※この作品はR-18です。

戦い続ける呪い NARUTOの世界で無双する   作:闇夜光明

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傷をつけた少年

風間シン、八歳。

 

 木ノ葉隠れの里にある忍者アカデミーでは、今日もいつも通りの一日が始まっていた。

 

「おい、風間!」

 

 背後から声が飛んでくる。

 

 振り返ると、何人かの男子がこちらを見て笑っていた。

 

「今日の任務、お前が足引っ張るなよ」

「どうせ何もできないんだから、カナコの邪魔すんなよ」

 

 シンは何も言い返さなかった。

 

 言い返したところで、どうせまた笑われる。

 

 自分は昔からそうだった。

 

 運動も苦手。

 忍術も得意じゃない。

 成績もぱっとしない。

 

 そして何より、気が弱い。

 

 だから、いじめられる。

 

 それでもシンには、一つだけ密かな楽しみがあった。

 

 少し離れたところにいる少女。

 

 森野カナコ。

 

 可愛くて、真面目で、何事にも一生懸命。

 勉強もできるし、忍術の成績だって悪くない。

 

 シンが密かに想いを寄せている女の子だった。

 

 もちろん、本人に告白したことなんて一度もない。

 

 そんな勇気はなかった。

 

 今日もカナコは、仲間たちと楽しそうに話している。

 

 その隣には、もう一人の問題児がいた。

 

「俺が一番最初に敵を見つけるってばよ!」

 

 うずまきナルト。

 

 いつも騒がしく、失敗ばかりしている少年。

 

 シンはそんなナルトのことを、少しだけ気にしていた。

 

 理由は簡単だった。

 

 自分と似ているからだ。

 

 ナルトも周囲から馬鹿にされている。

 

 だからシンは、誰にも見られていないところで、何度かナルトを助けたことがある。

 

 落書きを消してやったり。

 壊された道具をこっそり直してやったり。

 

 ナルト本人は、誰がやったのか知らない。

 

 それでいいと思っていた。

 

 ――今日までは。

 

「それじゃあ、今回の任務について説明するぞ」

 

 イルカが三人の前に立った。

 

「今回の任務は、アカデミー初期の実地訓練だ。場所は里の外れにある古い地下洞窟。危険な任務じゃない。基本的な探索と、簡単な罠の解除が目的だ」

 

「楽勝だってばよ!」

 

 ナルトが胸を張る。

 

「油断するなよ、ナルト」

 

「わかってるってばよ!」

 

 シンは黙って話を聞いていた。

 

 そして、ちらりとカナコを見る。

 

 カナコは真剣な顔でイルカの説明を聞いていた。

 

 ――俺も、何かできるところを見せたい。

 

 それだけだった。

 

 たった、それだけ。

 

 だから洞窟に入ってからも、シンは必死だった。

 

 先頭を歩こうとした。

 

 罠を見つけようとした。

 

 何か役に立とうとした。

 

 そして――

 

「シン、待て!」

 

 イルカの声が響いた。

 

 目の前にあった床。

 

 そこに細い線が走っている。

 

 罠だ。

 

 頭ではわかっていた。

 

 でも、その瞬間、シンの視界の端にカナコが映った。

 

 ――今だ。

 

 ここで俺が罠を解除できたら。

 

 カナコに「すごい」と思ってもらえるかもしれない。

 

「俺がやります!」

 

「待て、シン!」

 

 イルカが叫ぶ。

 

 だが、シンは止まらなかった。

 

 一歩。

 

 踏み込んだ。

 

 カチッ。

 

 小さな音がした。

 

「……え?」

 

 次の瞬間。

 

 壁が開いた。

 

 無数の刃が飛び出した。

 

「伏せろ!」

 

 イルカの声。

 

 ナルトが叫ぶ。

 

 シンはとっさに振り返った。

 

 その先にいたのは――

 

「カナコ!」

 

 飛来した一本の刃が、少女の顔を横切った。

 

 鮮血が飛んだ。

 

「…………」

 

 時間が止まったようだった。

 

 カナコの頬から、赤い血が一筋流れていく。

 

「カ……カナコ……?」

 

 シンの声が震えた。

 

 少女は何が起きたのか理解できないように、自分の頬に触れた。

 

 指先についた赤。

 

 それを見て――

 

 泣いた。

 

「……痛い……」

 

 その言葉が、シンの胸を突き刺した。

 

 ――俺のせいだ。

 

 全部。

 

 俺が勝手に動いたから。

 

 俺が、カナコにいいところを見せようとしたから。

 

 俺が――。

 

「ごめん……」

 

 シンは呟いた。

 

 何度も。

 

「ごめん……ごめん……」

 

 それから数日。

 

 カナコは学校に来なくなった。

 

 シンは誰にも責められなかった。

 

 イルカも怒鳴らなかった。

 

 ナルトも何も言わなかった。

 

 だからこそ、余計につらかった。

 

 誰かに殴られたほうが楽だった。

 

 罵られたほうがよかった。

 

 全部自分のせいなのだから。

 

 そしてある夜。

 

 シンは木ノ葉の外れにある崖の上に立っていた。

 

 眼下には暗闇。

 

 風が冷たい。

 

「……カナコ」

 

 小さく名前を呼ぶ。

 

 もう一度、あの笑顔を見たい。

 

 でも、自分がその顔に傷をつけた。

 

 自分が生きている限り、あの傷を見るたびに思い出す。

 

「……ごめん」

 

 シンは目を閉じた。

 

 一歩、前へ。

 

 身体が宙に投げ出される。

 

 風が耳元を切った。

 

 落ちていく。

 

 どんどん地面が近づいてくる。

 

 ――これでいい。

 

 俺なんか、いなくなればいい。

 

 そのときだった。

 

「ねえ」

 

「……え?」

 

 声がした。

 

 誰もいない。

 

 なのに、確かに聞こえた。

 

「なんで自殺なんかするの?」

 

 シンは目を開けた。

 

 空中で身体が落下している。

 

 その隣に――

 

 黒い影のようなものが浮かんでいた。

 

「誰……?」

 

「僕? 悪魔だよ」

 

「……悪魔?」

 

「そう」

 

 悪魔は、まるで世間話でもするような気軽さで言った。

 

「せっかく生きてるのに、もったいないじゃない」

 

「……俺が生きてても意味なんかない」

 

「どうして?」

 

「俺のせいで……好きな子に一生残る傷をつけた」

 

 シンはこれまでのことを話した。

 

 自分が馬鹿にされていたこと。

 

 カナコにいいところを見せたかったこと。

 

 イルカ先生の制止を無視したこと。

 

 そして、カナコの顔に傷をつけてしまったこと。

 

 悪魔は黙って聞いていた。

 

「なるほどね」

 

 しばらくして、悪魔が言った。

 

「じゃあ、その女の子の傷を消してあげようか?」

 

「……え?」

 

「その代わり、お前をもらう」

 

 シンは考えなかった。

 

「いいよ」

 

「本当に?」

 

「俺のことなんか、どうなってもいい」

 

 悪魔が笑った。

 

「面白いね、お前」

 

「だから……カナコの傷を消してくれ」

 

「取引成立だ」

 

 その瞬間。

 

 世界が白く弾けた。

 

 ――そして。

 

 ドサッ。

 

「……痛っ」

 

 シンは地面に転がった。

 

「…………?」

 

 ゆっくり目を開ける。

 

 そこは崖の下だった。

 

 身体中が痛い。

 

 だが――

 

 生きている。

 

「……あれ?」

 

 シンは呆然と空を見上げた。

 

「俺……飛び降りたよな?」

 

 崖の上は遥か遠くにある。

 

 どう考えても、普通なら助かる高さじゃない。

 

「……なんで?」

 

 答える者はいなかった。

 

 ただ、どこからか悪魔の笑い声だけが聞こえた気がした。

 

「ククク……」

 

 シンはまだ知らなかった。

 

 この日を境に、自分の人生が大きく変わっていくことを。

 

 そして――

 

 あの取引が、世界そのものを巻き込むことになるなど。

 

 このときのシンには、知る由もなかった。

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