる。
「きもち……いい……っ」
虚ろに潤んだ瞳で天井を見上げながら、クラージュがぽつりと溢れさせた素直な一言。創真にとって、その言葉だけで充分だった。
緩やかに腰を動かし始めると、二人の接合部から生じる摩擦熱で、空間の温度がさらに一段階跳ね上がる。
ヌチュ……グチュ……じゅぽっ……
「ふぁ……あっ……! 温かいのが……体の奥深くまで染み渡っていきますわ……っ!」
まるで深い温泉の湯船に全身で浸かっているかのような心地よい形容。相変わらず派手な狂おしい嬌声はないものの、彼女の内面の高まりと快感の深度は明白であった。
創真は彼女の小さな耳元へ顔を近づけ、甘く低く囁きかける。
「俺と一緒に、最高に溶け合いましょう」
その言葉が引き金となり、奥歯を深く噛み締めるように眉根を寄せたクラージュが、一気に激しい絶頂の波へ呑み込まれた。
「―――っ……!!」
声にならない歓喜の叫びとともに、内部が力強くきつく収縮する。その猛烈な締め付けと同時に、創真も遅れることなく熱い種子を深く解き放った。
ドクンッ……ビュルッ……ドクドクドクッ!
「ぁ……っ……! 熱いのが……私の中にたくさん流れ込んできて……っ!」
幸せに満ち溢れた表情を浮かべ、彼女はそっと優しく瞳を閉じた。
長く濃密な余韻が静かに漂う中、創真が唇を重ねると、彼女の温かい舌が素直に答えて絡みついてくる。かつて無表情と評された彼女の浮かべた微笑みは、どこまでも柔らかく美しかった。
静まり返った連隊食戟会場のVIP控室。
甘く濃厚な愛の余韻と、ほのかな魚介スープの温かい香気が漂う空間で、大きなレザーソファの上で乱れた執務服の胸元を押さえたままのクラージュは、創真の膝の上に優しく乗っかり、彼の胸元へすっぽりと顔をうずめていた。
かつてのクールで感情を見せない審査官の面影は微塵もなく、朱に染まった頬と穏やかに蕩けた瞳で、創真の胸の鼓動を愛おしそうに聴いている。
「……ふあぁ……創真……っ。私……WGOの執務官として冷徹であるべきでしたのに……貴方の手と抱擁の温もりに……すっかり溺れてしまいました……っ」
クラージュは甘く静かな吐息を漏らしながら、創真の首筋へそっと愛おしそうにキスを重ね、彼の手を自分の背中へと回させた。
「でも……胸の奥がずっと温かくて……こんなに深い安心感と幸福感を感じたのは初めて……。貴方のあのスープのように……私の身も心も、創真に優しく包み込まれているのね……っ」
「へへ、クラージュ。そうやって肩の力抜いて、俺の胸の中で甘えてていいんだぜ。これからも俺の温けぇ料理、いつでも作ってやるからな」
創真が優しく笑い、彼女のしなやかな身体を大きな手で抱き締め返すと、クラージュは「ん……ふふっ」と幸せそうに目を細め、上目遣いに創真を見つめた。
「ええ……っ。これからは貴方だけに心を開く特別な存在として……私をずっとずっと温かく愛してくださいね……っ」
クールな殻を破り、心からの安心感と甘えを爆発させるクラージュの姿に、創真は胸を張り、力強い笑顔で彼女の手を握りしめた。
「お粗末!」
その決め台詞とともに、クラージュはとびきり穏やかで美しい笑顔を浮かべ、創真の胸元へと幸せそうに顔を寄せて目をとじたのだった。
(第60話 おわり)